前へ次へ
57/134

首都包囲・悪ノリする自衛隊

今月1話目となります。

相も変わらず手厳しいご意見もあるようですが、拙作はひとまずこのまま突き進む方向です。

今回は首都包囲戦となります。

どう思っていただけるかはさておき……悪ノリが過分に含まれていますので、そこを不快に思われる方は読まない方がいいかもしれません。

ただ、自衛隊のこれまでのあれこれを見ると、『意外とやりそう……』と思ってしまったもので……

西暦1742年 5月20日 ニュートリーヌ皇国 首都ルマエスト 元老院

 この日、元老院は荒れに荒れていた。シンドヴァン共同体にいるはずのレーヴェがカメリアら共々消息不明になったかと思えば、一方的にフランシェスカ共和国侵攻派遣部隊が殲滅され、更に前線基地までも滅ぼされたというのだ。

 しかも、相手はイエティスク帝国の属国(だと思っている)、日本国らしい。

 戦場での生き残りからは日本国の旗である白地に赤い丸を書いた国旗の紋章が確認されているのだ。

 議長のオケイオンは焦りを隠せない表情である。

 他の議員たちは、とにかく何か叫んでいないと精神的な安定すら保てないほどの様子であった。

「一体全体どうなっている! 何故イエティスク帝国の属国如きに何度も何度も敗北するのだ‼」

「そもそも日本国とはいったいどういう存在なのだ! まるで情報も何もないぞ‼」

「情報部は何をしている! シンドヴァンや他国から何か得られないのか‼」

 すると、議員に詰問されていた情報部の将校が手を挙げた。

「シンドヴァン共同体やアヌビシャス神王国から情報は集めておりますが、何分どれも荒唐無稽なものばかりで……信憑性に欠けるのです」

 実は、情報部も各国に潜入して情報を集めていた。中には、『別冊宝諸島』を手に入れた者もいたのだが、上層部があっさりと『荒唐無稽』と切り捨てたせいもあって、軍部や元老院議員らに全く情報が伝わっていなかった。

「一応、日本国に関する情報を記したと思しき書籍を見つけたのですが……」

一応情報部は、今回の会議に備えてその雑誌を持ってきてはいる。だが、披露したところで信じてもらえるかは全く定かではないという、なんのあてにもされていないものであった。

「なんだと、そんなモノがあるのか!?」

「は、はい。日本が友好国及び民間向けに発行している、兵器比較の本だそうです」

「では精々、挿絵くらいしか載っていないのではないのか?」

 議員たちは日本でいえば明治時代くらいの西洋画のようなイメージを思い浮かべる。

 彼らの技術水準から言えばこれが当然であろう。

「それが……乗り物の航続距離や行動半径、更に兵器の有効射程なども事細かに載っておりまして……それが、我々の知る兵器の概念からすると尋常ではないのです」

 威勢の良かった議員たちも思わず顔を見合わせた。

「尋常ではない、とは?」

「例ですが……」

 情報部の将校はわざわざ2人で1冊を見られるようにシンドヴァンの商人から購入したらしく、議員たちに『お2人でご覧になってください』と言いながら配布し始めた。

 議員たちも開かれた『海上自衛隊配備兵器』のページを覗き込む。

「何々……『まや』型護衛艦?」

「なんだか弱そうな名前だな……」

 灰色の船だが、自分たちの船に比べて細長く、あの巨大な輸送船に比べても貧弱そうにも見える。

「驚くべきはそこではありません」

 将校の指摘を受けて、改めて総トン数や速度、スペックなどを見る。すると、見る見るうちに議員たちの顔色が真っ青に染まっていく。

「ばばば馬鹿な! 主砲の射程が20km以上!? しかも、射撃管制装置とかいう物で、揺れる波の上であろうとも、空を飛ぶ相手であろうともほぼ確実に命中させられる!?」

「しかも、改修後は人工衛星とかいう宇宙の彼方に浮かぶ物体から受ける信号を傍受して射程100kmに近い砲弾を発射できる、だとぉ!?」

「更に……艦対艦誘導弾、『90式艦対艦誘導弾』と『17式艦対艦誘導弾』は射程150kmを超える!? しかも、音の速さに近い速度で飛来するがゆえに、イエティスク帝国でも迎撃は難しい、だとぉ!?」

