異世界転移から四ヶ月。
とうとう僕は普通に歩けるようになった!
歩ける方法に気付いたのは海賊から逃げる時だった。
海賊から逃げる時、牢屋に念の為にと入れられていたが魔法を使えば逃げることは容易く、一応一週間過ごした仲かつ陸地まで案内してくれたわけなので破壊は最低限にして脱出。
予め目を付けていた人目に付かない場所の窓から身を投げた僕は、自分が中心となるよう直径二メートルほどで風魔術を「発生」させた。
そして風のボールに入ったまま海中に飛び込んだ。
風のボールと言っても表面が回転しているだけで中は無風かつ気圧などは自然に近くなるようにしてあるので特に違和感はない。
ただし、空気交換は出来ないので定期的に「発生」し直す必要はあるがそこまで切羽詰まってはない。
なので体に負担がかからないそこそこの速度で移動する。
そしてある程度離れた頃に一度海水表面まで浮上し、周囲を確認して素早く「発生」の解除と再展開をする。
そして改めて海の中に潜った時にふと思った。
この風のボールに入ったまま五百歩歩いても方向音痴は発動するのか、と。
結果は発動しなかった!
どうやら魔術越しに地面を歩いても歩数はカウントされないらしく、これを利用すれば普通に歩けるようになると気が付いた。
それからは毎日魔法の上を歩く練習を行った。
色々試した結果選んだ方法は、スリッパやサンダルのように爪先と足首を輪で靴底に固定する方法だ。
これが一番シンプルで簡単な方法だ思う。
とはいえ問題が無いわけではない。
まず簡単に壊れたら困るので強度がいる。
しかし強度を上げると重くなる。
重くなると疲れるし動きが鈍くなるのでそれは困る。
その上、土を圧縮したものなので柔軟性が無い。
本気で逃げるなら魔術を解除して五百歩全力疾走すればいいが、それが出来ない状況では困るのでどうにかする必要がある。
とりあえず靴底は蛇腹にすることである程度稼動出来るようにしたがもう少しどうにかしたかった。
それでも一先ず普通に歩けるようになったので、ようやく異世界の街に行くことが出来る。
異世界の街はどんな感じなのだろうか。