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青年と苦痛と夢

 グロはありません。戦闘? 何それ美味しいの?

 無数の木箱に占領される手狭な部屋が合った。絨毯が敷かれ、小さなキッチンや寝台が置かれたそこは、ともすればアパートの一室にも思える。


 しかし、その部屋は長距離を移動するために改装されたキャンピングカーの後部であり、普通の家に備えられた一室ではない。


 何処から切り取られてきたような異質な空間で、一人の青年が寝床に腰掛けて一つの瓶を見つめている。


 濁った瞳を持つ、無表情を貼りつけた青年が睨むのは、塩酸モルヒネというラベルが貼りつけられた注射器アンプルだった。無色の硝子容器の中で、ラベルが無ければ水と判別もつかない澄んだ液体が揺れていた。


 時刻は、そろそろ夕刻より夜へと移り変わろうという頃。既に茜色に染まっていた空は、徐々に闇夜のビロウドに覆い隠されようとしている。


 青年は敵対者を悉く処理した後、病院内を探してそれなりの収穫を得ていた。このモルヒネも収穫の一つだ。


 医療品は病院の倉庫に纏め置かれており、青年は持てる限りの物を失敬してきたのだ。食料品には余裕があったので、取り返した装備以外は、殆どが薬品のような医療品だけが戦利品であった。


 今までの薬局から持って来た市販薬以外で効能がありそうな薬の収穫は大きい。付箋を貼りつけた薬剤辞典も同じ部屋に置いてあったので、少しは安心して使えそうだ。青年に鏖殺された彼等も、これを使って手探りに薬の知識を得ていたのだろう。


 戦利品の一つ、抗生物質を既に青年は服用している。二の腕に突き刺さった矢を抜いた傷が、手当てが遅かった為に化膿しかけているからだ。抗生物質を飲んで、少しでも症状を緩和し、可能な限り素早く治癒させる必要がある。


 医療が万全であれば問題はないが、今の環境において、人は恐ろしい程簡単に死ぬ。自分が知る限りでは、ほんの不注意で有刺鉄線に指先を引っかけただけの男が破傷風に由来する敗血症で死んだ事もあるのだ。最早、取るに足らない傷などは存在し得ないのである。


 とはいえ、矢傷は改めて消毒し、抗生物質も飲んだので、これ以上にできる措置は存在しない。それよりも気がかりなのは、折れて拗くれた右手の人差し指だ。


 派手に動いたせいで固定が緩んでいたが、今は割り箸を切って添え木にして包帯で固定している。だが、患部は見て取れるほど腫れており、その太さは常の二倍はあろうかという有様だ。


 傷の度合いは決して軽くないが、石膏によるギプスの強固な固定は無い。それも、素人仕事だ。妙な癒合の仕方をして、動かなくなったりしなければ良いのだが。


 腫れぼったく膨らんだ指は熱を持ち、痛みとも痺れとも形容しがたい熱を伝えてくる。今は慣れているが、時折発作のように痛みがぶり返すこともある。これが実に耐えがたい。


 歪に骨が繋がり、指が曲がらなくなれば死活問題だ。十本もある内の一本であろうとも、欠けると凄まじく不便になる。特に、細かな操作をするのに不可欠な、利き手の人差し指は。


 人差し指が無ければ引き金が引きづらいし整備も厄介になる。中指で代用できないこともないのだが、利便性と精密性では確実に劣る。ちょっとした失敗が死に繋がる今、少しでも自分のスペックは万全に維持したい所。今後も右指には相当気を遣ってやらなければならないだろう。


 そう考えて居る青年が、戦利品の中からモルヒネを取りだしたのは、勿論痛み止めの為である。今は麻痺しつつあるが、ふとした拍子で痛みは鋭さを取り戻す。寝る前に痛み止めを打って落ち着いた方が良いと思ったのだ。


 それに、かつて一度骨折した時、凄まじい高熱が出て、それが長期間続いたことがある。この発熱は骨折によって感染症を併発した為に体が抗体反応を起こして出るのだが、今回は劣悪な環境に長期間おかれていたことから感染症の発症率は高いと思われる。


 普通の、凄まじく清潔に保たれている病院ですら起こるのだ。間違いなく、と断言しても構わない確率で、そう時間を置かずに高熱に魘される事になるだろう。


 今までは復讐心と緊張で保っていたような物である。今となっては感覚は霞むように遠のき、思考の軸が定まらず曖昧にぼやけていく。思考能力の低下は発熱の前兆だろう。


 固定も不十分な状態で熱が出て、痛みがぶり返したら目も当てられない。反射で変に振り回し、妙な方向に骨がずれると大事である。それを可能な限り防ぐ為、今の内に痛み止めを打つべきであろうか。


