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狂ってる降下

今月2話目となります。

緊急事態宣言となって、もう2週間以上が経過しました。

今なお日々1千人以上の感染者が出続けています。

どうか皆さんもご注意を。

――西暦1744年 11月15日 ガネーシェード神国 自衛隊カルカタック駐屯基地

 まだ空が白んでいない未明の時間。

陸上自衛隊が誇る第1空挺団は今回限りの特殊装備に身を包み、出発するのを今か今かと待っていた。

 時計を見た団長の土師が、通信を確認する。

「訓示!諸君も聞いての通りだが、第1空挺団に対して、市ヶ谷及び官邸から空挺作戦の発動が下令された‼ シンドヴァン共同体において理不尽に命を奪われた速水外務副大臣とその秘書の命のみならず、諸国の外交代表たちの仇を討ち、さらに新たな平和へ活路を見出さんとする日本国の未来は、ひとえにこの作戦に掛かっていると思え‼」

 土師の訓示を聞いた隊員たちは顔を引き締める。

「自衛隊でも最精鋭と自他ともに認める空挺隊員たる諸君と共に作戦に臨むにあたり、不安など微塵もない‼ 大胆に、しかし繊細に、そして最速で最短で真っ直ぐに一直線に! 胸のウィングに恥じぬ働きを期待して、訓示とする‼」

「はっ‼」

 訓示を終えた『C―2』輸送機はターボファンエンジンの轟音を鳴らしながら間もなく夜が明けるであろう空へ飛び去っていった。

 基地の自衛官たちも、そしてフランシェスカ共和国の樹海騎士団員もそれぞれの敬礼を以て見送るのだった。



――西暦1744年 11月15日 ガネーシェード神国 神都カンジャイ 南東150km

 神都カンジャイの上空では先行して航空自衛隊偵察隊に所属する『RQ―2』バルチャーが飛行し、上空を偵察していた。

 間もなく帰還限界時間に達するので、交代の偵察機と入れ替わりで帰らなければならない。

『味方機影確認。バルチャー2号機です』

 レーダーに映った機影を解析し、後部座席に搭載されたAIがその判断を下す。このAIは対地撮影のみならず、敵味方識別・本部への通信などもやってくれる、日本国の最新鋭装備である。

「やっと帰れるな……了解。基地に報告してくれ」

『了解しました。基地に報告します』

 ちなみに、その形状はなぜか宇宙で戦争する映画に登場する、青と白を基調としたサポートロボットのようなものになっている。

 なぜそうなったか? 1つは上部搭載のドームが回転することで全包囲を見渡せるため合理的だから。もう1つは……防衛装備庁の遊び心(暴走)である。

 これが日本面と言われる所以であろう……。

 それはさておき。

 飛んできた2号機から通信が入る。

『こちらアルゴ2。これより交代する』

「こちらアルゴ1、了解した」

 もっとも、バルチャーのモデルとなった『RF―4E』の航続距離は戦闘機(しかも元は艦載機)を改造したものであるため左程長くはない。しかし、『反重力装置』と燃費向上に成功した新型エンジンのお陰で、同じ空域に1時間以上留まることができるようになっている。

 ガネーシェード神国に航空戦力が存在しないことは判明しているが、なんらかのアクションがあった場合、超音速で逃げられるこの機体のほうが便利だ、という点もあった。

 そしてとどめに言うならば、『無人機が妨害を受けて万が一墜とされたらもったいない』からである。

 なにか方向性が違うとか言わないでほしい。

 そうこうしているうちにバルチャーの1号機は南のほうへ飛び去っていった。

「……さて、と。空挺団が到着するまであと……」

『レーダーに新たな反応。識別確認。〈C―2〉輸送機です』

「お、おいでなすったか」

 わずか30分後、戦闘機と比較すると巨大な機影が姿を見せる。

 機内では、土師の号令がかかっていた。

「一番機ぃ! 行くぞぉっ‼」

『おぅ‼』

「行くぞ‼」

『おぅ‼』

「行くぞ‼」

『おぅ‼』

「降下よーい! 立てぇ‼」

 その言葉と同時に、降下扉が開けられる。鍛え上げられた空挺隊員たちが素早く立ち上がり、持ち場に移動する。

「環かけ!」

 降下長の号令で、機内天井の物干しロープのような繋止索に、各々のパラシュートから伸びる索環をかけて握る。この紐によってパラシュートがリュックの中から引き出されるのだ。

