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触手を振り上げ部屋中の荷物を壊していたアンモナイトの動きがますます鈍くなってきた。

もう上手く動けないのか触手が振り上げられてはそのままストンと落ちてはまた振り上げを繰り返している。


ここまでハッキリと効果があるなんて思っていなかったけどよく考えたら人間じゃないんだからお酒を飲み慣れている分けないからその分影響も大きかったのかな?


やがて触手もだらんと床に投げ出して動かなくなった。

念の為にもうしばらくこのままアンモナイトの周りにビンの中に入っていた液体を集めたままにしておこう。


アンモナイトが完全に動かなくなったのを確認して全ての様子を見ていた()()()()()()()()()


うん、実は私が隠れていたのはこの部屋じゃなくて上の部屋。

天井を水鉄砲で撃って私がなんとか通れるくらいの穴を空けて急いで飛び込んでいた。

なんとかアンモナイトが部屋に入ってくる前に身を隠せて良かったよ。

その後は穴から下の部屋全体を見渡して魔法を使っていた。


しかしアンモナイトがここまで思い通りに動いてくれたのは逆に驚いたな。

都合良く行き過ぎて不安になるレベル。

あれかな? 天敵とかいなくてピンチになる経験なんて今まで無かったのかな?

身体に異変を感じた段階でこの部屋から逃げ出すかかも知れないって考えていたけどそのまま暴れていてビンもどんどん割ってくれて助かった。


それにしてこの液体って何だったのかな?

酔っ払っているような動きだったからやっぱりお酒なのかも知れないけれど毒の可能性もあって怖いな。

身体の小さい私だったら誤って飲んだら少しの量でも大変なことになりそうなので水槽球で身を守ってしっかりガードしなきゃ。


動かないから毒にやられて死んだのかお酒で酔っ払って寝ているだけなのか分からないな。

いや、微かに動いているような気もするな。

確実に止めを刺しておこう。


水鉄砲で眉間に照準を合わせて……発射!

バシュッ……シュン


え?


水鉄砲が当たる前に消えてしまったんだけど?

待って、寝ていても魔法効かないの!?

これ安心して下手に近付いていたら水槽球が解除されてビンの液体の中に放り出されていたな、危ない危ない。

もうちょっと離れておこう。


えー、流石に死んでいたら魔法を打ち消す力も発揮しないだろうから寝ているのかな?

それにしても寝ている間も魔法効かないなんて予想外だ。


どうしよ?

まだ生きてるとはいっても一晩くらいこのままにしていたら急性アルコール中毒とかで死なないかな?

でも寝ている分液体を周りに集めても起きているときほど飲んでないだろうからそこまでは期待出来ないかな?


魔法が効かないとなると何か武器になるもので攻撃するしかないけど海の中だからなかなか勢いをつけることが難しい。

中途半端な一撃を入れて目を覚まさせるなんてことになったら目も当てられないよなー。


でもやるとしたら鈍器や剣で攻撃するより槍みたいな武器で攻撃した方がまだダメージ与えられそう。

財宝の中に槍とかあったかな?


武器になる物を探しに行くのも怖いなー。

なんか帰ってきたらアンモナイトいなくなってそう。

とはいえここで武器になりそうなのは割れたビンくらい。

流石にガラスじゃ強度に不安があるな。


すぐに起きるとは思えないけどこの機会を逃したくない。

確実に倒さないと後が怖い。

アンモナイトも学習して罠を警戒するようになるかも知れない。


近くの部屋に何かないか探しに行こうかな?

海流を操っていた魔法を解くとアンモナイトの周りに集まっていた色の着いた液体がゆっくり広がっていく。

んー、やっぱりここを離れるの不安だな。

もう時間を掛けてでも中毒死を狙うのが1番無難なのかもしれないけど他になんとかならないかな?

流石に疲れたので休みたい気持ちが大きくなるけど今頑張らないとね。

いつ殺るの? 今でしょ。


ごはんも食べたいけど今は我慢だ。

ん? ごはん??

……閃いた。

これなら出来るかも知れない。


アンモナイトに近付きすぎないように天井付近を通って通路まで行く。

通路に出たら部屋に向かって魔法を発動した。


キュイーーン

キュイーーン


魔法のお鍋の加熱部分だけを2つ創って部屋の中を温める。

流石に部屋が大きすぎてすぐには効果がないけど少しづつ温度が上がっているはず。

部屋の中を沸騰させるのはムリでもお風呂くらいの温度なら出来ると思う。

海の生き物だからきっと温度の変化には弱いだろうからお風呂くらいの温度でも熱湯風呂並に感じるかも知れない。

それに今は酔っ払って眠っている。

酔っている時にお風呂に入るのは危険だって健康番組で見た事あるから効果は倍増……してるといいな。


キュイーーン

キュイーーン


温められた海水が通路の方に流れてきたのか少し暑くなってきた。

魔法の同時使用はツラいけどなけなしの制御力で部屋と通路の境の海水が動かないように固定。


ビクビク


眠っていたアンモナイト震えだした。

起きた!?

起きたとしてもすぐに素早い動きや冷静な判断が出来るような状態じゃないとは思うけど力いっぱい暴れるだけでどうなるのか分からないからどう動くのか見逃さないように注意しなきゃ。


本格的に目を覚まして震えていた触手が激しくバタつく。

本体はまだ酔いがヒドいのかその場から動けていない。

苦しくて暴れているんだろう。

下手したら床に穴が空いて下に落ちる可能性があるな。


キュイーーーーン


回転を速めて急いで加熱。

クライマックス。

床が抜ける前にこのまま煮っ殺がしにしてやる!

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