晴れのちに血の雨が降るでしょう
今月の投稿となります。
いよいよ蟻皇国陸軍との正面衝突です。
どうなることやら……。
――2032年 5月30日 日本国 東京都 市ヶ谷 防衛省 偵察衛星管理部
その日、偵察衛星から送られてくる画像を確認していたオペレーターの鬼沢健司は、写真に広がる光景を見て驚いていた。
「おっ、おいこれ見てくれ‼」
元々はアメリカ大陸に住んでいたゴブリン族から成長した彼は、僅か10年ほどで素晴らしい頭脳を発揮し、本土の現代電子機器もあっさりと使いこなすほどに成長していた。
そんな彼が急に大声を上げたので、周囲の同僚や先輩が次々と集まってくる。
「どうした?」
「偵察衛星21番の写真です‼」
彼がスクロール・ピックアップしたのは、日本が21番目に打ち上げた偵察衛星の画像だった。
そこには、蟻皇国とワスパニート王国の国境、その蟻皇国側にある基地が映っているのだが、昨日まで真っ白だった基地の中が、真っ黒に染まっているではないか。
余談だが、日本は総合すると既に24基もの偵察衛星兼GPS衛星を打ち上げており、あと26基を打ち上げる予定である。
地球規模ならば30基はあれば十分なので多すぎでは?という意見もあったようだが、GPSを細かく配備する上でも重要なので計50を打ち上げることにした経緯がある。
そんな日本を守るための衛星画像には、現代人の感覚からは考えられない光景が広がっていた。
「なっ、なんだこりゃぁ!?」
「車両に乗っていることを差し引いて少なく見積もっても、10万人を超える人数です‼ 尋常じゃありませんよ‼」
さらにその後の画像に映っていたのは、蟻皇国の各基地から出撃して南方の国境付近基地で合流してきたらしい、とてつもない人数の軍勢であった。
少なくとも、第二次世界大戦以後ではアメリカとソ連、中国などの一部の国以外では成し得ていないであろう大軍勢である。
この圧倒的な『数』は、それだけでもかなりの脅威であった。
しかも、その全てが自動車に乗っているように思われる。
蟻皇国の文明水準が日本を基準にして大正時代前後と考えると、車両の工業力・技術力は一歩先を進んでいると言っても過言ではない。
むしろ、太平洋戦争開戦時の域に達していると言ってもいいだろう。
当時の日本というよりはドイツに近いのだが。
以前からちょくちょく取り上げられていた、『Ⅱ号戦車』モドキと、『38.t』モドキも多数が確認されている。
恐らく、対歩兵戦闘はⅡ号戦車モドキが、対戦車戦闘は38.tモドキが行うという構図なのだろう。
蟻皇国が旧世界の中国と同じ領土を保有しているためか、どちらかといえば陸軍国である。
海軍より陸軍の技術がどうしても発達しやすい土壌が、そこにはある。
「この移動速度と人数はこれまで相手してきた軍隊の比じゃありません……向かっているのは……間違いありません‼ 国境基地方面です‼ 早期に対応を決定しないと、大変なことになりますよ‼」
ざわめく管理部の面々。
素早く官邸と統合幕僚監部へと報告が飛び、閣僚と防衛関係者の間で議論が始まることになる。
――2時間後 首相官邸
「……で、蟻皇国の補給能力と移動速度を考慮すると、遅くても2週間から3週間以内には到着する、か……」
「直ちに迎撃を指示しなければ、間違いなく自衛隊基地の弾薬が不足してしまいます。今の基地は5万人くらいの軍勢が押し寄せるくらいならばなんとかなりますが……10万人の機甲師団は分が悪すぎます‼」
蟻皇国が旧世界の中国同様にそこそこの質と圧倒的な『数』を背景に武力を強化していることは日本も当然わかっている。
そんな国と同じ国土を有する国の大軍を相手にすることを想定した装備として『155mm3連装砲』が多数、さらに機甲部隊を相手にすることを想定した多目的誘導弾も多数あるが、まさか3千を超える車両と、10万人を超える人数で押しかけてくるとは想定外だった。
いや、相手が旧世界の中国同様に人口の多い国であると判明した時点で、この事態は想定して然るべきだったのかもしれない。
