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その瞬間私の見る世界は鮮やかに姿を変えた。

……なんか言葉にすると恋愛物の出会いの場面みたいだ。

でも本当に色が違う。

いや、違っているんじゃなくて目に見えてる景色とは別にもう1つの景色を重ね合わせて見ているみたい。


小さくて、色んな色の、光のカケラ、世界に、たくさん、満たされて、動き、近付き、離れてく、静かで、元気で、はじけて、混ざる。


幻想的な世界に我を忘れて眺めていた。

これが世界? この光のカケラが魔素なの?


カーカ師匠の目を通して私を見る。

私にも光のカケラが集まっている。

だってどこにでもあってない所がない。


? 私の周りは色が違う?

あぁ、そうじゃないな。

色んな色で世界は溢れているけれど、岩の壁と空気では色の集まり方が違っている。

私の周りが違って見えるのは水槽球の色なのかな?

それとも海水の色?

そっか、きっと魔法ってこの色を集めることなんだ。

多分だけど、水と同じように光の色を合わせたらそれが水になる。


あぁ、世界が広い。

前を、私を見ているのに後ろも遠くも見える、感じる。

不思議だな、不思議だね。


誰かいる? 誰がいる?

これは洞窟の中の住人の気配かな?

大きくてよく目立つのが1つ、2つ、3つ。

大きいな、大きいねえ。


もっと遠くにもっとずっと大きな気配?

この方向は海の方?

そうか、そうだねガメラさんだ。

やっぱり体が大きいと感じる存在も大きいよ。


んん? あら? あれれ?

もっと遠く、ずっと遠くに誰かいる?

遠いのに感じる、遠くても感じる。

遠いけど、近くにも?


なんだかスゴい。

まるで自然そのもののような大きな、大きな、大きいな。

大きな存在がそこにいる。

大きな存在がこっちを……()()()!?

ひえっ


は!

目の前にカーカ師匠。

これは私の目?

今まで見ていた景色が急に薄暗くて不自然な物に感じる。


『どうした? 突然動揺して共有も解けてしまったが、大丈夫か?』


ハッキリと覚えていたはずの夢から覚めたみたいになんだかフワフワしている。

えーと、ついさっき見ていた物は何だっけ?


“あー、えー、なんかスゴい遠くで、こっちを見てる神さまみたいなバケモノみたいなのがいたんですけど”


夢の記憶を思い出すみたいにしどろもどろで説明する。

説明しながらハッキリと思い出してきて途方もないスケール感に身震いする。


『ふむ……あぁ王の気配に触れたのか。気にしなくて良いぞ、シュリを見ていたのではなく影響下にある周辺一帯を遍く見ておるだけじゃ』


神さまじゃなくて王さま?

その王さま何者なの?


『別に神だと思ってもおってもあながち間違ってはおらんがな。〝万枝王〟〝枯れ枝の王〟など様々な呼び名はあるが実態は植物系の魔物なのでその意思の持ち様は人間とは大きく異なるぞ』


神さまじゃなくて魔物の気配なの?

ガメラさんよりずっと大きな存在感だったのに単に魔物だったのにビックリ。

いや、神さまみたいな魔物なのか。

もう存在が大きすぎてどうしていいのか分からない。

恐ろしや恐ろしや。


『王はその莫大な力で周辺一帯を植物の楽園にしている。シュリが食しておる苔も王の繁茂の波動によって生えておるのだぞ?』


なんと!

王の恵みに助けられてた?

ありがたやありがたや。


『この部屋のように王以外の力で満たされている場所でなければ日の出と共に放たれる繁茂の波動によって植物が芽吹き育つ。この辺りは影響下の外縁に近く洞窟内の環境もあって多種多様な植物とはいかんがな。ちなみに王の影響下にある土地の広さは召喚された異世界人によればカントーイチエンほどだそうじゃがこれで伝わるか?』


カントーイチエン?

関東一円だよね?

ちょっと想像出来ないな、半径100㎞とかそんな感じかな?

もう広いでいいや。

一体の魔物の力で関東中を森に変えてると思うととんでもないな。


『王はこの世界でも最強の存在の1人じゃからな』


こんな近く……でもないけど最強がいるってここはラスダン?


『魔境とは呼ばれておるな。まぁ、最強と呼ばれておるのは人間が知っているだけで20以上いるんじゃ。なにせこの世に留まりながら一個の魂が持ち得る力の限界値の保有者達なので皆が最強なのじゃ』


最強がたくさんいるの?

限界までの力を持っているってステータスがカンストしているイメージでいいのかな?


『ふむふむ、なるほどのー、そうなのか』


突然カーカ師匠が視線を上に向けながら独り言。

電波でも受信した?


『失礼な事を考えておらんか?』


“めめ、滅相もない”


焦った、そういえばふと考えたことまで伝わっちゃうんだった。

でも向こうの言葉に翻訳されてるハズだけど電波とかどう翻訳されてるんだろう?


『わしは精霊じゃ、精霊とは自我を持った世界の一部だと思え。世界の一部であるが故に精霊は世界から情報を引き出せるのじゃ。』


何それ!

つまり全知?

カーカ師匠こそ神さまだった?


『何でもは知らん知れる事だけじゃ、全知には程遠い。一部でしかない故に知り得る情報も限られておる』


何でも世界に多く集まっている情報なら分かるんだとか。

つまり世界中で生活し言葉を話し記録を残す人間のことくらいしか分からんと無表情で言われた。

それでも充分便利な能力だと思うけど。


『そうでもないがの。多くの人が知っていることほど知ることが出来る力じゃ、一般常識は分かっても個人の秘密や国家の秘事を知ることは出来ん。まぁ、この力があるから精霊は人語を解す事が出来るのじゃ』


あぁ、この世界の人間にとってはあまり役に立たない能力なのか。

でも私には言葉が分かるようになるだけで羨ましいよ。


『世界の知で知ったのだが最近では王の事は〝万葉主リーワ〟と呼ぶのが一般的のようじゃな』


万葉主リーワか。

呼び方もたくさんあるって言ってたけどそんなことも分かるんだ。


『その名でTカードに登場して定着したようじゃな』


ポイントカード?

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