一難去ってまた一難
今月1話目となります。
今回は真実を知った政治家サイドの話です。
日本の閣僚がこんなに有能かどうかはさておき、フィクションということで一つお願いします。
また、今回新兵器も登場します。
――2028年 10月23日 日本国 東京都 首相官邸
首相官邸では連日、ヘンブからもたらされた情報に喧々囂々と……なったあとにほぼ沈黙が続いていた。
「……で、どう思う、諸君」
まずは外務大臣が手を挙げる。彼の顔は苦り切った表情からほとんど変わっていない。
「どう思うも何もありませんよ。こんな話を公開しようものならば、各国のみならず、国内からもどんな意見が出るやら……」
外務大臣に追随するように防衛大臣も頷いた。外務大臣と防衛大臣の意見が一致するというのはかなり珍しいことである。
「そうです。場合によっては先史文明人類への反発から各国が一気に右傾化してしまう可能性もあります。そうなると、各国間の緊張も無用に高まることになりますので、これまで必死に築いてきた平和がどうなってしまうか……」
もっとも、防衛省の分析と研究が正しければ、各国がどれほど頑張ったとしてもいきなり日本に追い付く、あるいは追い抜くというのは不可能に近いのだが、ニュートリーヌ皇国のように元は種族全体が迫害されていた歴史を持つ国家もあるため、人々の心情を考えると確かに発表には細心の注意を払わなければならないことは間違いない。
「いずれにせよ、詳細な調査能力を持つ我が国が率先して先史文明に関する調査を行うべきだと思います」
文科大臣の発言に国土交通大臣や環境大臣も頷く。
「先史文明に関する調査か……防衛大臣はどう考える?」
「はい。これは日本転移系小説から得たヒントなのですが……過去に超文明が存在するというパターンの場合、意外な僻地にその者たちの痕跡……遺跡が残っているパターンが多くなっております」
今やベストセラーとなったその小説では、その話は元々書籍化されていなかった。だが、当該小説の大ヒットに伴い、原作者と編集者によって『外伝』という形で1冊の本になるまでの増筆となり、それも当然のように売れていた。
「だとすると、この世界ではどういった場所になるかな?」
すぐに首相補佐官がタブレットを操作して地図を表示する。
「どうでしょうか?」
防衛大臣は表示された地図を見て、『例えば……』と言いながら幾つかを指した。
「私見ですが、この世界でも外界から隔離されているオーストラリアや南極、北極などは正に格好の隠蔽場所でしょう。先史文明の人類は少なくとも現在のわが国よりはるかに発展していたようだというのが科学者の分析ですので、南極や北極に基地を建設して恒久的に居座ることもできるようになっていた可能性も否定できません」
「あるいは、未だに子孫が生きている可能性もある、ということか?」
首相が疑問を呈しながら『他にはどうかね?』と尋ねると、更に操作する。
「僻地という点であれば、グリーンランドなども当てはまるかもしれませんね。あとは……ニュージーランドなどの島嶼部ですかね」
だが、首相も厚労大臣もあまりいい顔をしない。
「あまり細かい所を調査する人員は回せないぞ。ただでさえ人手不足は解消できていないんだ」
「そうですよ。今だって四苦八苦しながらも省庁内の人員をやりくりしているんですし」
既に転移から10年が経過しているが、まだ大陸系日本人や新世代の子供たちは教育途上であり、転移直後に接収した中でも一定の年齢に達していた者などは一部が勉強の上で就職していたが、それでも単純な職業がかなり多い。
しかし、日本の労働環境はここ10年で激変していた。
まず、まだまだ人口が増えるという状況でそれらを支えるための労働人口が不足しているという矛盾の中、労働業界で進められたのは人員の省力化であった。
コンビニエンスストアは労働者不足の中で全体的な店舗数が減少し(大陸に進出したものもなくはないが)、意外にも駅に近い百貨店などが生き残っていた。
産業方面で取り入れられていたロボットやAI関連がコンビニエンスストアなどの販売業にも取り入れられており、無人販売所などはもはや珍しくない。
農業方面でも省力化を取り入れるべく収穫した作物の『大きさ』を機械が判断して自動的に分けることができる機械が開発された。これについては開発当初は少々値段が張ったものの、政府が援助金を出すことで規模の小さな農家でも購入することができるようになった。
