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第一一七話 対人レイドバトル

(=ↀωↀ=)<FF16に時間を食われていますが何とか間に合いました


( ꒪|勅|꒪)<やってるのかFF16


(=ↀωↀ=)<シャンフロの硬梨菜先生がTwitterで楽しそうにしてたからいけるな、って……


( ꒪|勅|꒪)<それで作者の感想は?


(=ↀωↀ=)<『召喚獣同士の派手でバリエーション豊かな殺し合いが資料として物凄くためになる』


(=ↀωↀ=)<『デンドロよりむしろ界獣に活かせそう』


(=ↀωↀ=)<……と満足してプレイ中


( ꒪|勅|꒪)<よかったナ


(=ↀωↀ=)<あ、餓竜事件④はもうちょっと後になります

 □<トライ・フラッグス>二日目・深夜


 戦争も二日目が終わろうとしていた頃。

 <砦>と<命>防衛のためにこの<遺跡>に集結した王国勢の中でも、クランの主力や決闘・討伐ランカー達。その中でも主だった者が<砦>のフラッグの下に集まり、車座に座っていた。

 戦争終結までには確実に攻めてくるだろう皇国勢への対策会議である。

 なお、場所が<砦>の傍なのは、扶桑月夜がここから長時間は離れられないためだ。


「んー、集まったメンバーは壮観なようでもうちょっとボリューム欲しいですねぇ。【破壊王】とかどこにいるんです?」

「質問されるまでは黙っていろパレード……」


 なお、会議には裏切り者、もといパレードも参加している。

 彼の隣ではお目付け役にして、戦争後はサブオーナーとして彼を支えなければならないアット・ウィキが疲れた顔をしていた。

 さて、パレードは抜きん出た鬱陶しさを持つが、それはそれとして皇国側の戦力に最も詳しいのもこの男である。悔しいが会議には不可欠だった。


「【竜征騎兵】のガンドールは<ウェルキン・アライアンス>の拠点攻めに向かったはずですねぇ。まぁ、結構強いですが継戦能力はポンコツなので二日目に頑張っていれば頑張っているほど三日目はザコになります。王国の残存戦力だと【堕天騎士】なら普通に勝てると思いますよ? それか【破壊王】が対空砲撃でもかませばいいでしょ」


