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拾話 真実と希望

(=ↀωↀ=)<コミックファイアにて漫画版最新話が更新されました


(=`ω´=)<リアルでうちとビーちゃんの出番いっぱいやー


(σロ-ロ)<会長、顔が妖怪すぎません?

 □■国境地帯・隔離施設


 戦争二日目。

 日が沈み、今日はこれ以上戦況が大きく動くことはないだろうタイミングで、皇国元帥ギフテッド・バルバロスは、皇都に残っている宰相ノブローム・ヴィゴマと連絡を取っていた。


『そちらで問題などは起きていないのですね?』

「ああ。戦況は伝わってくるが、この一帯は静かなものだ」

『フラッグの破損、現時点ではこちらの<砦>のみですか』

「<宝>が空振りだったからな……」


 皇国の用意した地下の<砦>はフィガロという最強の単騎戦力に攻め落とされた。フィガロに枷を付けることには成功したものの、先にフラッグが落ちた意味は大きい。

 落ちたフラッグの数が同数であれば、相手のフラッグを先に破壊していた陣営の勝利になる。一本ずつならば一本目を先に、二本ずつならば二本目を先に、だ。

 皇国がここから逆転するには王国のフラッグを全て破壊するか、王国より先に二本破壊する必要がある。


「明朝、ヘルダイン達が王国の<砦>の攻略に動く手筈らしい」

『たしか、陛下の読みでは王国の砦はカルチェラタンの<遺跡>にあるのでしたな』

「…………」


 ヴィゴマ宰相の言葉に、ギフテッドは複雑な表情を浮かべる。

 今回は街の中は戦地にはならない。

 ゆえに、カルチェラタンには被害が及ばないはずだが……彼の心中には一抹の不安があった。


『ともあれ、戦場のことは最早我々には手出しできません。私は門外漢ですし、あなたはそこから動けない』

「そうだな……」


 いま、この隔離施設には両国のトップがおり、それぞれに護衛として国内の戦闘系ティアンで最上位の者達を連れてきている。

 王とその護衛という形だが、これは皇国からの申し出だった。

 アルティミアを戦場に置かないためであり、同時に【大賢者】を監視するためだ。

 クラウディアは彼女に不審な点……不可解な点(・・・・・)があると考えているし、その能力も危険視している。

 そも、個人で転移魔法を使える人間は、フラッグを落とし合うこの戦争ではあまりに強力すぎる。

 自国の戦力にも限定的ながらそれを使えるパレードがいたため、クラウディアはインテグラの能力を警戒した。(なお、そのパレードは一日目の時点で裏切って王国側で活動している)