あるいは、小さな農家同士が合併することである程度の力を持つ農家へと発展していくなどの生存戦略に迫られた。
農家ごとの独特の栽培方法や味の出し方に関してはそれぞれで共有し、無駄のない範囲で残し、規模拡大を図るにつれて栽培を拡大するという方針にした者もいる。
『機械が対応することで問題が発生しない部分は全て機械に任せる』というコンセプトを推し進めた結果、販売業のみならず役所などにもそういったシステムが取り入れられ始めていた。
例えば、区役所など公共機関における書類の申請や受取であれば、機械に用件と必要事項を入力することで機械から必要書類が出てくるようにしたことで人員を削減し、他の方面へ回すことができるようになっていた。
「まぁ、必要に駆られれば『今ならば』色々と回せますよ」
要するに元々機械自体は存在していたが、それをさらに進化させ、末端に近いところまで配備させたことで省力化を推し進めることができるようになったのだ。
しかし、料理など『人の手が入ることでこそ意味がある』とみなされる仕事などは人々を育成しなければならないので未だに手間がかかる部分が多い。もっとも、それは『必要なこと』と割り切る人のほうが多いのだが。
大陸系日本人でも既に専門学校で調理師の資格を取った者もいれば、フグの調理免許を取るべく猛勉強している者もいる。
その姿勢は近年の日本人若年層とは比較にならないほどに『貪欲』とさえ言えるもので、勉強に熱心になれない本土系日本人(特に一部の富裕層)との間に軋轢を生むこともあった。
『なんでそんなに必死に勉強するのか』、『勉強なんてダルい』という、『教育を受ける権利』がどれほど大事なものであるかという認識を持っていない若者が多かったという事実を突きつけられたことで、政府も乗り出して意識改革をせざるを得なくなった。
それに対して大陸系日本人はそもそも知識というもの自体に『毎日が驚かされる』という刺激たっぷりの日々である。そもそも知識欲に関して本土系日本人と異なり『水を吸う前のスポンジ状態』だった彼らは瞬く間に知識と学問を吸収し、現代の若者よりも優秀な成績を収めるようになっていた。
また、正しい歴史や思想関連もアメリカの影響がなくなったことで教育が進み、第二次世界大戦と太平洋戦争で日本は何故アメリカと戦わなければならなかったのか、そもそも本来あるべき日本人の思想とは、という点についても高校生レベルでかなり深く掘り下げて教育されるようになっていた。
特に、日本人が失いつつあった『武士道』の考え方の再教育によって、『日本人の本来あるべき国民性』を取り戻そうという動きも見られた。
既得権益と繋がりのある政治家の多くは『そんな面倒なモノ』という態度を最初こそ取っていたが、中年層以上の世代から『若者に日本人のあるべき姿を取り戻してほしい』という要望が相次いだこと、大陸系日本人からも『自分の子供を、世の中に出しても恥ずかしくない人間にしてほしい』という声が続出したため、これまた政府が文部科学省に一任して教育改革を断行することになった。
「まぁ、収容される犯罪者も無駄に増えたことで回す労働力は意外に増えたがな」
「あそこまで中露が国民に食い込んでいたのは予想外でしたが。スパイとはまた違った形だったので転移直後に行なったスパイ摘発では漏れていた者も多かったですし」
当然、それに伴って国内に残っていた左派や頭の固い『自称知識人』は『戦中教育・軍国主義の復活だ』と猛反発を見せ、それに連なる一部の『市民団体』がデモを行なったが、政府が警察組織に命じてそれらの背後を調べさせた。
その結果、その存在の多くが残存中国人やロシア人、韓国人や朝鮮人などと違法な意味で『深い関係』にあることが発覚したため、そんな者たちを次々と逮捕していった。
これに関しても『言論統制だ』だの『特高の復活か』などと騒ぐ『一部の』メディアがいたが、政府が警察に対して『証拠を国民に公開すること』を徹底させたこともあり、国民のほとんどは納得すると同時に、いかに今まで自分たちが海外の横暴に振り回されていたのか、そしてそれを知らなかった自分たちの愚かさと平和ボケぶりを知った。
しかも、反政府系メディアも裏ではそういった団体と繋がりがあったため、後に一部摘発が入ることになる。
これによって逮捕・収容された者は国籍を問わなければ1千人を超え、多くが大陸での開拓のために強制労働させられることになった。
もちろん普通に日本を愛し、日本国内で生活している外国人も多かったため、その人たちに風評被害が及ばないようにするために政府や諸機関が苦労したのは言うまでもない。
