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何あれ?

とにかく不気味で見ているだけで良くない者だって感じる。


突然現れた黒い塊が膨らんでアンモナイトの姿になった。

大きさは倒したアンモナイトより二回りくらい小さいけれど形はそっくり。


色が黒いから不気味に感じているだけ?

いや、第一印象とか勘違いとかそんなんじゃなく()()は不吉な存在だって確信している。

だって見ているだけで震えてくるし疲労とは別に視界が霞んで心臓の鼓動がヤバいビートを刻んでいるんだもん。


アンモナイトの怨霊なの?

祟りが起きるの早すぎじゃん!

あー、これどう考えても祟りの対象って私だよね?

海水の中の塩分じゃ清めの塩の代わりになりませんかね?


黒アンモナイトが触手を振り上げて……アンモナイトに叩き付けた。


は?

動き出した黒アンモナイトから逃げだそうとしていた矢先の突然の奇行に頭が真っ白になる。


バシン……バシンッ


しかも何回も叩いているし……それってあなたの元の身体じゃないの?

怨霊じゃないの? それとも怨霊ってこうなの?

しかもやたらと強力だし。

今となってはアンモナイトの身体の頑丈さとかよく分からないけど触手を叩き付けられる度に切り裂かれてバラバラになっている。

私の目で追えるくらいの速度の叩き付けなのにあり得ないような威力。

これも魔法? 触ったらヤバい系?


今の内に逃げよう。

流石に得体が知れなさすぎる。

強いのは間違いないしアンモナイトみたいにこっちの攻撃が効かないかどうかも謎。

そもそも生き物とは思えないし、確かめる為に攻撃して余計な注意とか引きたくない。


アンモナイトのミンチ作りに夢中になっている内に黒アンモナイトからそっと離れる。


怖かったーー!!

ホラー映画かよ!?

あまりの怖さに逃げだしたけど結局何だったの?

船の中を移動してとにかく距離を取る。


すごく不気味だったけどやっぱりアンモナイトの幽霊なのかな?

それともこの世界ならアンモナイトが最期に使った魔法って線もありそう。

死体蹴りしていたのは謎だけど。


あー、これからどうしよう?

あの黒アンモナイトが放って置いて時間が経ったら消えてくれたら嬉しいなー。

都合良すぎ?

アンモナイトより強いかどうか分からないけどどっちも私の手に余るのは間違いない。

アンモナイト相手にはたまたま思い通りに事が運んだけど命をベットした大博打を2回もやりたくないなー。


それにしても幽霊なら壁をすり抜けて現れたりするのかな?

マップ無視してエンカウントしてくるモンスターも定番と言えば定番だけどあんなの突然出て来たら心臓止まりそう。


バキッ

バキバキッ

メキッバキッゴキッ


えー、なにこの音?

イヤな予感しかしないんだけど?


ドンッ


壁が倒れて現れたのは予想通り黒アンモナイト。

私の知ってる壁ドンと違う!


壁をすり抜けては来なかったけど心臓に悪いことには変わりなかったよ。

あー、ロックオンされてます?

逃げても付いてくるー!


全力で逃げ出した。

戦闘画面だったら回り込まれて逃げられないとかあるけど取りあえず逃げることは出来た、でも追い掛けてくるし障害物壊してでも回り込んで来るの?


カーブで曲がるタイミングで横目に見ながら水鉄砲を撃つ。


パンッ


真っ黒だし怯んだ様子もないしで当たったのかどうか分かり難いな。

多分アンモナイトとは違って水鉄砲は消えてはいなかったけど単に効果無かったみたい。

威力の問題?

足止め出来たら連射したら少しは効果あるのかな?

足止めなんてどうしたら出来るの?

アンモナイトと同じで遠距離攻撃出来ないのか向こうから攻撃が飛んで来ないのが救いか。


ん? あれ?

ヤバい、こいつ速いな!

通路に引っ掛かっていたアンモナイトより小さいからか移動速度が違う。

カーブなら私の方が有利みたいだけど直線だと距離が縮まっちゃう。

考えてる余裕なんてないぞ。

直に追いつかれちゃう!


後ろに向かって水鉄砲に水手裏剣を放つけど全然相手の足が止まらない。

あー、詰んだ?

無謀にもアンモナイトに喧嘩を売った代償ですか?


逃げ切れる気がしない。

どんどん近付いてきてもうすぐ触手の先が水槽球に触れそう。

水槽球だって黒アンモナイトの触手で叩かれたら保つとは思えない。

為す術ないってこういう事か。

これもう無理かもしれない。


視界に入った黒い鎖。

とっさに鎖を伝って船の外に飛び出した。

そのまま()()()


振り向いた私の目に前には黒アンモナイトが触手を広げて私の視界を塞いでいた。


ババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ……


轟音が鳴り響いた。

見渡す限り辺り一面の沈没船を覆っているサンゴからの一斉攻撃。

私の代わりに攻撃を受けた黒アンモナイトは流石に効いたのか身を捩るけれどそれでもまだ私を追って来ようとする。


構わず上昇する。

そのまま黒アンモナイトはサンゴ礁からものすごい数の攻撃を受け続けていたけどやがて動きを止めた。


やった!

倒した? 後はこいつを盾代わりにして沈没大船団から離れれば生還できるぞ。


ポンッ


軽い音と共に黒アンモナイトの姿が消えた。

た、盾ーー!!


盾がいなくなって何千何万と言う数の暴力が私に襲いかかる。

左右は無理、このまま上昇だ!


魔法でシールドを張る余裕もなく上に逃げる。

仮に張ったとしても焼け石に水だろう。

水槽球に何発か当たっていてだんだんヒビが入る。


チャポン


!?

上昇を続けたらそのまま海面から飛び出した。

勢いのまま空中を進んでその後重力に引かれて自由落下。


ポチャン


……海面に水槽球がビーチボールみたいに浮いている。

サンゴ礁からの攻撃が止んだ?

助かった?


そうだ、空は鳥が怖いんだった。

んー、敵影なし。

今の内にドンブラコと逃げよう。


助かったー!

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