対空戦闘!
今月の投稿となります。
いよいよドンパチパートです。
――西暦1750年 9月26日 フィンウェデン海王国西部200km
王国を退去させられた巡視船『はしだて』は、15ノットの速度を出しながら旧世界で言うノルウェーの西部を航行していた。
『はしだて』の船長である城島は常に瞑目しながら船長席に座っており、一見するとまるでぐーすかと寝ているようにも見える。
しかし、この姿勢は『突然なにかが起きても、すぐに対処できるように』と精神を統一している姿勢だというのは、ブリッジに勤める要員全員が知っているところであった。
「船長、向こうさんはまだ仕掛けてきませんね」
監視をしていた足立航海士が声をかける。城島はこんな体勢でも部下からの言葉にはすぐに答えてくれる。
「あぁ。ひとまず領海ギリギリまでは行かせるつもりやろうな」
「膠着状態に近いですけど……なんていうか……首のあたりがチリチリというか……ジリジリさせられますね」
長瀬も舵を握っていない手で首元をポリポリと引っ掻きながら面倒くさそうに言う。
「この世界にも一応領海などの概念はあるっちゅうことやからね。自国の中でいきなりガツンやったと思われたくないんやろうな」
「一応建前っていうか、そういう国際的な外聞を気にする必要はあるってことかもしれませんね。ついでに言うと、周辺は現在日本の友好国ばかりですから、その点も影響しているのかもしれません」
「もしかしたら、旧世界と同じだったっちゅう先史文明の残した観念を受けついどるのかもしれんな」
すると、上空をずっと飛んでいた双発機が引き返していったのが対空レーダーに映し出された。
「あ、飛行機消えた」
「交代か?」
「仕掛けてくるかも……」
最後の山口の言葉が正しかった。
王国海軍艦隊が向けられる全ての主砲・副砲をこちらに向けながら、モールス信号による打電を送ってきたのだ。
なお、先史文明の……地球と同じ発展を遂げたモノを参考にしているのか、モールス信号は地球のそれと変わらないため、モールス信号を知っているものであればちゃんと理解できるようになっている。
「王国艦隊より入電。『直ちに停船されたし。さもなくば貴船に対し発砲する』だそうです。船長、どうしますか?」
城島はずっと『素人は黙っとれ』と言わんばかりに瞑目していたが、その言葉を聞いた瞬間、閉じていた目を一気に見開いた。
「こういう時の返答はな、お約束があるんやで」
「お約束、と言いますと?」
草間の言葉に城島はここで、初めてニヤリと言うべき表情を見せた。
「『馬鹿め』や!」
「なるほど!」
納得する森本だったが、対照的に草間は『コイツ、マジか』と言わんばかりの表情であった。
両者両様の反応だが、城島は笑みを崩さない。
「曲がりなりにも日本の技術の結晶であるこの『はしだて』を国交もない国に渡すっちゅうのは、技術流出法に違反するわ。せやから呑むわけにはいかへん。まぁ、これで俺らは戦いに巻き込まれることになるな……せやけど、できることはやっておくで」
「と、言いますと?」
「グランドラゴかフランシェスカの海軍宛てに救難信号を発するんや。運が良ければの話やけど、どっちかが助けに来てくれるかもしれへんで」
「確かに、どちらも航空機の哨戒域ですからね」
どちらの国にも配備されている複葉機『ヒルンドー型戦闘機』の航続距離ならば十分に届く距離な上、哨戒機であればさらに可能性は広がる。
場合によっては、の話だが、どちらかの海軍が近くで演習でもしていてくれれば儲けものだ。
少なくとも現時点において『はしだて』の対水上レーダーには識別装置に反応するような船舶は映っていないので、期待するしかない。
城島は両国の更新された、第二次世界大戦に近い水準を保有する海軍に期待していたのだ。
「それまでは撃ちまくりながら逃げるほかあらへん。所詮こっちは沿岸警備隊。しかも向こうさんの足の速い船からすれば最高速力でも負けとる。三十六計逃げるに如かずやで」
