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異世界歴七ヶ月。

僕は今、空を飛んでいる!


前回思ったように歩いて数ヶ月の場所まで行こうとすれば、能力の方向音痴が無くとも僕は迷子になる……確実に。

だからそうならないための移動手段をいくつか考えていた訳だが、その内の一つが空を飛ぶ、だ。

空を高く飛んで目的地まで真っ直ぐ行ければ流石に迷子になったりはしない……筈だからだ。


だが魔術で空を飛ぶのは難しい。

最初に考えた方法は土魔術で翼やら飛行船やらを作って風魔術で飛ぶ方法だ。

だがこれは無理だった。

正確には翼は操作が難しく、船は消費魔力が多すぎて断念した。


だが諦めきれなかった。

しかし良い案も出なかった。

そんなある日運命的な出会いをした。

箒があったのだ。

この世界には魔術とそれを魔術師でなくとも使えるようにした魔道具がある。

特に家電のような物があり、しかしコンセントなどは不要なので外でも使える掃除機のようなものがあった。

だから知らなかったのだが田舎の村に依頼で行った時に、その魔道具が無いために箒を使っている人を見かけた。

そして脳裏に過ぎったのは宅急便の少女とハゲと戦う魔法学校に通う少年だ。

そう空飛ぶ箒が答えだったのだ。

そこまで分かれば簡単だった。

まず箒を売ってる場所を聞き、結構な量を買い、試行錯誤して空飛ぶ箒は完成した。


作ってみると原理は単純で簡単だった。

箒の柄の内側に三本の杖を仕込んだ。

先端の杖は風魔術で風避けの三角錐を張るためのもの。

真ん中の杖は土魔術でサドルとその後方に風受けの三角錐を貼るためのもの。

最後の杖は風魔術で風受けに風をぶち当てて推進力を得るためのもの。

更に前後の杖二つが無くても土魔術のサドルを操作して、速度は出せないものの自由に空を飛べる。

それに速度は出ないと言っても自転車程度の速さは出てるので空を飛べることを考慮すれば十分だと思う。

更に風魔術のブーストをすれば秒速二十メートル程、約時速70メートルと車並の速さが出せるのだ。

因みに同じように船も操作すれば飛べるが重さのせいで箒の五分の一も速度が出なかった。


それはさておき、そんなこんなで空を飛ぶ手段が完成されたが、今は空中での戦闘手段を開発中だ。

落ちた際の安全策は風魔術を自分を包むように「発生」させる魔道具を用意したので万が一の場合でも問題無いが、戦闘が出来ないのも問題なのでいくつか考えている。

取り敢えず箒に乗りながら自分で杖を持つのは安定感及び安全性の理由で却下となった。

なので今はどうにか追加で箒に杖を仕込めないか考えている。

コレが完成したら久しぶりに友人と会いに行くのだ。

楽しみだなぁ。

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