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手は足りなくとも無理矢理なんとかするのが専門家というもの

今月2話目となります。

ここからは日本が無理をしつつオーストラリアへと乗り出します。

どうなるかは今後をお楽しみに……

――2029年 5月12日 旧世界呼称・オーストラリア大陸東方500km地点 海上自衛隊強襲揚陸艦『えど』

 日本はこの10年以上の間にアメリカ大陸を沿岸部から開発していたが、この10年でようやく大陸西方部の沿岸部に開拓の手が伸びるようになっていた。

 それには官民を問わない人々の協力と、かなりの過重労働によってもたらされた繁栄でもあった。

 しかし、先だって判明した『先史人類』に関する情報を収集する必要性が発生したため、自衛隊と学者の一部を割いて調査隊を編成した。

 まずはアメリカ大陸の西方部にある島嶼部(旧世界で言うイースター島など)を調査するべく人員を送った。

 が、残念なことに小さな島も含めて調査した結果、島嶼部には人類の痕跡は残っていたものの、基本的に原始的な生活様式の痕跡であった。

 生物も小型の爬虫類や鳥類など、ガラパゴスに近い生態系が築かれているなど、旧世界に酷似していた。

 つまり日本が求める超文明を誇った先史人類の物ではないということが判明したため、そこから補給を受けつつ少しずつ西へと向かい、今はオーストラリア大陸へ少しずつ近付きつつあった。

 ちなみに、島に入る時は『えど』及び『LCAC』の出入り口に消毒液を染み込ませたマットを敷き、人も車両もしっかりと消毒している。

 ちなみに、何故古い『おおすみ』型でないのかと言われれば、『あづち』型強襲揚陸艦は『おおすみ』型よりも高い航空機の運用能力を持っているため、いざという時には『F―3B』とヘリコプターが使えるという利点があったからだ。

 戦闘機が必要になる場面は少ないだろうと判断されたため、『えど』には『F―3B』を搭載していないが、その代わりヘリコプターは『やんま』型対戦車ヘリコプター1機に加えて、多用途ヘリである『UH―2』を2機、輸送用ということで『CH―47JA』チヌークを2機搭載している。

 『UH―2』は多用途ヘリとして設計されているため、スタブウイング(パイロンは2つ)が装備されている。

今回はロケット弾ポッドと『やんま』型対戦車ヘリコプターに搭載されている自衛用の空対空誘導弾を搭載できるようになっている。

上陸用の武装(航空機除く)としては

○軽装甲機動車・改 5輌

○高機動車 10輌

○16式機動戦闘車 2輌

○87式偵察警戒車 2輌

○87式自走高射機関砲 1輌

○陸上自衛隊員 500人


 

 という、中々の充実ぶりであった。

 特に、第二世代MBT並みの打撃力と高い機動力を持つ『16式機動戦闘車』がいることは大きい。

 万が一敵がいて、これまた万が一第二次世界大戦レベルの装甲車両を繰り出してきたとしても、この戦闘車がいれば大概は対応できる。

 また、今回の艦隊には『あづち』も付いてきているが、『あづち』は主に工作車両と、LCACの護衛に『AAV―7』を2輌、そして『F―3B』を25機搭載している。

 そんな装備が満載された船上で、陸上自衛隊駒門駐屯地所属の武藤2等陸曹は、これまでの調査がどれも空振りに終わっていたせいか、気の抜けたような姿を晒していた。

「ハァ……早坂1曹、本当に先史人類の痕跡なんて見つかるんですかね?」

 武藤の隣には眼光の鋭い男が座っている。武藤の先輩で、剣道4段の腕前を持つ早坂1等陸曹は、油断など微塵も見せない様子で本を読んでいた。

「元々見つかるかどうか分からない中で手探りの調査だ。無いなら無いで仕方ない、というのが政府の見解だな」

「えぇ? じゃあないかもしれないものを探しているんですか? まるで雲を掴むような話だなぁ……」

「仕方ないさ。衛星でも明らかにできないことは多々あるからね」

 武藤の言葉に、早坂は苦笑しながら返すしかない。

 実際、防衛相は偵察衛星にかなり無理をさせて『Mig―17』もどきの翼下に誘導弾らしきものがあることを確認していたが、そこまでやろうとすると衛星の機能そのものにかなりの負荷をかけるので、最近はあまりやっていない。