「了解‼」
城島は手を振り上げると、航海長の長瀬と火器管制員の松岡に命じた。
「最大船速に引き上げや‼松岡ァ、敵は撃ってくる。撃ってきたら遠慮なく撃ち返せ‼ 機関砲もミサイルもお構いなくぶっ放したれ!」
「了解‼最大船速‼」
「甲板員、対空、対水上見張りを厳とせよ‼ レーダーだけやない、自分の目でも見るんや!」
ブリッジが慌ただしくなる中、城島が副船長の山口にだけ聞こえるように呟いていた。
「確かに俺らは沿岸警備隊や。せやけど……俺らにも俺らの命を守る責任がある。最後の1秒、いや刹那の刹那まで諦めへんからな。覚悟しぃや」
普段は温厚な城島だけに、仲間の命がかかった状況となるとその情熱はかなりのものであった。
穏やかだったはずの海は、不気味な様相を呈することになる。
一方、フィンウェデン海王国海防艦隊司令官のエクステルはもう胃が痛くて仕方がなかった。
やはりと言うべきか本国はイエティスク帝国の脅しに屈し、日本の船を拿捕するように言われたようだ。
日本側もある程度予想していたのか、15ノットを超えるそれなりの速さで逃走している。
つい先ほどこちらから送った打電に対しての返答が来たが、『バカめ』の一言だけであった。
間違いなく日本は王国と戦争になることを恐れていない。
こうなるとあの警備船の攻撃次第だが、自分たちも生きて帰れるかどうか、正直なところ怪しいところであった。
だが、命令である以上は実行しなければ軍法会議送りで重罪となる。
そんなことになれば軍の沽券にもかかわるので、いずれにせよ頑張るしかないのだ。上層部の保身からくる無茶によるしわ寄せを食らうのは、いつも現場の役目である。
「はっきり言ってやりたくはないが……まずは空母の艦載機で攻撃を開始するか。艦載機の発艦準備は?」
「現在空母『スナッフルズ』で艦載機が発艦準備をしております。なお、相手に空母が存在せず航空戦力が見られないことから、制空権確保は既になされているものとして行動するとのことです」
実はフィンウェデン海王国の航空母艦(見た目は日本の航空母艦龍驤に近い)には、『Juー87 シュトゥーカ(C型)』に酷似した翼折り畳み式の爆撃機が搭載されているのだが、残念なことに現状の空母に搭載できる『制空戦闘機』が存在しなかった。
そのため、空母を保有していると言いつつも、基本的には制空権が確保されている近海での行動を余儀なくされているという、空母の意味があるのかどうかよくわからない状態であった。
それもこれも、先史文明でイエティスク帝国が再現できた水準に『旧ドイツに近い』機体で空母艦載機にできる航空機がシュトゥーカしか存在しなかったからである。
もちろん、史実では戦闘機も試作されていたが、それをイエティスク帝国が供与していないのが原因だった。
現在は西側の航空基地が行動半径内ギリギリなので、もし相手が空母かなにかで航空機を発艦させてきたらそちらで迎え撃つつもりだったが、警備船1隻だけならば制空権確保に戦闘機を用いることもない。
エクステルは爆撃で相手が止まってくれれば、無用な犠牲を出すことはないかもしれない、と希望的観測を抱く。
「頼むぞ……」
急降下爆撃を主体とする空母艦載機『コルッカ』パイロットのエルメスは、初めての実戦に昂っていた。
「あれが日本の船か……確かにデカいな。相手は軍艦ではなく警備船なのが残念だが、実戦訓練と考えればちょうどいい!」
実戦訓練を実戦でやろうという考え方の方がおかしいのだが、それはツッコんではいけない。
これまで海王国はイエティスク帝国の属国だったということもあって、小規模な紛争を含めて戦争を吹っかけてくるような国が周辺には存在しなかった。
それもあって、建国から現在に至るまで『実戦』を経験したことのある軍人は皆無と言える。
強いて言えば宗主国であるイエティスク帝国との演習は経験しているので、むしろ正規部隊の技量は非常に高い。
だが現在追撃しているのは海防艦隊だ。