メディアでもこういった話題が増えるにつれて、『戦争の真実』や『日本人はどうしてこのような腑抜けた存在に堕ちていたのか』ということを特集するようになった。
「とはいえ、ちょっと世論が極端に傾き過ぎじゃないかな?」
「あまり今の状態に盲目的になられても困りますけどね……特に、アニメオタクなどが」
そう、極めつけはアニメであった。
政府が大陸系日本人にも分かりやすく教育するべく裏からこっそり手を回して第二次世界大戦及び大東亜・太平洋戦争を有力なアニメ会社にアニメ化させていたのだ。
日本が何をしたのか、日本の目的はなんだったのかを『良いことも悪いことも』含めて明らかになっている限りをかなりの長期間をかけて放送させた結果(具体的には1年以上)、ただのニュースや報道だけでは広まりにくい一面もあった『大日本帝国』の資料などに記されていた本当の姿を浮かび上がらせたのだった。
ゆとり世代やその少し前の世代など、『戦争そのものが悪である』に近いレベルで教育を受けた者も、大陸系日本人もその内容に驚愕する。
満州事変や張作霖爆殺事件、さらに現代にも続いていた慰安婦問題など、一部の人間が過剰に反応するような話も放送し、『不都合なものを隠蔽していない』ことをより強調するようになった。
アニメが大好きな若者への影響は絶大で、自衛隊への入隊希望者はもちろんのこと、大陸開発により精力的になったという一例も見られるなど、日本人は大きくその考え方を変えつつあった。
そんな時に持ち上がったのが、今回の『先史文明人類による亜人類たちへの非人道的な扱い』であった。
これをもし今発表しようものならば、人権団体は騒ぎ立てるであろうし、戦争と支配がもたらした行いを学んだ日本国民も不快な思いをするに違いない。
いや、それだけにとどまらず彼らに寄り添う姿勢が強くなることで国内の団結力は高まるが、さらに国内世論が右傾化していく可能性が高いのだ。
「これ以上右傾化すると、逆に民意による軍国主義国家になりかねない。そんな事態だけは避けなければ」
「既に公安などが過激思想を煽っている組織の摘発に動き出しています。それと……宗教団体もです」
宗教団体の処遇は現政権にとっては最も頭の痛い話であった。
以前も説明したように、日本では信教の自由が保障されているため、どのような宗教を信じていても罰せられることはない。
しかし、中にはそれをいいことに政権に参加しようとしている政党を立ち上げた団体もいれば、オウム真理教のように事件を起こしかねない者たちもいる。
政府としては『人々の安寧を損なう可能性のある、或いは行動に出ている』宗教団体は既に公安を通じて調査をさせていたのだ。
その結果、一部の団体は薬物などの違法手段で人を集め、洗脳に近い状態に持ち込んでいることが明らかになっていた……もっとも、その情報を掴んだ公安の捜査も合法と言えるかどうかはかなり微妙だったが。
だが、それによりいくつかの宗教団体は解散に追い込まれ、多くの信者たちが行き場をなくしている。
政府はそういった者たちを密かに集め、宗教の本来の意味と意義を教育させていた。
彼らは後に既存宗教内部に入り込んで、宗教団体が過激な方向へ進まないようにかじ取りをする力となってもらう予定だ。
「だが、それだけでは済まない。人々に『客観的にかつ冷静に』物事を見極めてもらう必要があるな。報道機関はどうなっている?」
「最近ではガネーシェード神国の話題も徐々に下火になりつつあるようで、今はもっぱら最新兵器についての考察や、今後日本がどのような方向に向かっていくかということに関する政府の動きに関心があるようです。それでも、この話を発表したら国内はパニックになりますよ」
その発言にはその場にいた全員が再び黙り込んでしまった。
「なんとか他に発表できることはないかな? こう、インパクトの強さがあるネタは……」
「なるほど。同時に発表することで一番重要な話に関するインパクトを薄れさせようという話ですか」
「そういうことだ」
首相の発言に文部大臣が考え込むと、『そうだ』と声を上げた。
「首相、『あれ』を発表してはいかがでしょうか?」
「……『あれ』を? 確かに試験機と新型搭載兵装は完成したが……そんなにインパクトがあるか?」
すると、それまで苦い表情をしていた閣僚たちが今度は苦笑……いや、苦笑いしながらもニヤニヤし始めたのだ。
「そりゃぁ、ねぇ」
「あの『幻影』を超強化したような変態機に仕上がったんですし」