 素人判断な上に、モルヒネは過剰やもしれない。しかし、今の所、これが一番効能が高く確実そうなのだ。


 青年は暫し曖昧な思考で考えた後、パッケージされた注射器の風を破ってアンプルに突き刺し、モルヒネと一緒に保管されていた覚え書きのようなメモに従ってブランジャを引き上げてシリンジに薬液を吸い上げた。


 右袖を捲り上げ、ベルトで強く締め付け前腕部に血管を露出させる。看護師でも何でもないので注射器を自分で刺す機会など数える程も無かったが、思ったよりもあっさりと針は浮き上がった静脈に飲み込まれた。


 今度は先ほどとは逆にブランジャを押し込み、緩やかにシリンジの中身を血管に注ぎ込む。静かに中身を注ぎ終えると、青年は針を抜き取り、軽く脱脂綿で消毒した後にカットバンを貼りつけて止血した。


 直に効果が現れる筈だろう。破ったパッケージの中に針へキャップを被せた注射器をしまい、青年は枕元に置いてあったスポーツドリンクのボトルを煽った。500mlは入っているそれを一気に流し込む。熱が出るなら同時に流れ出る水分と塩分の為に補給する必要がある。


 他にも、横になりながら飲めるように多くの飲料がベッドサイドや足下に置かれている。囓れるような携行食糧も添えて。


 準備はできた、後は眠ってやり過ごそう。改めて指の固定を確かめると、青年は明かりに使っていたライトに指を伸ばす。


 ふと、視界の端に此方を心配そうに眺めるカノンの姿が掠めた。向き直ってみると、長期間臥せって食事を与えられなくても大丈夫なように、とドッグフード丸々一袋が盛られた洗面器を前に彼女は伏せている。


 人間のように顔面筋を動かしてコミュニケーションを取る文化が薄い彼女達であるが、伏せられた目が気遣いや不安から来る物であると感じ取れる。


 「問題ない、少し眠る。何かあったら頼むぞ」


 言って、青年は明かりを消した。返事は無い。言わなくても彼女は了承すると分かっているし、事実その通りだからだ。カノンは賢い犬なので、青年は何ら心配はしていなかった。もしも自分が死のうとも、その時は最後の体力を扉を開けてやるつもりである。そうすれば、後はどうとでもするだろう。


 モルヒネが回ってきたのだろうか。アヘンから精製されたモルヒネは麻薬としての効果は薄いものの、医療用であれども効能は残している。特に、痛みに慣れて脳にストレスを受けていない青年には麻薬としての効能の方が現状では大きく働く。


 苦痛を受けて脳がストレスを感じていると、モルヒネは痛み止めとしての効能しか果たさず、副作用もないのだが、現状では痛みが無い為に脳を冒すドラッグとして働いているのだ。


 体から力が抜け、倦怠感と妙な吐き気に襲われる。慣れると虚脱感と陶酔感が去来し、他の何物にも代えがたい快感を味わえると言うが、青年には快楽は愚か、ほんの少しの安楽さえ感じられなかった。


 副作用は吐き気と頭痛などだっただろうか。あやふやな知識の中から弾き出されるのは現状に見合った症状であった。陶酔感が出るのは摂取量が30mlを越えてからの筈だ。と、なると少し早まったかもしれない。


 だが、既に麻薬は体に回り始め、力は萎えて芯が失われた。後は効果が薄れるまで横たわるのみ。


 次に目覚めるのは何時のことだろうか。もう、いっそのこと体の芯から溶けて寝台に染みこんでしまえたらとも思える。


 生きていたい、という自分勝手な願いのために無数の人間を殺してきた自分が考えるには、過ぎった考えはあまりに不適切な内容であった。


 しかし、何を今更、とも思える。生きたいという欲求に従って好き勝手に生きてきたのだ。で、あるのならば心の中も自由で居てもいいだろうに。


 楽に生きていくために、何かに意味づけをしたいが故の思考なのだろう。意味の無い事にばかり注力して、それに雁字搦めになる。人間とは、何処までも惨めな生き物だ。


 青年は苦笑を浮かべつつ泥のような眠りへと真っ逆さまに墜ちていった…………。











 和室があった。南側の半面を襖、もう片面を押し入れとし、その対面である北側にベランダへと続く大窓を持つ十畳ほどの広さがある和室だ。


 藺草は相応に古く、部屋に置かれた箪笥や本棚などの調度品は古びているが丁寧に掃除されており、西側の小窓の脇に設置された古い型の学習机などは古びていても痛んではいなかった。


 甲高い電子音が響き渡る。不愉快に神経を逆なでする、耳を劈き木霊する忌まわしい音は学習机の上に置かれた目覚まし時計が発する物だ。断続的にアラームを鳴らす時計は、無機質なデジタル表示板に六時と表示させている。


 驚くほど物が少なく保たれた部屋の中央部に蒲団が敷かれている。これと言った特徴も無い普通の蒲団だ。一定の間隔で日干しされているだろうそれは、真っ白に清潔で染み一つ無い。


