第5世代戦闘機VS複葉機
今月2話目となります。
今回は対艦攻撃だけではありません……皇国の研究熱心な一面が窺えるかと思います。
――西暦1741年 3月15日 フランシェスカ共和国北西部 ベルリス
ここは旧世界でいう所のドイツの首都、ベルリンに相当する地点である。
ここには日本国の整備により、民間が利用できる空港が整えられていた。だが、今ここに駐機しているのはつい数日前に港湾都市アテニアに対艦誘導弾の飽和攻撃を行なった『P―1』哨戒機である。
日本は友好国各国の連絡を行いやすくするべく、民間機を離発着できる空港を友好国内部各所に建設していた。
友好国のインフラ整備や輸送などをとっても、港湾設備と空港の整備は優先度の高い事案であった。
優先度としてはグランドラゴ王国→フランシェスカ共和国→アヌビシャス神王国→シンドヴァン共同体→スペルニーノ王国→イタリシア王国の順となっている。
今回この空港には、本土で保存されていた多数の哨戒機発射型対艦誘導弾が持ち込まれている。
『ASM―1C』はこの戦いでほぼ撃ち尽くしそうな勢いであった。しかしこれによって、戦後の新型誘導弾『ASM―2C』の量産体制を整えられる状態となるため、企業側は内心ホクホク顔である。
『P―1』哨戒機編隊の指揮を執っていた角野1等海佐は、ずらりと並ぶ『P―1』哨戒機を見てため息を漏らす。
「やれやれ、やっと戻ってきて一息つけるかと思ったら、今度は北部へ行け、だからなぁ……」
「仕方ありません。敵の継戦能力を削ぐうえでも、港湾部を全滅させないことには始まりませんから。しかも、今度向かう場所には……」
彼らの脳裏に、空母能力を付与された護衛艦『かが』の姿が浮かぶ。
「『F―3B』による精密誘導爆撃と、『P―1』哨戒機の対地誘導弾によって、敵の大規模工業都市を空爆する必要があります。今回の『P―1』哨戒機の役目は対艦攻撃のみならず、対地攻撃もあるのです」
「ますます米軍じみてきたな。そういうのは本来空軍系の航空機の担当だろうに」
実際、旧世界の米空軍では『A―10』サンダーボルトⅡや『F―16』ファイティング・ファルコンといった対地攻撃を得意とする航空機を多数用いることで地上部隊の攻略を手助けしていた。
しかし、日本の自衛隊では『F―2』及び『F―3B/C』型を除けば、精密な空爆能力を有する存在は『P―1』哨戒機しか存在しない。
「実際、日本転移小説なんかでは『日本に高性能の爆撃能力がない』という観点から、『P―3C』を改造して無誘導の爆弾を大量に搭載した戦略爆撃機として敵国の軍事基地を攻撃させた、って話もあるくらいですからね」
「その点、『P―1』には『マーベリック』の運用能力があったのがせめてもの幸い、ってことか」
『P―1』哨戒機は元々アメリカの開発した対地誘導弾『AGM―65マーベリック』を搭載することが可能であったため、日本は『マーベリック』を参考に射程25kmの対地誘導弾『AGM―2』(1は『やんま』型対戦車ヘリコプターの際に製造した)を製造、『P―1』哨戒機に装備していたのだが、今回の北部港湾都市攻撃に参加するにあたって、港湾都市と住居区画がそれなりに近いこともあって誘導弾が使用されることが決定した。
現在防衛装備庁及び防衛省では、対地攻撃機『A―1』地上作戦支援機の開発を行なっており、既に試験機3機が完成、各種兵器も試験と製造が始まっているのだが、これに関しては『統合運用』の観点から『F―3』でも対地誘導弾が使用できるようにと開発時点で要求されていたこともあって、対地攻撃の量産型機体より先に誘導弾のほうが完成しているという状態であった。
そして発射シークエンスは今までの『マーベリック』と同じであるため、少しプログラムを変更するだけで『P―1』でも運用することが可能であった。
「まぁ、まだないんだから仕方ない、と統幕から言われた時にゃ流石に『えぇ……』ってなっちまったけどな」
角野の苦笑に、側に立つ副官の二佐も苦笑いするしかない。
「さて、と。そろそろ時間だ。俺たちも向かうとしようかね」
角野を始めとした哨戒機乗りたちは、気が重いながらも任務を遂行するべく動き出すのだった。
――西暦1741年 3月16日 ニュートリーヌ皇国 港湾都市リトービア
