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ゆっくり、そーっと後ずさり。


うわー、大船団を覆い尽くす大サンゴ礁とか。

知らずに上を通ったらハチの巣になってたよ。

なんで船がサンゴだらけになっているんだろう?

船の素材が原因とか?

何でかは調べようがないけど、これは流石に迂回するしかないかなー。

船の中を見てみたいけどこのサンゴ礁に命懸けで突入する気はないよ。


あれ? そういえばサンゴから攻撃されてないな?

私がサンゴに気付くより先に攻撃されていたんだけど今回は攻撃されていない。

もしかして違う種類とか?

ひょっとして安全なのかな?


近くにいたお魚さんを水球で捕獲。

そのまま船の上へ移動させる。


バババババババババババババババババッ


おぅ、ゴメンねお魚さん。

ナムー。


攻撃しないわけじゃないのね。

やっぱり普通に怖いサンゴだったわ。

んー、でも他のサンゴより攻撃するまでの反応は遅かったような。

完全に上空に来るまで攻撃して来なかった。

やっぱり船になにかあるんだろうな、これ。

お魚さんを食料として獲っているなら、この船に取り付いていることでそんなに飢えていないとか?

仮定としてはありそうだけどその原因は結局謎だな。

船そのものを食べている分けじゃないみたいだし。


うーん、どうしようかな?

こう目の前にあからさまに怪しい物があるとゲームだったら間違いなく調べに行く。

でも現実にこんなことになっちゃったらどうしても安全を最優先にして及び腰になっちゃう。

セーブデータを分けて取りあえず突撃とか出来ないかな?


でもここをスルーするのも大変そうなんだよね。

サンゴのせいで上を通れないから沈没している大船団の周りをグルッと迂回しなきゃだけど、かなり広範囲で距離もあるしどこにいるか分からなくなりそう。

どのくらい時間がかかるのか分からないし、寝る場所の不安もある。

いざとなればすぐに沈没船まで帰れるって保険が怪しくなるしね。

上を通れないのが痛いな。

それにしても赤ちゃんガニ達はこの沈没大船団を迂回したのかな?

今ごろどこにいるんだろ?


うーん、迷うなぁ。

取りあえず今日はこの沈没船……紛らわしいな、この沈没船2号館に泊まって様子をみよう。

幸い今までの1号館と同じでフタがあって中に空間があるみたいだし。

そうと決まれば食料を確保せねば。

幸いサンゴの位置さえ気にしておけばそこまで怖がる事もない。

バージョンアップした水槽球もあるしね。

サンゴのせいかこの辺にいるお魚はあんまり動き回っていなくて岩場に隠れるように行動している。

なのでこの辺にいそうだなって場所には高確率でいるので狩りもやりやすい。

海藻も見たことあるものばかりなので迷わずに採れる。

これ美味しいんだよね。


十分な食料を2号館に運んだので今日はもう休もう。

2号館でゆっくり過ごしてこれからの方針、というかこの沈没大船団に対してどうするか考えよう。


おぉ、初めて食べたけどこのお魚さん美味しいな。

脂が乗ってるのかいままで食べた中でもこってりしている。

海水にも脂がうっすら浮かんでいる。

あー、醤油欲しいなー!

このお魚を刺身にしたら醤油に脂がギトッと浮かぶんだろうなー。

くっ、想像したら白いご飯まで欲しくなってきた。

無い物ねだりってこういうことか。

せっかく美味しいお魚なのに現代っ子としていろいろ美味しい物を食べてきた記憶が邪魔をして集中出来ないよ。

海外旅行したら日本食が恋しくなるっていうけど、それ以上かも。

帰れば食べられる旅行とは違って異世界転生だもん。

これが異世界に転移したとか召喚されたとかだったらまだ元の世界に帰れる可能性もあるかもだけど、何故かエビに転生してるし。

もう日本食も駄菓子も食べる機会なんて無いだろうな。


あっ、もしこの世界の人間に接触出来たら醤油そのものはムリでもそれに近い調味料は手には入るかも。

……醤油があってもどう食べるの?

海水を魔法で上手く操れば海の中でも醤油と海水を混ぜないでお魚に付けて食べられるかな?

よし、もっと繊細に海水を操作出来るように練習しておかなきゃ。


やっぱり人間がいるならいろんな料理や調味料があるんだろうな。

異世界物の小説にありがちな食事面でそんなに発展していない世界じゃないといいな。

私が新しい調理法を広める、とかエビの身体でやるとかムリだし発展しているといいな。


人間がいるのか分からないけど、もしいるなら仲良くなれるように気を付けて出会わなきゃ。

未知なる調味料と出会うためにも注意しなきゃね。


まぁ、いろいろ難しいだろうってのは分かっているけど期待して悪いことはないよね?

沈没船1号館じゃないけど、この世界の人間といい関係を築けそうになかったらエビとして海で生きるって保険もあるし。

なにがあっても絶望しないで生き延びてやんよ。

よし、その意気だ。


いつもより細かい制御に気を付けて魔法の練習をした。

1つの海水を操るのは慣れてきたけど、複数に分けて操ると途端に難易度が高くなるな。

でも何があるか分からないし美味しい食事のためにも細かい制御が出来ていた方がいろいろと便利だよね。


沈没船2号館から出て夕日が沈むのを眺める。

明日はどうしよう?

しばらく2号館にいてもいいけど、いつまでもここにいるつもりはないしなー。


あれ? お魚が沈没大船団の方に泳いでいくな。

大丈夫か?


船に泳いでいったお魚は壁に隙間でもあったのかそのまま姿が見えなくなった。


えっ、中に入れるの!?

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