 その蒲団に埋もれるようにして寝ていたであろう住人が電子音に刺激されて意識を覚醒させる。枕を置き去りにして頭を殆ど蒲団の中に埋没させていた人間が、体を蠢かせて蒲団より腕を突き出した。


 細く痩せた腕。手首は浮き彫りになっており、薄い筋肉のラインが前腕部へと伸びている。これまた細い指が伸びる手は、僅かな産毛も生えて居らず男性の物である事を伺わせない。


 腕に引き続いて上半身が引き抜かれた。暖かさに後ろ髪引かれながら這いだしたのは、胡乱にぼやけた視線を留めようともしない寝起きの青年の物だ。


 瞳は眠さで半眼に開かれて鋭さを増し、適当な長さで整えられた頭髪は寝癖で野放図に跳ねている。衣擦れの音を響かせながら、青年は作務衣で覆った痩身をどうにかこうにか外界へと露出させた。


 春先とはいえ朝方は冷えるし、寒の戻りか最近は気温が低い。何時になれば気分良く蒲団から這い出せる事やら、と考えつつ、青年は目覚まし時計のアラームを止めて定位置へと戻した。


 数度頭を掻きむしる。習慣として毎日風呂に入っているので雲脂が汚らしく散ることは無く、艶やかな黒髪が揺れた。


 「朝か……起きねばな」


 誰とも無しに呟いて、襖に手を掛ける。さっさと起きて支度をしなければ、時間は過ぎてしまう。例時間は母親ではないのだ、例え準備が済んでいなくともあっさりと流れて予定を達成不可能にしてしまう。


 漸く少年から青年と呼ばれる年の頃のになった青年は多くの日本人の例に漏れず大学に通っている。可も無く不可も無く、どちらかというと平均より少し上と言った程度の大学に通う二回生である。


 学ぶのはこの社会を律する法。現代人として生きるのであれば、無視して通れないというに詳しく知ることが能わぬ難解な制度にして学問であった。


 一匹の学徒は静かに階段を下りていく。三階にある自室の前には廊下というにも狭すぎる廊下があり、そこは四階に続く扉と祖母の寝室、そしてトイレと二階への階段が続いている。都会にありがちな、土地が無いから縦に伸びざるを得なかった有り触れた戸建ての家だ。


 階下からは鼻腔を擽る芳醇な出汁と味噌の香りが漂ってくる。それに混じっているのは白米が炊ける芳醇な臭いだ。無意識の内に口腔の中を唾液が伝い、胃が顫動した。


 「おはようございます……」


 「ああ、おはようさん」


 低調な挨拶を投げかけると、老人特有の甲高さとしわがれた調子がない交ぜになった返事が返ってくる。台所に立っていたのは青年の祖母であった。


 老いによって縮んで随分と小さくなった矮躯に割烹着を纏い、銀と灰が混ざった頭髪は僅かにカールしてうねりを宿す。年老いて老木のように無数の皺が刻まれて尚愛嬌を感じさせる顔は、孫の起床に綻んでいた。


 「朝ご飯、早う食べてまいな。今日も速いんやろ?」


 長方形に長い家、二階は1:2の割合でキッチンの方が長く、北側にある居間には既に朝食が用意されていた。大きな座卓の上には箸置きや湯飲みが用意されており、キッチンに置いてあるテーブルの上に置かれる盆には小さなタッパーに入った佃煮や焼き魚が載せられていた。


 返事を返しつつ、居間の近くにアコーディオンの扉で仕舞われている洗面所に立つ。丁寧に掃除されて曇りの無い鏡に、眠そうで景気の悪い顔が映っていた。


 自分の顔を見ていて楽しいと思う気質でもなく、洒落っ気に溢れている訳でも無い。手早く顔を洗い、口を洗浄液で濯ぐ。青年は、歯は食後に磨くと決めているので今の時点では歯ブラシに手を伸ばしはしない。


 朝の身嗜みを終えると青年は盆を居間へと運んでいき、乗せられていた物を全て降ろして盆をキッチンへと返す。青年の定位置は居間である和室の入り口側手前、テレビが少し見づらく、何か用事がある度に言いつけられる位置である。


 盆を返しに行く時、祖母が小ぶりな黒い弁当箱に厚焼き卵や鳥の照り焼きを詰めているのが見えた。学食は混むし、外食すると高いので青年は弁当を毎食頼んでいるのだ。


 その弁当に倍する大きさの弁当が完成した状態で並んでいる。彼の父親の物だ。今はあら熱を取るために蓋が開かれている。暖かいままで蓋をすると、途中で傷んでしまうから弁当は冷ました状態でおかねばらなない。


