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大陸開拓でチート国家と化した日本の大戦記

 どうも、初めまして。笠三和大(カサミカズヒロ)と申します。結構安直なネーミングで、分かる人にはどんなものが由来かすぐにわかっていただけると思います。

 こちらの『小説家になろう』で連載されている、とある日本転移系小説に触発されて書き始めました。

見る人が見れば『これ、あの作品に似てね?』と思われる方も多いと思います。

 もちろん私独自の様々な解釈や兵器も含めて描いていくつもりですが、もしこれをパクリなどと思われて不快に思われる方にはあらかじめ読まない事をお勧めいたします。

 それでももし、面白そう、興味があると思って下さるならば、どうか一読してみて下さい。

 投稿のペースは不定期のつもりでして、場合によっては月に1度か2度ほどになると思われます。

 それでも読んで下さるという事であれば、是非お読み下さい。

――2018年12月31日 東京都 首相官邸

 ここは、日本国。

 ユーラシア大陸の東側に位置する、4つの大きな島からなる島国である。

 地球の各国文明と比較しても、かなり独特の文化や民族性を持つことから、観光立国としても有名である。

 時は今、平成30年が終わろうとする大晦日の11時55分であった。

 この国の実質的な首都、東京の中央に位置する首相官邸では、大晦日にもかかわらず行政府の長である総理大臣が執務室に座っていた。

 そしてその傍らには、彼を補佐する首相補佐官が立っていた。

 この2人は、新時代を迎える予定の日本を見守るため、年末休み返上で首相官邸に詰めていたのだ。

「やれやれ、なんとか今年も平穏無事に終われそうだな」

「はい。そしてご覧ください、首相」

 その視線の先には、テレビモニターの中で日本が誇る国産ロケット、『H―ⅡB』が発射態勢に入っていた。

「新時代の訪れを象徴するように、新たに観測衛星、そして国産のGPS衛星を打ち上げるためのロケットが準備済みです。あのロケットも、新時代の打ち上げに間に合うようでホッとしました」

 首相補佐官の目には、明らかな安堵の色が宿っている。

「当初は野党の一部がうるさかったですからね……日本は米国の権威の下を離れる気なのか、と。いつもは早く日米安保を改正しろとかうるさいのですがね」

「あぁ。だが、これで我が国は更に様々なことに手を出せる。確か……今回のロケットに搭載されている衛星は、これまでの物よりも性能がアップしている最新型だったね?」

 首相の言葉に、補佐官が頷く。

 その言葉の端々には、今まで日本がどれだけ苦労してきたかが窺える。

「はい。観測衛星に関してですが、これまでよりもより詳細に地形などのデータを取ることができるようになっています。これは、軍事的にも使えることです」

「そうだな。軍事基地の詳細などが分かればどのような場所に重点的に爆撃すればいいかなども分かる……我が国が万が一にも、個別的自衛権を発動する際は工場地帯や軍事拠点に正確に攻撃を加える必要があるからな。この衛星は既存の自衛隊で運用されている戦闘機にもデータリンクをすることができるから、その点もありがたい話だ。まぁ、開発に際しては新時代に合わせた予算ということで財務省、そして技術開発関連の部署を納得させるのに骨が折れたからなぁ……」

 首相の表情は途中から苦笑に変わっていたが、それでも晴れやかだった。

「もう間もなくです。このロケットは新時代の到来を示すように、元日の初日の出を富士山の山頂で観測すると共に打ち上げます。その時こそ、我が国が新しい一歩を踏み出す時なのです」

「そうだな。待ち遠しくて仕方ないよ。」

 首相は画面から一度目を離すと、今度は備え付けてあるテレビの画面を見た。

「……もう少しだな」

「はい。後、1分弱と言ったところでしょうか」

 時計の針は既に11時59分を回っていた。

 そして、数十秒後。

 遂に、時計の電光表示が0時を指した。

 その時だった。

――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

「じ、地震かっ!?」

 首相の戸惑いの言葉と共に、首相官邸が揺れた。揺れは時間にして15秒ほどだったが、そこそこ揺れたように首相は感じた。

「……収まったかな?」

「その、ようですね」

 補佐官と共にテレビの画面を見ると、初詣に来ていた人たちが今の地震に怯えながらもお互いの無事を見て喜んでいた。日本人にとって、多発する地震などの自然災害は常に恐怖の対象なのだ。

