第57話 松茸料理
献立はもちろん、収穫したての松茸料理だ。
初めてなんだし、とりあえず今日はシンプルに炭火焼きで食べたいかな。
「超級錬金術」
ヴィアリング海産のクソデカハマグリを焼いた時の七輪だと、松茸を焼くにはデカすぎるので、普通サイズの七輪を新たに錬金する。
アイテムボックスからピュアカーボンツリーの幹を取り出すと、それの一部分を今しがた作った七輪に入るサイズに細かく割った。
「超級錬金術」
七輪の中に炭をくべると、アイテムボックスからビールを一本取り出し、アルコールのみを抽出する。
そうして作った純度100%のアルコールを炭にかけ、着火した。
良い感じに炭火が落ち着くまでには数分かかるので、その間に松茸の下処理をするとしよう。
アイテムボックスから松茸を10本取り出すと、浄化魔法で泥と汚れを完璧に除去する。
それから、石づきという松茸の根元の固い部分を包丁で削ぎ落とした。
傘に軽く切れ目を入れてから縦に真っ二つに裂き、半分になった松茸の傘の部分にはさらにもう一回切れ目を入れる。
最後に軽く塩を振って、下処理は完成だ。
そうこうしているうちに七輪の火が良い感じに落ち着いてきたので、早速焼いてみよう。
たった今下処理をした松茸を網の上に乗せ、上から箱をかぶせるようなイメージで結界5枚で七輪の上を覆う。
これはオーブントースターで焼く感じの火の回り方を再現しようと思ってやってみることにした。
ただもちろん普通の結界だと酸素が足りなくなって火が消えてしまうので、今回は「熱は反射するが空気は通す」という性質の結界で上を覆ってみた。
5分ほど経つと、松茸から水が出てき始めた。
これはそろそろ焼き上がりの合図だ。
確か、松茸の焼き加減ってやや生に見えるくらいがベストだったな。
多少本当に生だったとしてもVIT的に健康被害はありえないので、そろそろ一本食べてみよう。
結界を解除し、松茸を一本手に取って、下処理の際に傘に入れた切れ目から割いてみる。
すると、繊維の間から香ばしい香りが立ち昇ってきた。
口に入れ、噛んでみると……高級キノコらしいシャキッとした歯ごたえがするとともに、キノコの旨味が口の中に広がった。
……うん、これだこれ。まるでシャトーブリアンとか出してるタイプの一流レストランにでも来たような気分だ。
幸せな気分に包まれながら、松茸をゆっくりと噛みしめる。
そんな最中、ヒマリが話しかけてきた。
「マサトさん、いつも以上にゆっくりと噛んで味わってますね。それ、そんなにおいしいんですか?」
ヒマリの目はこれでもかというくらい期待で輝いていた。
「ああ。良かったら食べてみるか?」
「もちろんですー!」
試食を促すと、ヒマリは満面の笑みで網の上の松茸を一個手に取った。
「こうやって食べるんだぞ」
俺も次の松茸を取り、傘の切れ目から割いて食べ方をレクチャーしてみせる。
「へえ、確かにそうやったらふんわりと良い香りが漂ってきますねー!」
「だろう?」
ヒマリは割いた松茸を両方いっぺんに口に入れた。
「ん~~まい!」
はしゃぎ気味で松茸の味を堪能するヒマリ。
これ、ドラゴンの口にも合うもんなんだな。
もしまたヒマリのお母さんに会う機会でもあれば、世界樹や浮遊大陸のお礼に松茸料理を振る舞うとしよう。
あまりに美味しいため、今焼いた分の松茸は一瞬にして全部食べきってしまった。
ちょっと物足りなかったので、追加で10本焼きつつ、ビールとともにその味を楽しんだ。
松茸単体でも美味いが、次はご飯とともに何か合う料理を作って食べたいな。
そんなことを考えながら、俺はベッドに横になった。