ニュートリーヌ皇国の中で二大港湾都市と呼ばれるアテニアとリトービア。このうちリトービアはリトアニア西端からポーランド北端に連なる大工業港湾都市であった。
このリトービアはイエティスク帝国により近いこともあり、アテニアよりも練度が高い兵士と、皇国が開発した最新鋭の兵器も多数配備されている。
規模だけで言うならばほぼ同等だが、その中身はそれなりに差がある。
具体的には、南部では主力艦となっている鋼鉄軍艦が海防艦となっており、主力艦は少数ながら回転砲塔を備えている。
もっとも、大口径砲を作る技術がまだないので日本がその船を見れば『浅間』型装甲巡洋艦に似ているという艦が主力となっていた。
もう少しすれば、グランドラゴ王国や蟻皇国、フィンウェデン海王国のような大口径砲搭載軍艦も十分に作れそうである。
80隻の主力艦隊と、30隻の海防艦隊が存在するのが、このリトービアであった。
だが、そんなリトービアの防衛を任されている防衛司令官のアエトスは、部下からの報告に冷や汗を流すことしかできていなかった。
部下の報告とは、『日本国による港湾都市アテニアの壊滅』に関するものであった。
「……以上のことから、港湾都市アテニアは完全に壊滅致しました。敵に与えた損害は……確認できた限りではゼロだそうです」
元々ニュートリーヌ皇国は海軍力で見れば機械化国家では中の下に位置するが、それでもアテニアの海軍力は周辺国から比較すると突出していた。
それが、敵に一撃を与える暇もなく港湾設備や少し内陸にある陸軍基地にまで甚大な被害を出したということがまるで納得がいかない。
相手と言われている日本国は、元老院の分析によるとイエティスク帝国の属国らしい。帝国本土の軍が攻撃してきたのならば、陸はともかく海では大敗すると誰もが分かっている。
だが、宗主国より格下の属国如きに、海戦とはいえ一矢報いることもなく敗れるとは思えなかった。
同じ属国のフィンウェデン海王国ですら、ニュートリーヌ皇国の攻撃性を恐れて積極的に手は出してこないのだ。
「何かがおかしい……我々が戦っているのは本当にイエティスク帝国の属国なのだろうか……? 元老院からはなんと?」
「は。元老院からは『なんとしてでもリトービアは死守せよ』のみです」
「情報も何もなしか……生存者から何か情報は?」
「それが……軍艦に関してはほとんど情報がありません。港湾部の生存者が『都市の沖合5km以上に停泊して艦砲射撃を行なった』とのことです。ただ、話によると『異常に砲弾の発射速度が速かった』と……」
「砲弾の発射速度が速い、か。それ以外には?」
「軍艦からは機体の上で羽を回転させる飛行機械らしきものを繰り出し、その機体から爆弾らしきものを陸軍施設に投下したとのことですが……その中には、イエティスク帝国が実用化しているという『誘導弾』らしきものがあったそうです」
それを聞きアエトスは猛禽類のようだと言われている目を見開いた。
「まさか……日本は帝国に匹敵する、いや、あるいはそれ以上の技術を持っているかもしれないというのか!?」
部下は『あくまで未確認情報ですが……』と付け加えたが、アエトスの疑念は更に深まった。
「他にはどうだ?」
「日本軍は雷鳴の如き音を轟かせる飛行機械も保有しているようです。そちらの速度は回転翼の機体……回転翼機と称しますが、その比ではない速さだとのことです。そして驚くべきは、高速で移動しながら陸軍基地の建造物に正確に爆弾を命中させたのです。わずか数発の爆弾を食らって、陸軍基地は崩れ落ちたとのことでした」
アテニアにある陸軍基地は首都にある基地と比較してしまえば小規模ではあったが、こちらもフィンウェデン海王国やグランドラゴ王国相手ならば十分に立ち回れる能力を持っている。
「イエティスク帝国以外ならば十分相手できる陸軍が何もできずにボロボロ、か。元老院の阿呆共はいったい何を見ているんだか」
アエトスは自分たちに力を与え、軍拡を進めてくれている存在が元老院だということは知っている。
だが、横暴で攻撃的すぎる面に関しては辟易もしている。
「いずれにせよ、アテニアに攻撃を加えたということは日本軍がこちらに攻めてくる可能性も高い。それにしても、情報がずいぶん遅かったこともどうにかならないのか……」
