第44話 試練の塔⑤
「グルァァァァァァア!!!!!」
「くっ!?」
《状態異常:怯み》
視界の端に映る機械的な文字。
ヘルウルフキングの咆哮。たったそれだけで彩音は怯んでしまう。レベルの差というのはたとえ技術面が優れていてもどうにもならないこともあるのだ。
そして、その咆哮は威嚇の為ではなく...
「「「ガァァァ!!!」」」
「うそぉ!?」
ヘルウルフキングの影から無数のヘルウルフが飛び出してくる。ヘルウルフはちょうど怯み状態から回復した彩音目掛けて襲いかかる。
「...まずは手下から倒せって事かな...。」
ヘルウルフ達のレベルは当然の如く60。今まで、この塔で戦ってきた敵と同じである。そして、彩音も多数、倒してきた。
──1体1で...という注釈つきだが。
「──良いでしょう!受けてたちますよぉぉ!!!」
半分ヤケになっているが覚悟を決め、霊斬丸を構える。
「「「「「ガウッ!!」」」」」
彩音を囲うようにジリジリと距離を詰めていくヘルウルフ達。その目には侮蔑の念が見られた。
──シュッ...スパッ...
「ギャ──!!」
──スパンッ!...ギィィンッ!ドスッ!
「キューンッ!!」
──タタタッ...スパッ!
「ガッ──!」
躱しては斬り、防いでは蹴り飛ばす。時には自ら走って敵地に向かい、最初は急にSTR、AGI、DEXをそれぞれ40上げた事により頭がついていけなかったが、それももう慣れ始めている。
(金棒の試し振りをするだけだったはずなのになぁ...。)
心の中でそう独り言を言う彩音。
実は、試練の塔第4層からはもう既に焔風斬丸に持ち替えていた。流石にレベルが高すぎる相手に対し、慣れない武器は使うものでは無いということは誰もが知る事だろう。
「セァ!!」
「キャンッ!!」
──ギィィンッ!ギチギチギチ...
「くっ...うぅ...!!うあぁぁあ!!!」
──ズパンッ!!
半狂乱になりながらも何とかヘルウルフ達を打ち倒している彩音。
「ガウッ!!」
「え──ガフッ!?」
──ドゴッ!...
ヘルウルフによる脇腹への突進。
それにより10m程吹っ飛ばされ、地面を転がる。
「あ...ぐぅう...!ゴホッゴホッ...!!」
《HP:104/2450》
緑色だった体力ゲージが赤色に変わる。
周りには未だに数が減った様子のないヘルウルフの群れ。
その奥にはこちらをじっと見つめる3つの赤い目。
焦りが積もっていく。
大量のヘルウルフ。
ヘルウルフキング。
瀕死。
「う、うがぁぁぁ!!!」
キャパオーバー。
「《竜の力》!!」
ここぞと言うばかりに使う使ったことの無いスキル。
──ビキビキビキ...
陶器のように真っ白な手や足が真っ赤に染まっていく。それは爬虫類のような鱗だった。
手も5本あった指が3本に減り、何かの鉤爪のような形の鋭い爪は20cmはあるだろうか。
こんな異常事態に彩音はと言うと、
「な、何これぇ!?」
もちろん驚いていた。そしてそれはヘルウルフ達も同じだった。
「でもなんか力が溢れてくる感じがする!!」
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【名前】《竜の力》消費MP:3分毎に100消費
【効果①(LV.1)】一時的に竜の力を得る(任意で解除、またはMP切れで解除される)
【効果②(LV.1)】竜手による攻撃力アップ(小)。竜足による攻撃力アップ(小)。
【効果③(LV.5)】発動者の持つ全ての武器に一時的に竜の力を与えることができる。
【効果④(LV.☆)】スキルレベルを5消費し、武器に恒常的に竜の力を与えることができる。
LV.1:STR+20、AGI+10
※使用後、ゲーム内24時間使用不可
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「...
刀の扱いを覚えるために習ったのに加え、ついでに無手の方も習った...いえ、習わされた。
彩音の父はどんどん覚える娘にどこまで出来るのか試したかったのだろう。
ちなみに合気道の方だ。
いくら天才である彩音といえども力業は物理的に無理である。だから相手の力を利用する合気道を習ったのだ。
「まぁ、今回は合気じゃなくてもいけそうだけどね...。」
しかし、竜の力を一時的にとはいえ得た彩音は異常な力を持つため、相手の力を利用しなくても良いのだ。
「─────よしっ!」
追い詰められたネズミが竜になった事によってビクビクしているヘルウルフ達。
そこに突っ込んでいく彩音。
「うりぁぁぁあ!!!」
彩音は異常な跳躍力で接敵し、右手を振るった。
何気に初めて出てきたスキル説明...。
あの...すみません...。
今まで出てきたスキルの設定、次に出てきた時に後書きにて記します...。
後付けばっかりになってしまい申し訳ありません...。これからもこういうことが多々あると思いますが何卒めっちゃ暖かい目で見てください...m(_ _)m