「我が国の軍はもちろん、グランドラゴ王国や蟻皇国の軍艦であろうとも一撃で大破に追い込める……? 信じられん‼」

 『扶桑(初代)』までならばともかく、軍艦の装甲の厚みは前弩級戦艦から超弩級戦艦に至るまで、実はそれほど変化していない。しかし、装甲板の加工の仕方や純度などの問題から、どうしても強度は時代によって差が出る。

 実際、同じ前弩級戦艦でも『富士』型戦艦と、三笠で有名な『敷島』型戦艦では、『富士』型戦艦が450mm以上の装甲を持つのに対して、『敷島』型は大幅に減らしているにもかかわらず、当時のイギリスが最新鋭で開発したクルップ鋼と呼ばれる金属のお陰で遜色ない防御力を発揮しているのだ。

 つまり、金属の加工技術の高さはそれだけで装甲のあり方を変えていたのである。

 実際のところ、現代艦は砲弾など届かないアウトレンジでの戦闘が主流になっているため、戦艦などの砲艦に比べれば明らかに紙装甲であるにもかかわらず、鋼鉄装甲艦を撃ち抜ける(と、言われている)対艦誘導弾を作る意味については指摘しないでほしい。

 閑話休題。

「航空攻撃も200以上の目標を同時に補足して、優先的に10を超える目標に攻撃できるとは……どんな魔法を使えばそんなことが可能なのだ!?」

 自分たちの常識からすると理解が追い付かず、混乱する議会。しかし、オケイオンはふと気づいたことがあった。

「だが、こんなものを作ろうと思うと、とてつもない技術を要するぞ。少なくとも……イエティスク帝国と同等か、いや、それ以上かもしれない」

 帝国にも小型ながら誘導弾が存在することは知っている。だが、これ程多岐にわたるモノは聞いたことがない。

「帝国の属国如きが、そんな高等なモノを持っているわけがない」

「だが、これほどの超兵器が揃っているのであれば、我が軍が手も足も出ない敗北ぶりを喫したのも分からんでもないな……」

 未だに半信半疑の議員たちだが、3度にもわたる大敗北を喫したことで、日本国に対する認識は改まりつつあった。

「もしも、仮にだが日本国がイエティスク帝国の属国などではなく、れっきとした独立国であり、我が国はもちろん、帝国をも凌ぐ技術を持っているのだとすれば……この戦争、何もできずに負けるぞ」

 何もできずに負ける。そんなオケイオンの一言に、その場が一瞬にして凍り付いた。

「で、ですが、皇国が一矢報いることもなく敗北するなど、あってはなりません‼」

「左様、このままでは皇国は再び辱めの日々を送ることになる‼ そのようなこと……あってはならん‼」

 彼らとて、200年以上前に帝国から逃げ延びて独立国家を形成して以来、様々な手段で帝国の最新情報を得てそれを基に自国を強化してきた。

 帝国には敵わないまでも、一矢報いることくらいは叶うかもしれないという所まで来ていると自分たちでは思っている。

 だが、そんな中で敵対した日本の存在は、そんな今までの苦労と努力をあざ笑うかのように圧倒的であった。

 グランドラゴ王国や蟻皇国、北のフィンウェデン海王国相手ならば善戦、或いは一部に関しては優位に立つことができるであろう戦力が、一切何もできずに粉砕された。

 質が物をいう海軍ももちろんだが、数が物をいう陸軍も敗れている。さらに敵は空軍も持っているようだ。

 雑誌に記載されている空軍の『戦闘機』と呼ばれるものはどれも性能が隔絶している。

 やはり、イエティスク帝国よりも強力そうだ。

「もしも……もしもこのような兵器群を持つ国が首都に攻め寄せたら……官民問わず虐殺されて終わるかもしれん。我々は日本の民を問答無用で殺した。隷属化ならばまだいいほうだろう……」

 オケイオンの絞り出すような言葉に、その場の面々は青い顔から更に血の気が引いた。

「首都には戦車を含めた新型兵器も多数配備されていますが……」

「無駄だろう。だが、せめてもの救いは、陛下が外遊されていることか。陛下がいずこかの地に逃げて正統政府を打ち立てれば、国民も安堵する」

「そう、だな」

 彼らは知らない。自分たちがお飾りとして仰いでいる君主が日本に亡命し、政権を取り戻すために自分たちを討伐するように頼んでいることを。

「それで、これからはどうします?」

「陸軍に非常事態宣言を発令させ、首都の警戒を厳重に……」

――ドォォォォォォン……!