「上空支援として『やんま』及び『ムシヒキアブ』、も30機と『ACー3』3機が待機、さらに増槽フル装備でなんとか運び込むことに成功した『Fー6』疾風が15機ありますが……それでも10万を超える近代陸上戦力を相手にするには不足です。『Fー6』がクラスター爆弾『霰空』を全て用いても、残念ながら殲滅には及びません!」
「増援を早急に送ることは……」
「不可能です。既にガネーシェード神国及びエルメリス王国駐留部隊も捻出してようやく頭数だけは1万人になりましたが、その3割近くは施設科です。最低限の戦闘は可能ですが、技術格差があったとしても多連装ロケット斉射システムが10輛は追加できなければ……殲滅までは到底不可能です‼」
「ではどうする?」
首相が頭を抱えながら問うと、防衛大臣は苦い顔をする。
「厳しい話ですが、ワスパニート王国の国境基地の戦力に支援をしてもらう必要があるでしょう……彼らの兵器も単体では蟻皇国のそれを上回るので、ゲリラ戦に参加すれば蟻皇国の数を大幅に擦り減らせると思いますが……」
防衛相の厳しい話に、外務相が顔を青くする。
「そんな! 現地の不完全な戦力を当てにしなければならないというのは対外的にマズいですよ‼」
「しかし、物理的に増やせる兵力と兵器には限りがある……そうなると問題なのは、その兵力を最初の時点でどれだけ削ることができるかどうか、ということですね」
「と、言いますと?」
「現在防衛省が考えているプランとしましては、『Fー6』を先行して出撃させ、クラスター爆弾で歩兵の総数を大幅に減らしたいですね。幸い制空権はほぼ確保できているので、そのまま『ACー3』を出撃させ、機甲戦力を含めて一気に数を減らします」
『ACー3』の火力である20mm機関砲や105mmライフル砲はⅡ号戦車や38.t程度の軽戦車の上面装甲、及び後部エンジン部分を、105mmライフル砲ならば正面装甲を撃ち抜くこともできる。
もちろん対地攻撃機という都合上正面攻撃をするわけではないが、上空からの攻撃ならば一気に削ることも問題はない。
「航空攻撃でどれだけ減らせそうだ?」
首相の言葉に、防衛相は『単純な計算だけですが』と続ける。
「恐らく……合計で3万近くは減らせると思います。しかし、車両も全て撃破するのは速度的に難しいので、できれば機動力の高い16式機動戦闘車と10式戦車で各個撃破していきたいですね。歩兵の総数はともかく、機甲戦力と車両を大幅に減らせるだけでもかなり楽になると思いますね」
「歩兵そのものはどうする?」
「そこですね……」
どうしても、圧倒的な数の歩兵を制圧するための手段に乏しいのだ。
すると、防衛省の若手幹部が手を挙げた。
「あの……正面から撃破するだけでなく、撃破しやすくするための遅滞作戦はどうでしょう?」
「遅滞作戦?」
正面から相手を撃破することばかりを考えていた防衛省関係者の多くと首相は『え?』という様子でその若手幹部を見た。
「はい。街道自体は一本道ですが、ほとんどは森の中を抜けるようになっています。我々は森の中と上空から攻撃することで敵の数を減らしたいところですが……そのためにも、敵の進軍速度を遅くする必要があります。上空から妨害用の地雷をバラ撒いたり、木を切り倒して道に並べたりすることで敵の侵攻速度を大幅に遅くすることができます。もちろん、時間稼ぎをするだけでは輸送機による僅かな兵力と兵器の増強しかできませんが、その間に基地の弾薬を補充・増強するだけで、かなり戦いやすくなると思います」
「なるほど……施設科が多く駐留しているからこその提案だな」
「はい。もちろん無防備でやらせるわけにはいかないので護衛も必要にはなりますが、制空権をほぼ確保しているのであれば、チヌークなどを使って斬り倒した木を街道上にばらまくのもありかと」
さらに言うならば、護衛に戦闘ヘリをつけるだけでも安全性は大幅に上がるはずだ。
たとえ戦車がやってきたとしても、30mmチェーンガンや対戦車誘導弾を用いれば基本的に撃破は可能だ。
そもそも現代の複合装甲を装備した戦車を相手取ることを想定している戦闘ヘリコプターはかなりのオーバーキルなのだが、だからと言って放っておくわけにもいかないので、敵の数を減らすためにも投入は必須だろう。