「【掻王】ドミンゴス? なんか死んだらしいですよ? 野良の<UBM>かPKにでもぶち当たったんじゃないですか? ざまあないですねぇ」


「【魔砲王】のヘルダインは戦争前にそちらの【光王】にやられましたし、クランごと死んだんじゃないですかね?」


 集まった王国勢が名だたる皇国の猛者達の名前を挙げては、パレード側の情報網で脱落したか否かを確認している。

 上記の三者以外で挙がった名前の多くは、戦争中や開戦直前に脱落が確認されている。


「それにしてもふっしぎですよねぇ? 準<超級>以下の<マスター>の数では皇国が倍近く揃えてたはずなんですけど……何でこんなにボロってるんです?」


 脱落どころか裏切った準<超級>は、他人事のようにそうのたまった。


「……話を聞いてると、『誰がやったか分からない』みたいな脱落した奴が多くないか?」


 パレードの発言に対し、レイはそう所見を述べた。

 実際、脱落した準<超級>の半数は『誰にやられたか分からない』のだ。


「今も各地で辻斬り中のカシミヤあたりが通りすがりに殺してるんとちゃう? あれ速すぎて見えへんしな」

「想像するとありえそうだし怖すぎる。……けど、落ちた場所は散らばってるな」

「俺達のクラン抗争に割り込まれたのに近いケースが他にもあるのかもしれない」


 ニッサで行われたMPK合戦になぜか介入した……介入できたレジェンダリアの【鮮血帝】。

 さらに言えば戦争前にも【嫉妬魔王】が皇国を襲っている。

 そのように、『理由は不明だが王国に利する第三者達』が複数存在したのかもしれない。


「……現状の被害は皇国の方が大きいようですが、王国に牙を剥く勢力もいないとも限りません」


 そう言うルークが想起したのは、イゴーロナクとの戦いに介入した機械仮面の人物。

 あれも兵器を強奪し、<マスター>を誘拐するなど意図が不明すぎる。

 想定はしていたが、この戦争は二つの国家以外にも思惑が動きすぎている。


「そのへんはいま考えても答えは出てこおへんやろ。棚に上げて対策会議続けよか」


 月夜が手をパンパンと打って仕切り直し、話は再び猛者の列挙と確認作業に戻る。

 そうして生き残りの確認作業が進む中、


『生残しているマスターだが……【喰王】カタがいる』


 何事かを考えていたライザーが挙手し、一人の<マスター>の名を挙げる。


『アイテムを失い、撤退して戦争からも離脱するようなことを言っていたが……』

「じゃあ問題ないんじゃないですかねぇ? アイツはエンジョイ勢ですから気乗りしなきゃ出てきませんよ。皇国でもヘルダインとかと違って信念もなければ友達もいませんし。気楽な奴ですから何もなければもう来ないでしょうよ」


 パレードがカタに対する人物評を……皇国のほとんどの<マスター>にそう思われている人物像を語った。


「……いえ、生きているなら気が変わって再度参戦する恐れもあります」


 しかし、それに待ったをかけたのはルークだった。

 ルークもまた、一日目の追撃戦の渦中でカタと相対した一人だ。

 あのときはライザー達が自ら殿を担い、彼らに任せて先に進んだ。

 だが、その直前までは……ルークが再び眷属を用い、従魔のロスト覚悟で戦わねばならないと考えていた。

 その理由は、純粋にカタの戦闘力が高かったことが一つ。

 そしてもう一つは……上辺の言動と、ルークだからこそ察せられる気配の食い違い(・・・・)

 裏表がないレイや、迷いながら演じていたユーゴーとも違う。

 重石で封じられたようなドス黒い気配を、カタに感じていたのだ。

 だからこそ、自ら退場を口にしていたとしても、ルークはカタを注視する。

 奴に関しては口先の言葉……上辺だけの人物像など一切信用ならないと判断している。


「念のため、可能な限りの情報をください」

『ああ……』


 【喰王】カタについて、実際に交戦したライザー達から情報共有がなされる。

 まず、基本的な戦闘スタイルについて話された。

 そして、ライザー達が倒しきれなかった理由。カタとは別にカタの体内に混ざるニーズヘッグがおり、緊急時にはHPや重要臓器はシェアできるという性質も語られる。


『仕留めるならば両方を完全に殺す必要があるだろう』

「…………なるほど」


 カタが活動停止状態に陥っても、ニーズヘッグが生きている限りはまた再生する。

 一見すると厄介な敵だ。

 しかし、不可解な点もあることにルークは気づいた。


「【喰王】の身体はライザーさん達が投擲したジェムを捕食して再生したんですね?」

『ああ、近づいたら喰われてただろうな』

「いえ、重要なのはそこではありません。ジェムが投げられるまで、再生しなかった(・・・・・・・)ことです」

『なに?』


 ルークの発言に、ライザーだけでなくその場の多くの者が疑問を呈する。


「捕食行為でリソースを得れば回復する。なら、手っ取り早く『自分の肉体』を喰えばいい。<エンブリオ>のガーディアン体は巨大だったのでしょう? ある程度喰えば、<マスター>の上半身くらいは生えそうなものです」


 リソースを貯め込んだ肉体があるならまずはそれを喰えばいい、と【魔王】は言う。


「それをしない。さらに戦闘中も都度アイテムを取り出して捕食していた。つまり、【喰王】本人や融合した<エンブリオ>は自食による再生も強化もできない。また、食い溜めした分で再生、といった真似もできないのでしょうね。捕食したタイミングでリソースの使い道を決めるのでしょう。そうなると、貯め込んだリソースの方は何に使っているのか気になるところですが……それはひとまず後回しです」


 自分が見た情報、聞いた情報、そこから矛盾しない答えを導いていく。


「加えて、食べるものが何でもいい訳でもない。それなら土でも大量に食べればいいはずですからね。一定以上のリソース単価でなければ効果がない……あるいは何らかのスキルコストとの差引きの結果でしょうか? 可能性が高いのはアルベルトさんの耐性を突破した力が候補ですね」