「ふぅ。やはり我が国の地震頻発率もどうにかならないものかな……いくらなんでも多すぎる。やはり、災害関連の予算をもっと手厚くしたいものだな。我が国は地震のみならず、台風や大雪など、自然災害のオンパレードだ」

「そうですね……東日本も、熊本も……皆、とても苦しみましたからね」

 2人は話し合いながらもテレビの画面から目を離さない。今の地震が震度どのくらいで、マグニチュードや震源の深さ、震源地がどこなのかを知ろうと思ったからだ。

だが……

『ただいま発生しました地震は、全国的に震度3の地震、震源は、富士山の地下約70kmの地点でした。マグニチュードは……』

「ほぅ。富士山の地下か。噴火の兆候でもあったか?」

「いえ。気象庁からはそのような報告は受けていませんが……」

 すると、首相執務室に備え付けられている電話がけたたましくなり始める。首相補佐官が急いで電話に出た。

「はい、こちら執務室……え、防衛省?……はい。はい。え!? 衛星が!?」

 補佐官が慌てているが、何が起こっているのか、首相にはそれ以上は窺えなかった。

「は、はい。直ちに他官庁にも確認を取りましょう」

 電話を置くと、補佐官の顔が真っ青になっていた。

「ど、どうした? まさか、また『北』が弾道ミサイルを発射したのか?」

 だが、補佐官は首を横に振った。

「そ、それが……要領を得ない説明でして……」

「ん?」

 補佐官は一拍置くと、意を決したように話し始めた。

「実は、防衛省で管理している衛星からの連絡の一切が、途絶してしまったというのです」

「なに、故障か!? それはマズいぞ!! そんな状態で、それこそもし『北』が弾道ミサイルでも発射しようものならば、対応が遅れる事は間違いない!!」

 日本の大陸間弾道弾迎撃能力は、イージス艦と人工衛星と連携したうえで発揮されるものである。それが使えなくなったとあっては、有事への対応が遅れることは間違いない。

「すぐに陸海空各自衛隊に連絡し、弾道弾発射に備えるように伝えるのだ!! 各イージス艦の機能もフル稼働させるように伝えろ!!」

「りょ、了解しました!!」

 補佐官は再び電話をかけようと電話を取ろうとした瞬間、再び電話が鳴り出した。

「はい、こちら執務室……え、気象庁? え、気象庁も!? はい、はい。実は今、防衛省からも同様の通達が……はい、急いで原因の究明をお願いします」

 再び電話を戻した補佐官の顔は、更に真っ青になっていた。

「ど、どうした? 今度は何があった?」

「気象庁の……気象観測衛星からの報告が、全て途絶したとのことです……」

「今度は気象庁だと!? 防衛省といい……何がどうなっているんだ!?」

「わ、わかりません」

 首相は緊急事態であると判断し、都内に残っている閣僚たちを緊急招集することを決意した。

「急いで首相官邸に人を集めるのだ。各部署からの迅速な報告が欲しい」

「分かりました。直ちに招集をかけます」

 補佐官は頷き、各大臣及びその補佐をする者達に次々と連絡を取る。

 ものの2時間ほどで、都内に居を置く閣僚が首相官邸へと集まっていた。

 まずは防衛大臣が手を挙げる。

「先程も電話で申しあげた通り、防衛省が管理している観測衛星からの連絡の一切が、途絶してしまいました。しかし不幸中の幸いなのは、新年度に備えて海外に派遣していた各自衛隊はほぼ全て国内に戻っていたため、ジブチにある海上自衛隊基地の『P―3C』など一部の航空装備と人員を除けば、ほぼ全ての戦力が本土に集結していますので、当面の防衛戦力に問題はないと推測いたします」

 続いて農林水産大臣が手を挙げる。

「総理、どうにかして現在の国周辺の状況だけでもある程度把握する方法はないでしょうか?」

 その言葉に応じたのは外務大臣だった。

「それなのですが、実は各国の大使館からも『自国と連絡が取れなくなった』という報告が相次いでいます。我々の方でもアメリカを始め、各国に連絡を取ろうとしていますが、全くつながりません。そこでですが総理。まずは人間の目で周囲の状況を確かめさせるというのはいかがでしょう?」

