第60話 農業ギルドに納品
次の日。
そろそろ結構な量と種類の作物がアイテムボックスに溜まりだしたので、ここらへんで一旦まとめて売却することに決めた。
朝ごはんがてら味噌と米の試食ができるものを作ろうと思い、昨日と同じく松茸ご飯と豚肉と玉ねぎの味噌マヨ炒めを作り、一部をアイテムボックスに取り置きする
食べ終わると、納品作業に手間取らせないようにしようと思い、あらかじめ作物ごとに分けてワイバーン周遊カードに収納した。
それから、農業ギルドへと足を運んだ。
「いらっしゃいませ、マサト様。今回も作物の納品ですか?」
「ああ」
「またワイバーン周遊カードに入れてきたんでしょうか? あと、鑑定士はお呼びした方がよろしいでしょうか」
「ワイバーン周遊カードに入れてきてはいるが、新しい作物とか調味料があるからな。鑑定士は、一応呼んでもらった方が良いかもしれない」
「承知しました! もちろんお呼びします! こちらへどうぞ」
軽く話したら、いつもどおり俺は奥の部屋へと案内された。
それから少し待っていると、キャロルさんが鑑定士を連れて部屋にやってきた。
「今回は何を納品なさるんですか?」
「今回は麦、大豆、人参、玉ねぎ、じゃがいも、ごぼう、里芋、焼酎、酢だな。あと、米っていう穀物と松茸、それに味噌っていう新しい調味料も試作したから、売れそうかどうか判断してほしい」
鑑定用に人参、玉ねぎ、じゃがいも、ごぼう、里芋、焼酎、酢、米はワイバーン周遊カードから、松茸と味噌はアイテムボックスからそれぞれ最小限ずつ取り出した。
「これらが今回お主が初めて納品するものか。それではいざ、鑑定させていただこう」
鑑定士はそう言って、興味津々な目つきを納品物に向けた。
……そういえば、俺もこれらを鑑定してなかったな。
同時にやってみるか。
計8種類の野菜や調味料を、全部同時に鑑定してみる。
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●エリミネートリンクル
ウルトラβカロテンを豊富に含む人参。
食べれば寿命間近の人でも皺が一切なくなる。
もちろん、味も最高品質
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●超抗菌玉ねぎ
ウルトラアリシンの効果により免疫力が天元突破する。
細菌性、ウイルス性の病原体を完全無効化するのみならず、瘴気や呪詛もほぼ無効化する。
また、呪詛をかけようとした者が近くにいる場合、この玉ねぎを食べた人が狙われるとかけようとした者に呪詛がはね返る。
もちろん、味も最高品質
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●精神安定芋
ウルトラビタミンB6の働きにより、神経伝達が強力に健全化される。
それにより、あらゆるストレス・怒り・不安といったあらゆる負の感情を無に帰す。
もちろん、味も最高品質
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●ホーリーバーダック
聖なる食物繊維を豊富に含むごぼう。
完全なる整腸作用を持つだけでなく、既に蓄えられてしまった皮下脂肪・内臓脂肪にまでアプローチして体外排出するため強力なダイエット作用がある。
かといって、身体に必要な分は排出しないので安心して食べられる。
もちろん、味も最高品質
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●力の根源
ウルトラガラクタンを豊富に含む里芋。
そのタンパク質は体力にも魔力にもなり、一個食べるごとにVIT、STR、INTが10ずつ上がる。
もちろん、味も最高品質
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●痛風予防焼酎
負のプリン体を豊富に含む焼酎。
負のプリン体は他の食物から摂取してしまったプリン体を打ち消すため、強力な痛風予防効果が期待できる。
もちろん、味も最高品質
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●癒やしの酢
究極酢酸を豊富に含む酢。
一日15ミリリットル以上摂取すると、単位時間あたりのHP、MP自然回復量が本来の100倍になる。
