パリン国際会議の行方
今月1話目となります。
今回は明かされた衝撃の事実に対する各国の対応が肝となる、と個人的には考えております。
――西暦1746年 5月4日 フランシェスカ共和国 首都パリン ソレイユ大講堂
ここは、フランシェスカ共和国と日本の国交が結ばれてから建設された、大規模な木造大講堂である。
用途としては国家的な祭典や大会議の際に用いるのだが、今回日本が会議の場として選んだのがフランシェスカ共和国であった。
特に、この首都パリンは日本が景観に配慮して石造りや木造の建築物を現代工法で設計・製作した結果、機能的かつ景観に優れた都市へと変貌していたのだ。
ついでに言うと、神国からも遠い上に町の外れにあるので警備しやすく、安全性がより確保しやすいという利点も存在する。
そんな建物を見ながらエルフ夫婦が街を歩いている。
「パリンも変わったなあ」
「えぇ。一昔前までは木造建築でこれほど美しい建物が建てられるとは知りませんでしたわ」
フランシェスカ共和国は既に日本と国交を結んで8年以上が経過していた。国交を結んだ順番という点ではグランドラゴ王国の次であり、食料の生産能力も高いことからかなりその恩恵を受けているのである。
そんな日本から導入した技術は数知れない。
農業の作業効率や収穫効率を大幅に上げてくれたトラクターや仕分け機械、そして大量に運搬できる巨大トラックと積み荷の安全性を高めてくれるダンボールと梱包用ビニール材。
漁業効率を上昇させてくれる頑丈な繊維でできた投網と漁のやり方、漁業用船舶とソナーの供与。そして何より、魚を保存しておける超巨大な冷凍庫は偉大な供与品であった。
軍事技術ではガスマスクを用いることによってエルフ族でも銃火器が使用できるようになったことや、近代的な車両を用いた戦闘方法。
もう間もなく、政府の金で軍艦も2隻購入する。
日本がいなければ、未だにフランシェスカは世界でも最底辺に位置するただの田舎国家であっただろう。
だが、諸技術の提供がこの国を変えた。
更に、日本式の教育方法も次々と導入されていた。今やエルフ・狼人族の子供たちが大勢、日本式の教育を施してくれる学校で学んでいる。
それによって、ただの学問のみならず美術や芸術などの文化を学ぶ余裕さえもできた。
日本が旧世界にいた時のフランスやヨーロッパ諸国には素晴らしい芸術品や美術品が多数存在したらしく、その写真や映像を見て『自分たちもそのような物が作れるようになりたい』と勉強に励む若者が続出していたのだ。
そんな国の新しいシンボルであるソレイユ大講堂は現在、旧世界基準で見ても物々しい警備に包まれていた。
先端にゴムの塊を装着して非殺傷性ながら打撃力を強化した樫の木製の棒と、強化プラスチックの盾やボディーアーマーで武装した機動隊300人に加えて、竹槍と竹の矢を装備したコンパウンドボウで武装した陸上自衛隊員150人がいるのだ。
樫の木の棒の方が竹槍よりも強そうという点はツッコミを入れてはいけない。これは各警察に保管されていた『お古』に処置を施して今回の警備で簡易メイスとして使えるようにした物なのである。
ちなみに、陸上自衛隊員の足元には陶器製の小型の壺が多数置かれている。要するに、簡易手榴弾である。
全ては、万が一アラクネの中に過激な不穏分子がいて、この会議を襲撃せんと襲ってきた時のための備えである。
前回シンドヴァン共同体で開催した警備の際には警察官数十名を配備していたのだが、それをたった数人に難なく突破されていることから、今回の『すごい』としか言えないレベルの警戒態勢を敷いたのである。
なにがすごいのかといえば、屋根の上や天井裏など、アラクネが入れそう・登れそうなところには徹底して人が配置されているのだ。
『アルセーヌ・ルパンの三代目を名乗る大泥棒や、ネコの目を名乗る怪盗でもない限りは忍び込むことは不可能だ』と、警視庁から派遣されてきた警備隊長は豪語していた。
が、それを聞いた隊員たちは逆に冷や汗を流したという。質問を受けると、彼らはこう答えた。
「それって、ル○ンやキャッ○・アイなら入れるってことじゃないですか……」
ということであった。