 大地のリソースを粗方吸われる<厳冬山脈>でもなければ、そこらの砂や土でも最低限の素材としてリソースは持っている。

 だが、それを食っても再生は機能しないのだろう。するならば、ニーズヘッグが手当たり次第に食い荒らしてさっさとカタを再生させたはずだ。

 それができないということは、ただの土では食事で得られるエネルギーが食事に使うエネルギーを下回っている。少なくとも、再生に回せるほどの余剰がないことになる。


「それに両方を倒さなければ死なないと言っても、【喰王】の脳髄が破壊されている間は<エンブリオ>もまともには動けないのでしょうね。もしも単独で自由に動けるのならば、伏して相手を待つのではなく、深傷を負ったライザーさん達を捕食に動くはずです。それをしなかったのならば……動いても逃すか返り討ちにあう恐れがある程度にはあちらが不利な状況だったのでは?」

『……たしかに』

「二つの脳で融合した一つの身体を動かすとしても、片方欠ければ良くて半身不随でしょう。生命維持はできてもまともな戦闘行動はできなくなる。恐らく普段はその状態でも手持ちのアイテムを捕食するだけで再生できるのでしょうが、ライザーさん達との戦いの場合は手持ちのアイテムを破壊されたことでそれが叶わなかった。だから相手のリアクションを待たねばならなかったんです。余裕そうに見えて、あちらもギリギリの綱渡りだったのでしょう。……ジェムではなく、魔法攻撃可能なアタッカーをもう一人回しておくべきだったかもしれません」

