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海岸の洞窟の中で出会った可愛い少女のような精霊さん。

お願いしたら魔法のレッスンを引き受けてくれたよ。


正直ちょろ……


「※※ ※※※※ ※※※?」

『失礼な事を考えておらんか?』


……ちょろちょろ中ぱっぱ……

雰囲気で伝わったのか心を読まれたのか、それとも顔色を読まれたのか。

エビの顔色読んだならスゴいな。


軽く睨まれただけなのに内心は大慌て。

取り繕ったけどそんな様子まで筒抜けなの?


『言っておくがわしがそなたの願いを聞き入れたのはそなたが異世界人であり、この世界の世俗に全く繋がりが無いことが大きな理由じゃぞ?』


異世界人だと信用されてる? それとも気の毒だと思われてる?

この世界に人間の知り合いはいないし最初に警戒されていたみたいに誰かの手先でもない。

この場所を守護するのが役目とか言っていたからそれ以外のことをやる意味はあんまり無いのだろう。

それでも断らなかったのは異世界人だから?


『魔法についての助言をする前に2つ言っておくことがあるぞ。1つは魔物に魔法を教えた経験は無いので的確かどうかは保証せんぞ?』


なんでも人間と魔物が使う魔法には違いがあり精霊が使う魔法はさらに特殊だとか。


“師匠を信じます”


ビシッと敬礼。

他に相談出来る相手もいないしむしろ話を聞いてくれるだけでもありがたい。


『師匠……まぁ、よい。もう1つはこの場所やわしの事を誰かに話さない事、それに奥の扉に近付かない事じゃ』


『もし破ったら殺すからの?』


ブルッと背筋が震える。

近付きません、話しません!

いったい扉の先がどうなっているのか詮索もしませんから凄まないでー!


……そこまでして護っている扉の中ってどんな秘密が……はっ、気になりません、気にしてません!

私気になりません!


『気になるか? まぁ、わしの言い方が悪かったな。なに、特に秘密が隠されている分けじゃないぞ?』


ん?


“えと、まるで大したことの無い場所を護っているように聞こえるんですけど……”


こんなスゴそうな精霊が下っ端みたいな仕事をしているの?

この世界のレベルヤバい?


『どんな凄い秘密があるかと勘繰られても困るから教えるが、ここは墓でわしは墓守じゃ』


お墓?


『うむ、わしの主の主が眠っておる』


主の主ってことはとてつもない存在? 神さまとか?


『わしの主はかつて契約していた魔法使いでな、主はとある国に仕えておった』


“じゃあ主の主って王様ですか?”


王様のお墓?

やっとなんとなく状況のイメージが掴めてきた。

でもイメージだと王様のお墓って財宝とか貴重なアイテムなんかありそうだけど違うのかな?


『国王ではなく王族の1人だな。国が滅び、主は王族の1人を護って連れ出すだけで精一杯だった。それにその身1つで逃げてきたから世俗にとって価値がある物なぞ一緒に眠ってはおらん』


おっとイメージと違ってたな。

なんだか悲劇?

手を合わせて扉を拝む。

ナムナム。


『主の最後の願いが逃亡中に息を引き取った王族の安らかな眠りじゃ、そのためにわしはここにいる』


『だが、財宝などないが何故か密かに持ち出された秘宝が何処かに眠っているなどと噂されるようになっての、噂を信じた冒険者がたまにやって来ることがあるんじゃ』


冒険者……トレジャーハンター的な仕事かな?

異世界といったら冒険者だもんなー。


“ちなみにやって来た冒険者は?”


『全て返り討ちじゃ』


おぅ、やっぱりそうですか。


『まぁ、数百年の時が経ったから最後に冒険者が来たのは随分と前になるがな』


数百……そんなにここに!?

スケールが大きいなぁ。


『話が拡がれば再びやって来る者もおるじゃろうが、やって来たらわしは闘わねばならん』


幻の宝も目当てにやって来て返り討ちか、なんだか救いがないなー。


『分かったなら秘密にするんじゃぞ』


『さて、まだ名を聞いてなかったな。わしの名はカーカじゃ。そなたの名はなんじゃ?』


“カーカ師匠、あの私自分の名前が思い出せないんですけど大丈夫なんでしょうか?”


『そうなのか? 渡界の影響かの? 世界を渡るのは魂へ大きな負荷が掛かるからの。……ふむ、見たところこれ以上何かが起こるようには思えんな。大丈夫ではないかな?』


ほっ、大丈夫だって言って貰えただけで少し気が楽になったよ。

相談する相手がいなくて怖かったけど一安心だ。


『時間が経てば思い出すかも知れんが無くては不便だな。仮の名を決めよ。それともわしが付けるか?』


仮の名前かー、確かに話せる相手がいなかったから名前が無くても大丈夫だったけどカーカ師匠もそうだし人間にも会いたいから名前は有った方がいいよなー。

んー、名前か、気になるのはあれだよなー?


“質問なんですが、カーカ師匠に名前を貰ったら進化したりします?”


『似たような事を言っていた異世界人がいたの、答えはそんは都合の良い事は起きんぞ?』


そっかー、面白かった小説の設定だけどここでは違ったか。


『他には名付けにより相手を支配出来るのか? などと言っていた異世界人もいたの。これもそんな現象は起きんな』


あぁ、そんなパターンもあったな。

名前を付けたり逆に名前を奪って支配したりする物語も見たことある。

名前を取り返すために冒険したりね。


魔法がある世界だからちょっと怖かったけど心配ないみたい。

それなら自分で考えてみようかな?

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