前へ次へ
19/88

19

戦車は自分が撃つ弾を受けても耐えられる防御力を持つように作られている、と聞いたことあるような気がする。

本当かどうか知らないし、もう誰かに聞くこともググることも出来ない。

そこまで調べたいことでもないけどね。

それより、サバイバルとか海の生き物について調べたいなー。

どこまでこの世界で通用するのか分からないけどね。


脱線したな、生き残るには攻撃力より防御力や素早さが大事だと思う。

私って紙装甲だからね、甲殻類なのに。

甲殻で身を守るどころか1口でそのまま食べられそう。

成長したらカエルの舌とか甲殻だけで弾けるようになるのかな?

まぁ、大きくなってもさらに巨体な生き物とかいるだろうからいつまでも安心とはいかないだろうなー。

どこかに安心って落ちてませんかね?

はぁ、世知辛い。


また脱線したな、大脱線だ。

えっと、何をしようと……あぁ、私の身を守ってくれたシールドに水鉄砲を撃ったらどうなるか試してみようとしていたんだった。

よし、正面に水魔法でシールドを創る。

水鉄砲の準備をして狙いを付ける。

どうなるかな?


バシュッ


ピシッ


おぉ、ヒビが入ったけどシールドが耐えたね。

もう1発。


バシュッ


パリンッ


うん、今度は貫通したね。

これって耐えたように見えるけど、連続で撃たれたら私ごと貫通してたよね?

それにシールドってカエルの舌の攻撃には1度だって耐えられなかったもんなー。

なるべく正面から受けないで、角度を付けるようにしてなんとか凌げたけど。


うーん、何かもっといい身の守り方ってないかなー?

そういえばシールドの強度ってどうなっているんだろう?

シールドだけじゃなくて、水魔法で創った手のひらとか釘バットなんかも硬さってどうなってるのかな?


魔法で創った手のひらを触ってみる。

柔らかいなー。

まぁ、手のひらだし、硬かったら上手く物を掴めないしね。

釘バット……硬い。

シールド……もちろん硬い。

んー、違いはやっぱり魔法を使うときのイメージの差かな?

硬い物をイメージしたらもっと頑丈なシールドに出来る?

もっと単純に魔力を注いだ分だけ硬くなる、とかなら分かりやすかったんだけど、未だに魔力的な物を感じ取れてないんだよね。


今のシールドはアニメで見た透明な板のような物をイメージしているんだけど、もっといいイメージあるかな?


それともシールドの形にこだわらなくて、違う方法を試した方がいいかな?

いくつか思い付いたことがあるんだよね。

思い付いたというか、いろんなアニメのシールドとかバリアとか思い出していたら参考に出来そうなのがあっただけだけどね。


まずはシールドを創って水鉄砲を撃つ。

バシュッ

ヒビが入ったけど、この状態のシールドを魔法で直してみる。

元の状態に戻るようにイメージする。

おぉ、直った。

元のキレイな状態になった。

これで、ずっとシールドを直し続けたら今より防御力高くなるかな?

んー、魔力の消費が増えるのかな?

後で試してみないとだね。


次は今の板状のシールドから私を中心に円形にしてみる。

強度的にはどうだろう?

よく分からないな?


イテッ


あー、自分で創ったシールドにぶつかったよ。

そっか、今までシールドって、張った場所から動かしたりとかしてなかったっけ。

常に丸いシールドを創ったままそれを私の動きに合わせて動かすイメージを持てばいけるかな?


……面倒。

いや、慣れればもっと楽になるとは思うけど、少し気を取られるとすぐにシールドの動き忘れちゃうな。

自動で出来ればいいのに。

慣れたら無意識でいけるのかなー?


あれ?

これって、丸いシールドじゃなくて水球の中に私が入って、水球を魔法で動かせばいいんじゃない?

そうしたら私は動かなくて水球だけ動かしたらいいし、水球にも多少は防御力もある。

普段は水球で、敵に遭ったら丸いシールドにするか板のシールドを周りに創った方が効率的かも。

でもこれって、一生懸命に泳ぎの練習してたのがムダに……

いや、効率大事、生存優先だ。


ちょっと実験。

私を包んだ水球を創ってみる。

これって今までの水球みたいな速度でバシュッと動かせるのかな?