空母を保有しているだけ立派だが、離発着と基本的なことしか訓練はしていないも同然だ。
しかしそんな中で舞い込んできた、『日本国の艦船を攻撃し、停船させよ』というわけのわからない指令。
もっとも実戦に飢えていた現場からすれば正しく、『飛んで火にいる夏の虫』というべき状態であった。
『コルッカ』は発艦を終え、現在は敵艦と10kmほど離れたポイントを飛行している。
後方を振り返れば、僚機も上がってきていた。その数は12機。
胴体下には500kg爆弾を、翼下には250kg爆弾を抱えており、海防艦隊の旧式戦艦くらいならばその一撃だけで大打撃を与えることができる、或いは当たり所が良ければという条件だが撃沈することも可能な代物である。
その当の海防艦隊は該当船舶から5km離れたポイントを航行している。
よく見れば、艦隊は全力航行に近い速度を出しているが、相手はそれほど焦っているようには見えない。
「もしかしてあの船、まだ速度を出せるっていうのか……? 警備船のくせに結構速度が出るんだな……まぁいい。いくら船が速度を出しても、飛行機からは逃げきれない……爆弾の一撃で沈めてやる!」
通信では『至近弾で速力を低下させて動きを止めろ』と言われているが、直撃させるつもりでいかなければ至近弾すら出すのは難しい。
なので、思い切り船のど真ん中にぶち込むつもりでいた。
「極寒の海で藻屑となり、海竜のエサとなるがいい!」
徐々に相手との距離が詰まっていく。
「さぁ、行くぞ‼」
機体を60度以上下方向に傾けると、勢いよく急降下を始めた。
この機体『コルッカ』の前方車輪にはシュトゥーカの初期型と同じように威嚇用のサイレンが搭載されており、急降下することによって強烈な音を発する。
ただし、どちらかというと地上の敵に対する威嚇がメインなのであまり意味がないと言えばないのだが。
――ウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ‼
その音は強烈なサイレンのようになり、なにもない大海原に大音量となって響き渡る。
「この音を心に刻み付けて、恐怖に塗れながら死ぬがいい!」
距離が3kmを切った直後、敵船の後部に搭載されていた速射砲がこちらを向いているのが見えた。
「ハッ! 大砲は空飛ぶものにほとんど当たらないことすら知らないのかァ!」
速射砲が連続して火を噴き始める中、『当たらない』と信じてそのまま急降下を続けていた……だがその直後、強烈な衝撃を機体に感じた。
「……え?」
一瞬呆けた後、衝撃を感じた右側を『恐る恐る』と言わんばかりに見てみると、右の翼が完全に吹き飛んでいた。
機体はあっという間に制御を失い、錐もみ回転を始めた。
「そ、そんな……まさか、当たったというのかッ!? あ、あああああああぁぁぁぁぁぁぁっ……!」
脱出しようにも、急降下中で強烈なGがかかっていたこともあり、動けないままキャノピーを開いてパラシュートを使うことができなかった。
直後、エルメスの乗っていた機体は船から500m以上離れた海に墜落し、爆弾が大爆発を起こして彼自身が海の藻屑と化してしまったのだった。
艦橋から一部始終を見ていたエクステルは、たった今目の前で起こった出来事が信じられずに目を剥いていた。
「まさか……まさか、あの船は大砲で空を飛ぶものを撃墜できるというのかッ!? なんという命中率! 見る限り、無駄弾が極端に少ないな……あの高速で急降下する『コルッカ』にあっさり命中させるとは! それにあの砲塔、やたら動きが滑らかだった……まさか、人の手で動かしているのではなく、機械の力で動かしているのか!? もしや無人砲塔なのか!?」
そう言っている間にも、急降下して爆撃を試みる『コルッカ』部隊は次々と撃墜されていく。
敵艦に2門備え付けられている速射砲の迎撃を切り抜けたと思っても、今度は副砲らしい2門の機関砲が火を噴き、相手の懐に飛び込めないまま爆散・撃墜されていく。