「……なんの音だ?」

 議員の何人かが窓の外を見ると、どこかから煙が上がっているらしかった。

 市街地の地理にも詳しい議員が声を上げた。

「あ、あれは、陸軍基地の1つ!」

「何ぃ!?」

 皇国ではイエティスク帝国の攻撃を警戒して、首都にいくつもの陸軍基地を置いている。近代戦を経験したことがないとはいえ、帝国の戦術を調べれば十分予測できることであった。

 戦力は分散されるが、一度の大規模攻撃で殲滅される恐れは大幅に低くなる。

 そして、一か所が攻撃されたと見るや即応して迎撃できるようにする。それが今の彼らの戦術である。だが……

「あぁっ‼ 北からも、南からも煙が上がっている‼ ど、どうやら陸軍基地が同時攻撃を受けているようです!」

「な、なんだとぉぉっ!?」

 直後、大会議室に軍の兵士が飛び込んできた。彼は通信部の伝令であった。

「ほ、報告いたします‼ ただいま打電された内容を精査した結果、首都に存在する4大陸軍基地が全て、日本国のものと思しき飛行機械の猛攻撃を受けているとの事でございます‼」

「それは分かっている! だがどうして陸軍基地からあのように断続した爆発が起こっているのだっ‼」

「そ、それが……敵は、胴体の上部で羽を回転させる、同じ場所に一定の高さで浮いていられる回転翼機とでもいうべき飛行機械を持ち出し、強烈な機関砲と、炸薬を先端に搭載した花火のようなモノを次々と撃ちだして陸軍基地を攻撃しているのです‼」

「なんだそれは!?」

「花火のようなモノや機関砲はともかく、そんな物を搭載しながら一定の位置を保てる飛行機械など、イエティスク帝国でも持っていないぞ……」

「速度は帝国の航空機よりは鈍足のようですが、その分対地攻撃能力が非常に高く、たった10機前後に陸軍基地は壊滅状態です‼」

 再び会議室はざわつき始めた。

「た、たったの10機前後だと!?」

「見間違いではないのか!?」

 議員たちが騒ぐが、兵士は同じ報告を繰り返した。

「間違いありません。首都上空を飛び回っている物を合わせても、20もいないと考えられます」

 その後の報告によって、攻撃している敵の数が12機、更に攻撃に加わらずにいる機体が6機ということが明らかになった。

「たったの12機……」

「4つの基地の規模はほぼ同じ……つまり、1つの基地当たり3機が充てられているということか……」

「飛行機械3機の攻撃力など、爆弾数発と機関砲くらいだろう。それでなぜそれほど苦戦する? いくら我が国の対空戦闘技術が未熟とは言っても、その場に浮き続けている飛行機械なら機銃弾くらいは効くだろう‼」

 残念ながらそれは大きな間違いである。

 日本国が投入した『やんま』型対戦車ヘリコプターは、『AH―64D』アパッチ・ロングボウをモデルにしているため、機銃弾はもちろん、重要区画は対物ライフルくらいまでなら十分に耐えられる想定になっている。

 日本からすると原始的な小銃弾では、当たったところで表面部分に少々傷が入るかどうか、それとも塗装が剥がれるかどうかというところである。

 ちなみに余談だが、陸軍基地のある場所は日本の偵察衛星によって既にまるわかりとなっていた。

 そのために陸上自衛隊のヘリで直接攻勢に出たのである。

 例の試験機が出てきたら? と一部では懸念される声もあったが、相手の飛行機が以前遭遇した際に時速100km前後しか出ていなかったこともあって、戦闘機に比べれば鈍足なヘリでも十分相手できると考えられていた。

 残っていた3機の『やんま』及び『OH―1』は、戦闘機では不可能な対空監視に務めていたのだ。

「いずれにせよ、このままでは陸軍基地は壊滅する! 兵たちに、急ぎここを守らせるよう通達するのだ‼」

 議員の1人が叫ぶが、別の議員が反対した。

「いや、基地をわずかな戦力で壊滅させられるほどの軍事力を持っているのだ。生身の歩兵がいくら集まったところで、勝ち目はないぞ‼」

 議論している間にも、全ての基地が機能を喪失したと報告が届いた。

 議員たちはとりあえず、この元老院議会に籠城することを決断せざるを得なくなった。

「残念なことに、敵飛行機械は我が方の基地を殲滅した後、西へと消えました」

「ぐぬぬ……敵に一矢報いることすら叶わんのか……」

「なお、こちらの被害は全基地で死傷者2千名、行方不明者1万名以上となっております。また、先ほどご報告した通り、基地はもはや瓦礫の山と化しており、基地機能を完全に喪失、更に上級将校の多くが基地内部にいたため、崩落に巻き込まれて亡くなったものかと」

