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第四十一話 雲外蒼天 Ⅳ

(=ↀωↀ=)<本日と言うか日付変わったけど四話目


(=ↀωↀ=)<これで終わりだぁ!


(=ↀωↀ=)<……合計で2万字いきましたね

 □■応龍について


 六百年余り前、黄河の山中に一匹の龍がいた。

 その龍は、空を泳ぐことが好きだった。

 山間に満ちた霧と雲をかき分けて、空へと昇る瞬間を愛していた。


『…………』


 しかしながら、龍がその瞬間を味わえる機会は決して多くはなかった。

 龍は強かったが、空には龍よりも恐ろしい怪物が数多いたからだ。

 ただ、飛ぶことが上手いだけの龍ではそれらを倒すことはできず、食物連鎖のピラミッドでは明確に下だった。

 龍は、龍でありながら自由に空を泳げない。

 果てしなく広がる空という世界に、敵という壁が常にある。

 それが何より……龍には不満で窮屈だった。


 そんな鬱屈した思いを抱いていたある日、龍はソレと出会った。


 ソレは、『人間によく似た龍』。

 どう見ても人間であるのに龍よりも速く空を飛び、恐ろしい怪物達を屠っていく。

 ソレの前には壁などない。

 空を、誰よりも自由に飛翔している。


『…………』


 その姿に、龍は憧れた。

 憧れたがゆえに、その姿をつぶさに観察する。

 ソレの肉体には翼も飛翔のための器官もない。

 だが、ソレは飛ぶための機能を持つモノを自らの力で作り出した。

 人間のように素材を加工するのではない。

 ソレは自らの力を練り上げて、この世に存在しない物質と理を生み出していた。

 そう、どこまでも独力でありながら、ソレは誰よりも自由に、誰はばかることなく飛んでいる。

 ソレの扱う力は強さも在り方も龍の理想そのものだったから、龍はそれを欲した。

 その力が属人性の高いものではなく、『研鑽の果てに辿り着けるモノ』であると理解できる程度に……龍が賢かったがゆえに。


 龍は鍛錬を重ね、自らの力でソレの力を模倣すべく月日を賭した。

 いつかその力で空を自由に飛ぶために。

 彼は研鑽を積み、秘術は未完成なれども力を伸ばし、神話級に至る。

 だが、それでも自分に時間と力が足りないかもしれないことを……自分でも理解していた。


 ◇◆


 ここで一つの偶然……必然がある。

 同時代、龍と同じ思いを抱いた怪物は他にも(・・・)いたのだ。

 いずれも人型の龍の用いた力に憧れ、それに自ら辿り着かんとした。

 そう、怪物たちは憧れたのだ。


 人型の龍……【龍帝】の用いた四種の(・・・)龍神装(・・・)》、それぞれに。


 一つの共通点を持つ怪物達は研鑽の果てに自らの憧れた力を完成させんとした。

 彼らはやがて出会い、自分達の共通点を理解した。

 自分達が種族は違えども同じ存在に憧れた同輩、魂の義兄弟であると。

 そしていずれも自分達の憧れに辿り着くまでに足りないものがあると知っていた。

 ゆえに、彼らは一つの決断を下す。


 自分達の肉体を一つに統合してより上位の存在となり、命を伸ばす。

 そして融合した体の内なる世界にて研鑽を積み、自らの完成に至るのだ、と。

 彼らはいずれも未完成の《龍神装》……力の物質化を会得した神話級の怪物達。

 合力すれば、融合も不可能ではなかった。


 融合した後にどうなるかは分からない。

 だが、このままでは誰も完成を見ることがないままに生を終えるのは明らか。

 ゆえに彼らは融合に賭けた。

 最悪でもこの先、義兄弟の誰か一柱でも自らの憧れに辿り着ければよし、と。

 納得の上で彼らは混ざったのである。


 それが【四霊万象 スーリン】という<SUBM>の始まり。


