第43話 試練の塔④
翌日。
「ねぇねぇすず〜。」
「どうしたの?」
「昨日ね、試練の塔ってところに入ったの。」
「試練の塔かぁ〜。彼処結構キツイ所だよねぇ〜。」
「うん?...気をつければ大したこと無かったと思うんだけど...?」
「それはあやだけ。」
「えぇー!?」
「で?どうだったの?」
「んとね〜。14階層まで行ったよ?」
「.............は?」
「だから──」
「聞いてるわよ!?」
「ひゃい!?」
「おーよしよしごめんねごめんね。」
子供にやるように頭を撫でられる彩音。
「私、もう高校生なんですが?」
「そんなことよりも!試練の塔は私もチャレンジしてみたけど3階で死んじゃったの。」
「3階?13階の間違いじゃなくて?」
「そう3階。 試練の塔ってすっごく難しいって話題だよ?最前線にいる人達も最高到達点はまだ8階だって言ってたし。」
「ほぇ〜...。」
「...絶対分かってないでしょ。」
「あ、そうそう!私も進化したんだぁ!」
「そうなの?私も最近になってようやく進化できたからお揃いだね!」
「うん!私は竜人ってやつになったけどすずは何になったの?」
「りゅうじん....?」
「え?うん?」
「彩音。」
「は、はい!?」
久々にすずの口から聞いた彩音という名前。小学生以来かな?とそんなことを思っている暇はなく...
「竜人ってどうやっても進化先に出ないのよ!?私も人のこと言えないけど何をどうしたらそうなったのぉぉお!?」
「うひゃぁあ!?!?」
もちろん私は本気で怒っている訳では無い。寧ろその逆で心配しているのだ。
いつも何かをやらかしていて、私としてはヒヤヒヤさせられる思いだ。
だが、それは些細な事に過ぎない。
私が心配しているのは彩音が他のプレイヤーからの接触を図られないかということ。
...いや、少々柔らかく言い過ぎた。
他のプレイヤーに狙われないかという事...だ。
パーティーへの勧誘はもちろん、妬みからのPKなど、珍しい種族は狙われやすいのだ。...私も珍しい種族になっちゃったけど...。
彩音はただでさえ美形...ロリなのだ。
それだけでも狙われかねないのに竜人...。
「私が一生守ってあげるからね!!!」
「はいぃぃい!?」
「全く!こんなに可愛い子を狙───...」
クラスメイトの皆はまた始まったと溜息をついたのだった。
──────
───
......。
...えぇ。言わなくても分かりますでしょ?
はぁ〜〜〜〜〜〜〜......。ちょっとスキンシップが激しいかなぁ...なんて。
...今日は15層目からスタートする。正直魔物はもういいので帰らせて欲しい。
疲れきってはいたが、仕様がないと階段を上る。
上る時に視線を感じたので早く上る。...怖いからね。
そして階段にちょっとだけ違和感を感じたけど気にせずに上っていく。
上がりきり、第15層に到着。
雲ひとつない澄み切った青い空が見え、目を下に向けると私がいたのは半径50mほどの八角形の床だった。
「あっ...。」
違和感の正体が分かった。
今までの階段は真っ白だった。だが、今回上ったの真っ黒な階段だった。あからさまなのにどうして気づかなかったんだろう...。
そんな時だった...。
私の正面──約30m先──に赤黒い魔法陣が浮かび上がったのだ。
そこから、ゆっくりと這い出る黒い狼。
───全長15m。
「で......っか...。」
────涎を垂らしながらこちらを見つめる3つの赤い目。
───体に纏っている光を反射せずに吸収する鎧...否、装甲。
──そして、赤のクリスタルが所々身体から飛び出ている
─爪は50cmはあり、鋭く研がれている。
「《鑑定》」
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【名前】ヘルウルフキングLV.75
【弱点】???
【苦手属性】???
【説明】ヘルウルフを従えるボス。討伐難易度はとてつもなく高く、一体で一国を滅ぼすことができると言われている。身にまとっている黒の鎧は魔法、物理防御力に優れていて半端な攻撃では傷ひとつつかないだろう。
HP:???
MP:???
STR:???
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《鑑定LV.8→9になりました》
いつもの如く見れない弱点、苦手属性。そして、HP。
「慣れたもんだけど今回は負けるかも...。っていうかあの子レシピに載ってた子じゃん!」
さっきから威圧感がすごい。ビリビリした空気が肌をチクチクと攻撃する。これは本当にキツイかも...。
でも、龍神の秘剣・闇の制作にはこの子の素材が必要...。
──待ってて龍神の秘剣!!
階段登る時に感じた視線は結構レアな子だったりします。