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魔法で水そのものを創り出す。

カエルが空中で水の足場を創ったり、今から思えば大イカの足の先も水を纏って攻撃していた気がする。


考えてみればむしろファンタジーとしては当たり前の話。

創作物の中では魔法使いが呪文を唱えると何もないところから火が出たり水が出たり風が吹いて土が出る。

規模が大きくなると空から火球が降り注いだり陸地なのにどこからともなく津波が来たりなんてこともあるし、もっとデタラメな現象だっていくらでもあるだろう。

時を止めたりとかね。


普通に日本で生活していたときは当たり前のように触れていたそんなマンガやアニメの世界のことなのにいつの間にか忘れてしまっていた。

そうだよ、海の中にいたら創り出すまでもなく周りは海水だったからわざわざ創るなんて発想が出て来なかった。


もしも魔法で海水もしくは水を創れたら?

今の大きな制限を受けている状況のほとんどが解消されるんじゃないかな?

ギャリギャリと地面を削りながら不規則に動き続けるような場面で初めて試すのはかなり不本意だけどね。

もっと早く思い付いていれば落ち着いた場所で実験出来たんだけどそれは高望みか。


上空からのカエルが舌で攻撃を続けている。

こっちが必死に避けているのを愉しんで見ているのかも知れないがそのニヤケ面を出来なくしてやるぞ。

驚くが……ひえっ、掠った……驚くがいい!


落ち着かない状況だけど贅沢は言えない。

欲しがりません勝つまでは!

イメージ……イメージ……水が出るイメージと言えばやっぱりアレかなー?

そう、蛇口だ。

蛇口を捻って水が出て来る様子をイメージして現実の空中とイメージ映像を重ね合わせる。

イメージの中で水が出て来る様子が現実に投影されてついに水が創出される。

始めはチョロチョロ、次第に勢いを増してついにはちょっとした滝みたいな勢いでザーっと水が溢れてくる。


「Geeqo!?」


フハハ、流石にカエルも驚いたのか距離を取って様子を見ている。

地面には大きな水溜まりが出来ている。

これだけの水があればもっと物量を使った攻撃をすることも出来る。

ここからは私のターンだ!


水を出していた魔法はそろそろ止めてもいいかな?

ずっと出しっ放しじゃそれだけで消耗しちゃいそうだからね。

魔法を解くと水の出現が止まる。

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…………は?

水溜まりの水を操ってカエルに反撃しようとした瞬間に頼りの水が消えてしまって呆然となった。

どういう事? 何が起こったの?


……そういえばカエルが踏み台にしていた水もすぐに消えて無くなっていたよな?

ファンタジー世界の魔法が何も無いところから現れてそのまま存在し続ける?

作品によるけど消えるパターンもあるか……


しばしの呆然。

救いだったのはカエルも困惑していたのかこちらを攻撃してこなかった。

実際は隙だらけでかなりピンチだった。


魔法を解いたら水が消えたってことは解かなきゃそのまま使えた?

えっと、例えばウォーターボールなんて魔法があったとしてこれを使うと何も無いところから水の球が出て来て目標に向かって飛んでいく、そしてぶつかった後は消えて無くなるって理解でいい?

これだと異世界転生で定番の水属性の魔法使いがいると長旅でも水を持って行かなくていいって感じの世界じゃないのかな?

それとも便利な魔道具があったり?


いや、脱線したな。

敵が目の前にいるんだからそのまま脱線事故で死にかねない。

まずはさっきの仮定が正しいのか検証しなきゃ。

水を創るイメージを追加して水鉄砲を発動。


シュルシュル……キュイーーン


よっしゃ!

少し時間が掛かったけどちゃんと準備出来た。

フハハ、今度こそ私のターン。

水鉄砲を準備、準備、準備、準備、準備、発射、準備、発射……


パパッ パパッ パパッ


水鉄砲を並列で展開して準備しては撃つ。

まるでマシンガンみたいにカエルを攻撃。

実際にマシンガンなんて見たことないから合っているのか分からないけどね。

マシンガンと機関銃とかどう違うんだろ?

サブマシンガンなんて言葉も聞いたことあるな?


カエルは?

普通に避けたり舌で弾いたりしているな。

流石にこれじゃ倒せないか。

でも回避させているってことは脅威だと思われているって事だよね?

よーし、回転上げてくよー!


パパパッ パパパッ パパパッ

パパパパパッ パパパパッ パパパパッ


「Geeeqooo」


カエルがより激しく動いて避けいる。

これでもまだ当たらないか。

余裕は無くなってきたか?

でもこれも私にとっては時間稼ぎ、次も私のターンだ!


水マシンガンを撃ちながら用意していたのは10個の水手裏剣。

激しく回転している水手裏剣をゆっくりカエルを取り囲むように距離を詰めていく。

行け、鶴翼の陣!

……陣形とか知らないんだけど合ってる?


水を創り出すって慣れない作業も加わって正直魔法の制御力に余裕がなくなってきている。

このまま押し切れるか?

だんだん避ける場所も制限されて来ているはずなのに全然当たらない。

あっ、当たった?


「Geqo!」


効いてない、だと?

ん? いつの間にかカエルの身体を水の膜が覆っている?

そう言えば1年前に闘ったときも水の鎧を着ていたな。

どれだけ頑丈だ? 私の攻撃でも壊せるか?

他にどんな魔法を使ってくる? あと変身は何回だ?


カエルがやってくることや私に出来ることは何かを考えていたら、突然クルッとカエルが向きを変えて離れていく。


ピョーン ピョーン


えっ? まさか逃げたの?

急展開に立ち止まってしまったけど、どのみち私より速いから追い掛けても回り込むことは出来ない。


勝った、でいいの?

いや、いったん引いただけかも知れないし負けなかったくらいに思っておこう。

私にとっては負けたら後がない闘いだったから勝ちにも等しいけどね。


このまま闘ったら危険だと思って逃げたのか、単に面倒だと思ったのか、割に合わないと思ったのかは分からないけどね。

どれにしたって大きな収穫だ。


そしてここはどの辺だろう?

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