「くそっ……指揮を執る者が大幅に少なくなってしまったのか……」

 しばらくは基地の壊滅状況や人的被害などが報告されていたが、彼らにとっては更なる凶報が飛び込んでくる。

「申し上げます‼ 日本国のものと思しき車両部隊が、街道の各出入り口を封鎖、更に下水道などの近くにも陣取っているとのことでございます‼」

「な、何ぃ!?」

 敵は首都を包囲するつもりらしい。そのために邪魔になる兵力と兵器を先に片づけたようだ。

 しかも、陸軍基地の中でも武器庫は重点的に破壊されていたために、車両群に対して有効な兵器は悉く破壊されている。

「で、ではどうすればいいのだっ‼ もし市街地に攻め込まれたら……男は殺され、女は嬲り者にされる! 昔の……イエティスクの時の如き屈辱を味わうのかもしれんのだぞッ‼」

 彼らは伝聞でしか知らないが、書物に残るイエティスク帝国は凄まじいまでの屈辱を彼ら猫耳族に与えていたらしい。

 北の極寒の大地における迫害から逃れて、独立から200年が経過した今でも、多くの者がその恐怖を忘れていないのだ。

 いや、200年も経過していれば彼らはもっと進歩しているに違いないと、さらに強い恐怖心を抱いていた。日々情報部によって集められていた情報からもそれが窺える。

「日本が攻撃を仕掛けてくる前に、なんとしても防衛線を構築せねば。使えるものはなんでも使え。障壁を築くのだ。女、子供、老人は直ちに地下の避難所へ逃がすのだ」

「ははっ!」

 オケイオンが素早く指示を飛ばしたことで、首都の人々は動き出した。

 ニュートリーヌ皇国は常々イエティスク帝国の存在が念頭にあるため、敵性勢力から何か攻撃を受けた場合は地下の避難所、いわゆるシェルターに避難するように常々教育されている。

 人々はその指示に従い、続々と避難するのだった。



 そして、それを上から眺めている『物』があった。

「市街地の民間人が動き始めた。どうやら避難を始めたらしい」

 それは、航空自衛隊の偵察機『RQ―4』グローバルホークを基に日本がコピー、改造を加えた『RQ―1』、通称『ワシミミズク』であった。

「予想以上に整然としていますね……」

「日頃からかなりの訓練を積んでいるみたいだな」

「日本の平和ボケぶりとは雲泥の差ですよ。見習わせたいくらいですね」

「そう言うな。彼らは常に世界最強の国と国境を接している準有事体制が当たり前の国だ。旧世界の東欧と何ら変わらん」

「そうですね」

 『ワシミミズク』の情報は、数百km離れたフランシェスカ駐屯基地に届いている。

 そのカメラから伝えられてくる人々の整然とした混乱のない動きに、自衛官たちは思わず感心していたのだった。

「兵士と思しき人影は一か所に集まり始めた」

「レーヴェ陛下の情報通りか……」

 日本はレーヴェ及びその周辺の人物たちから、有事の際にどうするようになっているかというマニュアルを聞き出していた。

 つまり、『陸軍基地が攻撃されれば人々は地下へ避難する』という情報も、レーヴェたちから得ていた。

「ですが、これで大分やりやすくなりますね」

 自衛官が話している間にも、小銃を持った皇国兵らしき者たちが1か所に集まる。その建造物は、他の建物よりも一際立派であった。

「あれが、元老院議会か」

「そのようですね。目標が確定しました」

 自衛官はそれを素早く基地内に共有させる。



一方、西側の市街地の外側で、彼らの野砲の射程圏外に陣取っている杉田は機材のセッティングを見ながら呟いていた。

「んじゃ、あの町に『地獄』を見てもらおうかね」

「地獄……なんですかねぇ、これ?」

「ある意味な」

 そして、この派遣部隊には今回、『ある物』が持ち込まれていた。

「1尉、音響設備の準備、完了しました」

「よぉーし、音源は大丈夫だな?」

 施設科の隊員が美しいまでのサムズアップを決める。

「バッチリです。猫ちゃんたちをビビらせましょう」

「猫ちゃんなんてかわいいもんなのかねぇ……?」

「大陸の猫耳族は皆可愛いですよ?」

 施設科隊員が『何を今更』と言わんばかりのいい笑顔を見せる。

「そりゃな」

 大変余談だが、当然アメリカ大陸にも猫耳族はいる。以前メーロの配下が成り替わろうとした者のことを覚えている読者もいるであろう。中には当然女性も存在し、大変な人気なのだ。

