閑話・ニューテクノロジー!……ただし、日本面込み
今回はいわゆる閑話です。
今後出番があるかどうかもわからないのでやりました。
――2032年 10月25日 日本国 北部アメリカ大陸 防衛省実験場
ここは、日本国が保有するアメリカ大陸の某所に存在する兵器実験場である。
一応防衛省及び防衛装備庁の所有地ということになっており、広さは関東地方どころか、日本列島がすっぽりと収まってしまうほどに大きい。
つまり、それだけ射程の長い兵器などを実験しているということでもある。
実はこの場所こそ、『やまと』型護衛艦の主砲で使用されている46cmロケット誘導砲弾――正式名称を『24式噴式誘導砲弾』という――の実験を行なった場所でもある。
他にもこの場所では様々な兵器が実験されていた。
例えば、99式自走155mm榴弾砲及び19式自走155mm榴弾砲で新たに採用されたクラスター砲弾『夕立』や、巡航ミサイル『武御雷』、さらに新型の滑空爆弾『天山』など、様々な兵器が実験された場所である。
そんな新たな兵器を試す場所で、新たな兵器が実験されようとしていた。
広い実験場の中にポツンと存在するとある建物の管制室で、多くの自衛隊員たちが緊張した面持ちでモニターを見ている。
そこには陸上自衛隊員のみならず、海自・空自、さらに統合幕僚監部に内閣官房庁の関係者もいる。
『起動5分前、最終チェック、オールグリーン』
『各部異常なし。兵器類の異常なし』
「了。再度チェックを実行せよ」
『了』
モニターの向こうに表示されている『それ』と接続されている多数のモニターを人々が見つめていた。
『再度チェック完了。各部異常、ありません。オールグリーン』
「了解。起動まで10、9、8,7、6、5、4、3、2、今!」
――バチッ、ブウウゥゥゥゥン……ギュイン‼
モニターに映る般若のような顔を持つ『それ』の目が青く光ると同時に、まるで人の体のような各パーツが微動を始めた。
『右手を上げて、サムズアップしてみてください』
『了』
『それ』はどこかぎこちなく右腕を上げると、ゆっくりとサムズアップしてみせた。
それを見た一同は思わず歓喜の声を上げる。
「おぉ!」
「成功だ‼」
しかしその直後、腕の関節部パーツから火花が上がり始めた。
「あっ!」
「緊急停止!緊急停止‼」
「急げっ‼ システム強制シャットダウンだっ‼」
搭乗員は素早く非常停止ボタンを押す。
アニメや小説では、よく悪人の陰謀で『非常停止ボタンが作動しません!』などという展開がお約束だが、ここにはそんな不埒者の介入する余地はない。
ちゃんと停止し、腕がゆっくりと、しかしだらりと垂れ下がった。
「あぁ、そんな……」
「関節部分のパーツに亀裂発生……またダメだったか」
「これだけ技術の粋を尽くしてもSHBSは完成に至らないのか……」
「先史文明の技術の高さが垣間見えるといいますか、我が国の技術の及ばない部分を見せつけられた気がしますね……」
日本はオーストラリア大陸で発見されたパワードスーツを参考に、『Suspected the Human Body a Suit』・通称『SHBS』を開発していた。
ちなみに、エグゾスケルトンとは全く別物で、某宇宙戦艦アニメのリメイク版に登場した機動甲冑に見た目は似せている……ものの、使用している材質の関係でそこまで小型化することができず、重量も30tを超えてしまうという戦車のような代物になってしまった。
本来は装甲戦闘車や偵察警戒車の代替となり、威力偵察や市街地での対人戦闘を想定した造りにならなければいけないはずだったのだが、技術的な問題からそうはならなかったということである。
要目は以下となる。
『SHBS・フェーズ1』
重量34t 全高5.3m
主機・三菱重工業製4気筒920馬力水冷式ディーゼルエンジン
主武装
○側頭部7.62mm機関銃
○右腕換装式M2ブローニング重機関銃
○或いは7.62mm多銃身機関銃
○ショルダーパック(装備を換装することで対戦車誘導弾か歩兵制圧用のクラスターロケット弾を発射可能)
