<< 前へ次へ >>  更新
52/271

第45話 試練の塔⑥



──ゴッ...!


「ガ...ウッ...!?」



竜の力に怯えるヘルウルフは正面から迫る彩音の姿に、まともに判断出来ず、横腹を殴られた。



「つ、強過ぎない...?」



吹っ飛ばされ、絶命するヘルウルフと3本指になった手を交互に見ながら呟く。



「ガウッ!!!」

「「「「!?」」」」



誰もが呆然とする中、ヘルウルフキング...もうこの際ウルキンでいいや。そのウルキンが手下を威圧する。



──まるで戦わないと殺すぞ、と言わんばかりに。




「ガルルルゥ...ワォォォン!!」

「...ふっ...。」


仕方なしに飛びかかってきたヘルウルフを半歩左に避け、ヘルウルフの首根っこを掴み、勢いそのままに地面に叩きつけ──



──ドゴォォォォォン!!



...た。


音から察する通り、叩きつけたヘルウルフは最早原型すら留めていない。そして、地面にもそこそこのクレーターが...。




「竜人つっよ...。」

「グルルルルゥ....!!」



語彙力がどんどん低下していく彩音に対し、怒りがどんどん増加していくウルキン。


「キャンッ!!」



遂に恐怖ゲージMAXになった一体のヘルウルフが逃げ出し、それに続いて鼠算式に増えていく逃亡者、ヘルウルフ。



「グガァァァァア!!!!!」



──ドスッ...!


「「「「「「グギャッ...!?」」」」」」



とうとう全部のヘルウルフが逃げ出した瞬間、ウルキンがキレた。


地面から生やした闇の剣によって倒しても倒してもきりがなかったヘルウルフの群れが一瞬にして死体の群れになったのだ。

それは例外なく彩音にも襲いかかるが、バックステップでギリギリ回避出来ていた。



「あっぶないなぁ...。」

「グルゥ!!」



余裕そうな顔で避けた彩音にウルキンは元々歪めていた顔を更に歪め、狼なのに鬼の形相になっていた。



「ガウッ!!」



今までのヘルウルフ達は最初の一体を除き、全部闇のボール発動前に倒していた。何故ならばこの塔で最初に出会ったヘルウルフが使ったあの技、闇のボールの対処法が分からなかったからだ。




(なんか最初に見た闇ボールに比べると、数倍はあるような...?それに、色もなんか禍々しい感じがする。)



ますます受ける訳にはいかなかった。



「フッ!」


竜の足によってブーストのかかったスピードで発動前のウルキンに迫る。


...だが、少し遅かった。



「ッ!?」



──ビュンッ!


─ドプンッ...



いくつか浮いている闇ボールのうちの1つが彩音の進行方向...つまりウルキンとの間の地面に向かって放たれ、地面を黒く染めた。警戒していた彩音はその少し前で離れて見ていた。



──ドッゴォォオン!!




と、その数瞬遅れて...水飛沫を上げたような爆発が起こった。



「うきゃっ!?」

「ガウッ!!」



──ヒュンヒュン...。



──ドドプン...。



驚いた彩音に好機と見たウルキンは、ここぞとばかりに闇ボールを数個放った。



「うゑっ!?」



素っ頓狂な声を上げながらその場から離れる彩音。


突然過ぎて変な体勢になった彩音に、ウルキンが凄まじいスピードで突撃した。そっちの方が早く終わると判断した為だろう。



「くっ...!う、らぁあ!!」



無理やり体を捻って迎撃体制に移り、突撃してきた相手の右手による大振りの攻撃を前に避けて、懐に入った。



「ハァッ!!」


──バキッ!!



そして全身を使って体をバネのようにしてウルキンの腹に飛び込み、3本の爪を突き刺した。ウルキンを守っていた光を反射しない鎧は彩音の竜手により貫かれた。



「ギャウンッ!?!?」



まさか貫かれるとは思っていなかったのか、驚きの声を上げたウルキン。



「...逃げる!」



次の攻撃が来ると予測した彩音はすぐさま離れると、ウルキンの腹の下が爆発した。


そう。闇ボールだ。




とはいえ、自爆したっていうとそんなことは無い。なんたって相手は無傷なのだから。

得たものと言えば闇ボール1個の消費だろう。

その代わりの代償としてウルキンの怒りゲージはMAXになっただろうが。



「......。」

「......。」






静かに睨み合う両者。ウルキンはキレすぎて逆に冷静になったようだった。





戦いはまだまだ終わらなさそうである。








○今日のスキル○



今日出てきたのはヘルウルフキングさんが放っていた攻撃魔法。ちなみに表示するレベルは全て1固定にします。なので、ヘルウルフキングのスキルレベルが1という訳では無いので御容赦を...。

希望があれば、今までに出てきたスキルも紹介しようと思います。なければ出てくるまで...。


■■■■■■■■■■

【名前】《闇魔法》消費MP:技による

【効果①(LV.1)】所持者にレベル1上昇する毎に1つ闇属性の魔法を与える。


【効果②(LV.1)】所持者の闇属性魔法攻撃力を上昇させる。


LV.1:INT+10

■■■■■■■■■■

【名前】《闇魔法》:ダークボール 消費MP:球1つにつき30消費

【効果①(LV.1)】闇属性の球を放つことができるようになる。球の速さは《闇魔法》のスキルレベルに比例する。


【効果②(LV.5)】追尾させることができるようになる。


【効果③(LV.☆)】地面に設置すると任意で爆破できるようになる。爆発の威力は《闇魔法》のスキルレベルに比例する。



■■■■■■■■■■



ダークボールは《闇魔法》というスキルに属する技。




ここで裏話というか設定を1つ...。


この世界は世界監視AIが各プレイヤーに合うようなスキルを自動的に造っているので全く同じ効果を持つスキルというのは存在しません。

ただ、例外はあって、最初に見せてもらうカタログ。あれだけは誰が取っても同じスキルが得られます。

まぁ、カタログは《セカンダリア・オンライン》を始める前にしか見れないのでもう出てくることは無いでしょう(フラグ)。


そして、魔法スキル。

涼香さんは《風魔法》を持っています。で、《風魔法》は初期スキルの選択で取ったものです。そう考えるとそれに属する技も皆同じなのでは...?と思うかもしれませんがそんな事もありません。

《風魔法》は同じですが、持つ技は個人によって変わります。例えば涼香さんの《風魔法》は大抵が雷系の技に偏ってます。



<< 前へ次へ >>目次  更新