「よし。やってみるか。まずは『Fー6』で『霰空』を使わせよう」
「了解です」
日本の閣僚たちも最善手を打つべく様々な方策を練る。
――西暦1750年 6月2日 ワスパニート王国 国境付近 日本国自衛隊駐屯地
ここでは統幕の指令を受け、自衛官たちが周辺の妨害構築に乗り出していた。
「おーい、この木はどこに置いとく?」
「んあぁ? それならそっちの道のど真ん中にほっぽらかしとけ」
「了解」
あちこちで切り倒された樹木がゴロゴロと転がされ、さらにその上から道を塞ぐようにして石や土砂などを積み上げていく。
もはや子供の砂遊びのスケールをアップさせたような悪ガキ状態だ。
自衛隊基地だけでなく、ワスパニート王国の国境基地にも侵入しにくくなるように障害物をあちこちに設置している。
これには連絡を受けたワスパニート王国の兵士たちも手伝っており、自衛隊が一方向だけをやるのに比べると若干の効率改善となっていた。
見れば、施設科のショベルカーが落とし穴らしき穴を掘っている。
道のあちこちに掘ることで歩兵のみならず、あわよくば戦車や車両を落とせれば儲けものである。
そんな状況を見ながら、施設科の萩本翔一2等陸曹が呟いた。
「自分でやっててなんですが、子供の嫌がらせをグレードアップさせたようなもんですね」
「そう言うな。俺らが工作すればその分支援が来る確率も上がるんだから」
上官の言葉に『そんなもんですかね』と言いつつ、さらに作業を進めていく。
すると、彼らの上空をすさまじい轟音と共に『Fー6』が通過していく。
その胴体下と翼下には、かなり大きな爆弾らしきものが懸架されていた。
「日本のクラスター爆弾、『霰空』ですね」
「もはや人道がどうとか言ってられないってのはようやく政府も理解したわけか」
「結局のところ、自国民と友好国民の命を天秤にかければ、相手を気遣ってばかりいられないってことですからね」
『霰空』1発の有効範囲はかつて日本が装備していた多連装ロケット斉射システム(MLRS)に搭載されていたクラスター弾ロケット2発分に相当する。
この爆弾は航空機から投下されると、効果が重複しないようにばらけるようプログラムされており、広範囲の弱装甲目標を吹き飛ばすことができる。
なお、不発弾などの問題を避けるために地面にぶつかった衝撃で爆発できるように信管調整もされているが、それだけでは不発弾の可能性を排除しきれなかったので、時間が経過しても爆発する時限信管システムも搭載しているというおまけつきだった。
1発1発の子弾によくもそんな面倒なものを、と思うかもしれないが、小型化は日本のお家芸である。
全て手作業とロボットを駆使して漏れのないようにしている。
「あれをぶちまけられたら、ひとたまりもないだろうな」
「ハラワタもぶちまけることになりそうですよね。やーおっかないおっかない」
「あんなのが敵にならないだけ良しとするこったな。あと、その言い方は鎌を足につけた女子高生が言わないと様にならん」
「へぇ~、あのマンガご存じで?」
「あぁ。若い頃に読んでいた1作目の剣士モノが好きで3作目も読んでいたんだ」
「そうっすか」
今回の遅滞作戦により多数の樹木が伐採されることとなったため、日本は戦後、同じ種類の樹木を植樹するのに苦労するのだが、それは別の話。
その頃、蟻皇国日本国基地攻撃先遣隊3万は、多数の車両と共に進軍していた。
先遣隊隊長で陸軍中佐の王了見は、甚大な損害を被ったというフィリップ島沖海戦に関する話を笑い飛ばしていた。
「日本国がどれほど強いのかはまだ計り知れぬが……少なくとも、世界最強のイエティスク帝国より強いということはあるまい。で、あればだ……数の上では世界最強と言える我が蟻皇国軍であれば、数で押し切ることも十分に可能というわけだ」
蟻皇国の情報部がそれまでに掴んだ情報は全て軍部に『適切に』渡されているのだが、肝心の軍部、特に精神論の強い陸軍はその報告を一笑に付していた。