 盆の代わりに茶碗と椀に盛られた白米に味噌汁を受け取り居間へととって返す。今日の味噌汁はワカメと細切りにした大根で、白米には麦が混ぜられていた。


 席に着き、手を合わせて食前の感謝を述べてから箸を取る。炊きたての白米は、先月祖母たっての要望で買い換えられた炊飯器の効能か、非常に柔らかく暖かであった。


 テレビの電源を付け、早朝のニュース番組に目を通す。これといって見る物は決まって居らず、適当に流れていた物を見るだけだ。


 芸能ニュースを鰺の一夜干しを解体しつつやり過ごし、味噌汁を啜ってファッションニュースを右から左へ。新しい映画の宣伝にだけ僅かに意識を傾けながらイカナゴのくぎ煮と白米の甘さに舌鼓を打った後、唯一の関心事である天気予報にのみ目を通して最後に沢庵を囓った。


 今日は一日晴れ、素晴らしい天気になるだろうと天気予報士が作った態とらしい笑みで告げた。その後に続く、お花見スポット特集を見ること無く、チャンネルを国営放送へと変えておく。もう自分は見ないが、この後にやっている朝の連続テレビドラマを祖母は楽しみにしているのだ。


 食後の感謝を告げ、食器を束ねてシンクに置く。時間がある土日の昼食時や夕飯なら自分で洗うのだが、朝だけは忙しいので祖母に任せる。美味しかった? と問われたので、青年はくぎ煮が良い具合だったと返答し、洗面台で歯を磨いた。


 後は、出かけるべく着替えようと階段に足を向けたのだが、上から軋みが聞こえてくる。体重移動に気を遣ったそれは、小さな音だが人が降りてくる際に発するそれだ。


 青年は僅かに湾曲して上へと続く階段の初段から脚を下ろし、暫し待った。縦に細長い家の階段は相応に狭く、成人男性がすれ違うには少々辛い。


 暫し待つと、階段とキッチンを隔てる壁の向こうから一人の男が現れた。上背は190近く、短く整った頭髪と鋭い狐目が特徴の中年の男性。彼は青年の父親であり、居間にて包丁を振るう祖母の義息であった。


 「おはよう、親父殿」


 「ああ、おはよう」


 ともすれば、その筋の人間だと思えるような風貌の父親に、要素要素を見れば似ていると言えなくも無い息子が言葉をかけた。父親も鋭い目で睨め付けるように息子を見つつ返事をする。


 挨拶が妙に硬いが、親子仲が悪いという訳では無い。むしろ、最近の希薄である事がデフォルトな親子仲と比較すれば遙かに良い方だ。ただ、父親の目は鋭すぎるだけなのだ。


 筋物ですら怯みそうなきつい容姿であるが、これでも父親は法律事務所の事務職員である。今は着古されたスウェットなんぞを着ているが、スーツに着替えると威圧感が増してますます筋物にしか見えなくなる。


 「早いな、一限からか」


 「いや、新人勧誘」


 息子の起床の早さの原因を問い、返答を聞いて得心いったと頷く。何か覚えでもあったのであろうか。


 「そうか、気張れよ」


 「まぁ、適度に」


 父親が道を譲り、息子は自室へと帰る。流石に部屋着で大学には行けないからだ。


 青年は部屋に戻ると箪笥から着替えを取り出して手早く身に纏った。暗灰色のシャツ、同系統で僅かに濃いスラックス。軽くマフラーを巻き付け、ジャケットを着込む。


 ジャケットの右ポケットには適度な金銭を納めた財布を。右の後部ポケットには定期や学生証、免許証を収めたパスケース。そして、左手には入学祝いに貰った小洒落た時計が巻かれている。


 お洒落に気を遣っている訳では無いが、地味でも無く垢抜けても居らず、そして人を不愉快にすることも無い無難な装いを整え、青年は満足したのか鞄を引っ掴み部屋を後にする。鞄にも昨夜の内に準備を整えて荷物が詰め込んである。


 静かにリズム良く階段を下り、一階へと続いている階段の前に一旦鞄を置いた。


 「御夕飯は家で食べるかい?」


 遅くはならないのでお願いします、と答えて青年は居間へと入り、胸元まである高さのキャビネット、その上に置かれた小物入れを漁り始める。テレビが尤もよく見える特等席に座った父親は、新聞から僅かに顔を覗かせながら、車か、と呟く。


 「ああ、使っても?」


 「今日は構わん。だが、明日は使う」


 了解と呟き、リモコンと一揃いの車の鍵を探り出す。使う予定なのは今日だけだ、明日は電車で行くので問題ない。


 「じゃあ、行ってきます」


 言って、鍵を指先で弄びながら一階へと向かう。その背を父親と祖母は静かに見送った。


 「ああ、気をつけてな」


 「お早うお帰り」


 土間の隣に設けられた壁に埋め込まれてある靴箱に備えられた姿見でちらと己の姿を確認し、可笑しな所が無いと確かめてからハーフブーツにも革靴にも見える靴へと足をねじ込んだ。


