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第70話 ゴリラ型魔物VSღ○<д■ว▼〆Э②



「ウホッホォォォォォォ!!!!!」



──ドドドドドン!!!



「くっ...!」



やさ男さ...いや、ゴリラ型魔物はドラミングをする。その衝撃波に私は僅かにたじろぐ。


『アヤネ選手は大丈夫何でしょうか!?』

『あのゴリラはドラミングをすることで攻撃力を上昇させるのじゃ!ただでさえ強い魔物じゃ...アヤネよ諦めてもいいとワシは思うぞ?』

『...。』


「...。」



解説と言うよりは私の身を案じて説得しているように思う。ただ、やさ男さんもこんなことになるなんて思ってなかったと思う。



「ウホウッ!!」

「っ!?がふっ...!!」



──バシンッ!



──ザザァァァァァ...!!




「はぁ...はぁ...。...ふぅ。」



腕に弾かれる直前、自分から飛ばされにいくことで勢いを殺す。それでもHPは半分まで削られてしまった。



「ウホッ!ウホッ!!」



──ドゴンッ!ドゴンッ!!!



地面に穴を開けながら私の方に走ってくる魔物。



「っ!はぁ!!...うそっ!?」


──ガキッ...ンッ...!


「ウホッ?」



突進を避けつつ残っているもう一方の腕を斬りつけたが強靱な肉体に弾かれてしまった。...まさかとは思うけど魔物化の前に食べてた野菜の効果って引き継がないよね...?これはちょっと試してみないと...!



「《焔刃》!!」



──ガキッ!ボォォォ!!!!



「ウホッ!!」



──ボフンッ!!



「...やっぱりか...。」

「ウホホウホウホォォ!!!!」



──キュイィィィィン......!



燃えたことに怒り出し、変な音を立てる魔物。その音が大きくなるに連れて魔物の左腕が光っていく。


「あ、やb──」

「ウホッホォォォォ!!!!!」


──ジュンッ...!!


横飛びをしたが、右腕が掠ってしまう。ただそれだけなはずなのに肘から先がちぎれ飛んでしまった。



「ぐぅぅ!!...か、かた、な...は?」



『アヤネ!もう逃げて!!』

「すず!?」

『運営がなんとかするからもういいの!!』

「...すず...。でも、せめて刀だけは...!...っ!?」



──ギギギ...ギ...バキッ...!



本イベントで2度目に聞く金属が折れる音。あの魔物...ゴリラが折りやがったのだ。目の前でゆっくりとニヤつきながら......。



「......。」

『あ、あや...?』



彩音にとって自分の造った物は全て等しく愛する自分の子供である。そんな愛する自分の子供が目の前で悪意を感じる顔をした相手にへし折られてしまったらどうなるか......それは想像も難くないだろう。




──許さん。丹精込めて造った刀をわざと折りやがったな!?許さない...!!絶対に許さない!!!



──ほっほ!!憤怒の赤...じゃな。...ふむ。良いじゃろう!これでお主は───...



頭の中に響くどこかで聞いたおじいちゃんの声。



『進化条件を達成しました。』

「は?」

『進化を開始します。』

「え?なに?急に...ぃ......。」



そこでぷっつりと意識が途切れた。




────────


─────



──ピカァァァッ!!!



アヤネが黙り込み、俯いてすぐの事だった。アヤネの体が急に輝き出したのだ。あの光は見たことがある。...進化だ。



「ウホ!?ウホォオオ!!!」



──ドゴォォンッ!ドゴンッ!!ドゴォォォォンッ!!!



既に半径1mの球状にまでなっている光を殴るのはつい先程アヤネの刀をへし折ったゴリラ野郎だ。あの進化の光って無敵なんだね...。


『おぉーっと!!アヤネ選手が突如光りだしましたぁぁ!!これは進化か!!進化なのか!?!?』

『十中八九進化じゃろう。検証班が色々とやってくれとるからのぉ。まぁなぜこのタイミングなのかは知らぬがな。』

『──!』



「...彩音...。」



放送席から闘技場の中心を見下ろす涼香。その顔は悲壮感が漂っており、まるで夫を亡くした妻であるかのような顔であったとその時チラッと見ていたキョウは後からそう言った。



「グォォォォォォォォオ!!!!!!」


「「「「きゃぁぁぁあ!!??」」」」



突如として鳴り響く動物の声と観客の叫び声。動物の声の方はあのク○ゴリラ野郎かと思いきやそうではない。なら誰なのか。それはもう明確だろう。



「彩音!!」



『レイドボス:超級龍種・憤怒の焔龍王スカーレットが現れました』


『レイドバトルに参加しますか?参加 0/10000人』


「焔....龍..王......?」



全長50mを超える巨体を誇る飛龍。目は人間アバターの頃の赤とは違い金色に染まっている。そしてその目は心做しか怒りに燃えているようにも見える。

それにガクッと膝から崩れ落ちる涼香。心から愛している親友が人でない何かになってしまったことにショックが隠しきれないのだ。



「グォォォォオ!!!!!!」

「ウホッ...。」



ゴリラとの戦いは最早戦いと呼べるものでは無かった。飛龍になった彩音が空から一方的にブレスで燃やし尽くしてただけだったから。



「──れからアヤネもとい焔龍王スカーレットを討伐する!!」

「「「「「おう!!」」」」」

「正直心苦しいがあの子の為にもなるだろう!!」

「「「「「おう!!!」」」」」

「絶対勝つぞ!!」

「「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」



「...。」



呆然としながらそれを聞いていた。それもそうだ。なにせ急に現れたレイドボスだ。倒さないとこっちが危ない。



立ち上がって顔を叩く。



こんな姿を親友には見せられない。




私はあの子を止める。ただそれだけ。




『レイドバトルに参加しますか?参加 6543/10000人』




急展開過ぎる急展開...。作者でも見逃しちゃったね。

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