 ともあれ、アルティミアの安全確保とインテグラの制限のため、両陣営の戦闘面でのトップ層がこの隔離施設に籠もる形となった

 代償に戦争では極めて有効なギフテッド……【無将軍】も戦線に立てなくなったが、仕方のないトレードオフと言えた。


「国の未来を賭けた戦いに、軍の長であるこの身が何の役にも立てないことには思うところはある……」

『仕方のないことでしょう』

「だがな、ヴィゴマ宰相。俺は、……?」


 不意に、ギフテッドが言葉を切る。

 会話を中断した彼は、どこか別の場所へと意識を向けている。

 それはこの施設内に配備され、彼と感覚が繋がった人形からのフィードバックによるものだ。


『どうかなさいましたか?』

「王国側で動きがあった。何らかの想定外が起きたようだ」

『……まだ皇国戦力が仕掛けるには早いはずですが……』

「ああ。だとするとこれは……」


 皇国の内政と軍事を司る二人でさえ、知る由もない。

 この戦争の外側で……戦争の起きた(・・・・・・)理由そのもの(・・・・・・)に纏わる大きな動きがあったなどと。


 そう、ウィンターオーブにおける王国・黄河とカルディナの戦闘によって、皇国が王国を攻めた最たる理由……【邪神】の所在が露呈したのである。


 ◇◆


「…………」

「…………」


 隔離施設内に設けられたクラウディアの部屋で、両国のトップが対面していた。

 護衛である他のティアンの姿はない。

 事前に交わした【誓約書】によってお互いに危害を加えることはできないが、本来ならば避けるべき状態。

 だが、今のアルティミアにとってはそれどころではない。

 アルティミアがクラウディアの部屋に乗り込むと、クラウディアはすぐに人払いをして二人きりになる。

 そうして二人だけになった室内で、アルティミアは顔に苦悩を滲ませながら問いかける。


「……知っていたのね?」

「ええ。知っていました」


 対して、クラウディア――『兄』の人格であるラインハルトは表情を変えず……しかし瞳の奥に僅かな哀しみを覗かせながら答える。

 ラインハルトは何を知っていたのか。

 アルティミアは何を知ってしまったのか。

 それはエリザベートから伝えられた情報、即ち……。


「王国に、今代の【邪神】がいると……」

「付け加えるならば、それが貴女の下の妹であることも知っています」


 アルティミアが言葉を濁しながら話した内容を、ラインハルトは詳細な答えと共に肯定する。

 その反応に、アルティミアは顔を歪める。

 テレジア・C・アルターこそが、今代の【邪神】。

 先刻、アルティミアが黄河に向かった者達からの通信で知ってしまった真実。

 そして、今の王国内では通信を仲介したインテグラと直接伝えられたアルティミアしか知らない情報だ。

 同時に齎された内通者――ヴォイニッチの情報は防衛上の懸念から王国内に周知したが、テレジアが【邪神】であるという情報は伏せている。

 これを広く知らせた場合はどう転んでも混乱を呼び、現状では状況の悪化にしかならないと思われたからだ。

 だが、そうして伏せた情報をラインハルトは知っていた。

それは先日の王都襲撃がそのためのものであったのだろうとアルティミアに悟らせるには十分だった。


「【邪神】が如何なるものか。どれほど世界にとって捨て置けないものか。きっとハイエンド()が世界で一番知っています」


 伏せられていた秘密は既に既知。

 それゆえに、ラインハルトの返答は講和会議やホットラインでの会話とは違い明瞭だ。

 相手を案じていたからこそ伏せていた情報を、隠す必要がなくなっていたからだ。

 知れば管理者に殺されるかもしれないと考えていた情報であり、知ればアルティミアの心を傷つける真実。

 しかし既に知ってしまったのならば、親友に自らの本心を語る。

 それは必要なことであり、そのために手を汚してきた者としての誠意であるからだ。


「私達が皇王の座に就いてから、貴女や王としての責務を除けば【邪神】の捜索と抹殺のために動いていました。そして認識の食い違い……いえ、許容範囲(・・・・)の差で起きたのが前回の戦争です」

「……!」


 世界を滅ぼす【邪神】を倒すために数多の犠牲を許容したラインハルトと、それを許容できなかったエルドル・ゼオ・アルター。

 二人の王の方針の違いが、悲劇の引き鉄でもあった。


「かつて彼は私に問いました。『伝説の【邪神】を殺すために、どれほどのことをするつもりなのか』、と。私は最悪のパターンを想定し、『都市一つ。恐らく王都の住民全てを殺すことになるでしょう』と答えた。あの時点では、王都に再発生することは推測できても誰かまでは特定できていなかったので」


 その発言に、アルティミアが表情を変える。

 だが、ラインハルトは言葉を続ける。


「世界と都市一つを天秤に載せていました。しかし、彼は否定した。そのときの私は彼を【邪神】の脅威を理解していない愚王だと思い、彼は私を伝説上の存在を盾に王国民を虐殺しようとする暴君だと考えた。それゆえの戦争だと……少し前までは(・・・・・・)考えていた」

「……今は違うの?」


 アルティミアの問いかけに、ラインハルトは頷く。


「ええ。貴女の妹が【邪神】であるという情報を得てから言動を振り返った結果です。……エルドル国王は【邪神】について既に知っていた(・・・・・)のかもしれない、と」

「……え?」


 ラインハルトの発言は、アルティミアの予期しないものだった。

 アルティミアが知ったばかりの真実を、父が知っていたとはどういうことなのか。


「【邪神】は自動的に成長(レベルアップ)しますが、レベルが上がるほどに心身の制御を(・・・・・)失います(・・・・)。先代の【邪神】は今のテレジア王女の年齢の頃には、既にモンスターでも人でもない存在……眷属を率いて猛威を振るい始めていました」


