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悲報、唯一の逃げ道が通行止めだった件。


ちょっ、ヤバいヤバい、マジでヤバい。

血の気が引くってこういうことか。


はっ、呆然としている場合じゃない、次の手を考えないとカエルに食われる。


慌てて振り向きカエルに目をやると攻撃せずに目を細めてこっちを見ていた。

こいつ……嗤ってやがる。

言葉はなくても態度から伝わってくる。

私達が追い詰められているのをニヤニヤ見ているんだ。


くっ、悔しい。

でもそのおかげで今この瞬間は生き残っている。

後で後悔させてやる。


打開策は?

カエルの気が変わる前に頭を振り絞る。

案1、このカエルを倒す。

案2、亀裂をどうにかして通る。

案3、別の逃げ道を探す。


大まかな選択肢としてはこんなところか?

まず案3は無いな。

全部を見て回った分けじゃないけど、この潮溜まりで他に海と繋がっているところを知らない。

このカエルから逃げながら、あるかどうか分からない逃げ道を探すなんてそんな選択肢は選べない。

案1のカエルを倒す、が成功するならこれが一番いい、成功するなら……だけど。

でもこれだけ大きな相手とまともに戦って勝てる気がしない。

どうやってるのか海水の上に乗っかっているんだけど、間違いなく魔法使ってるよね?

ユリ姉さんもそうだけど、魔法を使う生き物は普通の生き物より頭がいいと思う。

今もこちらが慌てている様子を見て嘲笑っているのも知能が高いからだろう。

戦うならそれだけ厄介さが増してくる。


潮溜まりにいた魚が魔法を使っているところを見ていないけど、さっきカエルに食べられていたときも魔法を使う様子がなかった。

きっと地球の魚と同じように考えていいと思う。

魔法を使うところはユリ姉さんとこのカエルしか見てない、魔法使える生き物は少ないんだろうか?

弱くても魚達が魔法使えたなら一緒に戦うことも選べたかもしれないけど、この選択肢も選べない。


残ったのは案2、潮が引いて海水が無くなった亀裂をどうにか通るしか生き残る道は無いよう。

でもどうやって?


海面から顔を出したときはすごく苦しかった。

生きるために少しくらいなら我慢する覚悟はあるけど、この先の様子がどうなっているのか、どのくらい距離があるのか分からないと実行するのは無謀としか思えない。


万策尽きた?


「GgeeGeeGeeePkffss」


もう時間切れ!?

カエルがひとしきり嗤ってから攻撃体勢、いや捕食体勢に入った。

私はシールドを創って守りに専念する。

攻撃はユリ姉さんお願いします。


ユリ姉さんが放った水球をカエルが舌で打ち落とす。

距離が近いこともあって、いくつかの水球はカエルに当たっているけど効いてない!?


ユリ姉さんも今の攻撃が効果ないと分かって、水球の大きさや速度を上げていくがそれでも状況は変わらない。


私も攻撃するか?

でもたくさん創ったシールドを維持していて、ユリ姉さんほど威力のある攻撃なんて出来ない。


「GggeeQooo」


なに?

カエルの足下から海水が持ち上がってカエルを包み込んでいく。

一瞬、ユリ姉さんの攻撃かと思ったけどどうやら違う。

さっきから変わらず水球を放っている。

同じ場所に連続で当てたり、目を狙ったりしているようだ。

そのユリ姉さんの攻撃がカエルを覆った海水に弾かれている。


カエルって海水も大丈夫なの?

いや、そんなこと考えてる場合じゃない。

もうユリ姉さんの攻撃を無視して遠慮無く舌を打ち付けて来やがる。

創っていたシールドがどんどん破壊される。

壊された端から新しく創っているけど壊されるペースの方がずっと速い。


ユリ姉さんも攻撃するのをやめてシールドを創っているのでなんとか拮抗しているけど、疲労が溜まってもうそんなに長く魔法を使える気がしない。

カエルの方は余裕しゃくしゃくでこっちをいたぶってやがる。

このまま潮が満ちてくるまで持ちこたえるとか無理だ。


ヤバい詰んだか。


せめてもの抵抗が頭に浮かんだけど、それをしたからって……

意味なんてあるか?

なんで私がそんなことを?


……もういいや。


ユリ姉さんに向けて水球を放った。


もういい、考えるのを止めた。

私がそうしたいと思ったからそうするんだ。


突然のことに驚いて反応出来ていないユリ姉さんに連続して水球を放つ。


よし、()()()()()


狙い通りの位置にユリ姉さんが来たので、私に出来る最大量の水流を創ってユリ姉さんを()()に押し流した。


私の行動に戸惑ったのか動きを止めて様子を窺っていたカエルが慌てて攻撃を再開してきた。

それでも攻撃されてるのを無視して亀裂に海水を流し込み続ける。

どうかユリ姉さんが海まで辿り着けますように。


真後ろに創っていた最後に残ったシールドごと吹き飛ばされるまで海水を流し続けた。


あーあ、最初はいざというときの囮にしよう、なんて思っていたのになんで自分を犠牲にして助けようとしたんだか。

飛ばされながら、そんな考えが浮かぶ。

一緒にいたのは短い期間だったし、「ユリ姉さん」なんて呼んでいても実際には肉親だとは思っていない。

せいぜいペットに向けるくらいの愛情しかなかった。


でもなー、出来ることなら助けたいって思っちゃったんだもん。

それに役割を逆にすることは出来なかったから、助かる可能性があったのはユリ姉さんだけだった。

確認出来ないけどちゃんと助けられてたらいいな。


岩に激しくぶつかる。

右手のハサミも衝撃でもげた。

くうぅ、痛い、痛い。


カエルが怒ったような顔で私に舌を伸ばした。

ははっ、なんだかいい気味だ。

満足。


でも最期まで抵抗してやる。

楽には食われてやらないぞ。


シールドを創り水球を放つ。

シールドは角度を付けて舌を滑らせるように工夫してみる。

ユリ姉さんみたいに水球で舌を狙い撃つ。

少しでも長く粘ってやる。


苛立ったカエルが益々激しく攻撃してくる。

何度もシールドごと吹き飛ばされたけど、なんだか慣れてきたのか岩にぶつかる前に水流を創って勢いを弱めたりして痛みは少ない。

すでに満身創痍だけどね。

ヤバっ油断すると意識飛ぶ。

魔法による疲労と怪我の痛みで意識が朦朧としてきた。


あれは?


流石にもう限界だと思い始めたとき、視界の端に白い物が映った。


朦朧とする意識の中でとっさに白い物に水球を放つ。

こっちに来るかな?


カエルが攻撃を止めて慌てている。

あはっ、ざまーみろ。


白い物、歩く大イカがやって来た。


死なば諸共。


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