07-1 LOOP!
廻り廻る世界。
統べては繋がっていて循環し続ける。
それが魔女や魔法使いの基本。
魔法法使いはその繋がりや輪を探究する。
そして魔女は輪と共にある。
研究室と言っても差し支えないようなおみの部屋を訪ねると、
彼は実験中ではなく、読書をしていた。
最近は連日実験をしていたようだから、それに片がついたのだろう。
ちょうどよい機会かも知れない。
そう思い近づく。
「何?」
気配を察したのか、本から目を話す事なく問い掛けてくる。
暫く黙ってみると漸く顔をあげてこちらをみてくれた。
顔を見ないで話すのはあんまり気分のいい事ではないから、と思う。
言わなくても、わかってくれる?
試しているわけではないけど、わかってほしい。
「ごめん、はる、本に集中してて。どうかした?」
余り表情にはでないけれど、それでも済まなさそうにしている様子につい笑ってしまう。
うん、そう、こういう人なんだよな。
「いいよ、大丈夫。ただちょっと聞きたいことがあって。
ねえ、おみ、今日は暇?」
パタンと本を閉じる。
どうやら相手をしてくれるらしい。
「なんで?」
「実はね、今日一緒にケーキを買いに行きたいんだ」
精一杯さりげなくいってみたけれど。
…実は、実は、凄く緊張して居た。
こんな気持ちは気付かれないといい。
或いは。
気付いてても気付かない振りをして。
「いいよ。何処へなりとも付いていこう」
芝居がかったおみの言葉。
「有難う」
「んー」
ムースにクリームにチョコレイト…タルトも捨て難い。
なんでこんなに綺麗なものばかり並んでいるのだろう。
「はる、悩むなら全部買っていこうか。」
待ち兼ねたのかおみが呆れ果てた声で言う。
「違うよ、おみ。迷っても選ぶから、良いんだ。 全部手に入るなら、迷わないしつまらない」
「じゃあ…まぁいいさ、気が済むまで迷ってくれ」
「うん、ごめん、有難う」
結局、ケーキとちょっとした御馳走を買った。
ネルがここ数日どこかに出かけていて家に一人というおみも夕食に誘い、二人で家に帰った。
「ただいま」
誰も居ない、と思っていたのに、返事が返ってきた。
「お帰りなさい、はるひ」
それは聴きなれた声で。
「師匠、帰っていたの?、確か英国に行っていたのではなかったっけ」
大好きな声で。
「勿論。貴方のためですよ」
今日は会いたかったけど会えないと思っていたから。
「え、本当に?有難う、嬉しい」
なおのこと嬉しかった。
居間にはネルもいた。 思いも掛けない人物におみも凄く驚いていて、
そんな滅多にみれない表情に思わず笑ってしまった。
「こんばんわ、ネル」
「はるひ、こんばんわ。二人分、夕食増えてもいいかい?」
ネルは流石師匠の友達と言うだけ在って、いつも凄く自然に頼み事などをする。
「全然、大丈夫。でも、ネル、どうしたの?」
でも相手が不快になることは全くないから、才能なんだろうって思う。
「アンリが早く仕事を終えたいから手伝ってくれと言われてね。
急遽終わらせ帰国しついでに夕食の御小判に預かろうと思ったんだよ」
優しい笑顔のネルの言葉に師匠を見る。
師匠の顔は凄く優しくて暖かだった。
「勿論、大歓迎!」
その後の夕食は実に賑やかで楽しかった。
選りすぐって選んだケーキも美味しく、
大好きな人たちや皆と一緒に過ごせて、
素晴らしい時間をだった。