 そして、鍵を開けて表に出ようとすると……その直前に、扉が独りでに横へと滑った。


 無論、自動ドアという訳では無い。単純に、対面、つまり外側から鍵を開けたタイミングで誰かが扉を開いたのだ。


 「ああ、おはよ。学校?」


 金属合板を幾つも組み合わせた、何処か洒落たデザインの戸の向こうに立っていたのは自分の母親だ。真っ白なスプリングコート、その下に纏ったドレスのようにも見える豪奢なデザインのワンピース。ピンヒールは身長を二割増しにして青年より高い位置へと頭を運ぶ。何とも豪華な服装をした妙齢の女性は青年の母親であった。


 今年で五〇を向かえるにしては随分と若々しい、面長で上品な容貌には疲労隠しの化粧が施されている。ファンデーションの下には明確な隈が隠されていた。


 「ああ、お帰りお袋」


 「ん、通してくれる?」


 母親は指に引っかけていた鞄をひらつかせながら玄関へと入り込む。青年は、今日も夜勤だったかと思いつつ入れ替わるように表へ出た。彼の母親は看護師であり、ここから角を一つ曲がった所にある病院に勤務しているのだ。どうやら、今日は夜勤のシフトであったらしい。


 「んじゃ、行ってらっしゃいね愛しい息子。おかあちゃん、今日はもー寝るから」


 閉じゆく扉の向こうから、凛とした母親の声が聞こえる。二〇年間聞き続けた声だが衰えが感じられないのは己が親の事ながら感嘆させられる。


 返事をする間もなく戸は閉まり、鍵がかけられた。そして、乱暴に廊下を歩いて階段を踏み越えていく音が聞こえてきた。


 暫し扉を見やって元気な親だと感心しつつ、考えをまとめて車のロックを解いた。後部のトランクを開け、矢鱈と存在感がある焦げ茶色の皮が張られたケースの姿を確認する。万が一を思って揺するが、確かな重さが感じられたので荷物を収めた鞄を放り込んでからトランクを閉じた。


 そして、一旦表に回って歩道と駐車場を隔てるフェンス門扉を滑らせる。


 すると、車の全景がしっかり見えた。何と言うべきか、うっすらと曇って汚れた真っ赤な車体は酷く古めかしい。何せ、青年がうんと幼かった頃に購入された車だ。既に一五年落ちのオンボロ車は所有者である父親も面倒くさがって手入れを放棄している。


 まぁ、動くならばそれでいい、と一種の諦観を抱きながら青年は運転席に入り込む。コックピット周りの計器も十八で免許を取って以来見慣れた物だ。座席とルームミラーの位置を調節し、シートベルトを締めてからキーを挿入、軽く捻ってエンジンを起こす。


 数度、ぐずるような音を立てた後で米国製の四気筒エンジンが唸りを上げる。サターンのS2は早朝から叩き起こされてご機嫌が宜しくない様子だ。それ以前に、最低限の整備しかされていないためにエンジン性能自体が落ちているのだろう。


 買い換えた方が良いのでは無いかと思わないのでも無いが、かといって幼い頃からある車なので愛着がある。考え物だ。


 金はあるが物持ちが良く、その上に買い物を面倒くさがる父のことだ、それこそ本当に動かなくなるまで、この車と付き合うことになるかもしれないな。


 青年はそう考えながらアクセルペダルを踏み込んで、S2を緩やかに車道へと発進させた…………。











 緩やかに瞳が開かれた。仰向けに寝ていた青年の視界には暗闇だけが鎮座している。キャンピングカーは隠匿する為に運び入れた農家の倉庫に留めてあるので薄暗いが、昼ならば陽光は少しばかり入ってくる。つまり、まだ夜も遅いのだろう。


 痛みは無い。痺れにも似た感覚と、形容のしようがない怠さだけが体に重くのし掛かっている。指先を微動させる事すら億劫に感じさせる倦怠は鉛のように骨の髄へ絡みついている。いや、むしろ骨が全て鉛に置換されてしまったかのようだ。


 思考には霞がかかり、一所に纏まってはくれない。怠さの他に火照りもある。案の定発熱しているようだ。


 口の中が異常に乾き、唇は水分不足でひび割れ始めている。舌先で僅かに亀裂を産んだ唇を擽って湿り気を与えようとしたが、舌先も乾いていたのかざらついた感覚だけが返ってくる。紛れもない脱水のサインだ。


 唾液まで出なくなるほど水分が枯渇している。思っているよりも脱水症状が重いようだ。怠いだのなんだのとは言っていられないらしい。


 青年は未だ残る眠気と思考にかかる霞、そして何処までも重くのし掛かる疲労を何とか押しのけて、蒲団から腕を引き出し、ベッドサイドのスポーツドリンクへと手を伸ばした。


 ベッドサイドの一本には横になりながらも飲めるようにストローの備わったボトルキャップを装着している。震える指でボタンを押してストローを露出させ、咥える。


 苦労して中身を啜り上げると、室温が低いからか冷たさを保った液体が登ってくる。乾ききった口腔に染みいるようにスポーツドリンクは巡った。


 本来、水分補給と塩分補給を目的にするのであれば、スポーツドリンクは糖分が多すぎるのだという。だから、運動部では粉末状の物でも指定量の倍程度に薄めて飲んでいるのだが、この栄養が枯渇している状態では余分とされる甘さが有り難かった。