後にこの大講堂での会議を取材したマスコミは『心配するところ違うだろ』とむしろ苦笑したという。
この大講堂の中では現在、日本を主導とする『ガネーシェード神国戦後処理会議』が行われている。
日本の外務省幹部を筆頭に、グランドラゴ王国、フランシェスカ共和国、スペルニーノ王国、イタリシア王国、アヌビシャス神王国、シンドヴァン共同体、そしてつい先だってまで日本と戦争していたニュートリーヌ皇国の外交官が着席していた。
また、今回は各国の報道関係者も入れており、各国に日本の技術を以って中継されている。
「では、日本国はガネーシェード神国からの賠償は鉱物資源の日本主導での採掘と日本による近代化の下で食料増産を命じること……この2点のみにとどめるおつもりですか?」
日本の外交官に質問したのは、アヌビシャス神王国の外交官だった。これは各国も同意の上での元々決定事項なので、マスコミに対するアピールのようなものである。
「はい。政府の見解では『神国に貨幣の類は存在せず、鉱山があるのでそれを開発することで賠償とする』としております」
「神国内部で見つかったという超文明の遺跡については?」
今度はフランシェスカ共和国のエルフ族の女性外交官であった。
「現在我が国の科学者を集めて研究中でして、我が国の技術に応用できるかそうでないかを判断した後に発表させていただきます」
ちなみに、例の『神域』で発見されたものの中で移送できるものは既に日本に移送されており、各研究者たちが血眼になって研究を始めている。
初めて神域を見た桐生は各所に引っ張りだことなっており、眠る暇もないほどの忙しさとか。
ちなみに、そんな桐生を護衛する必要があるため、昔馴染みで格闘徽章・レンジャー徽章、空挺徽章まで持っている万丈1等陸曹が護衛についているのだが、彼もほとんど眠れない日々を過ごしている。
閑話休題。
そして、一番重大な話に持っていくのはこの中で一番国力のあるグランドラゴ王国の竜人族外交官であった。
「では最後に……ガネーシェード神国の首長ヘンブ女史から聞いたという、『我々つまりこの星に暮らす人類と生物の大半が、何百年も昔に古代の超文明人の手によって作られたものである』という話……日本国の見解をお聞かせいただきたい」
この話こそ、今回の議題で一番デリケートな話題である。日本国民のみならず、世界中の(この場合は日本と国交のある国の人々のことを指す)人々の注目を集めているのだ。
下手な発言をすると、それだけで今までの人々が築き上げてきた友好関係がパーになってしまう。
それだけは避けなければならない。
日本代表として派遣された外務省の火野は、緊張で穴が開きそうになる胃を押さえながら会議を続行する。
「政府は真実ではないかと考えております。その理由の1つに、『この世界の生物に共通する、細工された痕跡のあるDNA』を例に挙げさせていただきます。お手元の資料をご覧ください」
日本式の教育が広まっているためか、『DNA』こと、デオキシリボ核酸のことを知らない者はこの中にはいない。
「DNAに手を加えるとのことですが……日本がかつていた旧世界では、それを利用した『クローン技術』なる物が存在していたらしいですね。我々の先祖が受けた措置というのは、それに類似したものなのでしょうか?」
旧世界のアメリカがクローンに関する実験を行い、ドリーと呼ばれるクローン羊を作り出したことがあった。
「はい。仰る通りであると政府の公式見解としてここに発表します」
当然、その場の人々もお茶の間の人々もざわついている。
当然だ。自分たちの先祖が実は超技術で作られた命だったなど、誰が想像できるだろうか。
「しかし、我が国ですら最初は信じられない話でした。それほどにクローン、及び遺伝子技術というのはまだまだ発展途上だったのです」
そう、クローンには問題があったのだ。
DNAを細胞から取り出す際に、『無傷』で取り出すことがどうしてもできなかったのである。
それを補うため、洋画でも有名な『琥珀の中に閉じ込められた蚊の体から恐竜の血を取り出し、そのDNAを別の生物(作中では両生類)の卵子に合体させるという手段があった。