そこには、『F―6』と書かれたレポートが映し出されていた。
「幸い我が国は『既存機を拡大・発展させること』に関しては高い能力を有していますからね。ファントムの後継機としては十分すぎるでしょう」
そう、それは日本が新開発した、『F―4』ファントムの拡大発展版ともいえるマルチロール戦闘機だったのだ。
既に『F―5』戦闘機も完成し、量産に入り始めたものの、『F―3』を含めてステルス機は高い。高すぎるのだ。
そこで、非ステルス機でありながら高い性能を持つ航空機が必要になったために『F―3』及び『F―5』の製造が決定されると同時に量産に必要な予算を考慮した結果、防衛省はさておき、財務省の目玉が飛び出んばかりのべらぼうな値段になってしまった。
具体的には、日本独自のあれこれを盛り込んでしまったために『F―22』並みに値上がりしている、と言えばわかりやすいだろう。
そこで開発が決定したのが、『F―6』であった。
諸性能を大幅に底上げし、さらに戦闘機としては初めて『反重力機関』を用いた機体(『RQ―2』バルチャーはあくまで偵察機、『F―5』は試験機が完成した後に搭載が決定したためちょっと無理やり)であり、これによって多大な兵装を搭載することが可能になっていた。
要するに、『F―3』がステルス戦闘機であり、3タイプを作っても値段が高騰したことを受けて、本土防衛のために製造することが決定したマルチロール戦闘機。いわゆる『F―2』戦闘機の真の意味での後継機である。
形状的モデルは『F―4EJ改』と『ユーロファイター・タイフーン』となっており、ユーロファイター同様に対空・対艦・対地攻撃のすべてをこなせるようにと考えられている。
ステルス性能はハナから度外視して作られている(ただし設計上できるステルス加工などはされている)ため、ボディも頑丈性と長寿命、そして生産コストの安さを意識した素材となっている。
とはいえ、そこは日本らしく複合素材も随所に盛り込むことで本家ユーロファイターと比較すると5%ほどの軽量化に成功している。
なにより注目するべきなのは、日本がスペルニーノ・イタリシア連合から接収した巨鳥及びグランドラゴ王国のワイバーンの体内に存在する『反重力器官』と呼ばれる生体器官に機器を接続・生体と同じ電気信号を流すことによって反重力波を発生させる『反重力装置』の本格搭載である。
これを用いて大量の兵装を搭載することを想定しているため、装備するパイロンはかなり変態的な形状となっている。
レーダーも国産のアクティブ・フェイズド・アレイ・レーダーを搭載することによって、対空目標であれば一度に16の目標へ、対艦目標であれば『ASM―2』の場合一度に8発、『ASM―3』でもパイロンを変更することで4発は同時に運用可能となっている。
対地目標でも地中貫通爆弾『黄泉平坂』を最大4発搭載可能としている。
搭載された反重力装置のお陰で、1つのパイロンに2発の対艦ミサイルや超大型爆弾などを搭載しても離陸できるようになるため、『F―2』とは比較にならない搭載量となる。
これにより、ユーロファイター以上の搭載量ながら航続距離の延伸及び機動力向上、さらに加速能力上昇に成功した。
爆撃能力という点ではJDAMやLJDAMだけではなく、先述の地中貫通爆弾も使用可能となっているため、取れる戦術の幅は大きく向上している。
ちなみにエンジンは双発で最高速度マッハ2.5を叩き出す。
また、航空自衛隊に配備されるため、陸上機オンリーとなり、『F―4EJ改』と『F―15J改』の正式な後継機となる。
非公式のあだ名は『疾風』である。これは、日本が転移してから4種類目の戦闘機開発(FT―4、F―3、F―5に続いて)ということなので、大日本帝国時代の戦闘機・四式戦闘機『疾風』にあやかった物(ただし、『疾風』はマルチロール機ではなく制空戦闘機と言ってよかった)である。
最高速度マッハ2.5
搭載兵装 99式空対空誘導弾(AAM―4)
04式空対空誘導弾(AAM―5)
26式中距離空対空誘導弾(AAM―6)
27式遠距離空対空誘導弾(AAM―7)(日本版ミーティアミサイル)
93式空対艦誘導弾(ASM―2)
ASM―3
JDAM
LJDAM
GPS誘導地中貫通爆弾(黄泉平坂)
クラスター爆弾・『桶狭間』(日本における『雨』で勝利した戦いにゲン担ぎした、鉄の雨を降らせる爆弾)
20mm機関砲(装弾数850発)
と、非常に豪華な性能になっている。