 代謝が盛んに行われているだろうから、カロリーは幾らあっても足りない。青年は痩せ形なので燃焼させられる脂肪分が少ない、人よりも消耗は早いのだ。


 無心にスポーツドリンクをすすり続け、少し胃が水分でだぶつき始めた頃に口を離す。最初の重さとの対比からして半分ほど飲み干しただろうか。


 おっくうだが、零すと面倒なので蓋をして、これまた重い動作でベッドサイドに戻す。そして、寝間着にしているスェットの袖で額にびっしりと浮かび上がった汗を拭った。


 その段階になって気がついたが、汗を拭ったスウェットにも大量の汗が滲み、自分でも分かる程の悪臭がした。ここまで脱水しているのだ、当然滲み出した汗も相応の量なのだろうから、スウェットの湿りも当然だろう。


 辛いな、と肉体的不可に堪えながらも、先程の夢を思い返す。何か、懐かしい記憶であったように思えた。


 そう、自分がこんな旅に出る前の事だ。まだ穏やかで、静かで、何処にでもあったであろう限りなく無価値で平凡な世界。ただ、然したる努力もなしに生存が適った時代の夢。


 あれは、何の日の記憶だろうか。車で大学に行くことは希だったので、何か車を使う用事があったはずだ。そうでなければ、ガソリン代が嵩む上に駐車場代まで必要な移動手段を定期を持ちながら選びはしない。


 確か、あれは……。


 思い返そうとすると、一息に倦怠感が加増した。背負っていた荷物が唐突に増やされた、そんな勢いでだ。どうやら、水分が補充された体が貪欲に休息を求めているらしい。目が覚めたのは身体維持の為に脳が覚醒を促したからであろう。


 そして、その要が済んだので再び休眠状態に移ろうとしているのだ。人間の肉体は不便なようで良くできている…………。











 大学のカフェテリアは利用率が高いようで低く、さりとて常に伽藍としている訳ではない。


 大学という施設の周辺には大学生需要を狙った飲食店が軒を連ね、中途半端な量の学食に頼らずとも安価で十分に腹を満たせ、舌を楽しませられる。


 しかし、大学の敷地内から出ることすらおっくうがる人間や、中途半端と思われる量でも十二分に腹を満たせる人間であればカフェテリアは悪くない選択であるし、待ち合わせには適している。故に、学生人口が多い割に利用率は少ない学食にも人は溢れる。


 そも、この学生数が満を数えるマンモス校では席数僅か五〇〇のカフェテリアでは利用率が少なくとも直ぐにパンクするであろうが、と青年は自動販売機で購入した紅茶を啜っていた。


 暖色の明かりが照らす長机が規則正しく無数に並んだ学食。クリーム色に近いテーブルの両サイドにはカラフルなプラスチック製の椅子が等間隔で並んでいた。


 学食にここまでのデザイン性は必要なのだろうかと疑問を感じてしまう学食の中で、三十人前後の人間が一堂に会していた。青年も、配食カウンターの付近に陣取る一段を構成する一人である。


 「じゃあ、コンビニ前から薬局の辺りは頼むね。えーと、で、駅前は一番人が多いから…………」


 一人の女性が長机に均等に座った一団の中央付近で声を張っている。公共の場で声を張るのは少々迷惑であるような気がするが、座席同士の間隔がある上に、机同士の合間も広いので団子になって座る事ができないのだ。大勢で集まりやすい円卓なんぞがあれば、こうして彼女も声を張り上げる必要なんぞ無かろうに。


 ふと、腕時計に目をやると時間的にそろそろ良い時間なのでは、と青年は思った。同様の事を話している女も感じているのか、語調が無意識の内に早まっている。


 「じゃあ、新入生勧誘は入学式が肝だから、頑張ろうね!」


 そういえば、説明を殆ど聞いていなかったな、と青年は思い返した。何と言うべきであろうか、末席の辺りに座っており声が聞こえづらく、その上同じような集団が学食には複数存在していたので聞こうにも聞けなかったのである。


 隣から大判のクリップで纏められた紙束が回されてきた。一部ずつ取っては横に薙がしていたのだろう、自分は一番端に座っているので一束しか無かった。


 しかして、B5サイズの用紙はサークルの勧誘ビラであった。ポップ体で踊る文字はエアライフルサークルへようこそ、という有り触れた物で、箇条書きの説明文と写真が数枚モノクロで印刷されている。