しかし、それでもDNAの欠損の全てを補えないことが現代では立証されてしまっているのだ。
結果、クローンとして生み出された生物には『生殖能力の欠如』であったり、『身体機能の障害』が見られたりするなど、どうしても見逃せない欠点が浮き彫りになってしまっているのだ。
ちなみに、レオポンやライガーのような『近属異種生物の掛け合わせ』でも似たようなことは起きる。
異種同士で子供ができるだけマシ、というべきだが、彼らも生殖能力はなく、そして短命である。
「しかし、驚くべきことに古代文明では、遺伝子を『全く損なうことなく』改造・改良することができる超技術があったものと政府及び関係者は推測しております」
――ザワザワッ‼
本来、クローンからさらにクローンを作っていくと、次第にDNAは劣化していってしまう。
これはアルセーヌ・ルパンの三代目がクローン人間と戦うという、シリーズ上初めての映画でも語られていることであり、アニメオタクなどの界隈における知識としては意外と古い。
だが、超古代人は遺伝子をいじくりまわし、『全く別種の生物』の特徴が肉体的に出るように改造してしまったというのだ。
その結果誕生したのが狼人族や蜥蜴人、有翼人や猫耳族などである。
恐らくだが、エルフ、ダークエルフ、そしてドワーフなどの『比較的普遍的人類に近い特徴』を持つ存在は、『試験的な人造人類』だったのではないかと政府及び研究者たちは推測していた。
これは恐ろしい話である。
またアニメの話だが、宇宙でイカの化け物のような生物と戦いを繰り広げていたとある宇宙軍人のアニメもそうであった。
その生物は彼らのかつての故郷であった地球にも残っており、『クジラのようなイカ』としてその地球でのロボット乗りや船乗りから恐れられていた。
その生物は、元は人類が命を長らえるべく自らを改造した姿だった、というのが後に語られている。
つまり、そのレベルの絶大な技術が必要になるということは、21世紀の日本からしてもやはり100年から200年以上は経過しなければならないだろう。
「また、魚人族(ただし下半身はイルカのそれに近い)やスキュラ族、ラミア族などの人の特徴を『大幅に』逸脱した者たちは、超古代人の中でも『成功』の部類だったのではないだろうかと推測しております。何より、それらの種族が女性しか生まれないというのもそのように操作されているのだとすれば納得がいくのです」
「ま、まさかそのようなことが……」
その場にいたものだけではなく、お茶の間の人々も、完全に青ざめている。
ちなみに再び余談だが、日本はこの話を聞いた直後、複数の地質や地盤調査を行える企業に依頼して新大陸を含めて各国のボーリング調査や一部の物質の調査・検査を行なっていた。
それによって判明したのは、21世紀を基準とした場合だが、300年以上は年代が離れているのではないかとのことであった。
それを聞いた学者の一部は『300年以上経過している割に技術は進歩していないような気がする』ととんでもないことを口にして政府関係者の目が飛び出さんばかりに驚かせたのは別の話。
要するに、『200年くらいあればできるんじゃ?』というのが科学者たちの推測だったのだ。
宇宙戦艦『やまと』の世界でもそれくらいできそうな文明があったことが原因だろう。アニメを基準としている時点でいかがなものかと思うが。
「では、日本国は今後どうされるおつもりなのですか?」
「我が国としましては、非人道的な考え方かつ人種差別を大っぴらに公言しているような存在を許容するつもりはありません」
ヘンブは、『創造主たちは体に変調をきたし、現在の星の環境に適応できなくなっているが、いずれ戻ってくると言っていた。まさか何百年も戻ってこないとは思わなかったが』と述べている。
政府及び研究者は『亜人類を創造した我々に近いであろう〈人類〉は、免疫系統の弱体化か肉体そのものの変質によって現在の地球環境に適応できなくなった。そのために、環境が完全に管理されている宇宙船・あるいは移動式のスペースコロニーのようなものを建造して宇宙へ出たのだろう』と推測している。
ついでに言うと、宇宙空間では一定の速度を超えると時間の流れ方が全く異なるという現象が起きる。
