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エビ姉さんが動かなくなった。


そんな。


エビ姉さんがペラペラになってる。


まるで脱皮したみたいに。


ん?

脱皮したみたいに?

これってもしかして脱皮した脱け殻?


あー、びっくりした。

なんだ脱け殻か。

ほんとにそのままの形で脱け殻になるんだね。

てっきり死体かと思っちゃった。


って、これは私も脱皮するってことだよね?

なんか怖いな、どうなんだろ?


エビ姉さんは肝心の殻の中身の本人がいないなぁ?

どこかに行っているみたい。

またここに戻って来るよね?

不安だな。

また一人になるのはさみしいな。


そうだ、戻ってくる前に名前考えよう。

エビ姉さんの名前、名前、うーん。

エビ姉さん、エビちゃ……ピーン閃いた。

エビ姉さんの名前はユリにしよう。

……深い意味はないよ? ホントだよ?

これからはユリ姉と呼ぼう。

相変わらず喋れないけどね。

心の中だけの呼び方で。


さて、ユリ姉が戻ってくる前に、魔法の練習をしよう。

昨日までは起きたら泳ぎの練習だったけど、今は魔法優先、泳ぎは普段の移動で練習してるってことで。

ユリ姉が丁寧に魔法を教えてくれたら一番だけど無理だからなー。

そして、そんなユリ姉の前で魔法の練習してたら変な人って思われそうな心配がある。

ユリ姉から見たら何やってるの? って思われそう。

ユリ姉、どのくらいの知能があるんだろうなぁ?

魔法が使えるから高いと思うけど、どうなんだろう?


魔法の練習って、まずは何からやればいいのか分からない。

この世界で人間に転生していたら先生から魔法を一から教えてくれたのかな?

おのれ、うらやましいぞ。


分からないものは仕方がないから自己流でやるしかない。

読書歴を活かすのだ。


まずは水の球をイメージする。

モデルは野球ボールにしよう。

手の先に掴んでいるようにイメージ。

ハサミなのはご愛嬌、サイズも野球ボールより小さくて小エビサイズの野球ボール。


おぉ、ちゃんと海水の中に丸くて触れない空間が出来た。

同じ海水だからあるのか見えないけどね。

次にこのボールを動かしてみよう。

私の周りをグルグルと動くようにイメージする。


動いてる?

手元にはないな?

イテッ、なんかぶつかった。

あー、自分で動かしてるボールじゃん。

なんか恥ずかしい。


まだ身体の形も上手く把握してないからね。

少し身体から離してボールを動かす。

最初より速く動くようになったからかボールっぽいのがあるのが見えるようになったね。

よし、とりあえず今の動きを維持してみよう。

この状態で意識を内面に向けてみる。

これって瞑想?


寝る前に魔法を使ってみたときは大きな水球を創ったら途端に疲労を感じた。

きっと魔力的なものを消費したんだと思う。

なんかゲーム脳だけど。


なので、この状態で使われているであろう魔力を感じることが出来ないか意識を集中して探ってみる。


集中、集中。

……集中。


うん、分からない。

魔力の流れ? とかはさっぱりだけど、だんだん疲れてきたぞ。

今後の課題だね。


とりあえず異世界転生ものの小説だと幼いうちから魔法をたくさん使うと魔力量が増えるってのが定番。

でもユリ姉をみるに、私の周りはそれが普通みたいなんだけど?

それってなんとか魔力量増やさないと周りに置いて行かれるってことじゃなかろうか?

ヤバい。

余裕があれば常に水球動かしてようか?

でもユリ姉がいたら危ないな、なんか他の周囲に影響が出ない魔法の練習ないかな?

大リーグボール養成ギブス的な?


今度は水球の数を増やしてみようかな?

それとも撃ち出してみようか?

昨日のお魚さんが来てもいいように水球を撃ってみようかしら。


イメージはピッチングマシーン。

バシュッ。

目標が無いと威力分からないね。


あと、野球ボールをイメージしていたからピッチングマシーンにしたけどもっと速いイメージにした方がいいかしらね?

バズーカとか?

でもバズーカなんてみたことないしなー。


とりあえず筒をイメージしてそこから撃ち出すようにイメージしてみよう。

バシュッ。

お、岩に当たったね。

さっきより威力大きそう。

でも筒の分か疲労も大きいかも。

ただの水球を動かして十分な威力が出せたらそっちの方がいいのかな?

なんか危なくなくて適当に威力を試せる的ってないものか。


しばらく水球を撃ち出す練習。

疲れた。

ユリ姉さんはまだ帰ってこないかなー、と見渡すために海面付近へ。

洞窟の通路を大イカが3体歩いていた。

複数エンカウントもするんだね。

慌てながらもなるべくそっと潮溜まりの底へ潜る。

遠目でも心臓に悪いな。


あぁ、ドキドキしてる。

こんなときは、落ち着くために100から適当な数を引いて数えよう、今回は7。

100……93…………86……79……72…………えっと、よし、落ち着いた。


あっ、ユリ姉さんが戻ってきた。

イカはもういないけど、なるべく静かにお願いしますね。


なんか大きくなってません?

洋服なら明らかにワンサイズ上じゃないと入りませんよね?

これが脱皮効果か。

一足先に大人への階段を上がったんですね。


あっ、姉さんのことをユリ姉さん、って呼ぶことにしたんですよ。

気に入ってもらえました?

気に入ったことにしましょうね、そうしましょう。


それにしても身体の色も少し変わっていますね?

透き通っていたのが白っぽくなりましたね。

白エビ?


お母さんエビの色は暗くてよく見えなかったけど何色だったのかな?

白くてあの大きさ?

なんかカッコイイかも。


あれ?

なんだか身体が変だよ?

動くとなにかこすれるような気がする。

脱皮の兆し?

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