第69話 やさ男VSアヤネ①
『次は今何かとスレを賑わせている2人!やさ男選手VS!アヤネ選手の戦いだぁぁぁあ!!!』
『そうじゃの!アヤネは竜人化、やさ男は農家なのに勝ち進んできたよく分からんやつじゃ!だけど今日は前に生放送で見たより小さくなってると思うんじゃが...。』
『よく分からんって...。こほんっ!では、どのような戦いになるのかが楽しみですね!』
『うむ!特に農家がどう戦うのかがな!』
「俺はやさ男っつーんだ!よろしくな!」
「よろしくお願いします。」
「あ、そうだ!野菜食うか?」
そうしてインベントリから取り出したのは禍々しい紫色をした人参らしきもの。
「え、えっと有難く頂戴します...。」
「おう!今食えや!」
「ぅえ!?」
「ん?どうしたんだ?」
「い、いえ。いただきます...。」
「俺も食おっかな!」
──むしゃむしゃ...
「美味しい!?」
「だろぉ!?俺が作った野菜だぜ!?美味いに決まっとるだろう!!...うむ!美味い!」
──ポワァ...。
ん?なんか体が暖かくなってきた?
「俺の野菜はバフをかけるんだせ!?すげぇだろ!!」
「バフって確か強化するやつですよね?」
「そうだ!」
「...今から戦う相手にかけていいんですか...?」
「......。」
「......。」
「「......。」」
互いに沈黙する。
「で、でも野菜を食って欲しいし、何より他の奴は食ってくれなかったから嬉しくてな...?」
「まぁいいですけど。やさ男さんも食べてるならこれでトントンでしょうしね。」
「ん?いや、俺のはヤバいやつだからそれは違うぞ?」
「え?」
『───それでは試合始め!!』
──ムキッ...ムキッ...
「うっわぁ...。」
「これが俺が食った野菜の効果!ステータスを全て+50し、筋肉を増加させるのだぁぁ!!!」
本当にこの人農家なの...?元々あった筋肉が2倍程に膨れ上がり、私の身長の2倍程になった。
『なんとぉ!!あれはバフをかける野菜だったぁぁ!!筋肉が増し、ムッキムキです!!』
『...あれを食べればワシも大きく...。』
『ダメです!ブラキじゃさんはそのままが1番可愛いのです!!』
「「「そうだそうだぁぁ!!!」」」
『お、おう?じゃがのぉ...。』
『───!』
「女の子を殴るのは心苦しいが!野菜布教の為に!俺は優勝するのだ!!行くぞ!!」
「っ!?」
──ブゥンッ!!!
そういうと殴りかかってきた。それをギリギリで避け、距離を取りつつ刀を抜いた。
「《焔風刃》《風刃》!!」
《焔風刃》で、刀を炎で覆い、追加の風で威力を増した。さらに《風刃》を用いて炎を刀に押し込めて1.5倍の刀身をもつ炎の刀へと変化させた。
「ふんっ!!」
「っ!せい!!」
──ブンッ!
──スパッ!!...ジュゥゥゥ...
大振りの攻撃を避けてその腕を斬り付ける。その腕は傷を中心に燃えていき、継続ダメージを与えていく。かと思えた。
「効かんよ!!」
──バシュッ...
炎はたちまち消えていき、煤はあるものの火傷らしい傷は無かった。
「これも野菜の効果だ!!状態異常をすべて無効化する!!」
「まじか。」
思った以上に凶悪な野菜だな...。ただ、相手は戦闘に関しては素人なので肉体は凄くても当たらないのなら意味はない。
────
──
「むぅ...。」
相手が不満の声を上げる。それは尤もな話である。なにせ自分より明らかに弱そうな女の子に対し、一撃も与えられず、自分はどんどんHPを減らしているからだ。
「やぁ!!」
「うがぁぁあ!?」
──ズパンッ!!......ボトッ...。
体自体が硬い為、ひたすら同じ場所を斬りつけていた私。それが幸をなし、右腕から先が飛んでいった。
「くっ...これはひとつしかないから使いたく無かったが!!」
「!!」
「魔物のフンを配合した肥料を使ったジャガイモよ!俺に力を分けてくれ!!」
──バクンッ!!
やさ男はジャガイモという名の虹色の物体を一口で頬張り、飲み込んでいく。
──ピカァァァア!!!
虹色の光から姿を現したのは魔物!?
「フシュゥゥゥ...!!...フシュゥゥゥ...!!」
『な!!魔物!?魔物が現れましたぁぁあ!!!これは一体!?』
『ふむ...。奴は魔物のフンを配合した肥料を使った、と言っておったな?』
『はい。』
『多分それがいかんかったのかもなぁ...。』
『そ、それではもう戻らない...と?』
『効果が切れれば治る...と思う。』
『なんですかそれ!?』
『仕方ないじゃろう!ワシも初めて見たんだから!!』
『────!!』
「マオさんの狂化よりもヤバそう...。」
見た目はゴリラそのもの。ただ、大きさはその5倍ぐらいはあるけど。
「腕が治ってないのが幸いかなぁ...。」
さっき斬り落とした右手がない。それだけでも十分だろう。だが...
「なんかオーラっていうか...闘気が凄い...。」
これは強敵だ。