怪獣王のアニメ映画でも、主人公たちの乗っていた超巨大宇宙船は地球を捨てて逃れてから20年しか経過していないにもかかわらず、ワープを用いて戻った結果、2万年もの時間が経過するという現象が発生している。
可能性の話だが、先史人類もまだ数十年から数百年の間は戻ってこないのかもしれない。
あるいは、明日にでも戻ってくるかもしれない。
だから、日本がそれまでに技術を高めて先史人類と対等か、それ以上にならなければならない。
「故に、我々は備えなければなりません。暴虐なる創造主が戻ってきた時、再び奴隷のような立場に甘んじるのか。それとも、人として自由に生きるという当たり前の理想を実現させるべく動くのか。それを考えなければなりません」
当然周囲はざわついたままである。だがそれは無理もないだろう。
「我が国は宣言します。自分たち以外を見下すような人種を許容することはできません。そのため、もし先史人類が戻ってきた場合、毅然とした態度で自分たちの要求を伝えようと思います。そのために、我々はもっと強くならなければなりません」
そこで火野は『しかし』と区切る。
「だからと言って、過激な思想に染まるのも良くないです。私たちはあくまで、平和的に過ごすことを望むことをハッキリと伝えなければなりません。皆さんの強い意志が、いずれは未来を変えると信じたいです」
火野の締めくくるような一言に、会場は静まり返り、この時は終始ざわつくのみで会議自体は終了した。
だが後日、各国はそれぞれの声明を自国民に対して発表した。
『我々は誇り高い竜人族と、職人の一族であるドワーフである。誰かと友になることはあっても、膝を折ることはあってはならない。日本の言葉通り、日本と共に強くなり、いずれ戻ってくるであろう創造主たちに備えるべきである』
とは、グランドラゴ王国の言。
『我々はあくまで平和を追い求めるエルフと狼人族……根本的に争いは好みません。ですが、自分たちに振り掛かる火の粉は払いのけなければいけません。横暴なる創造主に、屈することだけはあってはなりません』
これはフランシェスカ共和国のコメント。
『蜥蜴人と有翼人は200年に亘り助け合って生きてきた。今は敗戦を経験し、そこに日本国と諸国が加わっている。我ら両国はこの縁を大事にし、これからも恒久的な平和を追い求めなければいけない』
これはスペルニーノ・イタリシア連合王国を代表してスペルニーノ6世。
『日本と出会ったことで我が国は大きく変化しようとしています。もしそれが無ければ、創造主が戻ってきた時に再び隷属する他なかった。しかし、そのようなことを認めるわけにはいきません』
これはアヌビシャス神王国の言。
『我らシンドヴァン共同体は自由と商売を愛する者の集まりである。それが一方的に破られるようであれば、許容するわけにはいきません』
これはシンドヴァン共同体の代表でラケルタのコメントであった。
『皇国は元々帝国より重大な圧政を受けていたが、それより以前に先史人類に屈していたことも分かった。我らも遅れてはならない。協同しつつ競争し、いずれは日本に次ぐ能力から、超えるほどの能力を持たなければならない』
これはニュートリーヌ皇国のレーヴェの言。
少なくとも、日本と友好関係にある国はその全てが先史人類に抵抗することを決定したようだ。
つまり、日本はこれから諸国のアップデートのためにまた馬車馬の如く働かなければならないということである。
だが、政府は同時にホッとしていた。
彼らが少しでも創造主におもねるような発言をするようならば、国際関係を考え直さなければならなかったからである。
そういう意味では、概ね日本の理想通りの論調となったのである。
――西暦2028年 6月4日 長崎県 佐世保市
ここは、日本有数の軍港都市の1つである長崎県の佐世保市。
横須賀に並んで強襲揚陸艦を中心としたアメリカの艦隊が停泊していることでも有名で、『佐世保バーガー』と言えば名物の1つである。
転移が起きていなかったら、『F―35B』と、それを運用する新型強襲揚陸艦(いわゆる『アメリカ』級)が配備されていただろうと言われている地域でもある。