 この後、彼らをジャバウォックが回収し、機を見て黄河に投下した。

 融合体たる大岩を破壊された後、彼らは再び自らの肉体を得て黄河の各地へと散開した。

 彼らは融合した後の研鑽によって、いずれもが自らの憧れを形にしていた。

 その身体で、その力で、彼らは黄河の<超級>達と死闘を繰り広げたのだ。


 そして、彼らの憧れは――特典武具となった後も止まらない。


 ◇◆◇


 □■【未確認飛行要塞 ラピュータ】


 ――墜ちたか、ウロボロス。


 【骸燃機関】で自身のAGIを凌駕する高速飛行の只中に在り、【桜花相殺】の光に包まれているカルルの知覚範囲は極めて悪い。

 だが狩人としてのスキルで周辺環境の変化は理解していた。

 自身をこの戦場まで送り届けた<超級エンブリオ>が撃破され、彼同様にこの戦場で活動していた<マスター>達も各々の戦場で壊滅した。

 もはやこの空に於いて、カルル・ルールルーは孤軍だった。


 ――問題ない。


 味方がいない、敵ばかりの戦場。

 その程度のことがどうしたのだと、“無敵”の<超級>は戦意を燃やす。

 既にデスペナルティ必至の特攻態を用いた身。

 もはや何を厭うこともなく、自分達の勝利を頂いていくと……カルルは決断した。

 小賢しく、そして上手く彼の特攻から逃れ続けて時間を稼いだ敵手だが、もうあちらの戦いに付き合う必要もなくなった。

 彼以外の<マスター>……確保要員が消えた以上、僅かにあった『ターゲットを生きたまま押さえる』可能性は皆無。

 今の彼は生物が近づけば死ぬ光の中にあり、それを解けば死ぬ。

 彼ではターゲットを生かして捕まえることはできない。

 残された勝利条件は、ターゲットを含めた敵の全滅。


 ――全てを滅殺する(キル・ゼム・オール)


 カルルは自身の飛翔コースをグリムズの逃げ回っていた城部分ではなく……ラピュータの中核たる本体へと合わせる。

 ウロボロスがそうされたようにグレイ自身を抹殺し、ラピュータを消滅させる。

 そうすればターゲットも、残っている敵戦力も、全てが地上に墜ちていくだろう。

 最も凄惨にして、彼にとっては最も簡単な勝利条件になったのだ。


 ――かつては【ツングースカ】の《Near Light(亜光速弾幕)》に墜とされた飛行要塞よ。

 ――今度は俺が撃墜しよう。


 カルルは飛翔する。

 進行方向のラピュータがどれほど巨大でも、城の残骸の上に立つ召喚モンスターがどれほど強くとも、何の問題もない。

 万状……あらゆる状況で彼は無敵。この空であろうともそれは変わらず。

 封鎖していたウロボロスが破られようと関係ない。

 彼こそがこの空を、ラピュータにいる者達の未来を塞ぐ最後にして無敵の壁だった。



 ゆえに、だからこそ――龍は壁に牙を突き立てる。

 空を阻む壁に――力の限りぶち当たる。



『……!』


 突撃コースに入ったカルルに食らいつくように、一本牙の龍が側面から激突した。

 【骸燃機関】の推進力を上回るパワーで、その軌道を強引に修正する。

 真っすぐに飛翔していたカルルは龍ともつれ合い、やがて真上……天空の更に上へと向かい始める。


 ――《死出の花道》で消し飛ばん……!

 ――こいつ、生物然としているのは見た目だけか!


 然り。龍はもはや生物に非ず。

 既に武器と化した牙こそが今の彼の核であり、生前を模した龍の身体は彼の主となった少女の魔力と魂力で生成した神装である。

 ゆえに生物を諸共に消し飛ばす光の力は龍には及ばない。

 噴進の熱もまた、龍を焼き殺すには至らない。

 牙が武器であるゆえに【骨肉争乱】の防具透過も意味はない。


 ――この<天空捕食者(アセンブリ)>に真っ向からぶつかるか!