ちなみに、重量の割には高出力のディーゼル機関を搭載しているものの、各部のバッテリーパックの搭載量がそれほど多くないうえに、出力がこちらもそれほど高くないため、ただ足や腕を動かすだけならばそれなりに速いのだが、電気信号で動く指や手首の関節の稼働は割とぎこちないという欠点もある。
なお、右腕左腕共に土木作業用のパッケージが存在しており、それを用いることによって人に近いレベルの、しかし小さな重機並みの作業効率を生み出すことができる……はずなのだが。
「やはり、細部の小さなパーツの強度が未だに足りていないのが現状ですね。もしこれを解決できたとしても、今度は動力・出力系統の問題から稼働時間の短さと武装の少なさは問題になりますよ」
「ぶっちゃけた話、正面戦闘向けの開発より警備用や作業用に特化させた方が今の時点では要求性能的にも完成しそうな気がするよ」
技術者と自衛官たちが思い思いに話を進めているが、1人のロボットオタク自衛官が不意に呟いた。
「いっそ当面は履帯を装着して運用した方がいいんじゃないでしょうか? それも戦車みたいな大型で重装甲の奴じゃなくて、最近の不整地走破型ロボットによくある可変式キャタピラみたいなやつ」
つまり、それである程度の運用経験を積んでから2足歩行式に進化させたらどうだろう、ということであった。
「確かに現行のロボット技術の限界を考えると……そうかもなぁ」
「パワードスーツで走らせようと思っても、今の出力調整やパーツの強度を考えたら歩くのが限界だからな……」
「でも、それだと上部構造物が大きくなりすぎてトップヘビーになりかねないぞ」
「安定性を高めるというのなら、履帯の幅を広げて対応をすればいいのでは……」
「だから、それじゃ戦車と変わらなくなってしまうって言ってるじゃないか。ただでさえ重量オーバー状態なんだから」
「しかし、履帯型にすれば不整地で転びにくくもなるのでは?」
「まずはそれで運用実績やデータを得れば……」
「そのためには下半身のバランスを切り替えるデータ収集が必要になるぞ。それの計算だけでもかなり大変だが……」
またもあちこちで喧々囂々たる議論が繰り広げられている間に、実験場ではパワードスーツからヘルメットを被った人が出てきていた。
その人物は陸上自衛隊の若手幹部で、ヘッド・マウンド・ディスプレイ付きのヘルメットを外すと『ぷはぁ』と息を吐いた。
顔中汗だくで、首に巻いていたタオルを外して絞ると『ポタポタポタッ』と汗が滴るほど濡れていた。
シュブスの中ははっきり言って蒸し風呂状態なのである。
「まったく……一応熱交換器を応用した空調が利いているとはいえ、機器が発する熱だけでもエライ汗だくだよ……」
そんな彼に、別の場所で待機していた女性隊員が近寄ってきた。
彼女はこの隊長の部下である2等陸曹だ。
「お疲れ様です、隊長。スポーツドリンクです」
「お、サンキュー」
女性隊員は小柄な体躯ゆえか身軽そうにヒョイヒョイとシュブスによじ登って隊長にスポーツドリンクを手渡した。
隊長の顎から汗の雫が滴り落ちるのをじっと見ながら、女性隊員は感想を聞いてみることにした。
「隊長はどうですか? このパワードスーツって」
「うーん……そもそもなにもかもが初めて尽くしだからなぁ……正直に言って、いい点を見つけろっていう方が難しいかもしれないな」
そう。このシュブスはまだ実験段階な上先史文明のパワードスーツには遠く及ばない玩具のような存在でもあるため、いいところを見つける方が難しいのだ。
「強いて言えば、思ったよりも振動は少ないかもな。てっきり、搭載されている機械類の激しい振動がもっとあるものだと覚悟していたんだけど」
「そういえば、先ほど装備庁の方が言っていましたけど、このシュブスって10式戦車や16式機動戦闘車に使用されているサスペンション技術をあちこちに応用していることに加えて、搭載している機器が起動している際に発する振動も極力抑えられるように研究していたみたいですよ」
「逆に言えば、そのあたりの技術はかなり成熟してきているってわけか……」
「旧世界での戦車開発の際に、発砲の反動軽減やサスペンションの制御技術についてはかなり研究が進んでいたみたいですからね」
「確かに。冷戦中はいつ全面戦争になってもおかしくなかったからな。正面から撃ち合う可能性の高い戦車はかなり研究が進んだんだよなぁ……イタリアは90年代の時点でチェンタウロなんて装輪戦闘車の先輩を配備していたが」
