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大きいから大味なのかと思ったけどそんなことなかったな。
むしろ食材としてはかなり上等だと思う。
ちゃんとした料理人が扱ったらかなりのご馳走になるんじゃないかな?
料理人じゃなくても料理のための設備や調味料その他の材料があったら私でもいろいろ出来そう。
スーパーで大抵の物は揃う環境って恵まれているよね。
ハッ
さくっと食べて出発するつもりがつい夢中で食べるのに没頭しちゃった。
んー、残ったイカの足はどうしようか?
食べた分より残った方がずっと多い。
もったいないけど流石に持っては行けないよなー。
でも少しくらいなら持って行けるかな?
先の方より根元が良いかな?
邪魔にならない程度の大きさにカットして水槽球の中へ入れる。
残りは泣く泣くこの場に置いていく。
干物にでも出来たらもっと沢山運べるのかなー?
でも水槽球の中に入れるなら干物じゃ意味が無いか。
残していくイカの足を見ていて思ったけどこの先の方を槍みたいに突き出して私の水槽球を突き破ったんだよね?
そう思うと怖いけど逆によくこれで貫いたな、とも思う。
だって弾力はあるけど普通に包丁で切れるくらいの硬さだった。
それなりに硬さには自信があった水槽球と比べると頼りなく見える。
いや、そこまで強そうに見えないのはイカの足っていう食材のイメージが強いからなのもあるだろうけど、それだけ魔法で強化された攻撃だったのかな?
今思えば足の表面に薄く水の膜みたいな物で覆われていたような気がするな。
それを言ったらテナガザルだって素手なのにこのイカの足を切り裂いていたんだから何か魔法で攻撃したんだろう。
格上の相手が未知の攻撃をしてくるって悪夢だな。
海の中だとほとんどが海水を操って魔法を行っていたけど地上だと違ってくるのも当然だよね。
火とか吐いてくる生き物なんかもいるのかなー?
火属性の攻撃ってよく効きそうだなー。
弱点属性?
とにかくこの潮溜まりにいても先が見えないので出発だ。
また海水で魔法の目を創って視界を繋げて先行させる。
まだ行ってない左の方に進む。
水槽球とは別に水球を創って持って行く。
攻撃にしろ防御にしろ海水が無いと魔法が使えないからね。
比較的安全な時間帯とはいえ全くエンカウントしない分けじゃないから気が抜けない。
でも今の内に安全な場所に辿り着けないと高確率で死ぬ未来が見える。
駆け足くらいの速度で移動する。
なんかだんだん通路が狭くなって来たような?
行き止まりだったらどうしよう?
分かれ道もなくてしばらく一本道が続く。
一本道だけど綺麗に真っ直ぐじゃないから方向はどうなっているのかよく分からない。
道なりに真っ直ぐ進んでいるつもりでもいつの間にか思っていた方向と全然違う向きに進んでいたなんて事も普通にありそう。
今って海から離れているのか近付いているのかも自信ない。
あれ?
魔法の目が捉えた映像に期待が高まる。
通路は行き止まり。
いや、一見行き止まりなんだけど床に水面があった。
テレビ番組なんかで洞窟を探検するようなシーンを見た事あるけど途中で1度水の中を進まないと先に行けない難所として扱われる場所があった気がする。
この水面、場所的にはきっと海面もここを通って先に行けるんじゃないかな?
もしかすると海に繋がっているかも知れない。
この危機から脱出出来るかと期待しちゃうな。
いざ!
チャポン、スーイスーイ、チャポン
短っ、10メートルも進まない内に反対側と同じように通路の先が低くなって水没したような場所に出た。
もう一度水中に戻って中を調べる。
うーん、他の道は無さそうかなー?
海水は細かい裂け目から来ているのかな?
ここは安全地帯に使える?
うーん、大イカも通れる位には幅があるよなー?
通って来るのかどうか分からないけどもしやって来たら危険だな。
安心して休める場所でもないのでこのまま進もう。
ん? 先に進もうとして何か違和感。
何か引っ掛かる事があるのかと思って見渡したら発見した。
2つ目の壁の彫り物。
斜め下の海面を矢印が指して読めない文字が彫られている。
これってこの中を通れば先に進めるとか書いてあるのかな?
んー、てことはやっぱりこの先の矢印と反対に進めば洞窟の入り口があるのかな?
海に戻りたい私としてはこの道が正解なのか分からないけど、もしも洞窟を抜けて地上に出たなら空を飛んで海に戻ることは出来そう。
直接海に出れたら1番なんだけどね。
しばらく進むと少し広い空間に出た。
天井が高いけど地面はでこぼこしていて広間って感じでは無いね。
魔法の目で空間の中を覗く。
いくつか分かれ道があるな。
私が入って来た道以外にもいくつか先に道がありそうな所がいくつかある。
ちゃんと調べないと本当に道なのか分からないし意外に小さな亀裂の先にも道があるかも知れないから気が抜けない。
天井はどうなっているのかな?
これだけ天井が高いと上の方にも何かあったりしないかな?
魔法の目で上を調べる。
流石にこんな所に抜け道なんてないかー。
あれ? 抜け道じゃないけど天井の近くに抉れてヘコんでいる場所があるな。
ちょっと思い付いて天井近くのヘコみまで行く。
この広さならと水槽球を解くとしっかり海水を受け入れてちょっとしたプールみたいになった。
こんな場所なら誰にも気付かれずに安全に眠れるかな?
うーん、でもこんな感じの場所で休んでいて起きたら囲まれていた異世界転生物の小説読んだことあるよなー。
小説を参考にしていいのかどうかも悩む所だけど。