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巨大なイカが洞窟の通路を歩いていた。

足をウネウネさせて移動し、足音がほとんどしていない。

しかしデカイなー。

多分私の大きさが数センチあるかないかだと思う。

比べる物がないので自信はないけど、私の身体ってそんなに頑丈そうじゃないんだよね。

まだ生まれたてだからだろうけどこの身体でそんなに大きいってことは無いと思う。


そして歩くイカはもうサイズが違いすぎて分からないけど、人間より大きいんじゃないかな?

少なくともさっきのタコよりは大きい。

お母さんエビはぼんやりと影しか見えなかったけど、タコよりは大きかった。

あれ?

それって地球のエビよりずっと大きかった?

自分より大きな生物ばかり。

こっちに向かって来てなくても、こんなに大きいとすごく怖いよ。


あー、なに食べてるんだろ。

こんなに小さなエビとか興味ないですよねー。

現実逃避という願望丸出しだけど、水音立てないように静かに隠れていよう。


食料にされなくても上を通られたりしたら、気付かれもせずプチッと終了だ。

陸上生活だけなのか海中も行けるのか分からないけど足音がほとんどなかったからいつの間にか近くに来ていた、とかありそうで怖い。


ここで生き残れる自信無くなってきたなー。

もしかしなくても危険だらけじゃない?

私に起きてるのが異世界転生だとして、なんで人間の赤ちゃんじゃないの?

そうしたらもっと安全に暮らせて、現代知識を活かして優雅な暮らしが出来たかも知れないのに大自然の大海原でぼっちってどうすればいいの?


ぐるぐると不安な考えが浮かんでくるけど眠気が限界だ。

生まれたての身体で睡眠が必要なのかな?

とりあえずさっきの水草の中に潜って寝よう。


寝ている間にエビ生終了してませんように。

お休みなさい。


おはようございます。

いい朝ですね、時間分かりませんが。


とりあえず生き残れたようで良かったです。

安心して眠れる家があるって幸せなことだったんだなぁ。

時計もないからどのくらい寝ていたのかも分からない。

洞窟の中は相変わらず壁が光っているけど日光みたいなのは感じないのでお外は太陽が出ているのかどうかも不明。


あっ、でもこの潮溜まりは寝る前より水位が増してるみたい。

潮の満ち引きがあるってことは月があるのかな?

異世界はどんな月なのかちょっと気になるかも。

よし、月を拝むのを今後の目標の1つにしよう。


なんかさっきは行けなかったところまで水位が上がって通れるようになったるな。

行ってみようか迷う。

これってまた潮が引いたら戻って来れなくなるよね?

潮が引くとき、どのくらいの早さで引いていくのか分からない。

そんなに早く動けないし、もしかしたら取り残されるかもしれない。

それでも潮溜まりが残ればいいけど場所によってはそのまま打ち上げられかねない。

あっ、でも水草があるところは完全には引かない場所だよね。

うん、あっちにも水草あるみたいだしちょっと探検してみよう。


さっきの水草と違う種類みたい。

お味はどうかな?


苦っ。

あっ、でもほうれん草に近い感じがする。

生だから苦味が勝ってるのかな?

かるく茹でておひたしにして食べたいな。

まぁ無理だけど。

ぐすん。


これがホームシックか。

もうお米や醤油とか食べられないと思うと絶望しそう。

エビの味覚で食べて美味しいか分からないけどね、と思えば少しは我慢出来るかな。

ごめんなさい、嘘です。

恋しいよー。


うん、最初に食べたときは苦いと思ったけど、そうだと思って食べたらこれはこれで食べられるな。

いろんな水草や海藻を集めてサラダに出来たらちょっとは料理っぽいかしら?

もっと種類を増やして試してみたいな。


お母さんエビは何を食べてあんなに大きくなったんだろう?

生き残ればあんなサイズになれると思うと少しは希望持てるかな?

いったい何年かかるの?

あー、深く考えないようにしよう、まずは探検の続きだ。


その後新しい水草を何種類か見つけた。

うん、どれもマズくはないけどご馳走って感じじゃなかった。

調味料もない草をそのままなんだから当たり前かもしれないけど、日本人の味覚のままだと舌が肥えててこの環境だとツライ。


そして食べたらまた眠くなってきたんだけど早すぎない?

やばい、まさか知らずに毒草食べたかも!

くっ、限界だ。

これが普通の眠気であることを祈って眠るしかないけど、少しでも安全に眠れるところで眠りたい。


多分潮が引いたらいくつかの潮溜まりに別れて行き来出来なくなると思う。

なので海底の地形を見て少しでもあの大イカが歩いていた洞窟の通路から見えないようなところ探して移動する。


この辺でいいかな?

わずかに見える洞窟の方を眺めていたら、さっきと見る角度が変わったからか洞窟の壁にあるものに気が付いた。

あれって……()


あー、駄目だ、意識が。

考えるのは目が覚めてからにしよう。

そばの水草の根元に潜り込んだ。


お休みなさい。

また目が覚めますように。

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