もちろん、味も最高品質
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●アミロ17
類まれなる能力を持つ究極の農家・新堂将人がシルフと共同開発した新種の稲。
味・食感が人間の味覚に最適化されている。
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●抗がん味噌
ウルトラ脂肪酸エチルを豊富に含む味噌。
この味噌に含まれる酵母には強力な環境適応能力があり、どんな調理方法でも決して死なない。
毎日味噌汁一杯分摂取していれば癌にかかることはない。
発症前であれば、白魔病の予防も可能。
もちろん、味も最高品質
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●腐生性松茸
類まれなる能力を持つ究極の農家・新堂将人がシルフと共同開発した、人工栽培可能な松茸。
同じ原木から百回収穫しても同じクオリティのものが取れる。
味も最高品質。
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表示されたのは、このような鑑定文だった。
うん。ある程度は予測していたが、色々とツッコみたい気分になる鑑定結果だったな。
まずエリミネートリンクルと力の根源。
お前らはなんでそんな名前になったんだ。
人参や里芋であるという情報が名前に一ミリも入ってないじゃないか。
いろいろと特殊効果があるのはいつものことだが……特にヤバいのは、精神安定芋か。
「あらゆる負の感情を無に帰す」って、こんなもん前世の精神科医とかが見たら卒倒もんだろうな。
逆に力の根源は、ちょっとショボい気がする。
各種パラメーターの上がりかた、10ずつか……。
もちろん「一個あたり」なので塵も積もれば山となるのだが、にしても生涯にこれで上げられる値って、頑張って食べまくっても数十万とかじゃなかろうか。
まあ、そもそも食べ物でステータスが上がること自体特殊なんだから、味さえ最高なら度合いがショボいなんて全然些事ではあるのだが。
そしてなんと言っても、アミロ17と腐生性松茸よ。
いちいち鑑定文に「類まれなる能力を持つ究極の農家・新堂将人がシルフと共同開発した」って入れるの本当にやめてくれ。
この鑑定文を目の前の鑑定士も見てると思うと結構恥ずかしいんだが……。
せめて枕詞は無しで「新堂将人が~」で良かったのでは。
あと名前、俺が超魔導計算機でつけたファイル名がまんま反映されるんだな。
同じ原木から百回収穫しても同じクオリティのものが取れるのは完全に想定外だったので、帰ったらそれをやっておこう。
何気に俺たちにとって一番重要なのは、抗がん味噌かもしれないな。
白魔病が再発しやすい病なのかどうかは不明だが、発症予防になるのだとすれば、たとえこのギルドで売れない判定になったとしてもヒマリのお母さん用に大量生産する価値がある。
そんな感想を抱いていると……鑑定士が口を開いた。
「どれもこれも、とんでもないものばかりじゃわい……。もちろん、全部コール経由でしか販売できぬなあ……」
ま、それはそうだろうな。
「あとお主、作物の品種改良にまで手を出しておるのか。類まれなる能力を持つ究極の農家……鑑定にまでそう言われるとは、大したものじゃのう」
できればそこには言及しないでほしかったのだが。
「品種改良……いったい何をなさったんですか?」
「稲と松茸だ。稲は人間の口に合うように実の性質を変えて、松茸は人工栽培が可能なように菌根性から腐生性に変えた」
「ま、松茸を人工栽培ですか!? あれってどうあがいても人工的には増やせないキノコの筆頭みたいなものだったはずじゃ……」
「もともとはそうだった。だから、そうじゃなくした」
「簡単に言いますけど、それができること自体おかしいですからね……」
「それに、同じ原木から百回も育てられるなど自然の摂理を逸しておるわい」
「え゛……何の話ですかそれ!?」
その点については、俺も鑑定文を見た時同じ感想になったな。
百回もとなると松茸の質量が原木の質量を大幅に超えると思うんだが、質量保存の法則は一体どこへ消えたのか。
……まあいいか。
そんなことより、大事なのは売れるかどうかだ。