 ――だが……そちらもこちらを超えられん!


 龍の牙はカルルを捉えて離さない。

 しかしその牙は、不壊の(ルール)を付与された機械鎧に食い込んではいない。

 どれほど速くとも、強くとも、それだけでは越えられないものがこの世界には在る。

 どちらも砕けぬままに諸共に天空へと昇っていく。

 否、天空のその先までも……龍は昇る。

 その渦中でカルルは相手の意図を探り、気づく。

 それはかつて、【破壊王】に敗れたときに一度経験しているからだ。


 ――宇宙空間への放逐か。

 ――だが、俺が【骸燃機関】で星に戻れないほどの彼方まで置き去れるか?


 敗北したカルルと今のカルルは違う。

 それはノックバック無効の【ぽーらーすたー】だけではない。

 この【骸燃機関】があれば、宇宙空間であろうと移動方向を修正して帰還できる。

 同じ轍は二度踏まない。


 ――【応龍牙】、迅羽。


 龍の要である超級武具を一目見て、この龍を扱う者の正体を看破する。

 ゆえに、カルルは思考する。


 ――お前はこの龍をどれほど維持できる?

 ――お前の腕はどこまで届く?

 ――この“無敵”と根競べをして、勝てるつもりか?


 もはや、このカルルに場外負けはない。

 宇宙だろうが、地の底だろうが、突破し、滅殺し、必ず勝利を掴む。

 その自負と共に、カルルは場外負けを狙う龍と遥か彼方の地上にいるだろうその主を睨まんとして……。



 ピキリ――とありえない音(・・・・・・)を聞いた。



 ◇◆


 <Infinite(この) Dendrogram(世界)>における最上位の防御能力は、通常手段では突破不可能だ。

 『壊れない』、『徹さない』という(ルール)には、仮に超新星爆発に相当するエネルギーをぶつけても正面からでは無力化される。

 では、どうやってそれらの理を打ち破るか。

 第一に、勝負の形式を変更する。攻撃と防御をぶつけ合うのではなく、迂回策で破る。

 RANのオリンピアはこの最たる例の一つだろう。

 だが、これよりもシンプルな手段がある。


 防御とは真逆……『壊す』、『貫く』といった(ルール)を持ち出しての力比べ(・・・)だ。


 相反する理同士であるならば、話は再びエネルギー量の比較に戻る。

 だからこそ、【破壊王】の《破壊権限》は力の多寡次第であらゆる存在を破壊可能であり、それゆえに議長と【地神】からは【元始聖剣】と並んで警戒すべき存在とされていた。


 だが――それに類する力はそれらだけではない。


 壁を破るモノ。

 『貫く』理を持つモノ。

 世界に刻まれた龍の牙。


 その銘こそは――《雲外蒼天》。

 名が意味するは――()の向こうに広がる蒼い空。

 その特性は――。


 ◇◆


 ピキリ――ピキリと、真空に近づく世界で音がする。

 その発生源はカルルの纏う【桜花相殺】。

 <超級エンブリオ>によって不壊の理を付与されたはずの、彼の“無敵”。


 その“無敵”に、少しずつ龍の牙が食い込んでいく。


『……バカな』


 その有り様に、カルルの喉が声を漏らす。

 貫かれていく、壊れていく。

 どれほどの理不尽な破壊でも、かつての【破壊王】でも砕けなかったものが……砕けていく。


 それを為す武器の名は、【応龍牙】。

 その超級武具は特異性においては他に劣る。

 【応龍牙】の力はシンプルだ。

 最強の金属で作られた訳でも、数多の機能を持つわけではない。

 周囲の水全てを兵器に、肉体を水に変える訳でもない。

 光と死と力、再生の権化でもない。