「イタリアは色々と変なところでネジが飛んでいますから……」
もっとも、それを大きく突き詰めた結果、10式戦車の頃には50t足らずの重量で強力な砲火力と安定性、さらにデータリンク機能などを手に入れたことで各国から驚愕され、その経験を活かして16式機動戦闘車が作られた時もその安定した射撃性能と機動力に諸国を驚愕させたものであった。
地球基準でこそ戦車という存在は既に車両としての限界が近づいているように筆者には思えている(これ以上の大口径砲を装備するのが難しそう、車体の小型化・不正規戦への対応能力など)のだが、今後市街地での戦いの主役となるであろう装輪戦闘車はまだまだ改良の余地があるように思える。
そもそも論で言えば、第三世代MBTが完成した後の先進諸国というべきヨーロッパ諸国は新しい戦車の開発をほとんど行なっていない(近年再び開発が進んでいるようだが……)。
それをやった国はほぼない、というのはやはり技術的な問題もそうだが、湾岸戦争を境に、戦車同士が正面から撃ち合うような時代がもう終わりつつある(そもそも正面戦力の大規模な衝突自体が少なくなった)、というのが大きな理由であると筆者は考えている(2018年頃の話。現在はウクライナ情勢もあって180度考えが変わってしまった)。
故に、それまで戦車開発をあまりしてこなかった国(韓国やインドなど)は新規に開発・製造を始めているものの、先進諸国のほとんどは現在保有しているMBTの改良を主にしているのだ。
アメリカのM1エイブラムス然り、イギリスのチャレンジャー2改造型・チャレンジャー3然りである。
それはさておき、MBTの開発が進まなくなった理由のもう1つとして、全面衝突よりも市街地戦などの非正規戦では、巨大かつ重量過大な戦車が色々な意味で使いにくいという場面が出てきたからである。
ただし、現実問題としてこれが当てはまるのは日本のようにやたら狭くてやたら人口が密集している都市部を抱えた国が、全面戦争よりテロ対策を考えた首都防衛の際に必要になるから、という話である。
故に日本では16式機動戦闘車が作られた(もっとも、16式の国産105mmライフル砲は砲と砲弾の威力に関しては初期の90式戦車並みと言われているため、機動力を活かした背後や側面からの不意打ちであれば現行のMBTでも十分に撃破が可能であると言われている)。
え、アメリカ? 元々国土のだだっ広さが桁違いな上に中東方面などでゲリラに対抗するために戦車もバンバン使ってますが? 国土の観点から日本と中東、そして部隊派遣の多いアメリカをごっちゃにしちゃいけませんな。
転移した日本は非正規戦よりも正面衝突が増えた……とは言うものの、この世界に存在する戦車の能力は高くても第二次世界大戦時のドイツ戦車並み、ということは既に判明しており、現在の時点でそれ以上の技術は確認できていない。
つまり、装甲に問題があるとはいえ、16式機動戦闘車でも十分なダメージを与えられる存在ばかりなのだ。
逆に『当たらなければいい』という考え方であれば16式機動戦闘車の主砲であればアウトレンジからティーガーⅠだろうがティーガーⅡだろうが、最強クラスの防御力と攻撃力と言われたエレファントやヤークトティーガーだろうと(ただし機動力は論じてはいけない)ぶち抜ける能力を持っているため、当たらないようにする機動力の方が重要になってくる。
「まぁ、ネジのぶっ飛び方に関しては各国それぞれに特色があるから置いておいて……本土じゃ10式戦車の改修が決定したからな。長かった」
「正式にはサスペンションの強度なども含めて改修するから改良型ということで『32式戦車』になるんでしたね」
10式戦車は優秀な戦車であるが、さらに改良ができないかと車体や砲塔の大部分を流用することによる費用の削減をしながら新機軸を取り入れた戦車として改修されることとなった。
特徴として
○主砲の口径を44口径から50口径に延長する。
○履帯の幅を4cm広げて一㎡辺りの設置圧を減らす。
○使用するパーツのさらなる軽量化によって全備重量を46t(基本重量39t)まで削減する。
