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7 空飛ぶ箒


「はるひー、ねぇはるひって空は飛べないのー?」


突然 壱岐が厄介なことを言い始めた


「なんで?」


「魔女は箒に乗って空を飛ぶものだろ」


「飛ばない」


「え?」


「飛ばないったら飛ばないったら飛ばない」


「そんなに否定すること無いじゃん」


「兎に角 飛ばないったら飛ばないの」


「えー」


「魔法使いだって飛ぶよ。だからに おみ に聞いて見たら」


「わかったよ。・・・あっ、有臣だ。有臣ー」


壱岐が馬鹿みたいに手を振る。


何で丁度今 おみ が通りかかるの?


「どうかしたのか?」


「有臣。有臣は空を飛ぶの?」


「なんだよ、いきなり」


「いやさ、はるひに魔女が空を飛ぶのか聞いたら飛ばないって言うからさ」


「魔女は空を飛ぶものだぞ。事実、アンリはしょっちゅう夜中飛行している」


おみ のやつ、余計なことを。


「まじ?でもはるひは飛ばないって言ったぞ。 それに魔法使いは飛ぶから有臣に聞けって」


おみ が こっちをみた。

にこり、 というよりは にたり と笑う。


「そりゃ、”この”魔女のはるひさんは飛べ無いだろうねぇ」


「おみっ!!」


「どゆこと?」


「はる は ね、高いところが怖いんだよ」


「所謂 高所恐怖症 ってやつ?」


「そう」


あーもー

なんで人の弱点をさらされなきゃなんないのー


「そーよ、だから私は飛べないの。他の魔女は飛べるけど。悪かったわね」


「へえ」


わざとらしいったら、もう。


「そうそう、壱岐、さっき先生が呼んでたぞ。  宿題がどうとか言いながら・・・」


「やべえ、提出すんの忘れてた!行ってくるや。  教えてくれてありがとな。じゃな。」


慌しく壱岐は走って行った。

巧いこと忘れてくれると良いのだけど。



「でもさー、おみ、私が高いとこ怖いことまでばらさなくたって良いじゃない」


適当にごまかしといてくれたって良かったと思う。

そういうと、おみは耳元で特大級の爆弾をおとして去って行った。

暫く呆然と立っていて、林檎が足元で心配して鳴くくらいの爆弾。





    「だから、一緒に飛んだ時しがみついてくれるから、

                 俺は可愛いとこだと思ってるのだけど」




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