『コルッカ』爆撃隊12機は逐次攻撃を遂行したものの、たった1隻の警備船が放った速射砲を前にして全滅してしまった。
『オスカー』艦長のオルテレンも、エクステル同様に目の前の出来事が信じられず、驚愕のあまり唖然としていた。
「し、信じられません! あの主砲……もしや、そもそも対空迎撃をすることを想定して造られていたのではないでしょうか? 小口径なのも、速射力を高めて命中率を上げるためだと思えば納得です!」
「それだけではないように思える。私が見る限りだが……1機につき、たった数発しか発射していないぞ。つまり、なんらかの機構で相手の未来位置まで予測して砲を発射しているのだ」
エクステルは帝国で聞いたことのある未来的な技術の話を思い出していた。
曰く、音の速さを超える戦闘機を作り出し、それはレーダーに映らない能力を有している。
曰く、10万tを超える排水量の航空母艦を建造し、しかもそこに音速を超える戦闘機を70機以上搭載することが可能になっている。
曰く、軍艦から放たれる対艦用の誘導弾は射程200kmを超え、その一撃により巡洋艦を一撃で大破に追い込むものもあれば、超音速の一撃で戦艦はおろか、10万t空母ですら一撃で打ち砕くと言われる。
曰く、戦闘機からただ投下される爆弾ですらまるで目標を見定めたが如く相手に自ら飛び込んでいく。
曰く、戦車の一撃は1mを超える鋼鉄の塊すらも一撃で撃ち抜いてしまう徹甲弾を放つことができる。
などである。
それ以上の様々な技術も残されているが、未だに理解のできない話も多いため、地道に研究が進められている。
「そんな……そんなこと、現在のイエティスク帝国にも不可能ですよ!?」
「だから言ったではないか。日本国は帝国を上回る技術を有している可能性が高い、と」
忘れたのか?と言わんばかりにエクステルが睨むと、オルテレンはバツが悪そうに首をすぼめた。
「こうなれば四の五の言っていられないな……砲術長! 全砲門開け‼ 目標、日本国警備船! 全火力を以て絶対に命中弾を出せ! 1発当ててなんとしても足を止めるのだ!」
「巡洋艦並みの存在が相手では主砲が当たったら撃沈しかねませんが……いかがしましょうか?」
だが、エクステルは首を横に振った。
「1発くらいならば当たり所がよほど悪くない限り沈まん! 船とはそういうものだ。少なくとも、我々や帝国より進んだ技術を有しているのだとすれば、損傷した場合の対処も上手なはずだ……それを信じるしかないのだ。なにをしている! 復唱は‼」
「はっ、はい!」――『全艦に通達! 全砲門開け‼ 目標、日本国警備船! 命中弾を出し、なんとしても足を止めるのだっ‼』
戦艦『オスカー』の前甲板に装備された40口径30.5cm連装砲や、副砲の50口径15cm砲など、指向できる砲は全て日本の巡視船『はしだて』の方を向いた。
『はしだて』は空中目標への射撃を終えている。少なくとも、こちらに主砲が指向する様子はない。
「全砲門射撃準備完了!」
「日本よ、帝国には及ばずとも大艦巨砲の威力をその身に刻め! 各員の判断にて攻撃せよ! 撃ち方始めぇっ‼」
「てぇっ‼」
――ズババンッ‼バババババンッ‼
現代の大砲に比べるとロスが多く、エネルギー伝達がちゃんと行われていない大砲ではあるが、それでも30.5cmという大口径砲の発射は、見る者に圧倒的な迫力を見せつけるのだった。
――バシャシャシャーン‼
「敵船発砲!」
「取舵一杯! 砲弾をかわした後に最大船速まで引き上げるんや! 1発でも食ろうたらえらいこっちゃで!」
「了解! とーりかーじいっぱーい‼」
航海士の長瀬が素早く舵輪を回すと、満載排水量1万tを超える巨体がゆっくりと旋回する。
『はしだて』と同型の『いつくしま型巡視船』は日本基準でも最新鋭のディーゼル機関を採用したことによって燃費と速力が2ノット向上し、『しきしま型巡視船』や『あきつしま型巡視船』と比較して速力が27ノットまで上昇していた。
