第67話 カインVSマオ②
「──さぁ、本番だ。」
膨張して今にもはち切れそうな黒い肉体を持ち、3mの高さから見下ろす眼光は真っ赤に光っている。そして、狂化前には両手でしか持てなかったであろう斧が片手で握られている。さらに、インベントリから出されたもう一本の斧によって双大斧になった。
「ふっ。それがお前の本気って訳だ。」
「あぁ。そうだ。出し惜しみはなしだ。」
「そういう事。」
「そういう事...だ!!」
「ぐっ!!」
──ガァァァアンッ!!!...ドコォォンッ!!
攻撃が重すぎて地面が陥没した。ただ片手で振り下ろしただけでこの威力。一気にHPが3割も削られた。これはやばいな。まともに受けてたら3回で死んじまう。
「ふん...ぬぅ!!」
「まだまだぁ!!」
──ガァァンッ!ガァァァンッ!!ガァァンッ!!
さっきとは打って変わって連撃をしだすマオ。それを、真正面から受けないように避けながら捌いていく。
「ぬぅ...。当たらない...!」
「こっちもこのままじゃジリ貧だなぁ...。」
「俺は絶対に勝つ!」
「俺も会いたい奴がいるからな!」
呑気に会話をしながら斬りつけ合う。互いにジリジリとHPが減っていくし、本当にジリ貧だ。だが、さっき削られた3割がデカい。このままじゃいくらジリ貧でもいつかは負けるだろう。
──使うか...?
でもアヤネに対して使いたい。あいつも俺と同じ変身持ちだからな。
じゃあどうする?
スキルを使おうにもその間に斬って捨てられるだろう。
ならば!
「お...らぁ!!!」
斧を弾き僅かに空いた瞬間を使い、大剣をマオの胸目掛けて投げる。...アヤネには後で謝らないとな。
そして、投げた大剣の下...相手から丁度死角になる位置からマオの懐に潜り込み、体をよじ登る。大剣は弾かれたけど、たどり着いたこっちの勝ちだぜ!
「な!何を!?」
「うるせぇ!」
「ぐっ!!」
困惑していたマオの顔面を殴り、背中の方に回り込む。
「フンッ!!」
「がっ!?」
──バキッ...!!
──シュゥゥ...
骨が折れる嫌な音を聞きながら俺は背中から離れ、マオが光になるのを見届けながらさっき投げた大剣を拾った。
──......
──ゥォォオオオオオオオオ!!!!!!!
一瞬の静けさを破るような大歓声が上がる。
『まさかの首折り!!カイン選手鮮やかな首折りでしたぁぁぁあ!!!!!』
『うむ!まさかあの状況でトライするとはな!!アッパレじゃ!!』
『マオ選手も素晴らしかったですねぇ!!』
『そうじゃな!あの体格を活かした両手斧の両手持ち!!字面だけ見ると何が何だか分からんが他に出来るやつはそうそうおらんじゃろうな!!』
『そうですね!!私も筋肉マッチョになってみたいものです!!』
「そのままでいいぃぃぃ!!!!!」
「そんなこと俺らがゆるさんぞぉぉぉぉ!!!!」
『あ、はは。私のファンの皆さんは何故こうも熱狂的何でしょう...?』
『知らぬわ。ファンを持つ者は大h──』
「ブラキじゃさんの方が可愛いだろふざけんなぶっ○すぞぉぉ!?!?」
「あぁ!?そっちこそふざけんな!キョウさんこそ至高なんだよぉぉぉぉ!!!」
「───!!」
「─!?」
『へん......。』
『んー???ファンを持つ者が何ですか???』
『な、何でもない!!』
『ファンを持つ者は大変でしたっけぇ??そうですよねぇ!?熱狂的なファンをお持ちのブラキじゃさぁぁあん!?!?』
『ぐぬぬぅ!!そういうお主こそ!!立派な☆保・護・者☆が着いてるようでぇぇ!?』
『むぅぅぅ!!』
『このっ!このっ!!』
『いたっ!!やりましたね!?えいっ!えいっ!!』
『いたっ、いたいっ!!』
『───!』
『──!!』
「......何だこれ。」
カインに対する歓声だったのがいつの間にか喧嘩へと早変わり。2つの画面に映る2人の女子はポコポコと互いに叩き合い、とまさに修羅場だった。
そして、1人ポツンと闘技場に佇むカインはどう反応すれば良いのか分からず、そのまま控え室へと戻っていったのだった。
ロリ(ブラキヅトメジャ!)と美少女 (キョウ)が戯れ合う姿を想像して萌えた。( ̄^ ̄)