曰く、『相手がどんな戦法を使ったかは知らないが、まぁ数で押せば十分に蹂躙できるだろう』と、昭和の旧日本陸軍ですら(ある意味それに近いレベルの酷さか……)考えていなかったであろう楽観論だったのだ。
それもこれも、皇国の強みである『数の差』が、他国と比べるとあまりにも圧倒的であるという点が大きい。
皇国の蟻人族は他の種族に比べても多産で、非常に数が増えやすい。
そのために皇国は地上の大半を穀倉地帯とし、自分たちは地下に潜って生活するようになったのだが、これが当時の予想以上にうまくいきすぎて、建国時にわずか数千人だった人口は瞬く間に数千万、1億、そして現在の2億人という人口に達し、まだまだ増え続けている。
そんな他国とは圧倒的な『数の差』は、世界最強のイエティスク帝国をして『攻め滅ぼすのは容易くない』と思わせるほどであった。
おまけに、そんな皇国は古代技術の発掘によりここ十数年で一気に技術を伸ばしていた。
そんなことも、皇国の主力である陸軍の増長を招いている一因だったりする。
「全く、海軍の腰抜け共はだらしない。『天から戦艦を一撃で沈める攻撃が降ってきた』などと……そんなこと、それこそ超古代文明でもなければ不可能だろうが。大方対空警戒を疎かにして多数の爆弾を投げ込まれたか、機雷網かなにかに引っかかったのを攻撃と勘違いしたのだろう」
このような具合であった。
他の将校たちも似たような状態で、『その通りであります‼』だの『これだから海の理屈者どもは‼』だの『軟弱者は皇国軍に不要‼』と精神論丸出しの発言をしている。
「日本国がどれほどの兵力を送ってくるかは不明だが……参謀、その点はどう考える?」
問われた参謀の李蒋篇も陸軍根性がむき出しの、ゴツイ顔をした男だ。
「そうですなぁ……今まで入った情報では、『日本は島国』であり、『現在は大陸の開拓を行なっている』そうです。だとすれば、もし質の高い兵器を持っているとしても、量を送ってくることはできますまい。そして、どう考えても世界最強のイエティスク帝国より強いものなどこの世にあるはずもございません」
現実主義者というか、この世界ではイエティスク帝国の能力が圧倒的過ぎるので、誰もその国より強い存在が古代文明以外に存在するなど考えつかないのだ。
「転移国家などという噂もあるようだが……その点はどう考える?」
李は『ハッハッハ』と笑い飛ばした。
「そんな御伽噺みたいなことがあるわけないでしょう。大方、西の海(大西洋)の海流の関係から今まで発見されておらず、グランドラゴ王国と初接触を持った時に自分たちの素性を隠蔽するために発した欺瞞情報にすぎません」
「そうか、やはりそう考えるか」
「はい。そんな転移国家などと……子供だましもいいところでしょう」
「兵器の能力については未知数だが……情報局によれば戦車の主砲は100mmを超えるものがあるらしいぞ」
「だとすれば、相当に『無理をした』と言わざるを得ませんな。我が軍の『王遵型戦車(38.tモドキ)』はかなり小柄ですのであまり参考にはなりませんが、イエティスク帝国にはチーグルⅠの88mm砲が回転砲塔としては最大と言われております。もし仮に100mm以上の砲を搭載しようと考えれば、さらに大型化しなければなりません。噂でしか耳にしていない、150tを超えると言われる超重戦車しかないでしょう」
「そ、そうか……であれば、固定砲塔はどうだ? イエティスク帝国には固定砲塔で120mm近い砲を装備した『陸上戦艦』……アホータチーグルなるモノがあるというぞ」
イエティスク帝国では駆逐戦車、突撃砲の設計思想も当然ながら発達しており、Ⅳ号突撃砲モドキやⅣ号突撃戦車モドキ、ヤークトパンターモドキなども普通に存在する。
え、ヘッツァー? あれは38.tをベースに改良したものですが、元はチェコスロバキアだからね……。
「詳細は不明ですが、突撃砲や駆逐戦車であれば十分に可能でしょう。ただ、それでもかなりの重量になるはずですから、輸送できたとしても数は少ないでしょう。さらに言えば100㎜超えの砲弾ともなると大重量ですから装填にも時間がかかりますし、なにより固定砲塔では狙いをつけるのに時間がかかります。あるいは相手が命中地点に来るまではなにもできません。制空権を失っているのは痛いですが……航空攻撃だけで10万を超える兵を殲滅することも無理ならば、少々兵器の質が高い程度では多少減ったとしても8万近い大軍を止めることなどできません」