「というと?」

 防衛大臣や一部の人間はピンと来たようだが、首相は首を傾げていた。

「自衛隊の保有している『P3―C』及び『P―1』対潜哨戒機を用いて、日本周辺の各地を哨戒させるのです。また、航空機の有無を確認するためにも『E―767 早期警戒管制機』(AWACS)を緊急発進(スクランブル)させ、航空機の飛行状況を調べるのです」


『P―3C』対潜哨戒機

最大離陸重量約63t

全幅30.4m

全長35.6m

全高10.3m

速力約600km

航続距離3645海里

武装 ハープーン空対艦誘導弾

   93式空対艦誘導弾

    短魚雷

    対潜爆弾など約9t

 備考・日本が保有している対潜哨戒機で、かつての冷戦時代に増大していたソ連原子力潜水艦の脅威に対抗するために、ターボプロップ旅客機『L―188エレクトラ』を元に対潜機材を搭載したP―3オライオンの、2番目の派生型であるC型のことである。

 ターボプロップエンジンのお陰で燃費もよく、航続距離も3645海里(約6650km)に及ぶ。

 導入された当初は、訓練において海上自衛隊の保有する潜水艦部隊を次々に発見したことから、『P―3Cショック』と呼ばれるほどの対潜哨戒革命を起こした存在である。

 また、このことが海上自衛隊の保有する潜水艦部隊に、静粛性などの問題点改善を突きつける結果となった。

 日本はアメリカに次ぐ101機を保有しており、改良型や派生型を含めたその保有数は、世界でもトップクラスである。

 現在では国産の『P―1』哨戒機への変更が進められてはいるものの、調達ペースも遅いことからまだ多くが現役として活躍している機体である。

 ちなみに、アメリカ製のハープーン空対艦誘導弾や、国産の93式空対艦誘導弾、短魚雷に対潜爆弾などを多く搭載できるようになっていることもあって、有事の際はある程度戦闘ができる機体でもある。


『E―767』 早期警戒管制機

 最大離陸重量約174.6t

 全幅47.57m

 全長48.51m

 全高15.85m

 最大速度840km

 実用上昇限度12200m

 最大航続距離9200km

 搭載電子機器 長距離捜索レーダー

        戦術データリンク装置他

 備考・『E―2C』グラマン早期警戒機の後継として、1998年から航空自衛隊に導入が開始された『AWACS』とも呼ばれるレーダー搭載航空機である。

 ボーイング767―200ERをベースにしており、AWACS用のシステムを搭載したこの航空機は、1999年までに4機が導入されているが、同型の航空機を採用した国が他にないため、世界に航空自衛隊が保有する4機しかないという珍しい機体でもある。

 パイロットを含めて18人のクルーを乗せることを想定しているが、元が旅客機をベースにしているため、機内環境もよいとの評判になっている。

 機体上部に搭載されたロートドームは、毎分6回転して敵味方の識別や味方航空機への管制を行なうことができるようになっている。


 それを聞いた首相は考え込みながらも頷かざるを得なかった。

「そうだな。各衛星からの情報が全て途絶しているとなると、頼りになるのは人の目と、空飛ぶレーダーサイトといえるAWACSだ。直ちに各海上自衛隊基地、及び航空自衛隊浜松基地に連絡し、それぞれの航空機を緊急発進、周囲の状況確認に当たるように指示してくれ」

「範囲はどうされますか?」

「それは防衛省の方が専門分野だろう。防衛省に一任していいかな?」

 防衛大臣が頷いた。

「了解いたしました」

「また、全戦闘機及び全護衛艦隊もいつでも出動できるように態勢を整えておいてほしい。不慮の事態が発生した場合、頼れるのは自衛隊だけだ。こんな時、米軍は当てにならんぞ。陸上自衛隊も防衛出動態勢だ」

「分かりました。直ちに全哨戒機を飛行させ、中国や朝鮮半島がある場所を調査させましょう。何かがあるようならば、向こうの方から呼びかけてくるかもしれません」

 防衛大臣は各自衛隊基地に一斉連絡を取り、各哨戒機の発進及び、緊急発進(スクランブル)の準備を指示した。

 また、有事が起こった場合に備えて、海上保安庁及び全国の警察組織に通達して各組織が一斉に動き出せるようにと備えさせることにする。

 これも全て、閣僚たちが集まるこの部屋で防衛大臣が行なうことにした。

「全く……元旦早々とんでもないことになりそうだな……」

 首相のぼやくような発言を、咎める者はいなかった。

 すると、厚生労働大臣が手を挙げた。

「国民にはどのように伝えましょうか?」

「問題はそれだな……黙っていてマスコミにでも嗅ぎつけられた場合、こちらの運営にも差し支えるような事態になりかねんし……よし、マスコミにはあえて話してしまおう。それと、各野党にもだ。こういう不安材料……ましてや、国家運営にも関わる一大事となるならば、あまり隠しておくのは得策ではない。後で隠蔽だと叫ばれるくらいならば、パニックになる国民を想定して分かっている限りの情報を公開し、政府が全力を挙げて動いていることを報道してもらうしかない」