「「『…………』」」


 一同、言葉もない。

 全員が、伝え聞いた話でここまで把握する安楽椅子探偵じみた【魔王(ルーク)】に戦慄していた。

 僅かな思考材料でこの始末。直接相対すればどこまで読み取ってしまうのか。


「対処法はそれなりにありそうですね。まずは……」


 そうして、ルークはカタへの対策を言葉にする。

 それを聞いているレイと月夜以外の全員が思った。

 『こいつを敵に回すのだけはやめよう』、と。


 ◇◆◇


 □■<遺跡>・プラント前通路


「――<砦>はこっちなのかな?」


 会議から一夜明けた<遺跡>の防衛線にて、王国の<マスター>達はソレと会敵した。


「「「!」」」


 主力である三人が、そして通路の防衛に参加した<マスター>達が、通路の奥から届いた呟きに反応して身構える。

 声の主は、一人の男。

 長い通路を駆けることなく、王国勢に対して自然な速さで歩いてくる。

 それが何者かを、<マスター>達の多くが知っていた。


「【喰王】カタ!」


 名を呼ばれた男――カタはそれに対して反応の色を見せない。

 何も思わないかのように、歩き続けている。

 この場にルークやライザー……一日目の戦場で彼と遭遇した者がいれば疑問に思ったことだろう。

 姿かたちは変わらないのに、まるで別人のように表情が違う。

 マイペースに『食事』をしていたときのカタが穏やかな水面だとすれば……今の彼はまるで凍った湖面のようだ。

 寒々しく、何かの拍子に割れて……破綻しそうな危うさがある。


「…………」


 彼はまるで見えていないかのように、前へと歩く。

 敵が待ち構えている場所に、いっそ無防備にさえ見える歩み。

 そこには、警戒も戦術もない。それらに割くべき思考を、自らの心の内……記憶から這い出す何かを押さえるために使っている。


「ちっ!!」


 だが、それを座視する者達ではない。

 遠距離攻撃が次々と放たれ、爆炎が通路を包む。


「…………」


 それをカタは攻撃に勝る速度で全てを回避する。

 そのまま距離を詰め、両腕に形成した顎で王国勢を捕食せんとして……


「――狙い通り(・・・・)だ!」

 ――その身体を非実体の鎖が繋いだ。


「? これは……」


 カタは自身の身体を貫いて左右に広がる鎖を見下ろす。


「イカセマセン」


 それらの鎖は――アユーシを始めとする前衛王国勢に繋がり、それらはさらに重量級のガーディアンや従魔にも繋がっている。

 まるで綱引きのように、カタは両サイドから鎖に引かれる。


「…………」


 敵に踏み出そうとしても、その動きはひどく緩慢だ。


「単体のステータスでは貴様が圧倒しているのだろうが……五〇対一(・・・・)のSTR対抗ロールでは流石に分が悪いと見える」


 見れば鎖はカタだけではなく、前衛全員の身体を貫いている。

 死胎蛋の<エンブリオ>であるチービーヂーヂャンのスキル、《連環の計》は鎖で繋がった者同士が一定以上離れられなくなる効果がある。

 一方の力が強ければ構わず引きずり回せるだろうが……数の力で拮抗してしまえばその動きは抑え込まれる。


 作戦会議にてルークが打ち出した策の一つが『捕食できない非実体の拘束手段で動きを抑える』だ。形あるものを何でも食えるのならば、食えないもので動きを抑える。

 ルークの案は《ブラッド・アレスト》など呪術の類を用いることだったが、策を聞いた死胎蛋は自らのスキルをベースにしたこの戦術を構築した。

 カタ以外にも高ステータスの敵前衛を止められる戦術だが、こうして最も想定通りの相手に機能している。

 そして、身動きが取れなくなったのならば……。


「今だ!」


 後衛の攻撃がカタに突き刺さる。

 先刻までの回避などできるはずもなく、《クリムゾン・スフィア》をはじめとした高火力の攻撃が次々に命中する。

 その中には……。


「――《攻の疑わしきは(コナキ)重くす(ジジイ)》!!」

 ――十六斎が放ったコナキジジイの必殺スキルも混ざっている。


 動きを制限されたカタに、コナキジジイの必殺弾が命中。


「……っ」


 直後、カタは通路に膝をつく。

 一歩も動いていないのに、重さに耐えかねたように。

 彼の足元の床は、超重量を押し当てられたように罅割れている。


 それがコナキジジイの必殺スキル。

 命中した相手に、『相手のSTRで動ける倍の重さ』を付与する。

 命中さえすれば、必ず行動不能に持ち込める相手のSTR依存の重量デバフだ。


「…………」


 跪く<マスター>達の攻撃がさらに命中。

 カタは砕かれ、焼かれ、その身を欠けさせていく。


「攻撃を止めるな! 捕食回復の時間を与えず、削り切る!」


 近づかず、動かさず、捕食不可能の攻撃手段でその生命を削りきる。

 ルークがカタを想定して打ち出した方針は、凶悪なモンスターに挑むレイド戦に近い。

 ゆえに、<月世の会>の主力にとっては十八番だ。


(……完全に、相手の術中かな)


 カタが繰り返したモンスターとの戦いとは違う。

 【餓竜公】との戦いの後、モヒカン・エリート(偽りの副官)に促されて入った<LotJ>での一対一のオーナー争奪戦とも違う。

 そして、戦争の乱戦とも違う。

 完全に、彼を討つべく練られた狩りの構図。

 まんまと嵌まってしまったここから抜け出すのは、至難の業だ。

 まだしも、地竜の群れと竜王を倒す方が楽だろう。

 【餓竜公】との闘争(贖罪)より楽だとは言わないが。


『…………』


 一方的な状況の中、カタの半身であるニーズは何も言わない。

 彼女がいま何を考えているかは、カタにも分からない。

 この状況を打破する手段があるのか、ないのか。それすらも不明。


 あるいは、まだ(・・)この状況に斟酌する場合ではないのか。


 やがて、積み重なるダメージのせいかカタは膝立ちすらできなくなり、<遺跡>の床に俯せで倒れる。

 そこにも攻撃が重ねられ、このままカタをデスペナルティに追い込むかと思われたその時……。



 <遺跡>全体を揺らす地響きが、格納庫方面から伝わってきた。



 To be continued

○追記


(=ↀωↀ=)<今回のルークの推理ですが


(=ↀωↀ=)<実は少しだけ間違っている部分があります


(=ↀωↀ=)<これはルークのミスというよりライザー側の伝達ミスです


(=ↀωↀ=)<ライザーは『相手のアイテムボックスを焼いた』、『ジェムを喰われたら再生した』と戦闘内容を伝えています


(=ↀωↀ=)<これは正確ではなく


(=ↀωↀ=)<ニーズヘッグが『ジェムを喰った後に焼けた神話級金属を喰って』再生したのです


(=ↀωↀ=)<要するにカタの全身再生は神話級金属によって賄われたのですね


(=ↀωↀ=)<そしてなぜジェムを喰うまでニーズが神話級金属を喰わなかったかについては


(=ↀωↀ=)<ルークの推理に当たっている部分があるのです


(=ↀωↀ=)<今回はこれまで

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