「元老院が混乱して、その指示を受ける軍も整理がつかなかったようです」
「全く……レーヴェ陛下がもっとしっかりしてくれていれば、こちらも助かるのだがな……」
「ないモノをねだっても仕方ありません」
部下の苦笑交じりの台詞に、アエトスも苦笑で返すしかない。
「だな、総員に第2種戦闘配置を命じろ。索敵や見張りの数も増やしておけ。場所によっては24時間体制の厳戒態勢だ」
「ははっ」
部下がいなくなった会議室で、アエトスは呟いた。
「あの『新兵器』でも相手になるかどうか……いや、何かあったらその時はその時だ」
日本軍が来るであろう時に備えて、ニュートリーヌ皇国軍リトービア防衛軍は準備を進めるのだった。
――西暦1741年 3月20日 フランシェスカ共和国北東部300km 日本国海上自衛隊第4護衛隊群 旗艦『かが』
日本国がこの世界に転移するまででは海上自衛隊において最大の大きさを誇っていた『いずも』型護衛艦の2番艦『かが』。
本来はヘリコプター搭載護衛艦であったこの船は、転移後に改修が施されて『F―3B』戦闘機が離発着できる多用途護衛艦になっていた。
以前も述べたことだが、まだ正規空母が1隻、そして軽空母と言える『いずも』型が2隻であることを考えれば非常に重要な航空母艦なのである。
今も新大陸では新型護衛艦を含める各種艦船が建造中であるが、人員の育成などの問題もあってなかなか進んでいない部分がある。
最近では『あさひ』型の最新鋭艦に『ゆうひ』が就役しているが、とにかく何もかもが足りていない。
今回も『F―3B』はほとんどが爆装しており、対空誘導弾は装備していなかった。
衛星の情報では『やはり航空戦力の類は確認できない』とのことだったので、それを『概ね』信じたのである。
だが、万が一ということもあるので一応2機だけ対空誘導弾を合計8発装備している。
皇国は能力的に原始的な航空機がいてもおかしくはない技術水準にあるというのが防衛省の分析結果であった。
あくまで『衛星写真』の情報だけだから、用心に越したことはないという考えである。
『かが』のCICで、艦隊司令を命じられた山城海将補はスクリーンに映る映像の地図を眺めていた。
「……以上、明朝には『P―1』哨戒機による大規模攻撃が始まります。港湾部の敵110隻を殲滅したのち侵入し、残存艦隊を撃滅、更に港湾都市及び工業都市に攻撃を加えます」
山城及び幹部たちが集まるCICの説明が終了した。
これから各艦へ幹部たちは戻り、最後の打ち合わせをする。
山城の隣に立っている平野一等海佐が呟く。
「いよいよ主力と衝突ですね」
「あぁ。こちらには被害は出ないだろうと思ってはいるが……油断だけはしないように徹底させなければな。流行りの日本転移小説のような、圧倒的戦果は『有り得ない』ともな」
実際にはかなりの技術格差が存在するうえ、制空権は何もせずに取っているようなものなので心配は少なくて済むのだが、それでも『石橋を叩いて渡る』の言葉通り着実に戦う必要があると山城は考えていた。
「では、私はこれで失礼致します」
「あぁ、またあとで」
山城は自室へ戻ると、音楽プレーヤーを起動させてクラシックを聴く。彼はこうして精神を安定させているのだ。
「……皆、頑張ってくれ」
――翌日 ニュートリーヌ皇国 港湾都市リトービア
港湾都市はいつもの朝を迎えている……わけではなかった。
数日前、敵対状態にある日本国の攻撃を受けて、南のアテニアが壊滅してしまったことは皆知らされていた。
最新鋭装甲巡洋艦『アコニトン』艦長のスカロプスは、港湾部沖合50kmの海域で12隻の味方艦と共に哨戒を行なっていた。
「北方及び東方、異常ありません!」
「南方及び西方、同じく異常ありません!」
マストの上に立つ見張り員が叫ぶ。
スカロプスは少し前に通達されていた『港湾都市アテニア壊滅』の報告を聞き、とても恐れていた。
「何事もなければよいのだが……」
この日もこう穏やかであってほしい、そう願っていたその時であった。
――シュ――――ッ‼
音が聞こえてきたと思ったら、最前列を航行していた巡洋艦が揺れた気がした。
「ん、何か……」
その直後、巡洋艦は大爆発を起こして轟沈した。