 総理の発言に、反対する者はいなかった。確かに、この不測の事態を隠蔽しておいてバレた時のリスクが高すぎるのである。

「わかりました。では、首相の仰る通り、マスコミには現在判明している事実のみを正確に伝えましょう」

「今私は各部署からの報告を待たなければならない。厚生大臣、できればマスコミへの報告をお願いしたいのだが……」

「はい。任せてください」

 そう言うと厚生大臣が立ち上がり、部屋の外へと出ていった。

「さて、と。どれほどの国民が混乱せずにいてくれるやら……」

 首相が懸念すると、法務大臣が警察庁を通じて各都道府県警に連絡させ、万が一混乱が発生した場合の事態収拾に当たれるように備えて欲しいと連絡したいと述べた。

「このままでは、略奪や暴動に走る国民が出かねませんので。起きないと信じたいのですが……」

「分かった、そちらは法務大臣にお任せする。あと、今できることはあるかな?」

 首相の疑問に、外務大臣が手を挙げた。

「私は、各国大使館の大使たちにも情報を伝えるべきだと思いますので、アメリカを初めとして、各大使館への連絡に当たろうと思います」

「そうだな。大使たちも混乱していることだろう。大国だけではない。日本が国交を有する全ての国の大使たちに確認を取るのだ」

 今度は外務大臣が部屋を出ていった。

「さて、と。あとは何かあるかな……?」

 すると、今度は農林水産大臣が手を挙げた。

「でしたら、元旦早々ということですので、この事態の収拾を祈願するという意味で靖国神社に参拝されてはいかがでしょうか? 文字通りの神頼みになってしまいますが……何もしていないというよりは、多少はパフォーマンスにもなるかと思われます」

「靖国参拝か。中国やロシアの大使たちがうるさそうだな」

「ですが、まずは国民を少しでも安心させることが大切かと」

 すると、防衛大臣が電話から顔を上げて発言した。

「そういえば……ロシアという単語で思い出しましたが、竹島や北方領土はどうなっているでしょうか? 離島にも連絡がつくかどうか、各都道府県の担当者に確認させるべきではないでしょうか?」

 竹島には韓国人が、北方領土には多数のロシア人がいる。

「そうだな。厚生大臣が今出ていってしまったし、他にこういうことができそうな人物は……」

 すると、この場ではほとんど役に立たないであろうと思われる農林水産大臣が手を挙げた。

「では、私から各都道府県警の知事達に話を通して職員を緊急招集してもらいましょう。事態は急を要します。部署の垣根なども超えて、各々ができることをするべきです」

「うむ。その通りだ。頼めるか?」

「お任せください」

 そう言うと農林水産大臣も出ていった。

 その他の大臣や閣僚たちも慌ただしく動き始め、結局首相も執務室へ戻らざるを得なかった。

 結局部屋には補佐官と首相の2人のみがいる。

「総理、先程出ていった厚生大臣が記者会見を指示したと報告が入りました。各テレビ局の記者たちが集まるそうです」

「テレビ局も、気象観測衛星からのデータが入ってこなくなったことに気付いているだろうからな」

 その1時間後、緊急記者会見ということで深夜ながら各テレビ局の記者たちが集結していた。

 会見室の中央に、厚生大臣が姿を見せる。

『皆さん。只今急遽お集まりいただいたことについてですが、非常に由々しき事態となったことを発表しなければならないのです。報道各局の方々は気付いていらっしゃるかもしれませんが、我が国が連絡を取ることができる、全ての衛星との通信が途絶しました。なお政府は現在、この事態を収拾するべく全力で動いております』

 その言葉に、記者達は顔を見合わせつつも質問する。

「原因については分かっているのですか?」

『未だ原因については分かっておりません。ですが、まずは日本国周辺の状況を確認させるべく、哨戒機と航空管制機を発進させております。情報が入り次第、皆様にも随時お伝えいたしますので、どうかそれまでは、落ち着いて行動してくださるようにお願い致します』