「先輩はどう思うんです? 今回の調査は」

「そうだなぁ……俺も正直言って無いならそれはそれで、かな」

「えぇ、なんでですかぁ?」

 早坂は本から目を離すと柔らかく微笑んだ。

「見つかればそれを参考にするべきだろうし、見つからないならば遺跡に残っている資料や映像を基に対抗策を練る。それしかないだろう?」

「そういうもんですかねぇ?」

「少なくとも、俺はそう思うがな」

 早坂の達観したような答えに、武藤は唸ることしかできない。

「それはそうと武藤、お前は今回の編成、どう思う?」

「え?」

「『やんま』だよ。あれが大きいせいで結構幅を取っているだろう?」

「……あぁ、そういうことですか。日本でも強襲揚陸の際に支援する『AH―1Z』ヴァイパーみたいな専用の戦闘ヘリコプターがあってもいいんじゃないか、って話ですよね?」

 そう、今回の派遣に際して一番の問題は、『やんま』がかなり幅を取るうえに、整備が大変と現場から声が上がっているのである。

 おまけに、ここにきて再び『予算』という最大の(あくまで筆者の感覚)壁が立ちはだかった。

 レーダーなどの精密機器や、強力な装甲板がとにかくお高いのである。

 必要なので200機ほどは製造できそうだが、それ以上となるとかなり厳しいというのが財務省の意見であった。

 こうなってくると、結局少しグレードは落としても安価な、それでいて水陸機動団の支援に用いることができそうな『AH―1』をモデルにしたヘリコプターを製造する必要に駆られたのである。

 そのため、現在防衛装備庁は富士重工業に依頼して新型ヘリコプターを開発させている。

 要求としては……



○形状は『AH―1Z』ヴァイパーを参考にすること

○エンジンを『AH―1S』時代の単発から双発に変え、出力を大幅に上昇させること

○燃費はできる限り低くするために効率のいいエンジンを開発すること

○『反重力器官』を応用できないかどうか検討すること

○固定武装はコブラと同じ20mm多銃身機関砲を用いること

○対戦車誘導弾は打ちっぱなし能力のある『ASGM―1』を用いること

○スタブウイングの端に自衛用の対空誘導弾を2発ずつ装備できるようにすること

○電子機器類はコブラのそれから一新させ、運動性能なども含めて『やんま』より性能の良いものを求めること



 など、本家『AH―1Z』ヴァイパーに近い要求……ただし、かなり無理を言っている話である。

「やってみなければこうなることも分からなかった、という意味ではまずはやった行いそのものに意味がある、と考えるべきなんだよ」

「お上の考えることって、俺たち下っ端には全然わかりませんよ」

「そうだな。だからこそ、俺たちは言われたとおりに、訓練通りに物事を進めなければならないんだ」

 すると、艦内放送が聞こえてくる。

『派遣部隊はミーティングルームに集合せよ。繰り返す、派遣部隊はミーティングルームに集合せよ』

「ほら、お呼びだぞ」

「は、はい!」

 ミーティングルームにむかうと、既にほとんどの陸自隊員が集まっていた。彼らの前には派遣部隊の隊長を任された坂口彰2等陸佐が立っている。

「ご苦労。もう間もなく旧世界で言う所のオーストラリア大陸へ到着することになる。上陸の際はこれまでの当初上陸と同様に海自の『F―3B』と我々の『やんま』及び『UH―2』が上空で支援することになる。質問はあるか?」

 隊員の1人が手を挙げる。

「上陸した『後』の支援については?」

「現在補給艦『たざわ』が旧型の『ましゅう』と交代するべくこちらへ向かっている。補給が完全に完了すれば、十全な航空支援を受けられるだろう」

 補給艦『たざわ』とは、転移後に超大型かつ強大な輸送能力を持つ補給艦が必要になるであろうと予測されたために、『ましゅう』型よりもさらに巨大かつ高性能な輸送艦であることが求められた。

 よって、排水量は驚異の3万4千t(満載状態で5万t)、全長300m、全幅32m、機関に三菱重工業が開発した2万馬力のディーゼルエンジン4基と、川崎重工業が開発した最新鋭の3万5千馬力の水素タービンエンジン2基の複合推進機構を使用しているため、速力はこれまた驚異の27ノットという高速を実現している。

