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プロローグ



「……どうして、ここに」

「この15年、毎日のようにこの場所に来ていましたから」


 そんなことを当たり前のように言うと、彼は金色の瞳を柔らかく細め、愛おしそうに微笑んだ。


 その服装は、騎士そのものだった。


 それもかなり高い地位だということは、何の知識もない私にもわかった。田舎町のようなこの場所で、そんな彼の姿はあまりにも浮いている。


 そして15年、と彼は確かに言った。けれど私がこの世界に戻ってきたのは、間違いなく()()()()だった。一体、何が起きているのかわからない。



 ──本当に、この人がルーク、なのだろうか。



 そんな疑問を胸に、私は目の前の男性を見上げた。


 ……私の知っている彼は、たった10歳の子供だ。守ってあげなければと思うくらいに小さくて、細くて。


 けれど目の前にいる彼は、ゆうに20歳を超えているだろうし、背丈だって私よりも頭一つ分は高い。その上、細身ながら引き締まった体つきをしていた。


 それでも、深い海の底のような青い髪に金色の瞳だけは、あの頃と変わっていない。この世のものとは思えないくらいに、目の前の彼は綺麗だった。


「どうして、」


 思わず、先程と同じような質問が口から漏れた。けれどかなり間抜けであろう私を、彼は笑ったりはしなかった。


 そして彼は美しい笑顔を浮かべたまま、まるで王子様のようにその手を私に差し出して、答えたのだ。



「貴女に、会いたかったからです」




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