ペラペラとよく喋る李だが、彼としては自分たちより多少強いかもしれない実力を持つという日本と対峙することに(精神論者なりに)不安を覚えている司令官を励まそうと必死だったのだ。
この辺り、上司思いの部分は見える一面がある。
「そう、だな。我が国がイエティスク帝国以外になど、負ける気がせんわ!」
制空権を失っているにもかかわらずの強気発言も、裏を返せば『制空権を失ったくらいで退けない』という事情からの空元気なのかもしれない。
その時だった。
――ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……
「ん? 笛の音か?」
「笛など誰も吹いていないようですが……」
さらに音は続く。
――パラパラパラパラ……
「ん? 今度は雨か?」
「雲一つない晴天ですが?」
その時、彼らは上空から黒い『なにか』が降ってくるのを見た。
「あれ? やはり雨……」
――ドバババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババッ‼
次々と、連続して発生する大爆発は蟻皇国軍が通過する『道』の上でのみ発生しており、その途上にいた皇国兵は為す術なく砕かれていく。
既に司令官も参謀も物言わぬ亡骸を通り越して体の破片しか残っていない状態となっているためか、もはや指示も飛ばない。
兵士たちはなにが起こっているのか訳も分からず、それでいて周囲が森なので右往左往することもほとんどできない。
「な、なにがどうなってるんだよぉっ‼」
「まさか……まさか神の怒りかぁ!?」
「そんな馬鹿な‼ この世に神なんて存在するわけ……」
兵たちの言葉は最後まで続けられることはなかった。
何故ならば、上空から降り注いだ爆弾の雨によって原形をとどめないほどに破壊し尽くされてしまったからであった。
クラスター爆弾『霰空』は指向先を敵部隊の列に向かうように設定していたため、数mに渡って広がっていた部隊は前方から圧倒的な破壊で押し潰されたようにして消失していった。
それを15機が投下し終えた頃には、蟻皇国陸軍先遣隊の9割以上が消失していた。
そのため、残った僅かな兵は恐慌状態となり、敵の攻撃から逃れようと森の中へと飛び込んでいった。
しかし、それも悪手であった。
ここ最近の日本及びワスパニート王国の伐採によって行き場を失っていた猛獣や毒蛇、さらにハチやサソリなどの毒虫が、湯水のごとくうじゃうじゃと湧いており、それらが自分たちの住処へと侵入してきた人間たちに対して、一斉に襲い掛かったのだ。
――ブウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ‼
――グオオオオオオオオオォォォォォォォッ‼
――ガサガサガサガサガサッ‼
――ギチギチギチギチギチッ‼
「うっ、うわあああぁぁぁぁッ‼」
「来るなっ‼ 来るなぁっ‼」
「ひぎゃあああああぁぁぁっ! いっ、痛いッ‼ 痛いよぉっ‼」
「助けてっ! 助けてぇっ‼」
そしてダメ押しと言わんばかりに、ワスパニート王国の兵が操る『ヒルンドー』で飛行しながらアウトレンジで次々と銃撃を叩き込んでいったことで、僅かに残っていた兵もあっさりと倒されてしまった。
しかも、通信機を搭載した車両も最初に破壊されてしまったことで、本部に通信を送ることもできず、日本の攻撃を伝えることすらもできなかったのだった。
日本の『Fー6』疾風とワスパニート王国の連携攻撃により、蟻皇国陸軍日本基地攻撃先遣隊3万人は、なにもわからぬままに全滅してしまったのだった。
はたして、蟻皇国の向かう明日はどこなのだろうか。
……はい。全く情け容赦ないことになりました。
自分でもどうかとは思いましたが、『戦わなければ、生き残れない』ので。
次回は8月の6日か7日に投稿しようと思います。