「装具点検!」

 ヘルメットの顎紐や各所の装具に触れての最終点検で、振り返って同僚の装備を点検する。問題なければ尻を叩いて知らせ、最前部まで伝われば降下長への報告である。

「位置に着け‼」

 ここで最後の通過地点を過ぎたため、先頭降下者は猛烈な風を浴びるがままである。

『カレー01コース良し、コース良し。用意用意用意‼』

 そして、ランプの色が赤から青に変わると、轟音の機内でも聞こえるほどにけたたましくベルが鳴り響く。

『降下っ‼ 降下っ‼ 降下っ‼』

日頃の訓練通り、もはや条件反射という形で空挺隊員たちは真っ青な大空へ飛び出していく。

「初降下~二降下~三降下~四降下~」

 そして、最後の1人となる。

「反対扉機内良し! お世話になりましたぁッ‼」

 最後の1人が飛び降りたことで、『C―2』輸送機はその役目を終えて反対方向へ飛び去っていく。

 帰りは途中に待機している『CH―47』チヌークの仕事だ。

 ここからは、積んできた訓練通りに敵本拠地へ突っ込み、敵首長を確保、撤退するだけだ。



 一方、空から兵士を降らせるなどという作戦はこの世界にはイエティスク帝国を除いて存在しない。

 故に、そのような概念は基本的にない。そんな未知の存在が、数多く空から降り注いでくるとなれば、どうなるか?

 今回に関しての答えは『なにもできない』であった。

 街の門の前に立っていた見張りは直前に潜り込んでいたレンジャー徽章持ちの隊員が奇襲で倒していた。しかも、東西南全ての門の見張りが、である。

 ちなみに、北部には神殿があるために門が存在しない。

 門の見張りを倒した彼らは、この後隠してある車両で素早く撤退する。

 そして時刻は明け方。ほとんどの者がまだ夢の世界ではしゃぎまわっているか、男から絞り尽くすのに夢中で気付いていないかのどちらかであった。

 そして空挺団は降下を終えた者から順に隊列を組み、前進していく。見れば、カンジャイ南側の門が既に開け放たれていた。

 見張りを倒した隊員が既に開けておいたらしい。

「神殿は、街の北部最奥!」

「誘導、感謝する‼」

 隊員たちが奥へ進むと、全裸に近い格好のアラクネたちが飛び出してきた。恐らく、男と体を交えていた者たちが異変に気付いて取るものも取りあえずという感じで飛び出してきたのだろう。

 手には竹槍(と言ってもこちらは竹を切って削っただけの簡素な物)や石斧などを持っている。

「効力射、ってぇ!」

 空挺団員が手に持っていた小型のコンパウンドボウから、次々と竹の矢が発射される。

 このコンパウンドボウは、飛び降りる際にはリュックに備え付けてあった。89式自動小銃より大きい物をどうやってと?

