第58話 ろーるぷれい
それからさらに角を陣取って2方向を警戒する。
が、さっきの鞭の人以来、誰も来ない。
「...そろそろ移動しようかなぁ...。」
暇になってしまったので重い腰を上げてこの建物の探索をすることにした。
まだ部屋と廊下しか見てないからね。
「何処にいこうかな...。」
と考えた結果、この試合が始まった時に私がきた廊下とは違う廊下の方に進むことになった。
なにか新しい発見があればいいんだけどねぇ...。
「...今更だけどこの廊下ヨイチマルさんのスキル使えば無敵なのでは?」
歩きながらヨイチマルのスキルを使った時のことを考える。
「面で来るから逃げ場が無いよね...。」
今更ながら相手の恐ろしさに身震いする。
「あ、でも戦った時もそんな状況だったよね...?」
じゃあ大丈夫...?いやでもあんな経験は出来ればしたくないかなぁ...。
「あっ!新しい場所だ!」
次の曲がり角を曲がった先。70m位先にちょっとした空間があるのが見えた。...当然ながら曲がり角でもチラッと確認したよ?
そして近づくと、そこは高級感のあるロビーだった。
私が出た場所は1階のロビーの左側。中央には大階段があって、下から見るとまるで童話で見たような風景だった。
「...シンデレラだったっけ...?」
そうだった。シンデレラがガラスの靴を落とした場所だ。どうりで既視感のある場所だと思ったよ。
...という事はここはお城なの?...いや、まだそうと決まった訳ではない。
でも、お城だとしたら謁見する場所とかある訳だよね。...ちょっと気になる。
多分大階段を登った先にあるデカい扉の奥にあると思うんだよね。それでもしお城じゃなかったとしてもこのデカい扉の先はどう考えても大事なものがあったりするでしょう。
そうして私は大階段を登った。
────
大階段の中腹あたり。
「──っ!?」
──トスットスッ...。
足になにかが引っかかり、その直後、上から針がいくつか飛んできた。
「──ほぉ...。これを避けますか...。」
大階段の頂上...あのデカい扉の前に白髪と白いちょび髭の執事らしき人が。
「...誰?」
「これはこれはとんだ失礼を...。ワタクシはお嬢様の執事セバスチャンと申します。以後よろしくお願いします。」
手を胸に置き、90度の礼をするセバスチャンさん。
「え?プレイヤー...だよね...?」
「えぇ。ロールプレイをしておりまして。」
「ろーるぷれい...?」
「簡単に申しますと、演技...ですかね。」
「はぁ...?」
「...まぁそこは良いのです。ワタクシが申したいのは罠を避けた事です。」
「あ、あぁこれ?」
「そうです。今まで、初見で回避されることが無かったのでちょっと驚きました。」
「...ありがとうございます...?」
「ですが。ワタクシはお嬢様の為にこの大会で優勝するのです!なので貴女には死んでもらいます。」
「...ですよねー。」
そうして私とどこかの執事との戦いが始まった。
「......っ!?」
──シュシュシュンッ...
今度は横から飛び出してきた針。それを前傾姿勢になって避ける。階段を駆け上がりながら、四方八方から飛んでくる針を全て避けるか弾く。
「......これは不味いですね...。」
「うりゃあ!!」
──ギィィィィィィンッ!!
ロビーに鳴り響く鈍い金属音。
「──ですがワタクシ、接近戦も嗜んでおりまして...。」
「...くっ!」
──ヒュンッキンッヒュヒュヒュヒュヒュンッ!キンッヒュンッヒュヒュンッキンッ!
ニヤリと笑い、急にアグレッシブになる執事。相手の得物は短剣。持ち前のスピードを活かしてとてつもない速さで攻撃が繰り出される。
そして...
「いっ!?」
首筋に刺さる1本の針。
この執事はあの攻撃の合間にも罠を仕掛けていたらしい。完全に1本取られてしまった。
「良かったですね刺さったのが1本だけで。数本刺さってましたら毒で死んでますからね。」
HPのゲージがちょっとずつ減っていく。が、まだ死ぬとかそういう話ではない。あの執事の言ったことを解釈するならば数本刺さってようやく致死量に至るような毒なのだろう。
針を抜き、刀を構える。
「なら!《水刃》!」
「それはスレッドで拝見させて頂きましたよ。」
「すれっど?」
「...戦闘中ですよ?」
「すみません...。」
《水刃》が空を切り、その隙をついて執事が距離を詰める。
「ふっ!」
「え──きゃあ!?」
──パキッ...ン....
フェイントを掛けられ、無防備な状態の脇腹に回し蹴りがきたので焦ってしまい、刀で受けてしまった。
そして、その反動で瑞斬丸が折れてしまった。
「これでお終いですね。貴女の刀を折ってしまったのは申し訳ないのですがこれは勝つためには仕方がなかったの──ガッ!?」
回し蹴りで吹き飛ばされて、2階の手摺りに背中を預けながら執事の声を聞く。
だが、その執事は急に頭に刺さった1つの片手剣によって光になってしまった。
そしてその片手剣はどっかで見たよう──
「アヤネたん大丈夫だった!?」
あぁ。この人のか...。
お嬢様とは一体...!?次回、謎のお嬢様はあの人でした。です。(嘘)
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ちなみに新しい小説のキーワードは『夢』です。