○搭載するディーゼルエンジンを改良すると同時に燃料タンクを増量し、航続距離を大幅に延伸する。
○搭載する電子機器類をさらにアップデート・小型化し、狭い車内でも有効に使えるスペースを増やす。
○無人砲塔操縦型を作り、人員削減に寄与できるかテストする。
などである。
主砲に関してはドイツのレオパルト2や韓国のK2ブラックパンサーのようにより長砲身の55口径まで延長しては?という声もあったのだが、この両者が『砲身が長すぎて運用しにくい』という意見が前世界で噴出していたこともあって、間を取って50口径までの延長とした。
軽量化と設置圧の低下は、海外派遣によって地盤の不安定な場所で運用することを想定したためだが、日本の『軽くしたがる病』をよく知っているミリタリーオタクからは『これでもまだ軽くしたがるのか……』と呆れ交じりのコメントが多数寄せられていたという。
やはり日本面は止まらない。
低燃費化の能力向上に関しては未だに研究が行われているが、既存体系のディーゼルエンジンの発展には限界がありそうだという意見が強くなりつつあり、新たな戦闘車両用動力機関の開発を進めるべきではないかという意見が出ていた。
候補として挙がっているのは当然水素だが、燃料電池では出力不足であり、かといって水素タービンでは被弾時に大爆発を起こしかねない。
そこで、旧世界から理論と実験は重ねられていた水素ディーゼルエンジンを推し進めてはどうかという意見が出た。
確かに低い燃費に加えて構造上引火しにくいという点、そして現代日本の得意としている小型化技術を以てすれば、戦車に搭載可能なサイズまで小型化することも理論上は可能だろうと言われているため、防衛装備庁と三菱重工業、さらに川崎重工業が共同で研究を始めていた。
とはいえ、デリケートな水素を扱うということもあって実験は遅々として進んでいないのが実情である。
そんな事情を知っているからか、隊長も女性隊員もため息をつく。
「実験を重ねるのは大事だってのは分かるが……それに付き合わされる現場はたまったもんじゃないなぁ……」
「はい。仰る通りだと思います」
女性隊員は苦笑しつつ、シュブスから出てきた隊長を建物の中へ連れて行き、脱いだ上着を素早くクリーニングに回すよう指示して彼の体を拭き始めた。
「うわっ、今日はまた一段と汗とニオイがすごいですね……うへへ」
「仕方ないだろ? 元々汗っかきなんだから。ま、そのおかげでお前と縁ができたわけだから感謝してるけどな」
「えへへ。ヘンタイでごめんなさい」
「気にすんなって。誰だって人前じゃできる限り隠しておきたい心の内側ってモンがあるんだからさ」
「やっぱり……ずっと聞きませんでしたが、隊長もそうですか?」
「ま、そうだな。俺にだってそういう性癖の1つや2つはあるさ」
何気なくかわされているこの会話で察した方もいると思うが、この2人は職場恋愛中である。
元々は同じ部隊の上司・部下という立場だったものの、政府が現場の人々にかかる性的情動を抑えるための『異性間における職場交流計画』の一環でお互いになんとなくで惹かれあって一夜を過ごしたのだが、その時の相性が予想以上に良かったらしく、以後は同じ部隊ということもあってなんだかんだと一緒にいることが多くなったのだ。
周囲の隊員たちもその仲睦まじさにニマニマしながら見守るか『爆ぜろ』というべき視線を向けているのがほとんどである。
「でも、今回の件をフィードバックするって言っても、そんなすぐにできることなんでしょうか?」
「いや、少なくとも数か月から年単位の時間はかかるだろうからなぁ……今はフィンウェデン海王国と揉めているけど、あと数年のうちにイエティスク帝国と万が一衝突するようなことになったとしても、その頃に実戦配備できているか、するかどうかも怪しいんだよな」
「え、するかどうか?」
「あぁ。イエティスク帝国は60tから70tクラスの重戦車……いや、超重戦車が存在する国だ。当然ながらそれらに対処できるような対戦車砲も発達しているだろうと考えられる。物陰からいきなり撃ち込まれれば……90式戦車や10式戦車も無事じゃすまないだろう」
「あっ、アハトアハトって奴ですよね」
