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カーカ師匠の前に並べられた3つの宝石。

小部屋のガイコツさんから貰った宝石だ。

罪悪感? もしガイコツさんが返せって言ってきたら考えます。


指輪に付いた白い宝石と青とピンクの宝石。

見た目で近いのは真珠、サファイア、ピンクトルマリン?

ごめんなさい、宝石なんて詳しくないので適当です。


とにかく、白い宝石は指輪に付いていて青とピンクの宝石も原石じゃなくキレイにカットされて金具が付いている。


『この青い石は〝湧水石アルコル〟じゃ、魔力を流すと水が溢れてくる』


カーカ師匠が青い宝石を手のひらに乗せると湧き出すように水が出て来た。

スゴい……けど、カーカ師匠が自分でやった方がスゴいので驚きにくいよ。

それに名前がアルコールみたいで飲んで大丈夫なのかちょっと不安。


『他の2つも魔道具じゃ、この白い石は共鳴石マナカナイト、離れた相手と話すための魔道具じゃ』


“えっ、電話みたいに話せるの!?”


『電話と言うのはよく分からんがそこまで便利な道具ではないな』


何でも使うためには始めに他の共鳴石を集めて魔力を浴びせる必要があって、そうするとしばらくの間共鳴石同士で遠くの相手とも会話出来るんだとか。


『持続時間や距離は共鳴石の大きさ次第じゃが、この大きさなら10日ほど6㎞といった所かの? もちろん再利用は出来るが次に同じ魔力を浴びた石同士でしか会話は出来ん』


電話と言うよりトランシーバーみたいなイメージかな?

トランシーバーって使ったことないから間違ってるかもだけど。


『この共鳴石はとっくに魔力が抜けておるし何より相手がいないのでこのままでは使い物にならんな』


遠くの誰かにSOSを飛ばせるような物ではないのね。

水を出す魔道具だったり仲間と会話する魔道具だったりいかにも冒険者が持ってそうな魔道具だ。


“このピンクの宝石も魔道具なんですよね? これだけ私の目には魔素が見えないんですけど?”


『ふむ、これは蒐収納……今はアイテムボックスというそうじゃ。異世界人の影響じゃな。多くの荷物を収納出来る魔道具じゃな。どれも冒険者には必須と言って良い魔道具じゃ、恐らく仲間がここでわしと闘い命を落としこれらの持ち主は小部屋で力尽きたのではないかの?』


うん、何となく想像していたけどカーカ師匠に返り討ちにあった冒険者パーティーか。

カーカ師匠にしてみれば墓荒らしに過ぎないんだろうけど。


そしてガイコツさんの身の上よりもインパクトが大きかったのがアイテムボックス、お前実在していたのか!


『シュリに魔素が見えないのも仕方が無い、アイテムボックスに集まっているのは時間や空間に関する魔素ばかりじゃ、軽々に扱えるような魔素では無い』


“その、魔法としては難しくても、魔道具しては使えるんですか?”


そこが重要だ。

広さは? どの位の大きさまでなら入るの?


『残念ながら最初に魔力を登録する種類のアイテムボックスじゃな、わしなら無理矢理使うことも出来なくはないがシュリには難しかろう』


なんだってー!

アイテムボックスなんて便利アイテムが目の前にあるのに使えないのか。

もし使えたら海藻ストックしたり美味しいお魚をストックしたり出来たのにー!

すぐに思い浮かんだ使い道が冷蔵庫代わりなのもちょっとどうかと思うけどさ。


『ふーむ、中身は金貨や武器くらいか? 食材などは食べ尽くしてから息絶えたのかの? あぁ、ちなみに生きている者は中には入れられないからな』


む、つまり海水いれてお魚入れて生け簀みたいには使えないのか。


“それって中の時間も進んでいるんですか? 温かい物を入れたらどうなるんです?”


『それはアイテムボックスに依るな、これはどうやら外と同様に時間が進むようじゃが物に依っては時間がゆっくり進んだり中が冷たかったりする物もある』


うん、やっぱり冷蔵庫代わりって皆が考えることだよね。

私も普通だよね。

やっぱり使いたかったなー。


“魔道具ってどうなっているんですか?”


ここでちょっとした疑問。

私にも湧水石とか使えるのかな?

もしかして作れたりするの?


『ふむ、わしも作り方までは知らんな。一般常識の範囲外じゃ』


なんと、カーカ師匠にも知らないことが!


『だからわしは知れる事だけしか知らんよ。ただし、原理ならば知っておる。』


『先程魔素はその場その場で偏って存在しその有り様を変化させると言ったがな、例外が存在するんじゃ』


『代表的なのは特定の鉱石や魔物の身体の一部など、特徴的に魔素が集中している物がある。特定の魔素に好まれるそれらは総じて魔素材や単に素材と呼ばれるの。このアルコルなどもその1つじゃ』


『魔素材を組み合わせて作るのが魔道具じゃ。このアルコルに付いておる金具も魔素材じゃな、合わさって真水を出す魔道具〝湧水石アルコル〟に加工されておる』


『ちなみに魔素材単体でも使い道がある。より原始的な用途じゃが、例えばアルコルなら所持しているだけで乾燥した地域でも水魔法の発動を助けてくれるし通常でも威力が底上げされるぞ』


何それスゴい!

おいくら? テレビショッピング並に食い付いたんだけど!

水魔法の強化アイテムがあるなら普通に欲しい。


でもよくよく話を聞いたら効果は本当に僅かだし魔道具に加工されてるから底上げ効果もないとか。


『魔法の補助にもランクがある。アルコルは最低限の効果しかないぞ? だからこそ広く普及される魔道具に使われておる。より効果の高い魔素材を手に入れるのは魔法使いに取っての一生の課題じゃな』


より強い敵を倒し素材を手に入れたりレアな宝石を見付けてパワーアップするのか。

なんだかゲームみたいだなー。

楽しそうだけど命懸けか。

それとも命懸けで強くならないと生きていけない世界?


『そもそもシュリの殻も魔素材じゃぞ?』


はい?

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