 閑話休題。

「他の部隊も準備完了だそうです」

「んじゃ、始めっぞ」

 その名も……『世紀末大作戦』。



 一方の元老院議員たちも、会議場から動けなかった。

 彼らにとってはこの場所こそが今、最も安全な場所なのだ。籠城している間に、何かしらの打開策を考えなければならないが。



――ドドォォォォォォン!



「な、なんの音だ!?」

――ボガァァァァン‼

「ま、また聞こえたぞ‼敵の攻撃か!?」



――ガオオオオオオオオオオン‼



「こ、今度は(けだもの)の鳴き声!?」



――ギャオオオオオオオオオオオッオオオオオオオオン‼



「ひぃぃっ!?」

「なんだ!? 雷のような轟だぞっ!」

「まさか、神の怒りにでも触れたというのか……?」

「終わりだ……皇国は終わりだぁっ!!!」

 議員たちも狼狽えるが、オケイオンだけは気付いた。

「これは……『音』だけ……?」



「ヘリさんから報告は?」

「はい。兵士たちはかなり狼狽えているそうです」

 日本は首都の皇国人を怯えさせて戦意を奪い、後の作戦を成功しやすくするために様々な音を流して怯えさせるという作戦に出ていた。

「しっかし、『世紀末大作戦』なんて安直なネーミング、よく通ったな……」

 杉田の隣に立っている阪口も小野も苦笑するしかない。

「そうですね……ですが、彼らからすれば間近で砲撃による弾着音や恐竜の鳴き声を拡声させたモノは正に恐怖の権化でしょう」

「あ、飛行機の爆撃音や機銃掃射音も聞こえますよ」

「それにしたって、誰だよ。怪獣王の鳴き声入れた奴は」

「ミレニアム番以降は昭和やVSシリーズとはまた違う迫力がありますからねぇ。私はあれ、好きですよ」

 そう、悪ノリよろしく自分たちも幼い頃夢中になっていた怪獣映画の怪獣の鳴き声も流されているのだ。

 更に……



――ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼



「……誰だ、第六天魔王の強力仕様入れた奴は?」

 小野ですら冷や汗を流していた。

「ま、まぁあの方の声は人間としては非常に重みがありますし、この『雄たけび』を知らない者が聞けば、怯えるかもしれません、ね……」

「あ、セリフまで入ってますよ」



――ヴェーハッハッハッハッハ……ブゥン!



「今度は『神』かよ」

「何も知らない者が聞くと、全て滅ぼされそうに感じてしまいますね、あれ……」

「効けばいいけどな……呆れてねぇだろうな」

「「……うぅん……」」

 杉田の呟きに、小野や阪口も唸ることしかできなかった。



 一方、首都ルマエストでは……

「な、なんだ今の声は!? 砲撃とかではなさそうだぞ‼」

「人間……なのか!?」

「馬鹿な! あんな地の底から響くような声は人間にも獣にも出せない‼」

「じゃあなんだというんだ‼」

「まさか……日本は魔王とでも契約しているのか……?」

「いや、先程の甲高い笑いもある。魔神かもしれぬ!」

 人々は口々に、『地の底より出でし魔王の声』、『高らかに笑う魔神の声』としてこの声を恐れるのだった……皮肉なことに、砲撃音や恐竜の鳴き声などの彼らにもわかるモノはともかく、この声だけは全く意味不明だったらしく、これに最も怯えたという。

 ご存知の諸氏も多いだろうが、改めて言おう。自衛隊とは、時に悪ノリする組織である……時にじゃないかな?


それと、誤字報告のところで『西暦』が間違っているという意見がありましたが、あれは『現地歴』としての西暦というものでした。

今まで何も言われなかったので、皆さんなんとなくわかってくれているのだと思ってしまった物で特に説明していませんでした。

変な誤解を与えたようで、申し訳ありませんでした。

前へ次へ目次