 入学式前の通学路にて配布される、新入生をサークルへと誘い入れる為のビラ。数ある大学の無数の公認、非公認サークルが人を求めてばらまく物、その中の一種類が手の中にある。団体を維持する為には所属者が必要で、それを囲い込むための物だ。


 青年はサークル活動に勤しむ性質に見えるかと問われれば、決して是と言われる者ではないが、それでもサークルに所属していた。エアライフル、競技としては日本では非常にマイナーだが、世界的に見れば割と普及しているし、オリンピック種目にもなっている競技だ。空気圧で弾丸を射出する銃を用いて的を射貫く、ライフル射撃とその性質は何ら変わらない。


 サークルに参加している理由は二つ。一つは純粋に趣味、もう一つは大学生として生活を送るに当たってある程度の結びつきがある人間が居ないのは非常にハードだからだ。


 青年は究極的に利己的な所があり、結局の所は自分が生きやすいように生きている。人に気を遣うのも、言われたらある程度従うのもその為だ。故に、打算的な人付き合いを求めて、ある程度の人間が居るサークルを求めたのである。


 所用で欠席した講義のレジュメやノート、教授の過去問や試験の傾向。これらは全て一人では得られない情報だが、大学生活を円滑に過ごしたいのならば、どれ一つとして欠かす事のできない物である。結局、人付き合いの面倒くささと単位を天秤にかけた結果、学費という巨費に響いてくる後者の方に軍配が上がったのだ。


 恐らくは一〇〇枚前後であろうかと言う束を小脇に抱え、他の者達と同じように立ち上がる。この後は割り振りに従って通学路へと繰り出し、そろそろやって来るであろう新入生達に向かってビラを押しつける作業が始まる。


 一〇〇枚と言うと多く感じるが、無くなるのは一瞬だろう。何せマンモス校だ、十以上の学部があり、学科はその倍以上に膨れ上がる。そして、少ない学科でも人数は400人を下回らない。チラシなぞ、ものの十数分で無くなってしまうだろう。新入生とて、大学生活で孤立なぞしたくないだろうからサークルの情報には貪欲だ。能動的に友人を作るのが苦手、という性質の人間には願ったり叶ったりの集団なのだから。


 サークルに参加するというのは一見能動的な行動に思えるが、実は中に入ってからは随分と受動的だ。何せ、勝手に上級生が寄ってくるし引き合わせてくれる。公認サークルも非公認サークルも人が居なければ成り立たないのだ、それはちやほやとするだろう。入った後は据え膳上げ膳纏めてやってくれるのがサークル一年目なのだ。とはいえ、二年目からは自分がやる側なので面倒とも言えるが。


 ぞろ自分達と同じようにビラやら看板、後は茶目っ気出した連中が仮装なんぞを用意して通学路へと向かい始めている。中には何のサークルか分かりやすいようにユニフォームなんぞを着込んでフル装備の者達も居た。自分達にはユニフォームと言えるユニフォームは無いし、ゼッケンは大会で配られる物だ。それに、エアライフル担いでビラ配りは難しい。出力が1J以上あるから銃刀法に引っかかるのである。流石に学校の行事の間に部員がしょっ引かれる等と言う事態が起これば、下手をしないでも活動停止処分が下されかねない。


 青年が自分の割り当ては何処であろうかと首を傾げながら食道を出ようとすると、その肩を引っ掴む者が居た。


 振り返ると、淡い栗色に髪を染め、人懐っこい笑みを浮かべた男が居た。如何にも大学生、と言うように最近流行の妙にだぼついたズボンやベストを着込んでいる。


 どうやってセットしているのか青年にとっては想像し難い四方八方へと自由に跳ねた毛先を揺らしながら彼は言う。


 「うーっす、同じ場所だなー」


 なる程、此奴の後に着いていけばいいのだな、と青年は適当に頷きながら考えた。自分が聞き逃しても、誰かが聞いている物だ。


 とはいえ、往々にして誰かが聞いている事を期待して聞き流していると、誰もが同じ考えをしていて誰も聞いていなかった、なんて事態も起こりえるのだが。


 「まぁ、俺等はあんまり多くない方の駅だからな。そんなに忙しくねーだろ」


 この大学に接続する駅は二つあり、一つは大学からほど近く徒歩で七~八分程で、其方の駅を殆どの学生が使う。大阪府内を通り、もっともアクセスの便が良い環状線に接続しているので、必然的に利用者は此方の方が多くなる。


 もう一方には人が比較的少なくて、大きなキャンパスの東側にだけ用がある人間が使う。此方は到着にまで一五分程を要する上に地方路線なのでアクセスが限定されており、仮に使えたとしても好き好んで使う物は居ない。故に、この晴れの日であっても利用する学生は少ないのだ。


 それでもチラシは配り終えられるだろうか、と青年は手元を見下ろして考える。学部の下部団体として存在している研究会と違って、このサークルに学部の隔たりは無い。全ての学部から満遍なく参加者が居るのが特徴と言えよう。