「じゅ、巡洋艦『ケラシオン』、轟沈‼」
「な、何!?」
すると、爆発は立て続けに発生し、他の艦を次々と吹き飛ばしていく。
「巡洋艦『マンダリニ』、駆逐艦『カルブジ』、轟沈‼だ、ダメです! 報告が追い付きません‼」
「ば、馬鹿な! 何が起きて……」
スカロプスは最後まで言葉を発することが出来なかった。『アコニトン』の甲板に斜め上から突入してきた槍のようなモノが突入後爆発し、内部で火薬や燃料に誘爆して船体を真っ二つにするほどの大爆発を起こしたからだ。
それらの艦隊が消えた後、海の上を超高速の槍のような物が更に進んでいく。
そしてそれから10分と経過しないうちに沿岸部に大規模な爆発が連続して発生し、皇国の軍艦が大破炎上、撃沈していくのだった。
日本国海上自衛隊所属『P―1』哨戒機の発射した『ASM―1C』は、アテニアの時同様1発も外れること無く皇国艦隊に命中、脅威となる存在を殲滅した。
リトービア防衛司令官のアエトスは、凄まじい轟音を耳にしてまどろみの世界から飛び起きていた。
「な、何事だ!?」
彼が寝巻のまま窓を開けてベランダに出ると、沿岸部に係留されている軍艦が為す術なく炎上、大破着底している姿が見えた。
「に、日本国の攻撃だ‼」
――ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‼
港湾部に、非常事態を知らせる緊急警報が鳴り響く。
兵たちは泡を食ったように動き出すが、乗るための船がほとんど大破撃沈しているせいか、どうしようもないらしい。
そして……
――ゴォォォォォォォォォ……
聞きなれない音とともに、空の彼方から何かが飛来する。
「な、なんだあれは!」
飛んできた大きな翼を持つ存在……恐らく、日本の飛行機械なのだろうと推測したが、あまりに速く彼の視界からすぐに消えていく。
自分の屋敷の背後へ向かう。そしてその意味を彼はすぐに理解した。
「まさか、陸軍基地と工業地帯が目的かっ‼」
アエトスは急いで緊急用打電機の前に座り、とある部署へ直通の打電を送った。
「頼む、せめて一矢報いてくれ……‼」
彼がそう願っている間にも、空を飛ぶ飛行機械からは火を噴く槍のようなモノが撃ち出され、工業地帯を次々と破壊していく。
アエトスが打電を送った先とは……
港湾都市リトービアから南に30km離れた所に、小さな山塊があった。
そこには皇国の先進技術開発研究部の支部が置かれており、皇国が研究と実験を重ねて作り出した様々なモノが存在する。
そこで通信室に座っていた女性通信員のミュースは、防衛司令官から送られてきた打電を目にし、すぐに解読した。
「『攻撃を受けている。直ちに試験機を送られたし……』ほ、本気!? 試験機なんてまだ『飛ぶのがやっと』なのに!?」
だが攻撃を受けていて、応援が必要であるというのならば送るしかない。
ミュースはすぐに伝声管で連絡した。
「試験小隊、直ちに発進し敵に一撃を与えよ! 繰り返す、試験小隊は直ちに発進し敵に一撃を与えよ!」
彼女の声は山肌に偽装された『格納庫』に届いた。
そして、そこには翼を二枚持った『飛行機』が駐機されていた。
これこそ、皇国がフランシェスカ共和国と決着をつけ、他の列強国に追いつくためにと開発を進めていた国産飛行機『ロドン』型飛行機であった。
まだ武装も試験段階でプロペラに当たらないように翼に搭載した機銃しかないが、時速100kmの速度で飛ぶ、皇国にとっては貴重な航空戦力である。
知っている人間が見れば、かつてフランスが設計した『モーリス・ファルマンMF.11』に酷似した形状をしていると気付くであろう。
もちろん、イエティスク帝国の最新鋭機などと比べてしまえばガラクタのような存在だが、いずれ帝国に追いついて追い越すための、貴重な一歩であった。
乗員たちは伝声管からの声を聴いて待機室から飛び出して自分の機体に乗り込み、これまで訓練してきた手順通りにエンジンを始動させる。
――ブルン、ブルン、ブルルルルルルルルルル‼
小隊5機が、狭い滑走路に出ていくなり加速して浮き上がる。
リトービアへ向かう中、小隊長のゲラノスは、出る前に自分が走りながら述べた訓示を思い出す。