そんな最新鋭機関として採用しているディーゼル機関は巡航時の燃費に優れている、小型で船内スペースに余裕を持たせることができるものだが、機関出力を最大にしても加速力においては蒸気及びガスタービンエンジンなどの機関に比べて劣る面もある。
それもあって、乗員からすると機関の音が大きい割には中々速力が上がらないように感じられる。
「くぅ、やっぱ砲弾は恐ろしいですね……」
「ほうだんな」
城島船長の寒いダジャレには誰も反応しないが、心中では『時と場所は考えてくれ』と冷や汗を流すのだった。
そんな呑気なことを言っている間にも、小口径・大口径問わずに敵の砲弾は間近に迫りつつある。
「ほらほら、近付いてきたで! おもーかーじ‼」
「面舵一杯!」
巡視船は重巡洋艦並みの巨体の割には素早く旋回して、なんとかフィンウェデン海王国海防艦隊の放つ砲弾をかわしている。
そんな敵艦隊の砲弾は、今のところではあるが全く命中する気配が見られないのがせめてもの幸いだ。
だが、はっきり言って胃によろしくない状況であることには変わりがない。
「なるほどな。話にはよく聞いてたが、目視照準による砲撃の命中率がごっつ低いっちゅうのは本当なんやな」
「ここまで来ると、よほどのまぐれ当たりでなければ当たらないような気がしてきましたよ……」
「実際まぐれ当たりが昔の大砲だったんやろうな。現代はそこに精密機械による綿密な計算があるからこそ、船や飛行機にも砲弾がしっかりと命中するようになったんや」
「これなら逃げきれますかね……」
「だからって油断してるとドカンやで。気ぃつけや」
上げて落としてくる城島の言葉に、『どっちなんですか』と苦笑する山口だった。
水柱は何度も『はしだて』の周囲に上がる。
エクステルは中々当たらない現状にやきもきしつつ、一番大口径の30.5cm砲弾が当たらないことにむしろホッとしている自分がいた。
沈めたら沈めたで、自分たちよりも進歩した技術を持っているという日本の怒りが怖いのだ。
「やはり大砲は中々当たらんな……」
「帝国の戦艦や巡洋艦であれば艦載されている観測機や偵察機でもっと正確な砲撃……『弾着観測射撃』ができるんですが……あれほどに正確な射撃ができる船に近づけようものならあっという間に撃墜されてしまうでしょうから、どちらにしても厳しいのではないでしょうか?」
「確かにな。先ほどの『コルッカ』の急降下爆撃を次々と撃墜していたところを見ると、余程の高所までいかなければ撃ち落とされてしまうように感じられるが……はたしてどうかな」
エクステルは唸りながらも離れていく日本の警備船を見つめている。
向こうは海防艦隊の船よりも優速らしく、徐々に離されていく。
このまま逃がしてしまうのか、いやそれでもいいのかもしれないと思案しつつ、次善の策はないかと考えていた。
その時。
――ヒュルルルルルルイィィィィィィィィィ……ガォォォォォン‼
「!?」
日本の警備船の左舷後部に、砲弾が命中したようだった。
だが、その威力はこの『オスカー』の砲弾の威力を上回っているように見えた。
「な、なんだ!? どの艦の砲弾だ!?」
だが、驚いたことにどの艦に問い合わせても『自分の艦ではない』という回答が返ってきた。
どの船も主砲も副砲も命中したとは思っていないようだ。
「では……いったい?」
『エクステル司令』
重々しい声が通信機から響く。
「そ、その声は……エイノ艦長!」
『ご苦労だった。よくぞ敵の気を惹いてくれた。おかげでこちらは余裕をもって狙いを定めることができた』
男の名前はエイノ・ヴィートリ・カタヤイネン。
スロ・イルマリ・カタヤイネンの弟にして、フィンウェデン海王国海軍最新鋭戦艦『グングニル』の艦長を務める人物であった。
次回は6月の3日に投稿しようと思います。
私事ですが、つい先日アーケードをプレイしていたらアークロイヤルの改とアトランタの改がドロップしました。
どうでもいいけどアトランタ色っぽいですねぇ(ぐへへへへ)