 ただ、牙を以って飛翔し、自由なる飛翔を力に変える。


 《龍神装・雲外蒼天》の特性は――『飛翔距離に比例した貫通効果』。

 それは――“無敵”の対極に在る理。

 飛翔の果てにあらゆるモノを『貫き通す』――最強の矛。


『……っ、正面から……ネメアレオンを……!』


 砕ける、壊れる、貫かれる。

 彼を“無敵”を証明する装備の万全が欠けていく。

 されど、いまだ龍の牙は鋭さを増し、飛翔は更に高きへと。

 飛距離は伸びる。どこまでも伸びる。貫通力は際限なく高まっていく。

 地上より遥かに高く、雲さえも下に、天空の覆いを突き抜けても、龍は昇る。

 空を超えた宇宙までも、龍は届く。


 なぜならば龍の骨格は、テナガ・アシナガ。

 【星天到達(どこまでも高く)】と名づけられた<超級エンブリオ>であるがゆえに。


 ――やがて龍の牙は完全に機械鎧を貫通し、その下の【ブローチ】に掛かる。


 仮定の話をしよう。

 仮にカルルの装備が【ぽーらーすたー】のままであれば、その位置固定能力は【応龍牙】の天敵であっただろう。

 カルルに接触した時点で移動距離を伸ばせなくなり、加速も止まっていた。

 だが、そうではない。カルルは敵を滅ぼすことを選び……ゆえに敗れる。

 これもまた、人間としての選択の果て。


『――ハッ』


 その短い笑声にどれほどの感情がこもっていたのか。

 特攻の機械鎧を、命繋ぐ装身具を、そして自らの身体を龍の牙に貫かれ、


 ――“無敵”の壁は正面から貫かれて光の塵へと還る。


 矛盾、ここに成立せず。

 矛たる牙に軍配が上がる。


 勝者、“応龍”の迅羽。


 To be continued

(=ↀωↀ=)<VSカルディナ概ね終了


(=ↀωↀ=)<次回更新日は作者が日曜にシンフォギアライブ行くのとポケモンクリアのため


(=ↀωↀ=)<更新お休み予定です


( ꒪|勅|꒪)<だったらこの四話更新を次回更新日に分けりゃよかったろ


(=ↀωↀ=)<君の活躍パートを一日で収めたかったんだよ


(=ↀωↀ=)<連続で君が<超級>ブチ抜く話なので一度にやるスピード感が大事


( ꒪|勅|꒪)<そうかな……そうかも……


(=ↀωↀ=)<ていうか元々雲外蒼天全部で一話のつもりだったんだよ


(=ↀωↀ=)<シーン区切りあった方が読みやすいから分けたけど


( ꒪|勅|꒪)<二万字を一話に纏めたらそりゃ読みづれーだろーよ



○先々代【龍帝】


(=ↀωↀ=)<《龍神装》複数持ちマン


(=ↀωↀ=)<古代伝説級【竜王】最強格でも一種使いこなせないのにバグってんのか!!


(=ↀωↀ=)<バグってますね。そうですね


(=ↀωↀ=)<……これと【覇王】の間に立たなきゃならない猫の気持ちが分かりますか


( ꒪|勅|꒪)<お疲れさん



○【四霊万象 スーリン】


( ̄(エ) ̄)<つまりどういう<SUBM>クマ?


(=ↀωↀ=)<先々代【龍帝】ファンクラブ



○《龍神装・雲外蒼天》


(=ↀωↀ=)<何で今まで使わなかったんです


( ꒪|勅|꒪)<これが正真正銘の切り札だから隠してたのが一つ


( ꒪|勅|꒪)<スキル発動までに掛かる時間の問題で使えなかったのが一つ


( ꒪|勅|꒪)<何より決闘やら城内やらで使えるもんじゃないぞこれ


(=ↀωↀ=)<あー


( ꒪|勅|꒪)<他の理由もあるけどそれは後の話でな

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