『諸君、小隊長のゲラノスだ。今港湾部はいずれかの攻撃を受け、混乱状態に陥っているらしい。敵は航空機を使用しているとのことだ。我々よりも強いかもしれない。だが、せめて一矢報いないことには、我らも満足できない‼皇国民の誇りと意地を、見せてやるぞ‼以上だ』
車両に使われるエンジンを改良し、何とか空を飛べるようにしたこの『ロドン』型飛行機は、敵航空機の攻撃を減衰させるべくリトービアへ向かうのだった。
一方、『P―1』哨戒機と『かが』から発艦した『F―3B』は着実に戦果を挙げていた。
精密誘導爆撃と誘導弾の攻撃により、工場地帯と軍事基地『だけ』が正確に燃え上がっている。
その時、後方約300kmで待機している『E―767』早期警戒管制機から通信が入る。
『こちらフクロウより各機へ。山間部より飛び立った物体あり。航空機の可能性大。注意されたし』
『F―3B』戦闘機を駆る浜野一等空尉がレーダーを覗き込むと、確かに編隊を組んでこちらに向かってくる航空機の反応があった。
「敵に航空機は存在しないんじゃ?」
レーダーの表示を見ると時速80kmから100kmほどしか出ていないようなので、自衛隊からすると脅威とは言い難い。だが、万が一近寄られてウロチョロされては困る。
場合によっては爆撃を誤って民間人に被害を出しかねない。
彼らを市街地で撃墜した場合も、残骸や破片が降り注いで被害をもたらす可能性が高い。
よって、市街地に入る前に撃墜する必要があった。
『こちらアロー1よりアロー2へ。俺と共に近づいてくる敵機を排除する。相手が市街地に〈侵入する前〉に倒すぞ。いいな?』
『こちらアロー2、了解』
彼らは今回、2機のみ存在する対空警戒要員であった。
対空誘導弾は旧式で射程も短い『90式空対空誘導弾』こと『AAM―3』と、04式空対空誘導弾こと『AAM―5』を装備しているだけだが、この速度ならば『AAM―3』でも十分に対応できると判断する。
『アロー1よりフクロウへ、これよりアロー1、アロー2は敵機撃墜に向かう』
『こちらフクロウ了解。注意されたし』
『F―3B』が加速する。
風を切る音を立てながら、『F―3B』2機は瞬く間に彼方へ消えた。
試験小隊5機は、全速力で都市部へ向かっていたが、見える煙に顔を青くする。
だが、狼狽えても仕方がない。自分たちが少しでも敵を妨害してやるのだと、彼らは進んでいく。
そして、20kmを切ったところで彼は何かを遠くに見た。
彼は手を挙げ、僚機に合図する。残念なことに、この世界で『無線機』を配備できているのはイエティスク帝国だけなので、航空戦力はどうしても手で合図しないといけない。
『敵機発見、攻撃用意』
だが、その直後だった。敵らしき機体から光が上がったと思うと、何かがこちらへまっすぐに飛んできたのだ。
「!? まさか……イエティスク帝国の誘導弾!? は、速すぎる‼」
その速度と、撃ったタイミングがあまりに早く、彼らは一瞬反応が遅れた。そして、そのまま何もできずに着弾し、全機撃墜されたのだった。
都市部まであと、5kmもなかった位置であった。
浜野は市街地に被害を出すことなく敵機を墜とせたことにホッとしていた。
『アロー2、他に敵機がいないか調べるぞ』
『了解』
彼らは補給して戻ってきた爆装『F―3B』3機を連れて、敵の発進してきた方角へと向かっていった。
1時間もせず、偽装された滑走路と実験場は燃え上がって無力化された。
リトービア防衛司令官のアエトスは、空から猛攻撃をもたらす敵にほとんど変化がない様子に、自分たちの虎の子である航空攻撃が失敗に終わったことを悟った。
見れば、沖合に自分たちの軍艦よりも大きな船が居座り、自分たちの射程外から砲撃を始めた。
あっという間に兵舎や造船所、桟橋などが崩れ落ちていく。
「だめ、か……皇国はもはや、ここまでかもしれんな」
燃え上がる港湾と工場地帯を見て、彼は絶望する。
ニュートリーヌ皇国の誇る二大港湾都市は、日本の海上自衛隊の護衛隊群と航空隊の攻撃を受けて、10日足らずで壊滅したのだった。
今期のアニメ、新サクラ大戦が始まったので見てみましたが……原作ゲームやそもそものサクラ大戦のことはほとんど知らないにもかかわらず、あのオープニングテーマにすっかり引き込まれましたね。
何とかしてCDを手に入れようと今考えている所です。