 侵略国家アドラスター崩壊後の戦乱の時代を更なる混乱に落とした存在。

 それが【邪神】と眷属だった。

 そんな初代アズライトの時代の【邪神】は……幼い少年だったという。


「【邪神】の覚醒は代を重ねるごとに早まる傾向にある。しかしそれならば、貴女の妹も現時点でそうなっていなければおかしい」

「…………」

「しかし、今代では今まで【邪神】の存在が露見していなかった。【邪神】らしく振舞うことがなかった。そのことから、テレジア王女の住む城には【邪神】の覚醒を遅延させる何らかの仕掛けが施されていたのかもしれません」


 例えば、王城の結界。

 城としての防衛用、病弱な王女のための滅菌用など様々な結界があるが……本当にそれらが偶然作用しただけでリソースの流入が抑えられていたのだろうか。

 最初から【邪神】を抑え込むために用意された可能性もある。

 もっとも……そちらはエルドル国王以外の思惑が絡んでいたかもしれないが。


「また、テレジア王女には管理者と思しき存在が傍についているようですが、エルドル国王はそれを許容していたことも含めて……知りながら残していたと考えられます」

「……!」


 ラインハルトの言葉は、アルティミアにも思い当たる節があった。

 皇国への留学の後、母国に帰ったアルティミアが見たのは妹を乗せて歩く巨大な齧歯類……ドーだった。

 アルティミアは『病弱なあの子のペットにネズミはないでしょう』と苦言を呈した。

 しかも、どこで拾ってきたのかも分からない得体の知れない生物だという。

 だが、父は受け入れていた。『テレジアならそういうこともあるだろう。……きっとあの子を守るためにいるのだ』、と。

 今思えば、あの時点でエルドルはテレジアが何であるのかを察していた節がある。

 ドーのことを管理者とまでは思い至らなかったはずだが、【邪神】の力の一端として知られる眷属の類と誤解していたのかもしれない。

 つまり、そういうものが身近に発生する存在だとは知っていたのだ。


「自分の娘が伝説の【邪神】である可能性には思い至っていた。しかし彼はその危険性を正しく理解していなかったか……軽視していた」

「…………」

「理由は三つほど考えられます。彼が知る限り、娘が危うい存在ではなかったこと。王国において【邪神】の危険性や特性の詳細を伝える情報が失伝していたこと。そして、<マスター>の増加です」

「<マスター>に何の関係があるの?」


 三つの内の二つはアルティミアも理解できたが、三つめは分からなかった。


「【聖剣王】の時代には<マスター>はほとんどいなかった。しかし数年前から増加しました。恐らく、エルドル国王が娘の正体に気づいた時期と前後するでしょう。彼にとっては福音(・・)のようにも思えたはずです」


 多種多様、千差万別、奇跡のような力も使える<マスター>達。

 そんな<マスター>達ならば……。


「『娘を【邪神】の運命から解き放ってくれる<マスター>も現れるかもしれない』、と」

「……!」


『これから世界は彼らによって変わっていくはずだ。彼らは世界が遣わした時代の変革者であり、彼らの特別な力もそのための力だと私は考えている』


 それは父との最後の会話の中で発せられた言葉。

 あのときは言葉通りの意味だとアルティミアは思っていた。

 しかし真実を知った今は、言葉の裏に『テレジアを【邪神】の運命に縛る世界を変革してほしい』という願望もあったのではないかと察せられた。


「【邪神】という存在の危険性は彼の知る限り見られず、いつかは(・・・・)という希望を持たせる存在である<マスター>も増加した。これによって、彼は【邪神()】を擁したまま共に生きることも可能であると希望を持った」


 王が夢見た最も穏やかで、平和的な解決法。

 【邪神】との闘争、そして駆除を続けたこの世界の基本ルールを変革する未来。

 しかし、それが叶わぬ未来であるともう一人の王は知っていた。


「……今思えば、あの会談で『【邪神】に心当たりはあるか』と聞くべきでした。まさか、こちらが探し始める前から見つけ、知り、隠しているとは思わなかった」


 かつての会談でのやりとりについて、後悔するようにラインハルトが零す。

 相手を無知と決めつけていなければ、……エルドル国王の展望が叶わぬ未来(・・・・・)であることを情報共有できたからだ。


「<マスター>と【邪神】の関係について、私は彼と全く逆の考えを持ちました。ハイエンドである私は彼の知らない情報を……『<マスター(異邦人)>の力は【邪神】に干渉できない』という事実を知っていましたから」