 要するに、戦艦大和より長いタンカー型の船体が、いざという時は最新鋭のタービンエンジンをぶん回して、計15万馬力という大和型並みの高出力と大和並みの最大速度で爆走するのだ。

 ちなみに、満載排水量だけならば大和型戦艦よりも遥かに『軽い』ので、速度はともかく燃費はその分いい。

 しかし、防衛装備庁や防衛省も作ってから気付いた。

『あれ? これってやり過ぎた?』と。

だが、これまでとは比較にならないほどの補給が見込めるため、物資も大量に移送できるようになった。

ちなみにこの船、大和型戦艦よりもデカいくせに建造費はわずか750億円(『ましゅう』型が430億円ほど)、デカさと機能の割に異様に安いこともあって、『毒食わば皿まで』と言わんばかりに調子に乗って『くっしゃろ』、『いなわしろ』、『ちゅうぜんじ』、『あしの』、『のじり』、『よご』、『しんじ』、『いけだ』、『しだか』という10隻を建造する予定となり、現在は2番艦の『くっしゃろ』が既に就役している。

なに? 明らかに方向性がぶっ飛んでいるうえに間違いだらけだろうって? 昔から言うではないですか。『大は小を兼ねる』と。

どうせ馬鹿デカい大陸もあるんですから、これくらいあってもおかしくない……え、そんなことないって? かの米帝様ですらそんな物持っていないって?

その米帝様の4倍以上の面積を統治しなけりゃならないんですから、色々使えるものが多いに越したことがありませんから。

ついでに言うと、アメリカにもぶっ飛んだ設計思想の補給艦は存在しないが、超大型の補給艦や輸送艦というのは多数存在する。

そしてこの補給艦の本領はそこではなく、なんと『自衛用の武装を積んでいる』という点がある。

搭載しているのは



○『52口径155mm連装砲(99式、19式自走榴弾砲の砲を参考に製造)』 1基

○『ASGM―1』改良型対艦誘導弾 4発

○11式短SAM海上発射改良型・26式艦対空誘導弾四連装発射筒 2基

○近接防御火器『CIWS』 2基

○RWS・M2ブローニング重機関銃 8基

○SH―60K 1機


 

 当然こんなものを使用するためには、対空・対水上レーダーが搭載されていないといけない。それでも割と簡易的(現代基準で言うと『たかなみ』型レベル・ただし近代化・軽量化されている)なものにしているため、限定的な能力ではあるが。

 日本としては、ニュートリーヌ皇国の近くで貨物船が拿捕された挙句乗員のほとんどが惨殺されたというのがかなり応えたらしく、『単独で派遣しても前弩級戦艦くらいまでとは渡り合える輸送船』のコンセプトで開発した物だから、このような結果に至ったのはある意味必然だったとも言える。

 え? だとすると対潜装備はって? ヘリと随伴艦でどうにかします。

 今回も対潜防御支援のためだけに『あさひ』型護衛艦『ゆうひ』を引き連れていた。

 話がだいぶん横道にそれてしまったので本題に戻る。

 補給に関しては問題ないことが分かった隊員が下がると、別の隊員が手を挙げた。

「今回はこれまでとは異なり大陸ですけど、補給線を維持する方法は?」

「それはこれまでと変わらず、小さな拠点を作りつつ徐々に進んでいく、だな」

 元々自衛隊という組織は『相手国に侵攻する』ことを想定していない装備ばかりなので、『守る』ことは強いが『進む』ことに関しては、大本を辿れば大戦以来からの泣き所なのだ。