もっとも、ミリタリーマニア以外にはさほど知られていないのもあって普段はそれほど騒がしくない町であった。
だが、この日は違う。
この日は日本中から様々なミリタリーマニアや自衛隊オタク、さらに軍民問わぬ艦船オタクや提督業に勤しむ者たちが大挙して押し寄せるという、お祭り状態になっていたのだ。
平素から町に住む人々は目を丸くするほかない。
普段は割と静かで、少し前まではアメリカ人の姿もちらほら見ていた(以前も述べたように、米軍人とその関係者の多くはアメリカ大陸へ移り、『新・アメリカ合衆国』を新たに建国しているのだが)自分たちの町に、町の人口より多いのではないかというくらいの人々が大挙して押し寄せるという現象が発生しているのだから、無理もない。
一部の何も知らない一般人が、宇宙戦艦アニメのコスプレらしい格好をした男女のカップルに質問してみる。
「あ、あのぉ……今日って何があるんですか?」
「え、地元の方なのに知らないんですか!? 今日は、『日本で2隻目の戦艦』の進水式なんですよ‼」
そう、この日は現代日本に2隻目となる『戦艦』の進水式であった。つまり、ガネーシェード神国に恐怖を味わわせたあの『やまと』の妹に名前が付けられるのである。
人々は予想、夢想する。
果たして、どんな名前になるのかと。
1番艦が『やまと』なのだから、2番艦はやはり『あれ』なのではないかという者もいる。
いやいや、戦艦として名を馳せた者同士ということと韻を踏んでいるという意味で『ビッグセブンの姉』なのではないかという者もいる。これは現代日本ならそれなりに通じそうな法則である(韻を踏むということと旧国名という意味ではむしろピッタリくるとさえ言えるだろう)。
存外、今までつけられたこともない国の名前(例・駿河・美濃・安芸・蝦夷その他諸々など)を付けられるのではないかと予想する者など、人々は熱気に酔っている。
間もなく、進水式の時間である。
この進水式には日本人のみならず日本に観光に来ている各国の旅行客、さらに招待している各国の要人たちも貴賓席で待ち侘びている。
多くの招待客が日本の旧海軍の軍艦とその命名法則について勉強しているため、彼らも話していることと言えば『今回の船がどのような名前になるのだろうか』の一言に尽きる。
「案外、アニメに倣って『ぎんが』では?」
「国の名前という法則を考えると、順番を飛ばして『しなの』でもいいかもしれませんな」
「私としては『超大和型戦艦』構想とアニメから『きい』や『おわり』、『みと』というのもアリではないかと……」
言ってはなんだが、本当に好き放題に話している。それだけ日本が心安らぐ環境だということなのだろうが。
そして、開始時刻となったために式典が始まった。
人々が静まり返り固唾を飲む中、250mを超える巨大な船体が海へと大きな波飛沫を上げながらダイブする。
そして、遂にくす玉が割られた。
そこにあった名前は……
『むさし』
決まった。この船の名前は『やまと』型砲撃護衛艦2番艦『むさし』。
当然、鍵のような構造物を渡すというお約束は忘れない。
『やまと』の時とは異なり流れたのは『軍艦マーチ』であったが、その後には『宇宙戦艦』のテーマが流れたのである。
ちなみに余談だが、護衛艦『かが』が空母としての改装を終えた時には提督業の皆様にはお馴染みの『かが』の『岬』の曲が流れ、声帯の妖精さんがわざわざ生歌を披露してくれるというお祝いイベントまであった。
今回の『むさし』の進水式には、こちらも提督業における声帯の妖精さんが来てお祝いの言葉を述べてくれたという。
そんな『むさし』に対して、多くの人々が『お帰り‼』や『また日本を守ってくれ‼』というような割れんばかりの歓声を上げるのだった。
何? 命名法則があまりにも『セオリー通り』だって? いいじゃないか。伝統は大事だ。
『唯我独尊・伝統墨守』
これこそが、海上自衛隊が旧海軍から海軍カレーやその英国紳士ぶりと共に受け継いできた由緒あるモノなのである。
……受け継いではマズいモノも多数あることは分かっている。でも、それが日本面(日本版英国面)だ。
次回は24日か25日のどちらかに投稿しようと思います。