 第1空挺団ですから。

「くっ……」

 アラクネたちが力を込めたように見えた。恐らく、磁力を使っているのだろう。だが、こちらは金属ではない竹の矢である。

 磁力を発動しても全く効果はない。

「がっ!」

 アラクネたちは苦悶の声を上げながら次々と斃れていく。隊員の中には敢えて接近し、竹槍とナイフで接近戦を挑む者もいる。

 磁力の影響を受けないプラスチックや竹の武器で素早く頸動脈を掻き切り、素早く戦闘力を奪う。

 こんなこともあろうかと、これまでも訓練中に大型生物を参考にとどめの刺し方を十分に実地で学んでいたことが幸いして、瞬く間に仕留めていく。

 10人ほどいたアラクネはたちまち沈黙した。

 その強さ、制圧の速さは尋常ではない。これこそが、『第1狂ってる団』の強さである。

「急ぐぞ‼」

「はいっ‼」

 戦闘を繰り広げたにもかかわらず、素早く走り出す空挺団。その速度は激しい戦いの後であるとは思えないほどである。

 走り続けて20分後、大きな建造物が見えてきた。

「あれが、敵首長の本拠地だ!」

「はいっ‼」

 見ると、20人以上のアラクネが既に待ち構えていた。

「まぁ、当然だろうな。突破するぞ‼」

「了解‼」

 隊員たちは素早く矢を連射する。アラクネたちは跳ね返せると思っているのか、再び力を込める。だが、残念なことにやはり竹の矢には通じない。

 ドスドスという音と共にアラクネたちの大半が崩れ落ちる。

 隊員が素早く竹槍とナイフを煌かせ、残りの数人に襲い掛かった。石斧の一撃も、強化プラスチックの柄で上手く受け流す。

「そ、そんなバカなッ‼ 何故神のご加護が通じない!?」

「空挺最強ッ‼」

 直後、アラクネの胸部を竹槍が貫通していた。さらに追撃と言わんばかりにナイフで首を鋭く切り裂いた。

 神殿入り口に立っていた最後のアラクネも崩れ落ちた。

「クリア、これより奥へ突入する!」

 ちなみにだが、本来空挺降下という作戦は他の味方部隊の支援もなければ難しいのだ。

 とある自衛隊×異世界ライトノベルの帝都襲撃然り、召喚小説の亜人排斥国家の王都襲撃然りである。

 今回この無謀ともいえる襲撃を行なった理由は以下の2点が主となる。



○アラクネの装備は貧相で、攻撃力はさておき、通された場合の防御力が低い。そのため、起き抜けであれば装備がさらに整わずに仕留めやすくなる。

○明け方という人が最も深い眠りについている時間帯を狙うことで襲撃されるリスクを少しでも減らせる。

 


 これに伴い第1空挺団は、ボディーアーマーはもちろんのこと、強化プラスチックのアーマーも装着しているため、アラクネたちと比較すると防御力はかなり高い。

 ちなみに、今回使用されている服やパラシュートなどの可動部のパーツも金属から強化プラスチックやセラミックを含めた非磁性パーツに取り換えるという念の入れようである。

 そんな解説をしている間にも、空挺団は奥へ進む。

 なぜ彼らが間取りを理解しているのかといえば、以前外務省の一条と小田切の2名がこの神殿を訪れた際に、『話し合いにすらならないかもしれない』と考えていた外務相の判断で付けていた隠しカメラの映像を基にしているのだ。

 何度も見て、それに合わせた動きを練習してきた彼らにとっては、目をつぶっても、とは言えないかもしれないが、それに近いレベルで動くことができる。

 


 その頃、神官長のヘンブは奥で眠りこけていた。

 アラクネたちは今まで攻めてきた連中を追い返せばよかったので、軍事的な常識などは一切といっていいほどにない。

 神官長であるヘンブが前へ出ることなど、民衆に対する祭事の時くらいで、それ以外は神殿にこもってガネーシェード神への感謝を奉げることが仕事である。

 それ以外は食う、寝る、子作りが基本で、日本や旧世界の宗教首長からすると『あんたホントに仕事してんのか?』というくらいの、ぶっちゃけるならば『ヒマ』である。

 このところは男日照りであったために欲求不満こそたまってはいるが、それでも『我慢できない程ではない』ため、ぐっすりと眠っていた。

 日本の第1空挺団は、そんなところに飛び込んだのだ。

「目標かく……にん?」

 まさか相手が眠りこけているとは露ほども思っていなかった空挺団は、逆にポカンとしてしまった。

「むぅ……うるさいのぉ……」

 必死の抵抗を想定していたので、これはあまりにも想定外だったのだ。

「……これ、危機感なさすぎじゃないか?」

「隊長、ぼやく暇があったら拘束しましょうよ」

 土師と副隊長が素早く縄を打ち、ヘンブを拘束する。ちなみに、足もまるでカニのように縛り上げるのだった。

「よし、引き上げるぞ‼」

 土師が体重で言えば100kgは超えるであろうアラクネを1人でヒョイと抱え上げると、そのままスタコラサッサと走り出してしまった。周囲を数人の隊員が固めているが、誰も呆れた顔は見せない。

