異世界に来てから一ヶ月が経った。
未だに「方向音痴」による転移は解決出来てないが、何度か検証して発動条件を少しは精査出来たので少しは楽な気持ちでやっていけてると思う。
「方向音痴」の具体的な発動条件は僕より重く、しっかりした地面で意識的・無意識的を問わず五百歩進むと転移する。
そのため倒木等ではカウントされなかった。
しかもこの進むというのは、四つん這いや逆立ちでもカウントされた。
また転移場所は陸地に限らないため、海上に転移した時は死ぬかと思った。
その時は運良く浅瀬かつ暑い場所だったので助かったが、次に落ちた時のために筏(丸太を三本繋げただけの物だが)を念の為に二隻アイテムボックスに収納している。
土地を知る知らないの範囲はまだ分からず、親切な人に出会った時にその周辺の土地について教わったが転移したし、一度転移した場所の五百歩圏内に転移した時もあったため、植生や建物等の単純な知識や景色だけではダメだということは分かった。
まあ方向音痴は地図見ながら迷子になる訳だし納得と言えば納得ではある。
そんなこんなで未だに転移し続けているが、生きていられる理由は女神様のお陰だ。
女神様がくれた食材や衣服は勿論だが、魔術師見習いという職業がとても助かった。
この世界の魔術とは属性が火水風土の四つあり、まず使用する魔術の大きさや形を決める「発生」の呪文を唱えることで火と風は指定の範囲に発生し、水と土は周囲から集められる。
「発生」に慣れてくると今度は自由に操作出来るようになっていく。
最初は「発生」をするのも大変だったが、アイテムボックスにあったのは食材であって食料でも食事でも無かった。
魔術を使えるようになるまで生で食べられる野菜を食べ続けていた訳だが僕は肉をどうしても食いたかったので頑張って練習し、「発生」は魔術の初歩ということもあって一週間で使えるようになった。
更に使い続けることで初めはライターの火サイズの「発生」で一日二時間しか使えなかったが、今では人の頭ほどの大きさまで制御出来て、半日ほど連続で使い続けられるようになった。
そして火以外の三属生も使えるようになった結果、寝床確保から炊事に洗濯、お風呂など僕の生活は魔術で成り立ってると言っても過言ではない。
また魔術の呪文には「強化」、「覚醒」、「合成」があるらしいが、これらは「発生」より上の魔術であり僕はまだ使えない。
魔術についてはまだまだ語れるがここまでにしよう。
では何故魔術についてここまで分かるかと言うとステータスで魔術師見習いについて調べたからだ。
そしてこのステータスという機能は僕が思っている以上に便利なものだった。
ステータスという機能は気になる名前、年齢、種族、位階、職業、能力の項目をタッチすることでそれらについての詳細を見ることが出来る。
これはこれでこの世界で生きるために十分助かるが、一番ありがたいのはアイテムボックスの中の物も詳細を見れるということだ。
つまり水や食料、植物等の安全性や活用法を知るための簡単な図鑑代わりになるのだ。
とまあ色々と使える能力を利用しつつサバイバルをしているが今のところ魔物に出会ったりしない平穏な日々を満喫している。