 今度は、別の記者が手を挙げた。

「この会見に、何故首相は顔を見せなかったのですか?」

『首相は現在、各部署から集められる情報を整理すべく執務室を離れることができません。よって、首相の代理ということで私が会見を開くように指示を受けました。また、情報が少しでも集まり次第、首相は事態収拾と初詣を兼ねて、靖国神社へと参拝するとの言葉を受けています』

 一部の記者がざわめき始める。こんな状況で、神頼みなのかと呆れている者もいるほどだ。だが、安全を祈願することは悪いことではない。

『よって、今はまだ、正確な情報をお伝えすることができません。もうしばらく、もうしばらくお待ちください』

 厚生大臣の45度の礼と共に、ひとまず会見は終了した。

 各テレビ局は、この事態に緊急生放送を実施することになる。



――更に1時間後

防衛省では、哨戒のために飛ばした『P―3C』からの報告を待っていた。

『こちら『P―3C』8号機。おかしい、朝鮮半島があるはずの部分に、明かりらしきものが見えない!! いや、そもそも朝鮮半島があるようにすら思えない!!』

「どういうことだ? 送れ」

 通信員が聞き返すが、パイロットはこう返す。

『こちら8号機、これは……大陸? 巨大な……半島のない、巨大な大陸が見える!! 我々は今、いったいどこを飛んでいるんだ!?』

「8号機、引き続き情報を収集してほしい。送れ」

『……了解。出来得る限りの情報を集める』

 次は、航空自衛隊のAWACSであった。

「こちら、浜松基地司令部。AWACS、応答願います。送れ」

『こちら、AWACS3号機、現在レーダーは問題なく稼働中』

「航空機は確認できるか? 送れ」

『残念ながら、識別装置にはもちろんのこと、物理的なセンサーその物に何も映らない。判断するに、航空機が一切飛んでいないようだ』

 その報告に、幹部達は顔を見合わせる。

「どういうことだ?」

「やはり、レーダーの故障では?」

「こちら浜松基地司令部、本当に航空機は確認できないのか? 送れ」

『こちらAWACS。間違いない。国内を除けば、『P―3C』以外の航空機は一切確認できない』

 それを聞いた幹部は、ひとまずの情報を防衛大臣、そして首相にも伝える。

「大陸、か。それは、ユーラシア大陸ではないのだな?」

 首相の言葉に、防衛大臣が頷いた。

「はい。『P―3C』に続いて飛ばした『RF―4E』の高高度パノラミックカメラでも、ユーラシア大陸とは異なる形状の大陸が確認されています」

 『RF―4E』とは、日本で運用されていた戦闘機『F―4ファントム』を偵察機型に改良し、アメリカから輸入した機体のことである。

「いったいどうなっているんだ……?」

「これがSF小説なら、日本が別の場所に移されてしまった……というネタもあり得るのですがね」

「ほぅ、そんな小説もあるのか?」

 総理の興味深げな態度に、補佐官も頷いて説明する。

「はい。確かその小説では、日本が地球から別の惑星に飛ばされ、魔法を基礎とする文明の中で国家の命運のみならず、世界全体の命運をかけたサバイバルに巻き込まれるという話です」

「ほぅ……いきなりそんな事になっては、それこそ各種衛星などの情報が途絶して……あ」

「何ですか、総理?」

「思ったんだが……例の衛星、使えないかな?」

「え?……あっ!」

 補佐官や防衛大臣も気付いたようだ。

「そうか! あのロケットの衛星には、高性能の観測機能を持たせてある! 日本の周囲がどうなっているのか、それですぐにわかるじゃないか!!」

 執務室が一瞬だが、静寂に包まれた。そして、すぐに興奮の声に包まれる。

「「「……あああああああああああああああああっ!?」」」

地震から約3時間、あまりに混乱しすぎていたためか、皆すっかりロケットの存在を忘れていたのであった。

「そうでした! 直ちに種子島に通達します!!」

「急げ! すぐに日本周辺の状況を調べるんだ!!」

 こうして、政府からの通達を受けた種子島宇宙センターの職員たちは準備していたロケットの打ち上げを実行させることにした。



それほど長い文章は出てきません。

今後もどうかよろしくお願いします。

次回、日本の現状


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