 それは、講和会議の後に告げられた言葉。

 クラウディアは言ったのだ。『<終焉>はこの世界本来の目的に関わるものですわ。だからこそ、異邦人である彼らでは該当しない。そして……関与もできませんわ』、と。


「<マスター>の力は【邪神】を好転させる材料にならず、多くの超級職や特殊超級職がティアンの手から失われていく世界。このまま【邪神】を生かしていては、世界はいつか滅びます。それが今日か、百年後かは不明ですが……確実に終わりは来る」


 エルドル国王が望んだような変革は不可能。

 今は抑えられていようと、いつかはこれまでの【邪神】同様に……否、これまでよりもなお強大な……最悪の<終焉>へと至る。

 だからこそ、ラインハルトは【邪神】討伐の手段を選ばなかった。


「【邪神(世界の敵)】を早急に殺さなければならないと考える私と、【邪神()】に穏やかに生きてほしいと考えていた彼。構図が分かれば……相容れる訳がありませんでしたね」


 かつてはエルドル国王が無知ゆえに、人の死を許容できぬ善良さゆえに抗うのだと考えていた。

 だが、エルドル国王は知りながら未来に希望を抱いていたのだ。

 ラインハルトからすれば、小数点どころか……ゼロでしかない未来に。


「…………」


 過去と今、二度の戦争が起きた真の理由をアルティミアは知った。

 彼女自身と親友達の父や師が亡くなった戦争の原因が明らかになったのである。

 そのことについて考えるべき事柄は数多ある。

 だが、ここで考えるべきは……今目の前にある問題だ。


「……この戦争は、勝利した側が相手国の支配権を得るわ」

「その通りです」

「あなたは……戦争に勝利してテレジア(あの子)を殺すつもりね」

「ええ。【邪神】であろうと殺す算段がつきました。戦争に勝利さえすれば【邪神】を他の誰も巻き込まずに殺せます」


 そう、勝利することこそが、ラインハルト……クラウディア・L・ドライフの望みの全てを叶える方法。

 皇王が、クラウディアが、ハイエンドが抱く三つの望み。

 皇国を復興させ、アルティミアを生かし、【邪神】を殺す。

 それら全てを達成できる最短の道が、<トライ・フラッグス>での勝利。

 ゆえに、彼女はこの戦争に持てる全て(・・)をつぎ込んだ。


「そして、真実を知った今ならば……問えることがありますね」


 ラインハルトはアルティミアの目を見ながら、問いかける。


「貴方の妹は【邪神】。いずれは世界を滅ぼすもの。であれば、王国にも彼女を処する理由はある。皇国が負けたならば、その際に皇国の全て……【邪神(・・)を殺せる兵器(・・・・・・)も王国の手に渡る。それを用いて、王国が(・・・)テレジア(【邪神】)を殺す(・・・)選択もある」


