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気のせいかな?

何か聞こえたよう気がしたんだけど?

もちろん元から無音って訳でもない。

風の音や波の音、小魚が立てる水の音や天井からポトリと落ちる水滴の音……ってドリフかよ!


危険な相手は見当たらないけど自然界は音に満ちている。

そんな中で一瞬の違和感。

海の中は音で判断出来ることも多かったから自然と敏感になっている気がする。


ヒタッ


右。

反射的に右側にシールドを張りながら方向転換、しようとして途中でシールドが張れてないことに気が付いて慌てる。

そうだった、海の中じゃなくて今は空中に浮いているんだった。


すぐに攻撃されたりしなかったので一安心。

やっぱり全然勝手が違うな。

改めて潮溜まりの海水からシールドを創って水槽球の周りに配置する。

今まではその場にある海水をシールドにしていたことに比べるとかなり展開に遅れがある。

それでも下に潮溜まりがあるだけマシで無かったら水槽球に頼るしかない。


うーん、何も起きないな?

気にしすぎ?

何の音だったんだろう?


ヒュンッ


正面のシールドに衝撃。

シールドが無事なのを確認しながら攻撃してきた相手に意識を向ける。

透明な鞭のような物で攻撃されたみたいで鞭を辿って相手を探す。


一瞬浮かび上がったのはクラゲのようなシルエット。

次の瞬間にはその場から移動するのに合わせて再び姿を消した。


嘘でしょ!

今のだけでいろいろ驚くことがあってすぐには整理仕切れない。

いや、まずはこの場をどうするかで考えるのはその後だ。

一瞬だけ見えたクラゲは私より少し小さいくらいの大きさだったけど鞭に見えた触手を含めたらその長さは私の何倍もあった。

それよりも1番驚いたのはクラゲが私と同じで空中にいたことだ。


水槽球もなしに宙に浮いてるって見た目だけは幻想的というかファンタジーって感じで綺麗だけどちょっとこんなタイプの敵は想像していなかった。

だって私が知ってるカエルにしろイカにしろ地面を歩いていた。

壁や天井に張り付いているような敵や翼で飛んでいる敵、洞窟だったらコウモリなんかは想像していたけどこんな風に宙に浮いて漂っているような敵は想定外だ。

いったいどうやって飛んでいるんだろう?

やっぱり魔法かな?


それでもシールドが無事だったし攻撃力はそれほど高くないのが救いか。

でも他にどんな攻撃があるのか分からないし油断は出来ないな。


ヒュンッ


再び攻撃が来たけどさっきと同じで弾き返す。

今度は真下の潮溜まりに準備していた水球をクラゲに向けて飛ばしてみた。

流石に躱すよね。

様子見でただの水球にしたんだけど、シュルンって避けながらまた姿を消してしまった。


こっちから攻撃できないのが厄介だな。

クラゲも姿を消したまま攻撃できないのか攻撃する瞬間は姿を現す。

なんだかゲームみたいだな。

姿を現す瞬間を狙ってもけっこう素早くて避けられる。

もし攻撃がもっと強力なら面倒な相手だな。

まぁ、この場所ならどうにでもなるんだけどね。


潮溜まりの海水持ち上げて薄く伸ばして広げる。

イメージはカーテン。

天井から壁まで目一杯に広げた海水の幕をそのままクラゲが居そうな方向に前進させる。


前進、前進、まだ前進。

もうすぐ向こうの壁にぶつかりそうな所で空中の幕に何かが触れた。

見ーつけたー。

そのまま幕にしていた海水で包んでしまう。

水球の中には捕まったクラゲが暴れているけどどうやら逃げられないみたい。


水手裏剣を3つ創って発射。

水球を解除するのと同時に水手裏剣がクラゲを切り裂いた。


バラバラになったクラゲが潮溜まりに浮いている。

どうやら死んだら普通に姿が見えるみたい。

白みがかった半透明で触手には黄色だったり青かったりする場所があって見ている分にはなかなか綺麗。

ちょっと毒がありそうで触るのは怖いなー。


うーん、とりあえず洞窟での初戦闘を経験した訳だけどやっぱり厳しいな。

この場所だから勝てたけど潮溜まりがなかったら水の幕を創るなんて出来ない。

正直相性が良かっただけなような気がするな。

このクラゲだってこの洞窟で生活していた訳だからね。


それにしてもいろいろ気になるクラゲだった。

まずクラゲだってことがちょっと驚きだ。

だって海の中でも何種類かのクラゲは居たんだけど魔法を使うクラゲは居なかった。

そりゃあ海は広いし私が行った場所なんてほんの小さいエリアなのは分かっているけど、今まで魔法を使う相手がいたらその種族は魔法を使ってくると思っていた。

なのでクラゲは魔法を使わない種族だって思い込んでいた。

他の場所に行ったら魔法を使わない普通のエビもいるのかな?


空中を漂うような飛び方にも驚いたけど問題は姿を消していたこと。

これが擬態していたり自然現象で姿を消していたなら分かるんだけどそれじゃあ空中ではムリだろう。

やっぱり魔法で消えていたんだと思う。

なんとなく闘っているときには攻撃する時に姿が見えるのは何だかゲームみたいだなって思った。

でも今から考えると姿が見えたのって攻撃の時に別の魔法を使うために同時に消える魔法が使えなかったからじゃないかな?

どんな魔法だったのか分からないけどクラゲだったら毒とか想像しちゃうな。

あー、ありそう。

常に水槽球の中にいる私には効果なかったけど、それなら攻撃力が低くても狩りが出来そうだもんね。


うーん、攻撃方法はともかく問題は歩くイカとか魔法を使う生き物がいる洞窟で透明になっていたことだ。

魔法を使う相手には魔法が見えるみたいなんだけど透明になる魔法ってどうなの? 効果あるの?

効果ないのに隠れているつもりで透明になっているだけじゃ生き残れないよなー。


これって私にも出来るなら洞窟後略も可能?

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