「全く、よくここまでこぎつけた物だ」
「幸い、多くの能力はユーロファイター・タイフーンを模倣することで確保できましたし、反重力器官のお陰で同機とは比較にならないほどの搭載量と機動性能を手に入れられたのは嬉しいですね。しかも、ユーロファイター同様に『素材に頼らないステルス能力の確保』という点からエアインテークの形状の工夫や、新型レーダーの搭載及び赤外線探知機器の開発・搭載にこぎつけたのは大きかったです」
「まぁ、計上された予算を見てこっちも目玉が飛び出そうになったからな。『どうにかしろ』というこちらの要求に装備庁がこのような形で応えてくるとは思わなかった」
「全くです。しかし、お陰でお値段は量産効果で1機105億円まで下げることができました。これは驚異的なことです」
「ある意味、零戦のように色々絞っているからな……」
ちなみにもう1つ、ここに記されている新兵器・地中貫通爆弾『黄泉平坂』はというと、以下の諸元となる。
地中貫通爆弾『黄泉平坂』
旧世界でアメリカが運用していたペイブヴェイの誘導システムを研究して『F―6』に搭載することが決定した地中貫通爆弾。
この地中貫通爆弾は、弾体に旧世界でアメリカが203mm砲の砲身を流用して製造したことを受けて、日本が国産155mm砲の砲身を流用して製造した物。
中には250kgのトリトナールを詰めている。
オリジナルである『GBU―28/B』に比べると弾体が小さいので威力は少々低いが、その代わり胴体下にしか装備できなかったGBU―28/Bと異なり、翼下パイロンにも装備可能となっている。
しかも、日本が実験的に反重力器官を研究して応用、『加重力機』を作ったことにより、落下速度の上昇による貫通能力が2m増大する。
普通の地面でも30m以上潜り込み、コンクリートであれば厚さ5mから7mを貫通できる。
潜り込むための時間を確保するため、遅延信管を使用しているが、信管はGBU―28/Bを参考に尾部に搭載している。
名前の由来は『黄泉の国に通じる道をこじ開ける』ほどの威力という想いを込めてのもので、最初は日本の冥府の神『スサノオ』と名付けようかとも考えていたが、それより早く防衛装備庁が『スサノオシステム搭載型護衛艦』を開発してしまったため、ならばとこの名前になった。
「今のところ飛行中の事故などは発生していないようだが、パーツの軽量化で耐久性能が落ちている、なんてことになったらシャレにならないぞ」
それについては自信があるらしく、防衛大臣が『大丈夫です。私は、装備庁と技術者たちを信じています』と普段ではなかなか見られないほどの自信ありげな様子を見せたことで、首相は『そうか』と苦笑で返したのだった。
「当初は『F―15J』などのようにチタン合金に回帰するべきか、なんて意見もありましたが、軽量化可能な複合素材と反重力器官は凄いですね」
「今後はこれらを民生品に応用できないかどうか、検討させる必要があるな。特に反重力器官は、旅客機などに応用すれば巡航速度の上昇や燃費の向上など、利益は大きいだろう」
「はい。ただ……」
言い淀んだ文部大臣を首相が見ると、悔しそうな顔をしていた。
「まだあの物体は『一定の電気信号を流すと反重力波、及び加重力波が発生する』ことしかわかっていません。どのような原理でそれらの重力波が発生するかを解明すれば、宇宙進出にも繋がります」
アニメなどで語られる宇宙開発は、日本にとっても悲願の1つである。もし世界が平和になったならば、宇宙開発を進めて人類が宇宙に進出できるようになったらいいなと首相以下閣僚も夢見ていた。
だが、それには地球を平和にし、さらに戻ってくるであろう宇宙へ逃げた人類を制しないことには始まらない。
「いずれにせよ、悩ましい話だな……」
「はい。ですが、『そのまま』というわけにもいきますまい」
日本はあれこれと悩みつつも、発表に向けて準備を進めていく。
それと同時に、僻地と言ってよいオーストラリアや北極、南極方面の調査も行えるようにこちらも準備していくのであった。
以上、今月1話目でした。
個人的にマルチロール機の中でもユーロファイターは好きでして……それとファントムのいいとこどりをしたらこういう風にできないかと考えたのが『F-6』でした。
それはそうと、艦これアーケードに妙高と羽黒の改二がアップデートされ、さらに期間限定だった明石と速吸もドロップするようになりましたね。
どんなふうに役に立つのかはさておき……
次回は20日か21日に投稿する予定です。