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4−1 変な色の薬

「壱岐、これ飲んでみて」



差し出した先にはとろりとした液体の入った小瓶。


「え、やだよ」


明らかに疑いの眼差しをした壱ぎ。


「やだじゃない。飲んで。」


だって私は飲みたくないんだもん。

…おみに飲ませたらかえりうちにあいそう。

アンリなんか考えるだに恐ろしい。


「変な色してるぜ、これ」


壱岐は二歩下がる。


「大丈夫だよ。飲んで」


私は一歩近づく。


「何だよ、これ」


「元気が出る薬」


「まじすげー怪しいぜ」


「んなことないよ」


「あるよ、ってかまじでこんな色、飲めるって事自体怪しい」


「そうかな」


「ああ。怪しい。否定するならはるひが飲めよ」


「私が飲んだら記録が取れないよ」


「じゃあ有臣は?」


「おみはこーゆーの協力してくんないもん」


「俺だってやだよ」



でも。



でも。



壱岐は素直というか単純だから説明したら多分やってくれる。





「リゾートをイメージして作ったから、爽やかなハワイみたいな気分になれるよ」


予定では澄んだ海の色に成るはずだったけど。


「…無理だよ」


ん?手応えあり。

もう二押し。


「トロピカルフルーツにちょっとミントを加えた感じの味だよ」


味見はしてないし、でも匂いはそんな感じだから多分大丈夫。


「…。考えられる副作用は?」


お!もう一押しだ。


「眠くなる、かな。リゾートで寛いじゃう感じに」


「リゾートで寛ぐ!?」


「そ。旅行気分でね」



「…」



万更でもない顔をしてる。

ちょろいなぁ。


「ちょうど試験も終わったばかり。どう?飲んでみない?」


差し出す。


「しゃあねーなー」


受け取る。


「ありがと」


開封。


「おうよ」








そして。







「壱岐~起きて~」




何度も何度も肩をたたく。


「壱ぎ~」


「…ん?…はるひ?…おはよ、どした?」


あっ、壱岐、目を開けた!


「『どした?』じゃないよ~ごめ~ん、壱岐~起きて良かったよう」





「は?」





「私の作った薬飲んだら壱岐倒れちゃったんだ」


寝呆けながらも起き上がろうとする壱岐に手を貸しながら、私はひたすら言い訳。


「ごめん、どっかおかしいとこない?」


声をかけてみるが、壱岐はまだ半分寝ぼけているようで、虚ろな返事ばかり。


「大丈夫?」


何度か声をかけるとやがて壱岐は幾分怒りを含んだ声で言った。




「何で起こしたんだよ!」




は?




一瞬耳を疑ってしまった。


「はるひ、何で起こしたんだよ」


壱岐が繰り返す。

幻聴ではないのだけど意味がわからない。


「…どうゆうこと?」


恐る恐る聞いてみる。

すると、壱岐はせきをきったように話始めた。







「あんたが言っただろ、リゾートに行けるって。

だから俺はリゾートにいって、そこを満喫してたんだよ。

青い空青い海白い砂浜眩しい太陽。

人の少ない海岸で存分に泳いで、寝て、魚を捕まえて食べたりして。

暫く行ったところにはジャングルもあってすげー美味しい実なってて、くったり。

んで、ジャングルの中で虎に襲われかけてた女の子を助けたら、仲良くなって。

話してるうちにそのこが村の近くに潜む魔物のいけにえとして差し出されるって聞いて、だから、その魔物をやつけてさ。

彼女と夕方の海岸を歩きながら話してたんだよ。

で、ちょうど告白しようかなって時に起こされたんだよ。」






壱岐は話しているうちに思いだしてきたのかだんだん顔が赤くなっている。

でも、私の知ってる限りこいつは全然強くない。

どちらかというなら戦う前に逃げるほうだ。

しかも途中からリゾートどころかゲームか小説のような内容になってるし。


「…ごめん…」


謝って俯く。

基本は凄くいいやつだから、私の謝罪が届いたのか、段々落ち着いてきた。



そして今度はぽつぽつ話し始めた。


「最後彼女照れながら、『ずっと一緒にいたい』っていってくれたんだよ」


照れながらいう壱岐。


「…それで何て答えるつもりだったの?」


一応聞いてみる。

すると少し間をあけて、躊躇いながら壱岐は答えてくれた。





「俺も、って」





茹蛸みたい。

一ミリグラムも可愛くない。

夢見てたんだよ、夢。



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