シュッ


んー、水球ほどの速度は出てないなぁ。

でもまだ速く出来そうな感覚はあるな。

速すぎても怖いから無意識にセーブしているのかな?

なんにしても泳ぐよりこの方が速かった罠。

練習してたのは一体……


とりあえず500ミリリットルくらいの海水で水球を創って私を包む。

このくらいをデフォルトにすればいいかな?

まだ海藻を運んだり攻撃する余裕もあるしね。

これで移動しても、魔力の疲労が大丈夫だったらこのやり方を採用しよう。


ちょっと実験がてら移動する。

速く動こうとしたら出来るけど、危険な生き物に出会わないように加減。

水球の速さとしてはずいぶんゆっくり動かしているのに、それでも今までより速い。

あー、楽だー。

これはダメになる楽さかなー?

身体は動かしてないから運動不足で病気になったりしそうだ。

うーむ、よし、同時に身体強化魔法を使えば大丈夫かな。

なんか本末転倒?

いや、魔法の訓練にはなってるでしょ。

きっと。


いままで行動していたよりも広い範囲を移動したけど、疲労はそれほどでもないな。

確かに疲れは感じているけど、まだまだ大丈夫そう。

でも急に限界がきたり、いつ敵と戦うことになるのか分からないから余裕は持っておかないとね。

沈没船に戻ってちょっと休もうかな。


んー、いないなぁ。

えっと、潮溜まりから逃げてきてから全然私と同じエビを見かけない。

ユリ姉さんに会えないかと辺りを探していたけど、ユリ姉さんも他のエビもまだ見ていない。

そんなことってある?

あんなにたくさんの兄弟が生まれていたのに。


まさか全滅しました、なんてことはないよね?

いくら自然界が厳しいからって、生まれた子供が1匹も生き残れないとかあり得ないと思うんだけど。


魔法の方は、攻撃には水鉄砲、防御と機動力に水球でなかなかいいんじゃないかな?


魔法の練習をして疲れたから休憩する。

船の中で一休みしよう。

お休みなさい。


……ズズン……ズズン


ん?


ズズン……ズズン……


揺れてる?


……ズズン


なにが起こってるの?

なんか足音みたいなんだけど……そうだ、まさに怪獣映画で見た怪獣の足音がこんな感じだった。

えっ、怪獣!?


……ズズン……ズズン


パニック。

沈没船の中にいて外の様子が分からなくて怖いんだけど、外に出ていいのかどうかも判断できなくてパニクる。


ズズン……


近づいてきてない!?

ヤバっ、慌てて外に出る。

くっ、焦ると上手くフタを開けなくて、それで余計に焦る。


なんとか船の外に出て辺りを窺うと……いた。

遠くに巨体な影が見える。

海底の方からこっちに来てる!


……ズズン……


あっ、でも近付いてはいるけど沈没船の方に真っ直ぐじゃない。

良かったー。


ズズン……


だんだんハッキリと見えてきたけど、あのシルエットってカニ?

いやいや、あんな大きなカニ地球にはいないって!

怪獣もあながち間違ってなかった。


生まれてすぐはよく目が見えなくてハッキリ覚えてないけどお母さんエビも大きかった。

このカニもお母さんエビと同じか、それ以上に大きいように感じる。

深海って怖っ。


ズズン


動きが止まったな。

何しているんだろ?

んー、砂ぼこり?


もうスケールが違いすぎて逃げるとか思い浮かばずに見入っていた。

さすがにこっちに向かってきていたらすぐに逃げていたけどね。


……ズズン……ズズン……


砂ぼこりが上がったと思ったら、カニが引き返して海底に向かった。

そういえば直進していたな、横歩きじゃないんだ。


ズズン……ズズン……


どんどん音が小さくなって、やがて聞こえなくなった。

あー、怖かったー。

急にあんな怪獣が来るなんてね。

誰か予告してよ。


しかし、何しに来たんだろ?

これからも来るのかな?

怖いんだけど。


ん?

カニが引き返した辺りを見ていたら何か小さな物が動いている。


あれは……赤ちゃんガニだ!

この辺って出産スポットなの!?

前へ次へ目次