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第14話 燃えるモグラと萌えるプレイヤー


翌日。

準備を終えた私は早速北の火山に向かう。あの後結局水筒を作り、水を入れて持ってきた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【名前】水筒:品質4

【説明】簡単に作られた鉄製の水筒。1リットル入る。

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北の火山──ゲイザル山という火山は物凄く高い頻度で噴火をするらしい。街の人達(この世界の住人)に聞いてみると、毎日噴火するんだとか。言われてみれば初めて来た時も噴火してた様な...?



「これもゲームだからなのかな...?」



現実には有り得ない...いや、もしかしたら私が知らないだけであるかもしれないが、頻繁に噴火する火山の近くに街を作るという行為がちょっと信じられないけど、この世界は魔法が使えるからそれで何とかしてるんだろう。


でも、運営さん毎日噴火はやり過ぎなのでは?



もしかしたらあの山に何かがあるのかもしれない。まぁ、私は刀の材料集めに向かうだけだけどね。




さて、そうこうしているうちにゲイザル山の麓まで来た。


ゲイザル山の表面にはあちこちにある穴という穴からドロっとした溶岩が流れている。

これは暑さ対策してくればよかったかな...。

暑すぎて体力が減りそう。


でも、新しい金属が取れそうなところはここしか無さそうだから行くしかないよね。



「いざ!」



火山に踏み込む。

周りにはプレイヤーらしき人が結構いて、そのほとんどがパーティを組んでいた。

べ、別に羨ましいなんてことは無いけどちょっと寂しいかな...。


山頂から遠く離れていて、流れ出している溶岩からも遠いここからでも物凄い熱気を感じる。

でも、体力は減らない。


「ここら辺ならまだ大丈夫なのか。」



そう思い、暫く進んでいると地面が少し揺れて地表から何かが飛び出てきた。



「モグラ...?」


現れたのは頭が燃え盛っているモグラ。


「《鑑定》!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【名前】ファイアモルLV.8

【弱点】頭の炎

【苦手属性】水

【説明】火山に生息するモグラのような魔法を主とする魔物。生息地によって使う魔法の属性も変わる。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ほぉほぉ。頭の上で燃えてる炎が弱点なんだ...。

でも、炎が弱点ってことは消されると死んじゃうのかなぁ...?



「えぇと...。こうかな...?《水刃》!」


刀を鞘からスラリと抜き出し、水色がかった刀身を横に構えて、スキルを発動する。

その瞬間、水色がかった刀身が真っ青になった。


「で、こう?」


青くなった刀を一閃すると水の刃みたいなのがモグラに飛んでいく。


モグラは危険だと思ったのか、咄嗟に爪が大きな腕でガードをするが、元は水。ガードし切れなかったところを抜けて、頭の炎に水が掛かる。


──ジュゥゥゥゥ...!!


『ギャァァァア!!!アグゥゥウ!!グギァァア!!!ガァア...!!』



「おぉぅ...。」



めっちゃ苦しんでる...。



見るに堪えないので近づいて首を撥ねる。

どんな生き物でも首が胴体から離れれば大抵倒せるよね!


そう。このゲーム、HPの意味がそんなに無いのである。

たとえHPがどんなにあっても頭と心臓を潰されれば即死してしまうし、HPがまだまだあっても四肢欠損で動けないなんてこともある。



「こんなことばっかりしてると『首斬り姫』なんて呼ばれるかもなぁ...。」



もう既に『美少女鍛冶師ちゃん』なんて呼ばれている事など本人はまだ知らない。



「あっ、そうだ。」



あのモグラ、頭の炎を消さずに倒したらどうなるんだろう?



そう思った私は本来の目的を忘れ、モグラを探す。


──ボコボコボコ...。



「出た!」



距離は30m。


柄に手を当て、気付かれる前に走り出す。が、残りわずかで気付かれる。



『ギャア!!』

「ッ!?す、《水刃》ッ!!」



モグラは敵の存在に気付いたあと、火魔法であるファイアボールを2連続で放つ。

まだ抜刀していなかった私は慌てて刀を鞘から抜き、スキルを使用。


刀を振らずに一発目のファイアボールを水刃を纏った刀でガードして消す。

そして、右上から左下に袈裟斬りをして水刃を飛ばし、二発目を消した。

まさか消されるとは思っていなかったのか、驚愕の表情を浮かべるモグラに返す刀で斬りつけた。



─ドサッ...



崩れ落ちたモグラの頭の炎を見ているとそれは消えなかった。

試しにインベントリに入れてみるとそのまま入った。



「は、入るんだ...。」



これも、何かに使えそうだな...。というか何か忘れてる気がす──



「あぁー!!!金属ッ!!!!」



大声を出した事により周りの視線がアヤネに向く。

その事に恥ずかしくなったのかアヤネはそそくさと人の居ない方へ向かったのだった。



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