 それはクラウディア・L・ドライフにとって次善の策。

 クラウディアが恐れることは二つ。

 一つは、世界が滅びること。

 もう一つは、世界の滅びを阻むために【聖剣姫】たるアルティミアがかつての【聖剣王】アズライトのように命と引き換えの最終奥義を使うこと。

 しかしかつての初代アズライトと違い、命を拾う【聖女】は【聖剣姫】の傍らには存在せず、最終奥義を使えば彼女は確実に死ぬ。

 それをクラウディアは許容できない。

 だからこそ、考えたのだ。

 聖剣以外の方法で【邪神】を討てば……最悪の事態は防げる、と。


「戦争の勝敗に関わらず、私の手段で【邪神】を殺すことに賛同いただけませんか?」


 ゆえに、クラウディアは問いかけた。


「――いいえ。私はそれを選ばない」


 だが、アルティミアがそれを受け入れることはない。

 かつての父のように、ラインハルトの望みを否定する。


「……ご自分の妹が、いずれ世界を滅ぼすとしても?」

「そんなことは、私がさせない」

「何もしなければ何も起きない。【邪神】はそんな存在ではありません。ましてや【邪神】……<終焉>を呼び起こそうと画策している陣営もあります」


 言葉と共に、ラインハルトはカルディナの“魔女”を思い浮かべる。

 そして恐らく王国に潜むものも……大差はない。


「それでも尚、貴女の父のように存在しない可能性(・・・・・・・・)に縋って世界を危険に晒しますか?」

「…………」


 あるいは、正しいのはラインハルトかもしれない。

 大を生かすために小を殺す。世界そのものを死に至らしめる要因を初期の内に除く。

 その行為はこの世界に生きる人々にとって正しく、それを否定するのは排除される小が愛する家族であるアルティミアの我儘なのかもしれない。

 世界か、家族かの二択。

 いや、その家族もまた最後には<終焉>に呑まれるのだとすれば、選択の余地などないかもしれない。

 だとしても……。


「可能性が存在しない……なんてことはないわ」


 アルティミアは、どちらかを諦めることを選ばない。


「【邪神】に世界を滅ぼさせない。テレジアを死なせない。そのどちらも叶える」

「……それは夢物語です」

「そうね。小数点の彼方にあるような……幽かな可能性」


 だとしても……。


「だとしても……諦めなければ可能性はそこにあるわ」


 それを、アルティミアは既に知っている。


「先代の【邪神】までにその手段が模索されなかったとでも? 今よりもティアンが強かった時代も、先々期文明の科学力があった時代も、貴女の望む可能性は叶ってこなかった」

「ええ。けれど、過去と今は違うものよ」

「まさか、父親と同じように<マスター>に希望を抱いているのですか?」


 エルドル国王が願い、ラインハルトが否定した、<マスター>の可能性。

 異邦人では【邪神】に干渉できないというルールの前に、否定されるそれを。


「……少し、違うわ」


 アルティミアは訂正する。


「私が希望を抱くのは<マスター>という『存在』じゃない」


 ティアンにはない力を持つ『存在』だから、未来を願うのではない。


「共に未来を望める『人』がいるから、私はまだ希望を捨てない」


 絶望を覆し、希望を掴んできた誰かの姿が瞼に浮かぶ。

 彼と関わる中で知ってきた多くの『人々』が思い出される。

 それらの希望があるからこそ彼女は未だ折れず、そして未来を諦めない。

 何もかも上手くいくような、ハッピーエンドを諦めない。

 彼女の心に、希望の体現者が輝く限り。


「…………」


 ラインハルトは、それを『正に希望的観測だ』と否定することもできた。

 だが、口から出る言葉はそれではなく……。


「…………羨ましいですわね」


 聞こえもしないほど小さな声で……主人格たるクラウディアの心から本心が漏れた。

 何に対して述べたのかは……クラウディアにしか分からない。


「いずれにしろ、全ては戦争の後よ」

「そうですね。我々が勝つか、王国が勝つか。それによって、この世界の未来そのものが大きく変わることでしょう」


 ◇◆


 ラインハルトは思考する。

 皇国が勝てばいい。勝ちさえすれば、アルティミアも夢のような希望から醒め、【邪神】の処刑も実行できる。

 それで、間に合う(・・・・)

 しかしもしも、もしもこの戦争に敗れたのならば。


 そのときは……用意してきた最後の手段に託すしかないだろう、と。


 To be continued

(=ↀωↀ=)<三日目準備中だけどその前に二日目のやり残し


(=ↀωↀ=)<両国の情報アドバンテージがイーブンになり


(=ↀωↀ=)<お互いの理想の未来に至るためにお互いの全てをぶつけ合う



○エルドル・ゼオ・アルター


(=ↀωↀ=)<色々知ってたパパ


(=ↀωↀ=)<娘三人のうち二人が特殊超級職


(=ↀωↀ=)<でも娘達にはそういう生まれながらの要素に囚われずに生きてほしいと願っていた


(=ↀωↀ=)<ホットラインでの会話で皇王が【邪神(テレジア)】を刺激すると最悪の結末になりうると考えており


(=ↀωↀ=)<皇王を止めて諫めるために停戦を目指して第一次を戦ったものの


(=ↀωↀ=)<戦う以外の形で世界の変革を促してほしいため<マスター>を積極的に用いなかった結果


(=ↀωↀ=)<彼の想定以上に『戦いにおける<マスター>』が強すぎたため大敗、死亡する

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