 ヘンブはようやく気付いたようで今になってじたばたともがいているようだが、がっちりとがんじがらめにされているため、全くと言っていいほど動けない。

「ムグ、ムググゥ!?」

「おいおい姐さん、暴れてもらっちゃ困るぜ」

 『困るぜ』などといってはいるが、土師の体はほとんどぶれていない。屈強な隊員たちを率いる団長というだけのことはあり、肉体の強度も随一ということらしい。

 もっとも、隊員たちはやはり慣れたものでまるで動じる様子がないが。

 夢の世界から起き出したアラクネたちが異変に気付いたのかわらわらと押し寄せてくる。だが、こちらが矢を放つだけで防御態勢を取って足を止めるので、非常に狙いやすい。

――ヒュンヒュンヒュンッ‼ドドドドッ‼

「ぐわっ!」

「がっ!?」

 自分たちに施されている筈の神の加護が力を発揮しないことに気付き、仲間に刺さっている矢を確認する。

「た、竹の矢だと! 蟻皇国と天照神国でしか自生していない植物が、なぜ!?」

――ドスドスッ!

 確認していた女も矢を受け、その場に倒れ伏す。

「よし、慌てず急いで正確に、撤退だっ‼」

 隊員たちも速いが、とにかく土師の速さが尋常ではない。脱兎のごとくとはよく言ったものだが、100kgは超える(以下略)。

 アラクネたちも追いかけようとするが、町の門の外へ出た所で、隊員が対人地雷に点火、大爆発を起こした。



――ボガァンッ‼



 彼女たちの能力である『磁場発生』には難点があり、動くならば歩いている程度の速度まで落とさなければならないのだ。後に日本が聴取した時曰く、『走っていると集中できない』らしい。

 なので、彼女たちは基本的に『追撃』という動作を取らない。グランドラゴ・アヌビシャス連合軍が攻めてきた時でさえ、ほとんど走っていないのだ。

 そして、彼女たちは『なにかを追いかける』ことに当然ながら慣れていない。そんな状態で能力を維持し続けることなどできる訳もなく、地雷の子弾によって追いかけていた15人程が吹き飛ばされてしまったのだった。

「な、何が起こった!?」

「地面がいきなり爆発したぞ‼」

 当然地雷などという概念も存在しないため、恐怖に駆られて追撃もできない。

 その光景を見ていた門の脇にいた隊員は『よし』と言いながらコソコソと撤退していく。

 アラクネたちは何が起きたのか理解ができていないようで、そのまま逃げる第1空挺団を見逃すしかなかった。

 空挺団はさらに走り続け、ようやく息が切れそうという所まで来た時、荒れ道の傍らから隊員がライトで合図する。

「よし、こっちだ‼」

 かねてから決めていた合図を受け、土師たちは道を外れる。

 さらに5分ほど走り続けると、森の中にぽっかりと開けた場所へ出る。

 その中心に、岩に偽装した布がかけられていた。

「よし、布を外せっ‼」

 布をバッと外すと、プロペラを折り畳んだ2機のチヌークが駐機していた。

「準備急げっ‼」

 隊員たちが素早くプロペラを広げ、エンジンの最終点検に入る。

「エンジン異常なし。ローター異常なし。電子機器異常なし!」

「全最終点検、終了しました!」

「よし、空挺団及び敵首長の収容を終えたらすぐに離陸できるように準備せよ‼」

「了解!」

 しかし、離陸という言葉を聞いたヘンブは概念がないとはいえ知っていたのか、磁場を発動させて機器をいかれさせる。

「機長、機器がやられました! このままでは飛べません‼」

「狼狽えるな!こいつを空挺団員に渡せ‼」

 空挺団の面々はヘリコプターの隊員から『ある物』を渡された。

「こんなので本当に干渉できるのか?」

「さぁ、上の言うことですからね」

 それは、日本の技術者たちが寝る間を惜しんで開発した磁場発生装置なのだが、大きな特徴として発生させるのは『北半球の磁場』ではなく、『南半球の磁場』を発生させるものである。