 なので、自分たちに無理のない範囲で着実に一歩ずつ進むことしかできないのである。

 ただ、これには利点もある。

 じっくり進んでいる間に最前線基地の周囲をじっくり調べることができるので、陸上自衛隊の『用意周到・動脈硬化』をうまく体現することができるのだ。

 もっとも、これまでは無人になった島ばかりであったため、周到に調べても原始文明の名残くらいしか発見できなかったのだが。

 だが、今回派遣されるオーストラリア大陸に関しては、期待が持てそうなのである。何故ならば、『現在稼働中の文明』が確認されたからだ。

「相手文明から接触してきた場合は?」

「学者先生だけでは対応が難しいだろうから、護衛を付けたうえで外務省の方にお願いすることになる。他に質問は?」

 ついに誰も手を挙げなくなった。

「では、明日の早朝には目的地に到着する。各員準備を怠らないように」

「「「はいっ!!」」」

 各隊員はそれぞれの部屋へと戻っていく。

 武藤はというと、舷側の廊下に出た時にふと見上げた空が『キラリ』と星を光らせているのがなぜか心に残ったという。

 翌日、大陸が見えてきたことでまずは上陸のための事前調査でヘリコプターが3機飛ぶ。『やんま』と『UH―2』だ。

 本当ならば観測ヘリコプターが欲しかったのだが、戦闘・汎用ヘリを優先しているために未だに『OH―1』の後継機が決まっていないのと、お値段が高いということもあって派遣されなかった(新型機である『UH―2』の方が量産効果と機能面からコストが絶対的に低い)のだ。

 前線装備ばかりを重視して支援装備に行き届かない日本の悪癖がまた出た形である。

 対戦車ヘリコプターと汎用ヘリコプター、併せて3機が上空へ上がり上陸予定地点の偵察にあたる。

 『やんま』型対戦車ヘリコプターの操縦手を務める岡倉は、自分の眼下に広がる雄大な自然を見て思わず『ヒュウ』と口笛を吹いていた。

『見ろよ大浜。マジでオーストラリアっぽいぜ』

『21世紀を基準にすれば数百年しか経過していないのですから、案外そんな物なのではないですか?』

『どうかな? 俺たちがいた時代でさえ、オーストラリアは色々ヤバかったってニュースで出ていたしな。もし俺たちの時代とさほど変わらない生態系のままなんだとすれば、この星の環境はその数百年の間安定していたってことになる。産業革命からこっち、どれだけ人類が自然破壊をしたと思ってんだよ?』

『それは……言われてみればそうですね』

 実際、人類が蒸気機関を得て遠くの外洋へ乗り出せるようになってから、生物の絶滅や減少は加速していた。

 もちろん、マンモスのように古代人類によって滅ぼされた存在もあるが、ドードー鳥やステラーカイギュウなどはそれなりに文明が発達してからの話でもある。

 中には、ただでさえ十数羽しかいなかった鳥が、人間の持ち込んだネコに狩られるだけで絶滅した例もあるが、これはそもそも数が異様に少なかった時点で『お察しください』と言わざるを得ない話だろう。

『おっと、LCACの上陸だ』

 LCACについても転移直後は寿命延長改修でどうにかなったが、流石に10年近くが経過するにつれて『後回しにできない』という事態になり始めたため、日本独自での開発(というかコピーしたうえで魔改造)することになった。

 LCACのエンジンが一番の難物だったが、防衛装備庁の研究員の一言で意外な解決を見せた。

「『A―1』のターボファンエンジンを活かしたらどうです? あれってバイパス比も大きいですし、我が国特有の設計思想で燃費もいいですし」

「「それだっ‼」」

 もっとも、航空機に搭載するのと船舶(ただしホバークラフトは宙に浮いて滑るように走るため、厳密には航空機の一種)に搭載するのとではだいぶん勝手が違うので、未だに『あぁでもない、こうでもない』と試行錯誤を繰り返しているのだが。

