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おはようございます。


目が覚めたら海中なことにまだ慣れないなぁ。

暖かいお布団が恋しい。

ストレッチみたいなことをしながら、そんなことを考えていたらスッキリと目が覚めた。


えっと、周囲の様子は……うん、潮が引いたのか寝る前と印象が違うな。

やっぱり岩で道が途切れて狭いところに取り残されてる。

他の生き物はいないみたい。

すぐに危険なことにはならなそうで一安心。


しっかし、すぐに眠くなるのは何なんだろう?

人間なら生まれてすぐで睡眠が必要かもしれないけど、野生の生き物がこんなに寝てばかりいたらすぐに死んじゃうと思うんだけど、これってはたして普通なの?

やっぱり食べたものが悪かったのかな?

そうだとしたらどうしたらいいんだろう?

少しづつ食べていったら耐性が付いて平気になるのかな?

なんか悪い成分をどんどん蓄積しちゃう気もするなぁ。


あっ、そういえば寝る前に見た物をもう一度確認しなきゃ。

海面からのぞき込むとやっぱり壁に矢印みたいな跡が彫ってある。

矢印と一緒になんだか文字みたいなものも彫ってあるけど全く読めない。

異世界の文字かな?


人間の痕跡にちょっと興奮気味。

現実にこんな目に遭うとは思ってもいなかったけど、小説で読んだ異世界ものにはいろんなパターンがあった。

過酷な物だと人間がいなかったり、すでに人類が滅びていたりしたものもあった。

いきなり海で生まれたし、転生のときに神様にあってもいなかったから、ここがどんな世界かまだ分からない。

でも少なくとも人はいるようでなんだか安心した。


……待てよ。

あの歩く大イカに知性があって、壁に道路標識みたいに彫った可能性もあるな。

服を着ていたり、道具を持っていたりする様子はなかったから可能性は低いように思えるけど今の私に確かめようがない。

あの大イカはもろにモンスターって雰囲気だったし。


そう考えるとなんだか前にやったゲームで似たような状況があったような。

たしか、ファンタジーなRPGで、洞窟を探索していたら過去の冒険者が壁に付けた矢印を発見したことがあった。

別の場所で冒険者が残した日記を見つけて、その冒険者が何を探していて矢印の先に何があるのか想像できた。

そんなゲームを思い出した。


うん、なんだかしっくり来る。

壁が光ってる洞窟に、そこにいる大イカというモンスター、そして壁に怪しい痕跡。

ここがゲームのダンジョンみたいに思えてきた。


あー、その場合は矢印の先にいるのはダンジョンのボスかな?

それかボス戦で役に立つアイテムが入ってる宝箱?

逆に洞窟の出口を指しているってパターンもありそうね。

さすがに異世界でも矢印の意味は同じだと思っていいよね。


問題は私が陸に上がった確かめられないこと。

ここで誰か通りかかるのを待ってるしか出来ることがない。


いや、歩くイカもいたんだし案外私も行けるかも。

そっと海面から顔を出して……だ、め。


ハァハァ、なにこの苦しみ。

マジで死ぬかと思った。

逆入水自殺か。


やっぱり誰か来るのを待つしか無いのかな。

その場合どんな風に相手から見られるか想像してみた。


“モンスターを倒しながら洞窟を進むと潮の音が聞こえる。

どうやら海に繋がっていたようだ。

海面を覗くと1匹の小さなエビがいた、捕まえるか”


あれ、これって私食べられちゃう?

そうだよ、今の私は意識は人間だけど、見た目はエビじゃん。

人間と会ってもそもそもコミュニケーションも取れないし。

なんだか人間に会えば何とかなるって思い込んでたんだけど。

やっぱりこのままエビとして生活していくしかないのかな?

便利な生活に慣れた現代人からしたら、どうすればいいか想像出来ないんだけど。


何を楽しみに生きていけばいいの?

エビの楽しみって何?

テレビもネットもゲームもマンガもアニメもない。

娯楽が何もない。

旅行しようにも陸に上がれないからどこも観光出来ない、温泉に浸かったら美味しくなりそう?


あとは美味しい物を食べるくらいしか思いつかない。

でも海の幸はあっても調味料もないし料理も出来ない。


もしかしたら異世界ならではの楽しみがあるかも知れないけど出会える気がしない。

詰んでる?


いやいや、諦めたらそこで人生終了、っていうし、なんとか生き延びていったら意外な出会いがあるかも知れない。

もうそのうちいいことあるよ、って言葉を胸に生きていくしかない。


頑張ろう。

今日はこれから泳ぎの練習をしようと思う。

生き延びるには逃げ足が大事。

目指すのはメタルスライムだ。

でもエビってそんなに速く泳げる印象ないよね?

甲殻類だと逃げ足の速さより甲殻の堅さで身を守るイメージ。


でもまだ透明で透き通っている身体をすぐに堅くなんて出来ないし、鍛えられるものでもない。


たぶん成長していったら自然と堅く大きくなるんだと思う。

なので少しでも生き残れる確率を上げるために今出来ることは速さだ。


とりあえず潮溜まり10周だ。


ハァハァ

参考にしたのは生まれてすぐに見た他の兄弟達の動き。

ちょっとしか見れなかったけど脚、腰、尻尾の動かし方を意識して泳いでみた。

少しは上達したかな?


疲れた。

食事にしよう。

ちょっと不安があるけどここには水草しかない。

行ける範囲にある水草は4種類かな?

昨日は食べては移動していたけど、今日は手に入る水草を集めて一緒に食べてみよう。


小さく切り分け、4種類を混ぜて一口分にして食べる。

好みの味になるよう少しづつ割合を変えていく。

うん、正直たいした変化ではないけど、1種類づつそのまま食べるより美味しい。

今出来るなけなしの努力。

今はこれが精一杯。


あー、やっぱり食べたらだんだん眠たくなってきた。

もうこういう物だと割り切るしかないのかな?

また水草に潜り込んで眠りについた。

お休みなさい。


おはようございます。

ピンチです。

いや、チャンスかも知れない。

混乱してます。

目が覚めたら潮が満ちて広くなった潮溜まりに兄弟らしきエビがやって来ました。


ハ、ハロー

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