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赤い水と青い水がどんどん拡がって、重なり合ったら紫色になる。

このまま混ざって紫色の水が増えていくのかと思ったら少し違う?


丸い板みたいな形になって中間に浮いている。

まるで赤と青の水で押し合っているみたい。


『今の状態のまま維持しながら赤、青、紫、透明な水をそれぞれ動かしてみよ』


言われた通りに試してみる。

まずは目の前の赤い水の中で小さな水球を創って動かす。

んー、言われてみれば確かにいつもより魔法の発動が速い気がする。


次に赤でも青でもない透明な水を動かす。

球体になっている赤い水の外だから少し遠くなったけど水球を創ってみた。

ふむふむ、赤い水と比べて距離がある分以上に一瞬だけ出だしが遅いのか。

透明なままの水球だけど、イメージとしては赤い色に変えてから水球にしている感じ。

赤い水だとその作業がない分速いみたいな。


何となくだけど多分これが魔力圏の基本なんだろう。

本物は運転したことないけどレースゲームでいうアイドリング状態とエンジンが掛かってない状態からのスタートの違いみたいだ。


紫色の水は後にして分かり易そうな青い水を動かしてみよう。

カーカ師匠を中心にして拡がる青い水に意識を向ける。

うわ、この時点でもう違いがあるよ。

何だか抵抗されている?

既にカーカ師匠の魔法の影響を受けているんだから簡単じゃないと思っていたけどなかなか難しい。


んー、でも難しいことは難しいけど出来なくな無さそう。

例えるなら青い水を無色の水に変えてから赤い水に変えなきゃいけない。

手間は掛かるけど不可能では無さそうだ。


あ、油断した!

青い水を操ろうとしたらカーカ師匠に邪魔をされた?

別の青い水を操ろうとしても邪魔されて上手くいかない。


『分かったか? 先に干渉を受けている水に対しては余程他に気を取られてでもいなければ奪うことは出来ん。逆の場合も同じじゃ』


魔素が動いた?

多分さっきと反対でカーカ師匠が私の周りの赤い水を操ろうとしているみたい。

えっと、そこ!

慌てて取られないように邪魔をするけど今度は別の場所でも魔素が動いている。

難しいよ!

カーカ師匠も感覚を理解させようと手加減してくれているんだろうけどなかなか難しい。

こんな駆け引きを闘いながらやる物なの?


『大体理解したかの? 最後に中間の水を試してみよ』


水の支配の奪い合いが終わって落ち着いたら想像以上に疲れている。

慣れてない所為もあるだろうけどすごく集中が必要だ。

んー、これも視界の差が大きそうだなー。


私は集中して見ていないとどこから攻めてこられるか分からないけどカーカ師匠の視界だったらもっとはっきり見えてると思う。

もっとよーく見えるようになったら闘いでもいろいろ有利に働きそうだ。


おっと、紫色の水も試さなきゃ。

真ん中で色がぶつかっている場所に出来た紫色の水に魔法を掛ける。

あれ? もっと抵抗があるのかと思ったけどすんなり水球を創る事が出来た。

これって赤い水で水球を創った時と変わらない?

青い水が混じっているのに?


あれ? 紫の水が動いた?

カーカ師匠が何かをしている様子は無い。

でも紫色の水の中で水球を創って動かしたら紫の水も何だか動いているみたいだ。


これはいったい?

よく見ると私が動かしている水球は赤色をしている。

えーと、つまり同じ量の赤い水と青い水が混ざっていた中から赤い水で水球を創ったからその分紫色の部分が外に拡がった?

分かり難いな?


えーと、紫色の水全体を操ろうとしてみたら赤い水と青い水に別れて紫の水がなくなった?

魔法を解くと最初と同じように混ざり合って紫色になる。

これが魔力圏が重なると起きる現象?


“これって実戦ではどうなるんですか?”


『魔力圏が衝突するとただ円が重なるのではなく中間で混ざって押し合うと覚えておけばよい。今は互いに止まったままだがもっと接近したとて自身が紫の領域に飲み込まれる事はないのじゃ』


あぁ、なるほど。

試しに少し近付いてみると紫色の水も少し大きな円になった。

つまり気付いたらすぐ近くで相手の魔法が発動してました、なんて事にはならないってことか。

魔力圏の形は単純だけどこれが激しく動きながらだとどうなるかとかなかなか難しそうだなー。


『概ね理解したかの? 但しこれはお互いの魔力が同量であった場合じゃ。そしてこれが2倍』


うわ、青い水が大きく膨らんだ!

紫色の水も私の方に押し込まれて近付いてきたよ!

あれ? でも2倍の差でもこんななの?

ゲームでMPが2倍違ったらスゴい違いだと思うけどなんだかそこまでの差は感じないな?


あっ、これってむしろ数学?

ヤバい、1年以上考えてこなかったからすぐに思い出せないけど、球の体積が2倍になっても半径は2倍になんてならないハズだ。

感覚的にはそのくらいの違いだ。


『3倍……4倍……これで5倍じゃ』


うわっ、ちょっ、飲み込まれる!?

まだ赤い色の中にいるけどかなり押されて窮屈に感じる。

紫の水も円形の板から私を包み込むように端がこっちに向かって来ている。


『そしてこれが10倍じゃ』


一気に来た!?

え、もう私の後ろも青い水なんですけど!


うそ!!

水槽球の中まで青い水に塗り替えられてる!?


恐怖!

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