 何とかなるか、と溜息を付きながら歩きつつも、目線は何かを探していた。殆ど無意識ながら、人混みの中、エアライフルサークルの所属者が集まっている一団を探る……。


 「先輩捜してんの?」


 泳ぐ目線を察知して隣を歩く知人が言う。この男は割と異性からの受けが良く、常に女性と共に居る部類の人間なのだが、こういった目敏さが好感を得るコツなのであろうか。


 「先輩、と言われても我々は二回だ。先輩と言える存在は二桁単位で居るのだが」


 「お前ね、代名詞とかで会話できない人じゃないでしょ。流行のアスペか」


 アスペと連呼するのは思考停止だぞ、等と吐き捨てる様に言いながらも、目線は未だに何かを探るように動いていた。


 人混みから少し抜ける頭、頭頂部より少し後ろにて束ねられた艶やかな黒髪が揺れる後ろ姿を探していた。


しかし、普段ならば直ぐに見つかる姿は全く見つからなかった。今日は全員集合の上に、二月以上前から予定を開けておくように通達が来ていたので、来ていない事はないという筈なのだが……。


 「先輩なら、勧誘席割り当てだから、最初から此処には来てないぞー」


 最早惚けたように誰かの姿を追っている青年の後頭部に束ねたビラの裏面が軽く叩きつけられた。青年は整髪料を用いないので、使っても紙面が汚れることはない。


 「早く言え」


 「前提として話を聞いてろ」


 振り返り、言葉尻としては憤懣やるかたないとでも言いたげであったが、その表情も何も揺るぎはしない。仏頂面の鉄面皮のままの青年を見て、ビラを持った彼は妙な笑いが出てきた。


 同じサークルの所属者なので付き合いはそれなりに長いが、この青年のちぐはぐさは見ていると不気味さを覚えるも、慣れるとコミカルに思えてくるので不思議だ。人間は理解できない物を恐れるが、その恐れは慣れると妙な愉快さを伝えてくる。世のホラー好きも、似たような心境なのであろうかと彼は考えた。


 「ほら、部長にどやされたくないだろ、さっさと行こうぜ」


 「……ああ、そうだな」


 新入生にビラを配り損ねた、等と言えばどのような叱責が飛んでくるか分かった物では無い。公認サークルには所属者が不可欠で、死活問題だ。人数が少なければ予算が減らされてしまったり、部室が小さい物に換えられてしまうのだから。


 二人は並び立って、同じく勧誘へと向かう人混みの中へと紛れていった…………。











 水流の中をたゆたうように意識が浮上しては沈み行き、その度に心の底に澱の如く沈殿した過去を引き上げていく。


 川底を浚う手のような夢は、過ぎ去った日々を脈絡も無く記憶の川から掬い上げて行った。


 入学式の日が来たと思えば、幼少の日に父からグローブを貰った思い出も出てくる。母親が焼くクッキーの優しい香りや、祖母がよく作っていたカボチャの煮付け。そんな物が水分不足と節々の痛みとも言えぬ軋みで途切れる眠りの合間に浮かんでいった。


 日常の残滓、かつてあった物。人間らしさを維持させていた品々。


 今では何もかもが無くなり、青年の異常性はむき出しになっている。そして、その異常性に生かされている青年にとって、それらの記憶は最早意味を成さない物であった。


 元より、人間に価値を見いだせなかった青年は生きるために異常性を抑えてきた。だから、その異常性を抑えてきた要素の記憶は枷に他ならない。


 しかし、スポーツドリンクを飲み干し、幾度目になるかさえ分からない眠りに落ちる瞬間、視界の端を、いつも通り機嫌良く揺らされる猫の尾のような長髪が揺れたような気がした…………。

 どうも、所がどっこい生きています、私です。長々とお待たせして申し訳ありません、大体二ヶ月ぶりでしょうか。


 春休み中は朝から晩まで期限ギリギリなので教習所に居て仕事以外する余裕は無く、かといって免許が取れたからと暇では無く大学に行って研究したりゼミの集まりに参加したり、新人勧誘期間に朝から晩までずっと外に出した椅子に座ってたりと過密スケジュールで死ぬかと思いました。サークルなんざ入るもんじゃないですね、少人数で特に忙しい所には。


 やる予定だった編集も進んでおりませんが、少しずつやっていけたらなぁ……と。とはいえ、今年は私も三回でゼミのグループワークが忙しいのでどうなるか分かりませんが。とりあえず、今年中に完結させる事を目指そう。


 感想やメッセージ、大変励みになっております、皆様ありがとうございます。しかし、お気に入り1300件ってどういうことなの……なんかもう怖いわ。感想返信が進んでいなくて申し訳ありませんが、全て読んでいて励みになっています、これからもよろしくお願い致します。それでは、また次回まで気長にお待ち下さい。

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