 つまり、彼女たちアラクネの放つ『北半球の磁場』を中和することができるのである。

 日本はアラクネの遺体から回収した磁場発生器官を解析し、放つ磁場に反作用を発することができる機器を既に作っていた。

 機器そのものは完成していたが、放つ磁場を中和するためにアラクネの磁場発生器官を回収する必要があった。

 『やまと』の砲撃の後で回収された遺体は難しかったが、『その場では』生存していて、日本に移送された人物の中には衝撃波によるショックが尾を引き、結局そのまま衰弱死してしまった者もいたため、そのアラクネの体内を司法解剖した結果発見されていた。

 その電磁波の波長さえ分かってしまえば、それを打ち消す波長を出せばいいだけなので、答えから方程式を導き出すようなものである。

 中に入った空挺隊員が装置を起動すると、ヘンブが乗り込んでから異常を示していた機器類が瞬く間に正常値に戻ったのだ。

「おぉ……」

「ちゃんと効いたぞ」

「よし、引きあげるぞ‼」

 日本の研究者たちはわずかな間にアラクネたちは互いに能力を使って何故反発しないのかと調査した。その結果判明したのは、『放つ磁場』ではなく、『放つ電力』を共鳴させることで磁場の波長を増幅させている、というものであった。

 技術者の想定によれば、1人ならば拳銃程度まで、10人ほどいれば重機関銃まで、30人程いれば30mmから40mmの機関砲を、100人いれば日本が採用している艦載砲を、500人いれば155mmの榴弾砲を防ぐこともできる。

 榴弾砲の場合は時限信管を調整して彼らの磁場の及ばない範囲で爆発させればそれなりのダメージを与えられると考えられているが、決定打と呼べる威力を出すには更に口径の大きな砲を使う必要があった。

 その点では、『やまと』の砲撃は正に彼らにとっては鬼門と言ってもよい存在だったであろう。

 しかし、艦砲射撃だけでは沿岸部は打ち崩せても内陸部はそうもいかない。旧時代の艦砲射撃は4個師団のそれに匹敵すると言われていたが、残念なことに市街地へ砲撃を行なった場合、相手を全滅させることはほぼ不可能である。

 『やまと』の砲撃の際には信管調整をして爆炎と衝撃波だけで貧弱な建物ごと吹き飛ばせるようにしたためか、村落は完全に壊滅していた。

 もっとも、以前も書いたように子供や赤ん坊は事前に救助したのでいわゆる非戦闘員の死者はゼロであったが。

 それでも、相手が艦砲射撃だけで滅ぼせないのであれば、こちらは内陸部へ侵攻して相手の首長を確保し、こちらの要求を通さなければならない。

 日本は今後の神国運営に際して、相手首長の発言力を借りる必要がある。

そのためにはガネーシェード神国首長を確保し、様々な手段を用いて日本に敵わないことを分からせ、これまでのことを謝罪させると同時に、自分たちの都合のいい駒になってもらう必要があった。

 そのための空挺降下であった。

 特殊作戦群を除けば日本でも最強と言われる第1空挺団の力こそが必要であった。

 特殊作戦群を用いれば秘密裏に首長を誘拐することも難しくはなかった。しかし、策を用いたとは言え真正面から敵を打ち破ったという『事実』も必要だったのだ。

 首都カンジャイの人々に、『日本には敵わない』ということも突き付けておかなければ政治的パフォーマンスとしては意味がない。

 日本はこれで、戦争を完全に終わらせるための布石を手に入れた、ということになる。

 ヘリコプターはこのまま中継地点へ向かい、車に乗せ換えて基地まで移送、更に本国へ連れていく手筈である。

 その後どうするのか……それは、日本の外務省のみが知る。

……あっさりした描写になってしまったような気もしますが、どうも私、近接戦闘と言いますか白兵戦に関する描写があまりうまくないようで……。

それでもできる限り迫力ある光景を想像していただけたら、と思います。

次回は2月6日か7日のどちらかに投稿しようと思います。

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