「あれは高射砲を転用したものだけどな……ドイツを参考にしているものが多いって言うなら、歩兵の保有している大砲自体はそれほど大したものはないっていう可能性もあるけどな。だが、アハトアハトが優秀な大砲なのは間違いない。初速も速いし徹甲弾の貫徹力も高い……それに命中率も、当時の大砲としては高かったって言うしな。いくら90式や10式の防御力が高いって言っても、やっぱり正面に限る。側面や背後から奇襲を食らったら結構ヤバいんだ」
「だから武装搭載型無人ヘリコプターを同行させてサポートさせようっていう声もあるんですよね」
転移前から研究されていた無人ヘリコプターだが、つい最近になってようやく武装ヘリとして使えるレベルまで能力を向上させることに成功していた。
今のところ7.7mm機銃か12.7mm重機関銃がメインになる予定だが、ロケット弾や対戦車誘導弾を搭載できるようになれば威力偵察にはもってこいの兵器になる。
正面戦闘よりは市街地におけるゲリラ相手を想定しており、歩兵に随伴して上空から守ることが主な役目となる。
不意の攻撃に対処するためとなれば、投射力の高い機関砲は不可欠だが、戦車や装甲車を相手にしない……つまりソフトスキンな存在を相手取ると考えた場合、既存のヘリコプターの主砲だった20mm多銃身機関砲や30mmチェーンガンはオーバーキルだと考えられたのだ。
よって、主砲は12.7mm(軽度の装甲車くらいは撃ち抜けるように)で、副武装としてロケット弾ポッドやミサイルのためのパイロンと言ったところである。
人が乗らない分を燃料や弾薬の搭載に割り振れる一方で、被弾時の脆さも懸念されていることから多少の装甲が施されることになっており、従来のヘリコプターより一回り以上小さくなるにもかかわらず、重量はわずかに100kgほど軽くなっただけにすぎなくなった。
しかし味方における人的被害を減ずることができるようになるという意味ではとても重要な機体であり、今後の無人兵器普及に向けての新たな一歩となった。
だが、それでうまくいくかと言えばそうでもないのが世の中というものである。
「無人ヘリを配備する、はいいけど、ぶっちゃけ一番の問題は『どれだけ離れたところから操縦できるか』なんだよな」
「あー、やっぱりそこですか」
実のところ、兵装試験艦『ゆうばり』で実験した結果、艦艇が発する大電力を用いた高出力電波があれば、10km以上先でもスムーズなコントロールができることが実証されてはいたが、地上で使うとなれば話は別である。
艦艇並みの高出力を発する動力機関と、それだけの電波を発することができる機器というものは中々難しく、専用の車両でも開発しなければならないのではないか、とむしろ値段が高騰しそうな雰囲気であった。
それを解決したのは、とあるオタク自衛官の一言だった。
「だったら決戦向けの無人兵器は本土防衛に使って、敵地に乗り込んで歩兵を仕留める役目はもっと軽量で操縦しやすい無人兵器にすればいいんじゃ?」
本土の基地には護衛艦に勝るとも劣らない大出力の発電機や、発電所から回されてくる大電力がある。
それを利用すれば、確かに離れたところでも十分操縦が可能だろう。
「ま、俺たちはやれと言われた中で、俺たちにできることを目いっぱい頑張るだけなんだけどな」
「そうですね。でも……」
女性隊員は誰も見ていないことをいいことに、隊長の上半身に抱き着いてその胸板に顔を摺り寄せて『むふっ』と不気味な声をあげる。
「今はこうしていてもバチは当たらないですよね~」
まるで親に甘える子猫のように甘えてくるその姿に、隊長も苦笑しつつ彼女の頭を撫でてやるのだった。
余談だが、この時研究されていたシュブスは後に実用化され、ニュートリーヌ皇国の市街地警備任務に就くことになるのだが、それは別の話。
次回は10月7日に投稿しようと思います。
私事ですが、遂に今回ブラウザ版艦これの期間限定海域を一部とはいえ突破しました……始めてから1年、長かったなぁ……その結果、稲木ちゃんとネヴァダさんをお迎えし、さらに他にも占守や昭南、朝日など持っていなかったキャラたちを多数お迎えできました……詳しくは久しぶりに書くかもしれないなろうのブログの方で。