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突然の閃きが降りてきた。

安全エリアが無いのなら作っちゃえばいいのに。

なんだかマリーアントワネット風のセリフになったな？

本当に作るかどうかはともかく作れるかな？

カエルと闘っていたときに周りの岩や地面は攻撃が当たって崩れたりしていた。

以前に壊そうとして壊せなかった壁と違って削ったり穴を掘ったりなんかも出来そうだ。

じゃあ作る？

うーん、どっちに行っても詰んでそうな状況だけど隠れ場所を作っても結局詰んでいるんだよね。

ずっとここに住める場所ならともかく一時的な避難場所が精一杯。

それじゃあ、あんまり意味が無い。

でも全く意味が無い分けじゃないよね。

安全に隠れられる場所が幾つもあったら本格的に洞窟を抜けることにも希望が持てそう。

問題は本当に隠れられるのかだよね？

頭隠して尻隠さずなんて諺もあるけど私が隠れているつもりでも相手からは丸見えだったら間抜け過ぎる。

こればかりは確証が持てないなー。

匂いだったり魔力反応だったりミニマップだったりで居るのがバレるかもしれない。

そんなの全てに対して安全だなんて分かりっこない。

一種の賭けだな。

だけど戻っても進んでも賭けなのは一緒か。

よしっ、作るだけ作ってみよう。

もし見付かったらその時は全速で逃げよう。

そうと決まればまずは場所をどこにするのか。

前にも似たような場所が有ったけどやっぱり天井と壁の境目辺りかな？

なるべく天井が高くなっていて壁とトンネルみたいに丸く繋がっているより角度を付けて繋がっている方がいいよね。

うーん、この辺かな？

前は失敗したけれど、魔法のお鍋の底を利用した壁へのトンネル掘り。

今度はちゃんと掘れるかな？

私がギリギリ通れるくらいの大きさに調整したお鍋の底を回転させて壁を削る。

でっきるかなー、でっきるかなー。

キュイーン

おぉ、ガリガリ削れているな！

ある程度削ったら砕けた岩を掻き出して下へ落とす。

本当は削るのと後ろに送り出すのを一緒に出来たらいいんだけど今この場でそこまで改良する必要は無さそう。

結構簡単に削れて拍子抜けするくらいだ。

私の身長くらいの横穴を掘ったらそこからは少し下へと掘り進める。

水槽球を解除した海水が入るくらいの大きさの半円状の穴を掘っていく。

程なくして完成した穴を外から眺めて見る。

うん、見ただけじゃ穴があるなんて分からないな。

でもこれだけじゃ安心出来ないし透明なクラゲのこともある。

あいつらなら空も飛んでいるし穴の中にも入って来ちゃいそうだ。

そんなわけでクラゲ対策に入り口にフタをしよう。

毒や透明な身体は怖いけど攻撃に破壊力はそんなになかったから岩でフタをすれば簡単には壊せないハズだ。

入り口の直径より少しだけ小さい円形に岩を切り出す。

水手裏剣をゆっくり当ててサイズを調整。

このフタと小さい石を幾つか穴の中に持ち込む。

フタを起こして穴との僅かな隙間に石を差し込んでいって固定する。

わー、完成ー。

フタの隙間は完全に塞いではいないので空気穴兼覗き穴として使える。

どれどれ？

くっ、フタの淵だと覗きにくいなー、フタに直接穴を空けた方が見やすいな。

よーし、小さく小さく、お鍋の底を小さく小さく。

５円玉の穴くらいの大きさまで小さくしてこれでフタの真ん中に穴を空けよう。

うー、難しいな。

小さくしたら細かい制御が要求されるみたいだし強度が下がったのか強く押し付けるとすぐに壊れてしまう。

まぁ、ゆっくりでも時間を掛ければいいだけだからしばらく悪戦苦闘したけどなんとか開通した。

これで本当に完成だ。

あー、やっぱり狭い所が落ち着くなー。

開放感がある広い空間だといつ襲われるか不安になるからこんな狭い場所の方が落ち着ける。

広い豪邸だと落ち着かなくなるってほんと庶民だな私。

水槽球を解いて潮溜まりを作る。

なるべく魔法を使っていない方が見付かりにくいだろうからこの方がいい。

あー、色々あって疲れたな、少し休もうか。

気が抜けたのか急に睡魔が襲ってきてウトウトと舟を漕ぎだす。

あー、ずっと起きて警戒するつもりで……いたん……だけど……なんだか目が……開けてられ………………かゆ……うま……

…………っ！？

ギャー！！

急にズキンとした痛みに襲われた。

何！？

いつの間にか寝てしまっていた？

なんでこんなに痛いんだ？

まさかクラゲ？

訳が分からずに混乱するけど隠れ家には私の他に誰もいない。

あっ？

眠ってしまって魔法が全部解けたんだ。

私の身体に巻いていた包帯が無くなって大イカにやられた傷口が開いていた。

くぅー、これが痛みの原因か。

寝返りでも打って傷が開いたのかな？

再び海水で包帯を創って縛り上げる。

ふーふー、縛るときに痛みが有ったけど少ししたら落ち着いてきた。

すっかり目が冴えてしまって眠るどころじゃなくなったけど、これって眠ったらまた痛み出すの？

本物の包帯なんて用意出来ないよー。

いや、海に行けば包帯代わりになりそうな海草もあるな。

これは何としても早く海に帰らなきゃだ。

その為にも次の夜には戻れるようにそれまでこの隠れ家で大人しくして隠れていよう。

どうかここが私の墓場になりませんように。

ここで死んだら文字通り墓穴を掘った間抜けだよ。