前へ次へ
35/88

35

まだ食べたことのないお魚を2匹選んで捕まえた。

んー、今まで毒とか怖かったからお魚の身だけ食べて残りは捨てていた。

ワイルドなんだかもったいない食べ方なのか。


でも魔法のお鍋を開発したことでもうちょっと料理している風にしたくなってきた。


今日はお魚を捌いてみようかな。

丸のままのお魚なんて家庭科でしか使ったことなくて自信ない。

まぁ、失敗しても誰も見ていないからノーカンだよね、ノーカン。


捌き方は料理番組なんかで何度か見た記憶があるし取りあえず挑戦してみよう。


と、その前に新しくまな板と包丁を魔法で創らないとだ。

んー、まな板はシールドを寝かせればいいか。

包丁は形をイメージ。

この形の包丁ってなんて名前だったかな?

三徳包丁? 万能包丁? まぁ、私がイメージする代表的な包丁といえばこの形。

いろんな種類の包丁があるのは知っているけど残念ながら細かく使い分けるような料理スキルは持ってなかったからこの包丁1つでいいかな。


ちなみにお魚は水球で捕まえたのでまだ活きています。

ピチピチの活魚。

包丁で捌こうと思い立ったから無傷で連れてきました。

活け締めとか名前は聞いたことあるけどどうやるんだろう?


魔法の手のひらで水球からお魚をまな板の上へ押さえ込んだ。

そのままもう一つ手のひらを創って包丁を構えて、レッツクッキング。


んー、難しいな。

お魚を捌くのは慣れていないけど捌くことに抵抗は少ない。

こんなのでキャーコワーい、とかいってたら海で生活出来ないよ。

自分で食べるのもそうだし他の生き物のお食事のシーンとか見てたからグロには耐性が付いてきてる。

難しいのは魔法の手のひらと包丁。

手のひらは形だけで感覚とかないからどうしても大雑把になっちゃう。


指先で握った包丁の重さを感じたり背骨に沿ってお魚の身を切る感覚なんかも分からないから我ながら残念な結果に。

練習すれば上手くなるのかな?

それとも魔法の手のひらに触感を組み込む?

でも前に試してみたけど出来なかったんだよね。

なんか料理のための魔法が1番高度なことになってる気がするな。


上手には出来なかったけど頭を落として内臓を取り出して3枚に卸した。

出て来たお魚の血は海流を操作して遠くへやった。

2種類のお魚を半身は生で、もう半身は茹でようと思う。

本当は先にお魚の頭と骨で出汁を取った方が手際が良さそうだけど魔法のお鍋と同時には魔法制御出来ないので後回し。

先に生で食べる身をお刺身みたいに薄く切って盛り付けてみた。


あー、こんな風に盛り付けたらお醤油がないことが際立っちゃうな。

お醤油とか調味料は手に入れようがないんだけど、食事の度に恋しくなっちゃう。


いよいよお鍋。

魔法でお鍋を創り出す。

先ずは頭と骨を入れて加熱してしばらく煮込む。

透明なお鍋だと色の変化が分かりやすいな。

少し白く濁ってきた。

ここでいったん加熱を止めてお鍋の中の汁を水球を創る要領で魔法で制御してフタを開ける。


ポワン


溜まっていた水蒸気が噴き上がったけどすぐに消えちゃった。

ここも地味に繊細な操作が必要だな。

お鍋の水球を維持したまま別の水球でブツ切りにお魚の身と採ってきた海藻を包む。

そして2つの水球をくっつけて具材だけ移動して海水は混ざらないように慎重に操作する。

やっぱり戦いよりも料理の方が難しいことやってる気がする。

まぁ、戦いで魔法を使うときは細かい制御より威力が重要で料理とは違うんだから仕方ないことだけどね。

少しこんな事してていいのって気持ちになる。


あとは弱火でコトコト煮て完成。

お鍋を消して中の汁だけ水球にして維持する。

まだ熱いからこのまま冷ましている間に生のお魚を食べよう。


パクッ


うん、このお魚も美味しいな。

当たり前だけど種類によってこんなに味や食感が違うんだね。

薄く切ったのも食べやすくていい。

それでも小エビサイズでは両手で持つ大きさだから食べていてもお刺身食べてる感じじゃないからお醤油の事も忘れられる。

……嘘です、ずっと頭の片隅にいます。

必死に考えないようにしています。


水球から中身を取り出す。

具材を入れるときとは逆の操作で中からお魚の身を出す。


パクッ


あー、美味しいなぁ。

ホロッとほぐれる食感は生とは全然違っていてこれも美味しい。


スープもいいな。

ちゃんとお魚からお出汁が出ている。

これも頭の片隅にお味噌の影がチラつくなぁ。

あったら絶対美味しいもん!


あっ、骨の周りに付いていた身が1番美味しいかも。

ちょっと食べにくいけど脂が乗ってる気がする。


ごちそうさまでした。


ふぅ、お鍋の登場で食事情が大分変わったな。

今日も美味しかったです。

でもこれ以上の進化は難しいかな?

焼き物や揚げ物が出来たらレパートリーも広がるんだけどね。

どうしようもないけど。

なにより調味料がないのが淋しいなぁ。

今後の課題だね。

いろいろとムリっぽいとは思うけどちょっとでも達成出来たらいいな。


さて休もうかな。

サソリが来にくいように天井の方にあったスペースで寝ようと思う。

念のために簡単にバリケードみたいな物も作っておいた。


そういえば沈没船以外で眠るの久しぶりだな。

ちょっと緊張。

やっぱり安全じゃないところで眠るのって不安になるね、

ホラー映画の登場人物の気持ちがちょっと分かったかも。


んー、重くて置いてきちゃったけど沈没船の欠片があったらもっと安全になっていたのかな?

なんで他の生き物が沈没船を避けているのかはよく分からないけど多分素材が原因だと思う。

欠片でどこまで効果があるのか試しておけば良かったな。


でもサソリに効果があるとは思えないよねー。


久しぶりの感覚、明日もちゃんと生きて起きられるといいな。

お休みなさい。

前へ次へ目次