 最初は『いっそロシアの持ってる〈ズーブル〉みたいな奴でも作るか?』とド阿呆のような意見が出たが当然それは無視された。

 あんな馬鹿デカいものを持っていたところで島嶼防衛ならともかく、今の『広い外洋へ出ていく陸海空自衛隊には必要ない』のである。

「武藤、こっちだ」

 早坂に呼ばれた武藤は自分の装備を持ってLCACに乗り込む。

「……何度乗っても慣れませんね。これは」

「仕方ないさ」

 武藤はあまり船(というかLCAC)が得意ではないらしく、乗る度に顔をしかめていた。

 すると、最後の点検をしていた海自隊員が苦笑しながら発言した。

「まぁ、海自隊員の中にも『LCACは苦手』っていう人がいますから。これは人それぞれですよ」

 意外なことに、船に慣れている海自隊員ですらLCACは苦手な者がいるらしい(あくまで作者の想像です。現実はどうなのかは知りません)。

「まぁ、幸い今日は波も穏やかだから、馬鹿みたいには揺れないと思うよ」

「ありがとうございます」

 武藤は気を使ってくれた海自隊員に礼を言うと、自分の配置についた。

 それから数分後、最後の点検と確認が終了し、LCACが海へ飛び出した。

 少し揺れるが、少し前に旧世界で言うバヌアツに上陸した際はもっとひどかった。

 確かに、これならばそれほど苦しむことはないだろう。

 武藤たちは最後の上陸(最初に堅固な装甲車両や偵察車両を陸揚げした)となる。

 20分足らずで陸へ上がると、艦首ランプを開いて部隊を降ろす。

 武藤も自分の『24式自動小銃(史実の20式小銃。転移で採用が遅れた)』を持ちながらLCACから降りる。

 ザク、という音と共に、柔らかくもしっかりとした砂浜を踏みしめると、なんとも言えない安心感がある。

「(やっぱり、人間は陸の上にいないとな)」

 そんなことを考えつつ、自分の部隊へと並ぶ。

「よし。それではこれより、砂浜を脱し、事前にヘリが偵察した地点に野営拠点を作る。行くぞ!!」

「はっ‼」

 『あづち』から陸揚げされた工作車両を装甲車と共に護衛しながら、陸上自衛隊は進む。

 ちなみにこの場所、地図で示すならば旧世界で言うとオーストラリア大陸東のロックハンプトン付近にあたる。

 浜辺からわずか2kmの地点で、大きく開けた場所に出た。周囲には樹木もほとんどなく、一言で言ってしまえば『だだっ広い』。

 この場所に、500人が当面生活できるだけの防衛拠点を構築しなければいけない。施設科隊員が素早く測量し、車両の配置とテントを張る場所を次々と決めていく。

 当然、武藤たち普通科隊員もできることは手伝うため、その作業速度はこの世界の文明水準からすると尋常ではないほどに速い。

 ショベルカーが素早く塹壕を掘り、普通科隊員たちが集められた土を素早く袋に詰めて即席の土嚢にしていく。

 さらに車両と隊員たちの外では車両が随時警戒に当たっている。

 上空では『UH―2』が1機、絶えず飛び回っている。もう1機と『やんま』は地上に降りているが、いつでも飛行できるようにパイロットとガンナーは乗ったままだ。

 武藤は軽装甲機動車の上で、MINIMIを旋回させながら現場防衛にあたっていた。

『こちら上空『UH―2』1号機。現在周囲に異常なし』

『了解。あと30分で交代する。それまで警戒を続けてくれ』

『了解』

 先述した通り、『UH―2』のスタブウイングには『ハイドラロケット弾ポッド』が装備されているため、数十人程度の人間が相手なら十分に倒せるうえ、一個小隊が来ても足止めできる火力となっている。

 更に10分が経過した。

『ん? なんだあれは?』

『どうした?』

 上空の『UH―2』の動きが変わった。

 武藤は緊張感に体を強張らせる。

『なにかが近づいてくる! あれは……恐竜だ!! 恐竜の群れだ!!』

『タイプは判別できるか?』

『小型多数! 〈デイノニクス〉タイプと思われる! そして、その背後に〈アロサウルス〉が1体! 数人の集団を追いかけている!』

 司令部は『は?』と首を傾げた。だが、逃げている存在を見殺しにすることは日本人として許されない。

「二佐、今回の派遣に即して、『当方の生命に危険が及びそうな場合は威嚇なしの射撃を許可する』とあります。いかがでしょうか?」

 部下に聞かれた坂口は素早く判断を下した。

「これは記録音声で残しておいてください」

「既に準備済みです」

「では……『このままでは当方へ突っ込んでくるルートのため、恐竜から逃げている集団に割り込むようにしてLAVで攻撃を開始‼敵を混乱させたところで〈MCV(16式機動戦闘車のこと)〉を用いてアロサウルスを撃破せよ!!』。以上です」

 普段は温厚な坂口だが、いざという時にはこれ以上ないほどに苛烈な指揮を執ることで知られている。

 デイノニクスレベル(馬よりも少し大きいくらい)ならば小銃の一斉掃射で片付けられるだろうが、アロサウルスは体長9m近い巨体である。

 大陸上陸の最初に現れたティラノサウルスほどではないだろうが、それでも『厄介な相手』だ。

 手を抜くことは許されない。

私事ですが、遂に今回初めて艦これアーケードで特別作戦に参加し、『瑞穂』を入手しました。

ただ、この後緊急事態宣言が出されるそうなので、サラトガとホーネットに関しては入手できるかどうか怪しくなってきました。

皆さんもどうか、くれぐれもコロナにはご注意を。

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