第23話 畑の整理とか
ワイバーン周遊カードを渡した後は、コールが作物を収納するのを見届けた後、利益分配などについての契約書を交わして倉庫を出ることになった。
ちなみにコールは、ワイバーン周遊カードに俺の収穫物を全て詰めていった。
コール曰く、移動系の周遊カードの場合「収納+ワイバーンでの移動」で回数を1消費したことになるらしく、収納と取り出しのみをしている限りは永遠に使えるそうだ。
まあそれを聞いて俺は、「使いきったらいつでも新しいカードを取ってくるから、移動にも遠慮なく使え」と言っておいたのだが。
「もったいないですよ」みたいな反応だったので、今度会った時には10枚くらい一気に渡した方がいいのかもしれない。
そして売り上げの配分だが、作物の売り上げのうち20%はコールに、5%はギルドに、そして75%が俺に配分される契約になった。
キャロルさん曰く、専属行商人を挟むと、どうしても経費の関係で中間マージンの率が高くなってしまうとのこと。
確かに、日本の農協と比較すると、25%の中間マージンを取られるというのは気持ち高めなのだろうが……まあコールには、生産者保護の点で諸々のリスクを負ってもらうことになるんだしな。
それくらいはいいとしよう。
倉庫を出ると、俺とキャロルさんは農業ギルドの本館に戻った。
そして俺は、次に植える作物として、小麦の種籾を80kgほど購入した。
これで12万イーサ払い、手持ちのお金は残り18万イーサとなってしまったが……まあ近いうちに何かしらの収入が入るだろうし、そこまで食つなぐだけなら心許ない金額でもないだろう。
ちなみに小麦にすることにしたのは、なんとなく今天ぷらを食べたい気分だったからだ。
キャロルさんからは、「今の時期に小麦を植えるって冗談ですか……」と言われてしまったが……二回ほど成長促進剤を撒けば、本来の成長段階に追いつけるんだしな。
今後はあまり時期とか気にせず、好きな時に好きなものを育てるつもりだ。
◇
農業ギルドを後にした俺は、スキル「飛行」で自分の畑まで戻ってきた。
畑に戻ってくると、俺はドライアドの通信を介してヒマリに連絡を入れた。
『ヒマリ、今からならアルヒルダケを育てられるが……来るか?』
とりあえず、既存の作物についてはひと段落ついたからな。
ダンジョンでの別れ際、アルティメットビニルハウスを使う際は呼んでくれと頼まれていたので、その連絡を入れようというわけだ。
今のタイミングで呼んでおけば、ヒマリが飛んでくるまでの間に畑の整地を終えて、到着と同時にアルティメットビニルハウスの設営を始められるだろう。
『待ってました! すぐ行きます!』
早速ヒマリからは、そんな元気のいい返事が返ってきた。
じゃあ早速、こちらは畑の後始末に取り掛かるとしよう。
「みんな、まずは支柱を抜いてきてくれ」
「「「りょーかーい!」」」
まず俺は、ドライアドたちと手分けをして支柱を回収した。
ドライアドたちはたちまち支柱を一か所に山積みにし、十分も経たないうちに支柱は全て集まった。
「収納」
支柱を全部アイテムボックスに送ると……畑に残るは、枯れかけのトマトと大豆のみとなった。
問題は……これをどうするかだよな。
パッと思いつくやり方としては、焼畑農業をして草木灰に変えてしまうやり方だが……火元に「ナノファイア」でも使おうもんなら、植物が燃えるどころか畑全体が溶岩になってしまいそうだし。
一本一本抜いていくしかないのだろうか。
そんなことを考えていると、ドライアドたちがこう耳打ちした。
「あれもあめでなんとかなるよー!」
「ぜんぶ、ひりょうにかえせるよー!」
雨で……肥料に?
雨って恵みの雨のことだよな。
あれでどうやって処理を……あ、そうか。
そういえばあの恵みの雨って、育って欲しくない植物を排除する効果もあるもんな。
その排除対象に、今度はトマトと大豆を入れるということだろうか。
「げんみつにはちがうよー」
などと思案しているとドライアドのうち一体にツッコまれてしまったが、とりあえず大ざっぱには合っているようなので、任せてみることにした。
「じゃあ、頼む」
「「「はーい!」」」
するとドライアドたちは、いつものように祈りだす。
すると雲が形成され、雨が降りだし……残っていた植物は、みるみるうちに溶けていった。
絵面はなかなか恐ろしい雨だが、頼もしい雨だな。
「厳密には違う」というが、何が違うのか気になるし……ちょっと雨雲を鑑定してみるか。
「鑑定」
すると、こんな説明文が表示された。
———————————————————————————————————————————
●ドライアドの還しの雨雲
ドライアドが祈りを捧げることによってしか出現しない、奇跡の雨雲。
この雲から降る雨は、あらゆる植物を分解し土を肥えさせる。
畑にこの雨が降った場合、次期は堆肥が不要に。
———————————————————————————————————————————
確かに、雲の種類からして違うようだ。
これで堆肥がいらなくなるんなら、処理も早くできる上にコストカットにもなって一石二鳥だな。
などと思っているうちにも、畑は完全に何も生えていない畝状態になり、雨もやんでいった。
「ありがとう、すごい雨だな」
「えへへ〜」
「ほめられた〜」
ドライアドたちが照れ笑いする中……ふと空を見上げると、一体のドラゴンがこちらに近づいてきていた。
麦の種籾を撒き終える程度の時間はあるかと思ったが、想定以上に早く来たな。
親の命が助かるチャンスというこだし、相当待ち遠しかったってことか。
しょうがないから、ビニルハウスの方を先にやるとしよう。
「面白い」「続きが気になる」と思ってくださったらブックマークと広告下の「☆☆☆☆☆」からの応援お願いします……!