番外編② レイドボス:マグオクターブ
「─来ますッ!」
──ゴゴゴゴゴゴゴゴ
2回目の地鳴りがした後、マグマが揺れ始める。
「水魔法用意!!」
「「「「了解!!」」」」
──ドゴォォォォォン!!!!
──ジュュゥゥゥゥゥゥ....
相手の先制攻撃を水魔法で防ぐ。
今の攻撃でマグマが火口から溢れ、山の麓に向かって滴っていく。
「鑑定は!?」
「出ました!名前、マグオクターブ!レベル、は、80!?」
「なんだと!?」
「うそでしょ...」
「これ勝てんの...?」
次々に弱音を吐く仲間達。
確かに俺らはまだ進化して数日しか経ってないからまだレベル10程度だが...。
「泣き言言うんじゃねぇぇ!!こんなにも集まったんだ!頑張るしか無いだろ!!」
「...そうだな。」
「ごめん」
「分かった頑張ろう!」
なんとか士気は保てた。後は頑張って倒すだけだ。...まぁ、それが1番難しいんだけどな。
さて、出てきたのは1本の細い腕。先端の手のひらには鋭い歯を剥き出しにした口が付いている。
「前衛前進だ!」
「「「「「おぉぉぉぉ!!!」」」」」
『ギャァァァ!!』
奇声を挙げながら腕は前衛組を叩き潰そうと手を高く上げた。
──ドゴォォン!!!
「うらぁぁ!!!」
「ふんぬぅぅぅぅ!!!」
「ぐぅぅぅぅ!!!」
「今だ!!」
大盾使い達が受け止めたのを見計らって俺達剣士組も突っ込む。
──ガキンッ
「なっ!?」
─ガキッガキンッ
「嘘だろ!?」
皆の剣はマグオクターブの岩のように硬い皮膚によって遮られていく。
その中で...
──ザンッ!!
『ギィィィィヤァァァア!!!!!』
野太い声を上げたマグオクターブに対し、スカッとするような音をたてて斬りつけたのはカインだ。
アヤネから受け取ったその青黒い大剣はいとも容易く指2本を斬り飛ばしていた。
「「「「「うぉぉぉぉぉお!!!!」」」」」
後方支援組から歓声があがる。
「なんだその大剣は!?」
「後で詳しく話してもらうぜ!?」
「わ、分かったから...。」
一方その頃、前衛組はと言えば、大剣の性能について詳しく聞こうとしていた。
斬りつけられた腕はマグマの中へ潜っていき、なんと、新しい腕が生えてきた。
「うせやろ?」
「...なるほど。」
「ん?何が?」
「あいつの腕は恐らく合計八本はあるな。オクターブってところで気づけば良かった...。」
「なん...だと...?」
「多分だけど、これから先音による攻撃も繰り出してくるだろう。」
こんな呑気な会話をしているのは後方支援組のうちの2人。
1人は魔法使い。そしてもう1人は絶対音感をもつバイオリニスト。
「何でだ?」
「一番最初にやられた腕の声を聞いてると、ドの音にしか聞こえないんだ。」
「つまり、今出てきたあいつはレの音の声だってことか?」
「まだ確信は持てないけどね。」
『ギャァァァ!!』
「あ、レの音だわ。」
「確信はもてるな。うん。」
そんな情報は前衛組に届くことは無く、少しずつではあるが、マグオクターブの腕を斬り飛ばしていったのであった。
─────
──
「一体いつまで続くんだよォ!!」
「クソがァァ!!」
これまでの傾向から、あの腕は一定以上の体力が削られたらマグマに潜って行くというのが分かった。
実際には、皆の武器は刃が通らないため、体力を削るのはカインと魔法職だけである。
「八本目ェェエ!!!」
───ザシュッ!!
手のひらを斬りつけ、退却させる。
「おっ?やったか!?」
誰かがフラグを立てる。
今までは1本が退却したら、すぐさまもう一本が補填されるのだが、今回はそれが無い。
つまり、これで終わったという事か?
...というそんな甘いものではないことは分かっていた。
────コゴゴゴゴゴ!!!
─ドッパァァァァァン!!!
「ッ!?水魔法!!」
余波でまたもマグマが溢れ出る。
直径100メートルの円の中央に出てきたのはものすっごく大きいタコだった。
いや、タコなんて生ぬるいものでは無い。
なんたって見えてるだけで足が80本は生えてるんだもん。
「どうやって勝つんだよぉぉ!!!???」
オクターブって最近学校で出てきたんですよね。オクタ=8でドレミファソラシドが8個だからオクターブなんだみたいなことを言われました。初めて知りました。
ちなみに80本の足はピアノの鍵盤の数です。正確には88本なんですけどね。